革命をプレイして久しぶりに恋姫熱が上がってしまい、そんななか二次創作をやってみようと考えた愚か者、でるもんてくえすとです。
温かい目で見守ってくれると幸いです。
時は後漢。
涼州は武威郡の小さな邑。
騎馬民族が多く暮らすこの地に、とある噂が流れる。
「天の御使い?なんだいそりゃ。」
まだ若くしてその屈強な騎馬民族を従わせる馬騰その人にも、噂は届いていた。
長い栗色の髪をアップポニーに結い上げ、胡坐をかいてめんどくさそうにガシガシと頭をかくその女性。
「蘭…でも本当なら、乱世を鎮める英雄になるというのよ?」
彼女の真名、蘭と親しげに呼ぶのは、こちらはまるでどこかのお姫様のようにふんわりとした印象の女性。
この小さな邑を治める池陽君、真名を夕陽。
「んなこと言ったってよぉ…たかが占いだろ?」
「あら?その占いで娘の名前を決めたのは誰だったかしら?」
「うぐっ」
痛いところをつかれたのか、ついっと目をそらす蘭。
「あ、あれは…!そもそも名前なんぞ考えるのは向いてねぇんだ!
あたいの股からポンと出た順に一号とか二号とかでいいじゃねぇか。」
「だからって、画数がいいものを見繕って『なんかコレが凄そうだ!超だぞ?!超!!これにしよう!』
なんて決めるのは…画数占い以前に母親としてどうかと思うわよ?」
「う、うっせーし…!てめぇだってガキができれば…あっ」
そこまで言ってしまったが、自分の失言に気が付いて口をつぐんだ。
そう、夕陽はなかなか子宝に恵まれず、体も華奢な上に病弱。町医者も子を授かるのは無理だろうと宣告していたのを彼女も知っていたのだ。
何日も泣きはらして、自害すら企てたこともあった。
そんな彼女に、「子供ができたらわかる」なんて言いかけた自分の浅はかさを恥じた蘭。
だがそんな彼女に、やさしく微笑みながら夕陽は言った。
「だからこそ、よ。」
ついに蘭はぷいっと背中を向けてしまった。
そんな時、急ぎ駆けてくる馬の嘶き声が家の居間まで届いてきた。
「あら?あの人かしら?」
乱雑に戸を開け、息切れしながら駆け込んできたのは夕陽の夫、董君雅。
いつも剛健な振る舞いをする夫のその様子から見るに、ただ事じゃない事態を察した夕陽は濡らした手拭を片手に駆け寄る。
渡された竹筒から一気に水を飲み干し、息を整えるのを待つ間、様子を見ていた蘭はけらけらと笑い出した。
「ぎゃはははっ!!おい玄てめぇ、くくっ、何そんな焦ってんだよ超ウケんだけど!ぎゃっはっはっは!!」
「う、うるせぇ!!それどこじゃねぇんだよ!!
っと、蘭!てめぇが居るんじゃ丁度良かった!ちょっと一緒に来い!」
「あ?一緒に来いって、こんな夜更けにどこに…」
きょとんとしながら聞き返そうとするが、やがて思い至ったのかみるみると顔が赤くなっていく蘭。
「Δ×ω〇Σμ▼?!!!
ば、馬っ鹿!!おま、おま…馬っ鹿!!
いくらあたいが可愛い若妻だからって嫁の前で夜の誘いとか…!!ふ、ふざけんなし!!」
手をぶんぶん振りながら真っ赤な顔で慌てふためく蘭。
その横ではどす黒いオーラを身にまとった夕陽が腕を組んで仁王立ち。
「あ・な・た?」
「ひぃ…?!ち、違うぞ!!そういうんじゃ…!!」
「あら?そういうって何がかしら?」
「だああああ!もうそれどころじゃねぇんだって!なら夕陽も一緒に来い!!」
そういうと、夕陽の手を引っ張って強引に担ぎ上げた。
状況がまだよくわかっていない蘭も後に続く。
そして戸を開けるとそこは夜が朝になったかのように眩い光が幾度も山の麓へ降り注ぐ幻想的な光景が広がっていた。
山の名前は大樹山。その名の通り、そこには幾年も年を重ね立派に生い茂る一本の大樹がそびえている。
どうやら光はそのあたりに降り注いでいるらしい。
「な…なんだ、これ?」
さしもの蘭も呆気にとられているようだ。額には脂汗も滲んでいる。
「俺が巡回先から帰ってくるとき、あの山を通ったんだ。
したら大樹が光りだしてな。何事かと思ったら今度は空から光が降り始めやがった。」
その時のことを思い出したのか、ごくりと唾を飲み込み汗をぬぐう。
「火の手はあがってなかったから大丈夫だとは思うんだが…念のためもう一度様子を見に行こうと思う。」
「…あなた。」
担がれていた夕陽はその肩から降りると、玄の袖をぎゅっと握った。
玄はをの手を握り締めると、「怖ければ家に…」と言いかけたがそれを遮ったのは他でもない夕陽だった。
「…私も行くわ。」
「ほ、本気か?」
震えているわけではない。まして、不思議と怖がっている様子すらなかった。
彼女はその時なぜか、とても慈しむような目でその光を見つめていた。
その時のことを、彼女は後々までこう語る。
「なんだか、呼んでいるような気がしたの。“僕はここだよ!だれか見つけて!”って。」
一行が光の中から見つけた少年。
名前を一刀。たどたどしく漢字でそう書いた少年は、年のころは五つ。ところどころ補修した形跡のあるボロボロの白い道着を着ていた。
平仮名で書くよりも少ない画数だったがゆえに、漢字で書くことができたのは一刀にとって幸いだった。
ひどく泣きじゃくっていたその子は、夕陽がそっと抱きしめると、泣きつかれたのかやがて寝息を立て始めたのだった。
それから、彼は夕陽らに引き取られることとなった。
子を欲してた夕陽らは天より子を授かったと喜び、一刀を真名とし名を董白と名付けられた。
なぜあんなところに居たのか、彼にもわからない。
わかっているのは一つ。
「…お星さまを掴んだの。そしたらそのお星さまが僕をここに運んだの。」
その言葉だけ。
それから三日が経ち、十日が経ち、最初は戸惑っていた少年が少しずつだが喋るようになったことで、彼のことが分かってきた。
少年には両親はおらず、田舎の祖父に育てられたようだ。祖父は病を患っており、その祖父も他界。
途方に暮れて家を飛び出した彼が、森の奥で声を聴いた。
「…を…え…しょう。さあ…へ。」
微かな声を追って少年は走った。
やがて辿り着いた小川のそばで“星を捕まえた”らしい。
しかし何はともあれ、光の中で彼を見つけてからというもの、張り切りすぎなほど可愛がる玄と夕陽だったが、少年もまた、二人を“ととさま”“かかさま”と呼び日を追うごとに家族となっていく。
夕陽は母となり、病弱な体もみるみる快方に向かっていった。母は強し、ということだろう。
だからだろうか。それから程なくして、夕陽は子を身籠った。
「天は私に二人も子を…」
「ああ、俺たちの元に降ってきた一刀に感謝だな。」
庭先で蘭の子、馬超こと真名を翠と呼ぶ快活な少女と、その従妹である馬岱ことたんぽぽと楽しそうに追いかけっこをする一刀を見て、そう話す二人。
「だああっ!!もうっ、な、泣くなってば!ちったあ休ませてくれよぉ~!!」
その横ではまだ小さい第二子の馬休を必死にあやす蘭。
「…あなたが『そろそろ休みてぇなぁ』なんて理由で馬休と名付けたから怒ってるのよきっと。」
「う、うっせーし!」
一刀がこの地に落ちてきてから、早数か月。
色々なことが起こっていた。
天の使いを匿っているとして、官軍が涼州に大挙してきたのを蘭が難なく撃退。恐れをなした朝廷は涼州の騎馬連合と停戦合意。
停戦の際には夕陽がニコニコ顔でえげつない停戦条件を突きつけ、宦官もたじたじにし、玄は騎馬連合とは別の涼州警備隊を設立。
これまで蛮族と小競り合いを続けてきたとは思えないほど治安が改善し、水鏡と呼ばれる人が書いた『幸せを呼ぶ天の子』という本も話題となり、人もどっと増えた。
一刀が降りてきたときは何のこともない小さな邑だったが、やがて妹董卓が生まれ、蘭の第三子馬鉄が生まれ、二年が経つころには武威の心臓と呼ばれる街にまで発展していった。
「へぅ~!へぅ~!」
「あらあら、この子ったら…本当にお兄ちゃんが好きねぇ。」
夕陽に抱かれた董卓こと月は、兄に向って母譲りの柔らかな笑みで手を伸ばす。
その手をそっと一刀が握ると嬉しそうにきゃっきゃと喜んだ。
「あははっ、僕ね、妹を守れるような強い男になるんだ!」
「お、よっしゃ!じゃあ今日も稽古をつけてやる!かかってこいっ!」
「うんっ」
玄が木刀を手に持つと、一刀は懸命に打ち込みを始めた。
このころになると、もう立派に家族の姿だった。そして稽古をつける玄は、一刀の太刀を受けながら思う。
親馬鹿もあるのだろうが、この子の筋は悪くない。というより、良すぎる。まるで乾いた地面が水を得るように、武術を習得している。
今や誰も知る由もないが、それもその筈。祖父は戦国時代から続く流派の剣術師範であり、一刀自身も覚えていないが、病に倒れるまでおもちゃ代わりの棒切れで英才教育を施されていたのだ。
「いだっ!!いだだだっ!!こ、こら蒼!!髪を引っ張るな!!おっぱいならやるから…ったく、泣かねぇのは良いけどこんなお転婆で誰に似たんだか。」
「あら、『絶対泣かねぇ鉄のような強い女にする!!』とか言って馬鉄と名付けたのだから良かったじゃない。
それに…お転婆なのはあなた譲りでしょ絶対。」
「あぁ?そんなことねぇよ。あたい超お淑やかだし~…っていだだ!!?て、てめぇ~、乳首噛みやがったな?!」
「ふふふっ、月~?あなたはいい子ね~?」
「へぅ~?」
こうして、武威の街を和やかな時が流れていったのだった。
「ぬあ?!る、鶸、お前に言ったんじゃないから泣くなって!
ぎゃああああああ~~~~っ!!また噛みやがったこいつ?!だ、誰か助けて~~~~!!!」
お読みいただきありがとうございます!
ちょっと変わった涼州ルートになるかな~と思いますがいかがでしたでしょうか?ご覧の通り、かなり若くして外史に迷い込みましたから、所謂黄巾や乱世のところまでちょっと長くなりますが、どうぞ引き続きよろしくお願いします!
需要、あればいいな…
ご意見ご感想お待ちしております!