ということでちょっと遅めの新年一発目!第八話!行ってみよー!
ノーネームの居住区間の門前に着いた問題児たち。
門を見上げると確かに旗が掲げてあっただろう名残のようなものは見える。だが、そこを潜ったらその先はまさに地獄のような光景だった。
最初は観光気分で気持ちが高揚としていた飛鳥も目の前の惨状を見て言葉を失っていた。耀もこの光景に息を呑んでいた。
十六夜は周りを見て、足元にある土の塊を手にとって握る。すると、土の塊は粉末状に崩れていった。
「……おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは─── 今から何百年前の話なんだ?」
「いえ、……魔王の襲来は僅か三年前の話です。」
「おいおいマジかよ。これだけ風化しきった光景が三年でできたってのか?」
「ああ、人が居なくなって少なくとも200年は経たないかぎりここまで脆くなるはずがねぇ。」
「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわね。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない。」
「……生き物の気配も全くない。警備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて。」
『オマケにここの土は死んどるで~。』
黒ウサギは廃墟から目を逸らし、朽ちた街路を進む。
「……魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ、コミュニティから、箱庭から去って行きました。」
黒ウサギは感情を殺した瞳で風化した街を見渡しながら言いながら進む。飛鳥も、耀も、複雑な表情で続く。
「魔王か。──ハッ!いいぜ。想像以上に面白そうじゃねえか!」
十六夜は不敵に瞳を爛々と輝かせて獰猛に笑った。
「これが魔王の力ねぇ。」(ハハッ!マジで面白くなって来やがった。)
冷次は楽しそうな顔をして笑った。
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所変わってノーネーム・居住区画、水門前。
5人と1匹は廃墟を抜け、徐々に外観が整った空家が立ち並ぶ場所へと出てきた。5人はそのまま居住区を通り過ぎ、その先の貯水池へと進んでいった。
貯水池には先客がおり、ジンと同じコミュニティの仲間らしい何人もの子供達が清掃道具をもって水路を掃除していた。
「あ、みなさん! 水路と貯水池の準備は整っています!」
「ご苦労さまですジン坊ちゃん♪ みんなも掃除を手伝っていましたか?」
黒ウサギ達の帰りを察知した子供達が黒ウサギの元に群がっていった。
「黒ウサの姉ちゃんお帰り!」
「眠たいけどお掃除手伝ったよー」
「ねえねえ、新しい人達って誰!?」
「強いの!? カッコいい!?」
「YES! とても強くて可愛い人達ですよ! みんなに紹介するから一列に並んでくださいね!」
黒ウサギが指を鳴らすと同時に20人以上の子供達が動き出し、一糸乱れぬ動きで綺麗に横一列に並んだ。
(マジでガキばっかだな。半分は人間以外のガキか?)
(じ、実際目の当たりにすると想像以上に多いわね。これで六分の一ですって?)
(私、子供嫌いなのに大丈夫かな。)
(うっわ〜。10人20人ぐらいならいけるかなと思ってたがこれはちょっと多すぎるわ。)
「ええ、それでは右から、逆廻 十六夜さん、久遠 飛鳥さん、春日部 耀さん、乾 冷次さんです。みんなも知ってる通り、コミュニティを支えるのは力のあるギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーを支え、励まし、時に彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」
「あら、別にそんな必要ないわよ? もっとフランクにしてくれても」
「駄目です。それでは組織は成り立ちません」
飛鳥の言葉を黒ウサギはこれ以上ない厳しい声音で一蹴する。
「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼らのもたらす恩恵で初めて生活が成り立つのでございます。これは箱庭の世界で生きてく以上、避けることができない掟。子供のうちから甘やかせば子供の将来のためになりません」
「きついねぇ」
「レージさん?」
「はいはい。」
黒ウサギはコミュニティが崩壊してから3年間も子供達の面倒を見てきた者なのだ。だからこその厳しさなのだろう。
「ここにいるのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言いつける時はこの子達を使ってくださいな。みんなも、それでいいですね?」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
子供達が口を揃えて大声で叫んだ。
「ハハハハ! 元気がいいじゃねえか!」
「そ、そうね」
(……。本当にやっていけるのかな、私)
「おう、よろしくな。」
ヤハハと笑う十六夜、複雑な表情の飛鳥と耀、若干苦笑いだが、普通に応える冷次。
「さて、自己紹介も終わりましたし! それでは水樹を植えましょう! 黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」
「あいよ」
長年水が通ってない水路だが、骨格だけは立派に残っている。
「大きい貯水池だな。ちょっとした湖くらいあるぞ。」
『そやな。門を通ってからあっちこっちに水路があったけど、もしあれに全部水が通ったら壮観やろなあ。けど使ってたのは随分前の事ちゃうんか? どうなんやウサ耳の姉ちゃん。』
「はいな、最後に使ったのは3年前ですよ三毛猫さん。元々は龍の瞳を水珠に加工したギフトが貯水池の台座に設置してあったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました。」
「……黒ウサギも三毛猫の言葉わかるんだ。」
「はい、分かりますとも。」
「ところで、その龍の瞳だっけか? 何それカッコいい超欲しい。何処に行けば手に入る?」
「さて、何処でしょう。知っていても十六夜さんには教えません。」
「十六夜に教えると速攻で取りに行きそうだもんな。」
「あら、それを言うならレージ君も、ではないかしら。」
「おいおい、俺をなんだと思ってんだ。
───もちろん取りに行くに決まっているだろ。」
「何を言っちゃてるんですか!この問題児様は!」
スパァァン!と気持ちのいい音と共に放たれるハリセン。
「イタッ。おい黒ウサギ、今どこからそれを取り出したんだよ。」
「秘密です。それよりも、水路も時々は整備していたのですけど、あくまで最低限です。それにこの水樹じゃまだこの貯水池と水路を全て埋めるのは不可能でしょう。ですから居住区の水路は社団して本拠の屋敷と別館に直通している水路だけを開きます。こちらはみんなで皮の水を汲んできた時に時々使っていたので問題ありません。」
「あら、数kmも向こうの川から水を運ぶ方法なんてあるの?」
「はい。みんなと一緒にバケツを持って両手に持って運びました。」
「半分くらいはコケてなくなっちゃうんだけどねー。」
「黒ウサの姉ちゃんが箱庭の外で汲んでいいなら貯水池をいっぱいにしてくれるのになあ。」
「……そう。大変なのね。」
「まあ、そうでなけりゃあ水樹を手に入れてあんな大喜びすることはないよな。」
黒ウサギは貯水池の中心にある柱の台座までぴょん、と大きく跳躍した。
「それでは苗の紐を解いて根を張ります! 十六夜さんとレージさんはは屋敷への水門を開けてください!」
「あいよ」
「了解!」
十六夜達は貯水池に下りて水門を開ける。黒ウサギが苗の紐を解くと、根を包んでいた布から大波のような水が溢れかえり、激流となって貯水池を埋めていった。
「ちょ、少しはマテやゴラァ!! 流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!」
今日一日だけでも随分とずぶ濡れになった十六夜が慌てて石垣まで跳躍した。
同時に水樹から流れる水が水路を埋め尽くして行く。
「っと、あぶねぇ。」
「「「え?」」」
耀達の後ろから声がしたかと思うと、黒ウサギが立っていた場所にレージが居た。
「ウッキャアァァァ!」
黒ウサギは何故か水路を流れる水に流されていた。
「レージ君?一体これはどうゆうこと?どうして貴方がそこに居て、黒ウサギが流されているのかしら。」
「ん?いや、ただ単に黒ウサギと入れ替わっただけなんだが。」
「……そう。」
「ヤハハ!本当に面白いなお前。」
「ちょっ!誰かッ!助けてください!」
「ま、あいつにはあたま冷やしてもらわないとな。」
「「「ええ/…うん/おう」」」
水門を勢いよく潜った激流は一直線に屋敷への水路を通って満たし、月明かりによって燦然と輝きを放っていた。
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「うぅ………レージさんのせいで黒ウサギがびしょ濡れになったじゃありませんか!」
「「「「あれは黒ウサギが悪い」」」」
「息があいすぎなのですよ!」
そうこう話している内に、屋敷に着けば時刻は既に真夜中に達していた。月明かりのシルエットで浮き彫りになる本拠はまるでホテルのような巨大さである。
「遠目から見てもかなり大きいけど……近づくと一層大きいね。」
「これだけでノーネームが過去どれだけ大きかったのかはわかるな。ところで、俺達は何処に泊まればいいんだ?」
「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住むことになっております。………けど、今は好きなところを使っていただいで結構でございますよ。」
「そう。ところでそこにある別館は使っていいのかしら?」
飛鳥が屋敷の脇に建つ建物を指差した。
「ああ、あれは子供達の館ですよ。本来は別の用途があるのですが、警備の問題でみんなここに住んでいます。飛鳥さんが120人の子供と一緒の館でよければ──」
「……遠慮しておくわ。」
「まあ、そう言うと思ってました。」
『ところでお嬢……ワシも風呂に入らなアカンか?』
「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと。」
「……ふぅん? 話には聞いてたけど、お前本当に猫の言葉がわかるんだな。」
「うん。」
『オイコラ我、お嬢をお前呼ばわりとはどういうことや! 調子乗ってるとお前の寝床を毛玉だらけにするぞコラ!』
「…ダメ。そんなこと言うのは。」
「湯殿の用意ができました! 女性様方からどうぞ!」
黒ウサギが掃除を終えたようで掃除用具を手に持ったまま飛鳥と耀に呼びかけた。
「ありがと。先に入らせてもらうわよ、十六夜君にレージ君。」
「俺は二番風呂が好きな男だから特に問題はねえよ。」
「明日のゲームに備えてしっかり体を休めて来いよ。」
「……私のギフトでは明日のゲームでは役に立たないわよ。」
「そうか?お嬢様のギフトは結構いいと思うけどな。」
「本当にそう思っているのかしら。」
「おう。お嬢様のギフトは応用が効きそうだからいろいろと頼りになると思うぜ?」
「……そう。ありがとう。」
「?お礼を言われることじゃねえぞ。」
「大丈夫。あなたの頭じゃ理解できないことぐらい分かっているわ。」
「な、どういう意味だ。」
「あら、そのままの意味よ。それとも今のも理解できなかったのかしら?」
「違う!」
「そう?てっきりできないものかと……」
「な訳ねーだろ!」
「飛鳥さーんまだですかー?」
「今行くわ!……覗いたらダメよ?」
「覗かねえよ!」
女性3人はそのまま大浴場へと直行していった。
「ハァー……今日は色々疲れる日だったな。」
「ヤハハ! いいじゃねえか! これから面白くなるだろうから疲れなんか感じる暇なくなるし、お嬢様と早速なかが良さそうじゃねえか。」
「あれのどこを見てそう言える。勘弁してくれ。」
「ヤハハハ!」
しばらくくつろいでいると、十六夜が急に立ち上がった。
「さて、俺らは今のうちに外の奴らと話をつけるか。」
「ん〜、俺は眠いし女性陣が風呂から出てくるまで寝とくわ。彼女らが出てきたら起こしてくれ。」
「ヤハハ!考えておいてやるよ。」
それから半刻ほどで十六夜がジンを連れて入ってきて、思いっきり叩き起こされそうになり一悶着あった後に魔王をわざわざ引き寄せるような行動を重ねようという十六夜の提案を聞いて思いっきり笑ったのは余談だ。
はい。という事で第八話。主人公のギフトの一部がでてきましたね。
これからバンバン出して行きたいと思います!
あ、そうそう。活動報告の方でアンケートやってます是非答えてやって下さい。
それでは次回をお楽しみに!