another story 孫権
『気になるアイツは旦那様?!』
休日、本屋からの帰り道、俯き加減で歩く。ちゃんと背筋を伸ばさなきゃ雷火に怒られてしまうと思うものの、どうしても視線は下にいく。
悩みの種は最近まで気安い関係と思っていた彼のこと。最初の方こそ私は“王たる者”を意識して警戒したが、彼はあんな風だからそんな警戒心などすぐほだされてしまった。基本的に真面目なのも好感が持てた。
「ねぇ孫権さん、この問題なんだけど…」
「ああ、それはね…」
王学科の授業でわからないところがあるとこうやって聞きに来て、目をキラキラさせながら吸収していくのを私も楽しいなと思っていた。純粋で、真っ直ぐで、私は彼と話すときとても気分が柔らかくなる。気を張っていても曹操のようにひっくり返されるのだから、そんなことをしても無駄だろうし。
とにかく私は、男子相手にこうして笑みを浮かべるのは彼くらいだった。もしかしたら友達と呼べる存在なのかもしれない。それなのに…
「孫権さん、あのね」
「わ、私に話しかけないで!」
どうしてあんなこと言ってしまったんだろう。あの時の彼の顔を思い出したくない。
母様が彼を婚約者にと言ったとき、私は“悪くない”と思ってしまった。それまで全然そういう風に見てなかったのに、なぜか自分の中でしっくりきてしまったのだ。胸の中の穴にピッタリはまったような不思議な感覚。それからはもう彼と目が合わせられなくて、話しかけられると顔がかぁ~っと熱くなって自分がどうにかなってしまったみたいだった。何度突き放しても、彼は屈託のない笑みを浮かべて私に接してくる。だからそれに甘えてたのだろうか。
「こっちに来ないで!」
さきほど寮から出て南西街にあるお気に入りの本屋に向かう時、偶然出くわした彼にそう言ってしまった。彼はただ挨拶してくれただけなのに…寂しそうにしながらも必死に笑おうとしてた。彼の隣にいた李儒にも怖い顔をされてしまった。思い出してしまうたびに胸が締め付けられる。
「はぁ~…。」
こぼれるのはため息ばかり。予習の教材を探しに来たのに、頭がぐちゃぐちゃで探し物すら手につかない。
それからしばらく本屋さんに居たが、結局目当ての本は見つからずそこを後にする。どのくらい長く居てしまったのか、あたりはすっかり夕方だった。
帰り道でも相変わらず彼の寂し気な顔がチラついて、胸の痛みとともにどうしても視線は下へと下がってしまう。
…だから、普段なら気付く筈の邪な気配に気付けなかった。
「お前が孫家の姫、孫権だな?」
「っ…!」
ちょうど人気のない道を通っていた時、そいつらは現れた。得物を持った五人ばかりの輩。
「お前を人質にとりゃあの虎と言えど身代金たんまり寄こすだろうよ。」
「頭、そのあとは好きにして良いんすよね?」
「当たり前ぇだ。売ろうが人形にしようが好きにしろい。」
男たちは卑下た笑みを浮かべながらにじり寄る。姉さまならこんな相手造作もなく切り捨てられるだろうけど、私にはまだそこまでの力量はない。護身用の小刀を抜くけど、その手は震えてしまっていた。
「こ、こっちに来ないで!」
あの時と同じ言葉が口からこぼれ出た。こんな事態なのに、私はハッとした。もしかして私は、彼をこんな奴らと同じように扱ったの?あの柔らかな笑みとこの卑下た笑みを。あの人懐っこい言葉と、下衆な言葉を。
…最低だ、私は。
なんとか逃れようとしたが、体にうまく力が入らない。きっとこれは天罰。ここで死ぬとしても、できることなら一言謝りたかったな…。
ついには剣を飛ばされ、諦めかけた瞬間、信じられないことが起こった。
「やめろ!!」
私の前に立っていたのは、董白だった。膝や裾を泥だらけにした彼が、剣を片手に立ちふさがったのだ。
どうして彼がこんなところに?それに私のことなんて放っておけばいいじゃない!だってあなたにあんなひどいことを言ったのよ?私にはあなたに守ってもらう資格なんてない!
「だ、ダメよ!早く逃げて!」
「絶対に嫌だ!!」
頑なな意思。そういう人だと分かっていたけど、この場ではそれが恨めしい。
「大丈夫、僕には秘策があるから!」
「秘策だぁ?笑わせんじゃねぇか餓鬼が!」
賊はゲラゲラ笑っている。彼はハッタリをするような人間じゃない。秘策って一体…
彼は大きく息を吸い込むと、
「あーー!!こんなところで幼女が水浴びしてるーー!!!」
は?えっと…幼女が水浴び…?一体何のこと?
「ぐはぁ…!?」
賊たちもキョトンとしていたが、頭と呼ばれた男が背後から吹っ飛ばされると我に返ったようだ。
「へ…?」
「どこだぁぁ…!幼女の園はどこだぁぁぁああ!!!」
口から瘴気を吐き出し、六角棒を手に現れた牛輔。さながら怪物のような出で立ちに私は思わず「ひっ…!」と情けない声を出してしまった。
「てめぇ…!」
「ホワチャァ!!」
斬りかかってくる賊を一撃で叩き伏せる。
「幼女が絡んだ戦闘では俺の戦闘力は三倍になる。」
言っている意味が分からない。
「ところで幼女はどこだ?」
「…ごめん、居ない。」
両手を合わせてテヘッと笑う董白。
「なん…だと…?」
膝をついて絶望している牛輔。その時、吹っ飛ばされた賊の頭が立ち上がる。まだ相手の人数は四人と数的不利は否めない。
「次は…こんなところに筋肉によさそうな大豆がーーー!!」
また何かを叫ぶと、今度は李傕が突っ込んできてまた頭を吹っ飛ばした。
「なんでまた俺ぐぼぉ!!」
しかしそんなものは無いのでこちらも絶望して膝をつく。
「次は君だ!こんなところにあられもない姿の萌え萌え春画がーーーー!!」
「いや私はこういう荒事向いていないんだが?!」
そうは言いつつ飛んでくるあたり筋金入りだと思う。しかしこれでひとまず数は同数。これなら何とか…と思ったが、賊の様子がおかしいことに気が付いた。全員その目は虚ろで、体を震わせながら一人また一人と倒れていく。そして最後、頭と呼ばれていた男が倒れたところでその陰から出てきたのは李儒だった。その手には何か針のようなものを持っている。
「僕の友達にそんなもの向けないでくれるかい?」
「てめぇ…なにしやがった…!」
「特性の痺れ毒だよ。凄い効き目でね、二日三日はその調子だから頑張って。」
浴びせられる冷酷な視線に言葉をなくす賊。
「ああそれと…怖~いお姉さんたちの応援を呼んであるから。」
そういうと、その背後に姿を現したのは鋭い目つきで賊を見下ろす雪蓮と冥琳、そして梨晏だった。
---side view 李儒
それは突然のことだった。
董白が花を摘みに行きたいと言ったので、厠の隠語かなと思い断ったがどうやら本当に花を摘みに行きたかったらしく、近くの小川のそばまで僕らは一緒に行った。
「僕、彼女を怒らせちゃったみたいで…」
とても悲しそうにそう言う董白だったが、僕は正直あんな人放っておけば良いと思っていた。彼にそんな顔させることがまず許せないのに、その上あんなこと言うなんて…!
誰かに相談したら花を贈ればいいと言われたらしく探しに来たのは良いけど、もうすっかり手足は泥だらけ。やっとのことで目当ての花を見つけ街に帰ってくると、さきほど孫権さんが向かった人通りの少ない南西側に差し掛かったところで何かを見つけた董白が走り出した。
「いけない…!」
ついて行って見てみると何者かに襲われている孫権さんがそこに居た。夕方の薄暗い中、あんなに遠くから目視できることが驚きだったが、その後の董白は早かった。
「僕は時間を稼ぐから李儒は応援を呼んで!彼女のお姉さんなら力になってくれるはず!」
「わ、わかった!」
彼が飛び出すのを見て、僕はここからほど近い女子寮へ急いだ。男子禁制だったが、バレたところで僕は女だ構うものか。
とにかく腕の立つ夏侯惇さんらが見つかれば良いと思ったが、入口から入ってすぐのところで目当ての人たちが見つかった。彼女のお姉さんである孫策さんとその友人たちだ。
「あら?ここは女子寮よ?」
「そんなことより孫権さんが危ないんです!董白が時間を稼いでくれてるから急いで!!」
血相を変えた孫策さんたちは凄い速さで駆けだす。全くついて行けない速度だったから困ったものの、その時、それを上回る人並み外れた何かが横を通り過ぎ、孫策さんらも追い抜いて行った。
「幼女ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「筋肉ぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううう!!!」
「春画ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」
なるほど、さすが董白。馬鹿と包丁は使いようだね。
呆気に取られている孫策さんらになんとか追いつくと、現場はすでに拮抗状態となっていた。そのままの勢いで飛び出さなかったのは人質に取られないようにするためだろう。ならば僕の出番だ。
僕は気配を殺してそっと背後に回ると、首筋に軽く一刺し。そうすればあとは彼女らがなんとかしてくれる。
---side view 李儒 end
「大丈夫?」
少し距離を置いて遠慮がちに、董白は私にそう言った。彼をそうさせてしまったのは私。それなのに、方法はどうあれ彼は身を挺して私を守ってくれた。その事実が、私の中にすぅっと染み渡る。
「あの、これ…。」
そう言うと、彼はおずおずと二輪の雛罌粟をくれた。これはどういう意味だろう?なんでお花なんか…
「ごめんね?僕、君を怒らせちゃったみたいだから。」
「え…?」
そうか、私があんな態度をとっていたから彼は…こんなにも泥だらけにして私に…。
あんな酷いことを言った私なんかを助けてくれた嬉しさと、そんな彼を何度も傷つけてしまった後悔が混ざり混ざって、涙があふれてくる。
違うの、そんな顔しないで。悪いのは全部私なんだから。
「ごめん、ごめん、なさい…!」
やっと出せた言葉。今はそれしか言えない。
私は何度も謝って、しばらく泣き続けていたのだった。
「さ、帰りましょ?」
気が付くとすっかり日が沈み、姉さまたちに付き添われて寮まで帰る。泣いている私に気を遣ったのか、董白たちはいつの間にか姿が見えなくなっていた。握り締めていた雛罌粟も、少し萎れかかっている。
「それにしても、頼りになる旦那様じゃない。私、ちょっとあの子を見直しちゃったわ。」
「そうだな。割って入る豪胆さと機転…見事だった。」
「愛されてるね~!このこのっ!」
え?ちょ、ちょっと待って?だ、だ、だだ、旦那様…って?!
「いや~!母様から婚約を申し込んどいたって聞いたときは驚いたけど、あんな子ならあなたを任せても大丈夫ね!」
「ああ。雷火様もあの気骨を見れば合格点を下さるだろう。」
え?え?で、でもあの話は結局流れたんじゃ…?!ほ、本当にあの人が私の…?!あのあと正式に決まったの?!
それからというもの、より一層目が合わせられなくなった私は、彼との接し方がまた分からなくなったのだった。
「本当のところはどうなってるのよ~~~~~?!」
another story 孫権
『気になるアイツは旦那様?!』end
授業参観から二月ほどたった時のこと。期末試験も終わり、夏休みを直前に控えたこの日、劉備のこんな一言でそれは始まった。
「みんなでお肉食べよ!」
学食のおばさんから、夏休みを迎えるにあたって私塾と学生寮の食堂にある肉や野菜がかなり余ってしまっていることを聞き、急遽思いついたようだ。水鏡には話を通してあるようで、放課後の校庭で焼肉が催されることとなった。
商魂たくましい近所の肉屋『何肉本舗』からも差し入れがあり、それこそ大量のお肉が校庭に並ぶ。来年度に下の子が入学するための布石とも取れるかもしれない。そんなことはさて置き、一大行事を前に生徒たちもこぞって参加し、焼きあがるのを今か今かと待っていた。
「ちょっと華林さん!そこをお退きなさい!」
「…四年生のあんたがどうしてこっちに座るのよ。」
「おバカですわね~、董白さんに“あ~ん”てして差し上げるからに決まっているでしょう!」
校庭に並べられた学食の長い机、その椅子は基本的には学年ごとに分けられているのだが、袁紹は頑なに二年生のところつまり一刀の隣を欲しがり曹操と言い合いを始めていた。因みに席順はくじ引きで割り当てられ、牛輔、李儒、一刀、曹操、関羽、その正面は李傕、公孫瓚、孫権、劉備と並んでいた。本当は牛輔と李儒は逆だったのだが、李儒が光を一切感じない要するに“マジな眼”で牛輔を説得しこうなったのだった。
「袁紹さん、そんなことしてくれなくても僕は一人で食べられるよ?」
「そんなつれないことを言うのはおよしになって?わたくし貴方の面倒をみるのがもうクセになってて…なんだかこう…体が火照ってゾクゾクいたしますの!」
「大変!風邪でもひいたんじゃ…!」
「あ~んっ、もうっ!本当に可愛いんですから…!!」
目にハートマークを浮かべて一刀を抱きしめる袁紹。そんな姿をムッとした表情で見ているのは李儒と孫権だった。李儒は言わずもがなだが、この頃になると孫権は董白を意識せずにはいられなくなっていた。
母親が取り決めたらしい?婚約の話も誰に確認をとればいいかもわからず、歴史の担当教諭であり孫呉の重臣でもある雷火曰く、「孫家の姫たる者、第一夫人としてお子を生すべき」と随分先走った話をされた。という事はあの話は本当に…?とは思うものの、肝心の相手はそんなことおくびにも出さないものだから、どう付き合っていけばばいいのか迷ってばかりだった。それに加えて姉たちからはせっつかれて、照れと焦りばかり生まれてしまう。
「(でも、気がない女性に花なんて贈らないわよね?だとするとひょっとして彼は私のこと…!ま、まって!落ち着くのよ私!第一、私は彼をどう思ってるの?それは彼なら婚約者として不満はないというか、むしろ良いかなと思ったり……あれ?ひょっとして私…)」
思考に耽って悶々とする中、孫権はついに頭を抱えてしまった。
「あ~!私もやる~!」
「だ、だめ!!」
袁紹に混ざろうと立ち上がる劉備を止めようとしたが、思ったより大きな声が出てしまった。周囲の注目を集め、恥ずかしそうに俯く。そんな姿に「へぇ~?」と曹操がニヤニヤ自分を見ているのを感じ耳の先まで真っ赤になる孫権。きっとあの様子だと曹操は自分の気持ちなどお見通しなのだと察した。
因みに、女の子を怒らせてしまったかもしれないと一刀は曹操に相談しており、その相手が孫権だと知っている彼女はいたずら心で「花をあげれば?」と提案した。つまりこの現状は曹操の掌の上ということだ。
「華琳様!お肉をお持ちしました!!」
「…焼けたのを持ってきなさい。秋蘭、頼んだわよ。」
「はっ!」
夏侯惇を軽くいなしてそばに仕えた夏侯淵に指示を出す。夏侯惇に任せたら黒焦げか半生か、少なくとも美食家である自身の舌に適うほどよさは出てこないとわかっているからだ。
「あれ?李儒は取りにいかないの?」
「えっ?い、いや僕は…」
李儒には自分が取りに行けない理由があった。チラッと袁紹を見る。自分が立った瞬間、確実にこの席は取られてしまうだろうとわかっているから。
ちょうどそんな時、お皿に肉を盛った牛輔が戻ってきた。そのまま席へ座ると箸を片手に肉にかぶりつこうとする。
「美っ味そ~!いただきま~…あら、俺のお肉ちゃんが居なくなったぞ?」
「ありがとう牛輔、僕のために取ってきてくれたんだね。」
「へ…?」
「文句は…ないよね?」
反論しようとしたが、脇腹に小刀が突きつけられているのを感じて黙る。
「あとご飯と野菜と汁物と…それと飲み物もよろしくね?あ、ご飯は少なめで。」
「こんなの…あんまりだ~~~~~~……!!」
泣きながら食材の方へ走る牛輔。そのまま素直にせっせと野菜などを盆に載せているところを見ると彼はやはり良い奴なのだ。そしていつの間にか一刀も食材を取りに行ったようで、同じく盆に載せて戻ってきていた。ところがそこへどっかり腰を下ろしているのが袁紹で、戻ってきた一刀を見ると自らの膝をポンポンと叩き、
「さ、董白さん、こちらへ!」
と笑顔で促す。
「え、でもそれじゃあ袁紹さんが食べられないんじゃ…」
「わたくしの事などどうでもよろしいですわ!」
そんなことを言う袁紹に、隣の曹操はギョッとした。なぜなら自分が最優先でなくては気が済まないあの袁紹が、“自分のことなどどうでもいい”と言ったのだ。これはどう考えても普通じゃない。完全に母性に目覚めてしまっている。しかしそれ以外の要するに性的な感情も持ち合わせているから、言わばメロメロということだった。
そう言われて素直にちょこんと座ってしまう一刀に袁紹は熱いため息を漏らす。
「ん~!お肉美味しいね!」
「き、キミって動じないよねほんと…。」
ムカムカしてしまうのが馬鹿らしくなるほど幸せそうにお肉を頬張る姿に、李儒は乾いた笑いをこぼした。
「フハハハハ!!なんだ董白!お前はその程度しか食えんのか!」
そう言ってどんぶりに山盛りしたご飯の上に大量の肉を乗っけた夏侯惇がこれ見よがしにガツガツと貪る。
「どうですか華琳様!私は董白なんぞより多く食べられます!」
「…はいはい。どうでもいいから立って食べるのはよしなさい。」
そして目配せを受けた妹に窘められ席の方へ戻っていく。
一刀の正面に座る孫権は姉の孫策とその友人、太史慈らに何やら耳打ちされているようだ。
「ちょっと蓮華、良いの?アレほっといて。」
「そうだよそうだよ~?このままじゃ袁紹さんに取られちゃうかもよ~?」
「と、取られちゃうって私は別に…」
「とかなんとか言っちゃって~!あからさまにムスッとしてるわよ?」
自分では全く気が付いていないかったようだが、先ほどから食事が進まず一刀の方を見ていたようだ。
「ほら、さりげなくお肉をあげたりして気を惹かなきゃ!」
「で、ですが…!」
「い・い・か・ら!」
無理矢理立たせると、背中をぐいぐい押して一刀の方へと近付ける。孫権はお肉を載せた皿と箸を手にされるがままだった。
「と、董白!えっと、その…そ、それだけじゃ足りないでしょ?よければ私のお肉もあげるわ。」
「いいの?」
「ええ!この間のお礼…には全然ならないけど、あの…だ、だから…ね?」
「うん!」
一刀は笑顔で頷く。お肉が嬉しかったわけではなく、孫権がまた前みたいに自分と話してくれたのが嬉しかったのだ。一刀の皿に箸でお肉を掴みそっと乗せると、笑顔を見ていられなかった孫権はいそいそと席へ戻っていく。
「…あ、そういえば蓮華、そのお箸、使った?」
「え?それは最初の一口だけ…」
「…」
「…あぁっ?!」
気付いた時にはすでに遅し。それは一刀の口に放り込まれた後だった。状況をすべて見ていた曹操は嫌な笑みを浮かべて孫権を眺めており、李儒は素敵な笑顔で隣の牛輔を何度も箸で刺している。
「間接を狙うなんて、や~い蓮華のスケベ~!」
「~~~~~~っ!!」
茹蛸のようになってしまった自分の顔を隠すように両手で覆うが…
「お肉美味しかったよ~!ありがと~!」
これがトドメとなった孫権はついに駆け出してしまうのだった。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございます!今回は7000字オーバーとちょっと長すぎましたかね…?次回は夏休みという事で一刀が帰郷します。皆さんお待ちかね?の恋と翠が登場!お楽しみに!
それでは皆さんのご感想お待ちしております!