恋姫†無双/外伝 ~天の子~   作:でるもんてくえすと

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李儒の判決

その日、水鏡塾では職員たちが学長室に集まり、ある議題について話し合っていた。誰もが困ったような顔を浮かべ、いつも冗談じみた発言を繰り返す水鏡もこの時ばかりは真剣な様子だ。

 

「…では、説明を聞こうかの。李儒くん…いや、李儒ちゃんか。」

「はい…。」

 

議題は時折噂になっていた李儒の性別について。何となく気が付いていた友人らは気付かぬふりをしてきたが、噂というものは違和感一つで大きく広まる。ついには職員の耳にまで入り、教師たちとしても見過ごすわけにはいかない理由があった。

最も問題なのは寮だ。学則では男女の寮に異性が踏み入ることは道徳的観点から禁止されており、にも関わらず四年もの間そこに住んでいた。最初の一年こそ同室者は居なかったが、二年生に上がった頃から董白という同室者が出来てしまう。

しかしなぜそんなことをしていたのか。教師たちはそこが疑問だった。

促された李儒は包み隠さず生い立ちを話し始める。父の意向により、生まれてからこれまで男として生きてきたことを。

 

「なるほどのう…。」

「しかし、知らないうちに異性と同室で寝ていたのじゃから、董白とて心穏やかではないのではないか?無論其方がそのようなヒドイ事しない人間だと信じておるが、間違いが起こった可能性も否定できまい。」

 

一部同情的な意見も出たが、張昭は問題点を冷静に判断していた。

男女の力差がやや女性優勢となっているこの世界では、男性が性的暴行にあう事件も多発している。知っての通り李儒の父も被害者であるが、一刀の父である玄も結婚のきっかけは夕陽の夜這いだったことは誰にも知られていない。しかしそれがこの世界の男女のバランスなのだ。優秀な種を得ようと群がるこの世界特有の女性の性に起因していた。一夫多妻の家庭も存在するのはそのためだ。

 

「あの孺子が気にするとは思えんのだがのう。」

「そうよ、それに若いんだから間違いなんてあって然るべきじゃない?」

 

兵学科の講師厳顔と保険の程普は異を唱える。しかし、軍学科の教師でもあり生活指導を請け負う張昭は頑なに罰則の姿勢を崩さなかった。

 

「馬鹿者。今は節度云々の話などしておらん!学則を破り続けてきたことが問題なのじゃ!理由はどうあれこのような違反を見逃しては示しがつかぬだろう!」

「それはそうですけど…」

 

李儒の今後を決める会議は、熱を帯びていた。李儒はやや青ざめた表情で立ちすくんでいる。校則違反により退学も十分あり得るのだが、それ以上に彼をだまし続けてきたことを痛感して。もう友達として受け入れてくれないかもしれない。そのことが後悔してもしきれなかった。本当なら一人の女の子として彼の隣にいたかったのに、そんなことを彼女は何度考えただろう。でもそれはきっと叶わない。こんな酷いことをして、いくら優しい彼と言えど思うところはあるはずなのだから。

 

一方その頃、一刀の部屋では李儒が重大な校則違反により部屋を移るという事だけを聞かされており、その荷造りが進められていた。衣服などは食堂の寮母らの手を借り、一刀は衣類以外の梱包作業を手伝う。何か悩みがあってそれを気付いてあげれなかったのかもしれない自戒しながら。

思えば、最近李儒の様子が変だったことは気付いていた。挙動不審なところがあったり、夜中にごそごそ動き回ったりして不思議に思っていたのだ。同室者でもあり大事な友人の悩みを聞いてあげられなかったことが、一刀にとって悔しいことこの上なかった。もちろんそれは色んな意味で彼女の問題なので気にするだけ野暮なのだが、そこが一刀らしさなのだろう。

 

「まあそう気を落とすな董白。」

 

そう言うのは梱包を手伝っている郭汜。彼もまた詳しい事情までは聞いていなかったが、落ち込む一刀を気にかけていた。

 

「そうだぞ董白よ。…しかし本というのは中々に鍛えられるな。フンっ、フンっ!」

「使い方間違ってるぞ。」

 

本を束ねて何度も持ち上げている李傕。当然そんなことをしていたら本の山も崩れるのは当然の事だ。折角片付けた部屋も教科書や医学の参考書などで足の踏み場もないような惨事になってしまった。

 

「ったく!手伝いてぇんだか散らかしてぇんだかハッキリしろ!」

「す、すまん…」

「…あれ?」

 

その中で、一刀は表紙に何も書いていない本が目に付いた。いつも夜寝る前に隠れるように李儒が書いていたものだ。よほど大切なものなのだろうか、本は鍵のついた鎖がまかれていたが、落とした衝撃でそれが外れてしまっていた。

 

「…大変!」

 

中身に破損がないか表紙をめくってしまったのは、偶然の事故。そしてその中身を見て、一刀は駆けだしたのだった。

 

「お、おい一刀!」

 

学長室に場面は戻る。

それぞれ意見は出尽くしたのか、静寂が包んでいた。水鏡が軽く咳払いをすると、細く皺がれた目で李儒を見やる。いつもの穏やかな目とは違う、その奥にある鋭い眼光。長年国を支えてきた男だと痛感させられる威を感じさせた。

 

「…李儒よ、何か申し開きはあるか。」

 

その声は静かだったが、まるで剣を突きつけられているかのような恐怖を覚える。しかし李儒は一瞬たじろいだものの、その目を見返した。

もう嘘に嘘を重ねるのはよそう。そう思って彼女は口を開く。

 

「ありません。お話した通り、僕は女です。それに…僕は彼に恋をしています。だからこの先間違いを犯す可能性も否定できません。」

 

職員たちはどよめいた。厳顔と程普は「おぉ!」と色めき立ったが、正直に話したことにより張昭は毒気を抜かれたのか、ひと睨みしただけでそれ以上の追及はしなかった。教室での様子を知っている皇甫嵩は「やっぱり…」とため息をつき、盧植もまた困ったように水鏡を見た。

 

「なるほど…。あいわかった。」

 

李儒の言葉を聞いて気持ちが固まったのだろう。水鏡は一つ間を置くと、ジッと見つめて裁定を告げる。

 

「お主への処分は…」

「玲!!!」

 

その時だ。扉を蹴破るようにして一刀が飛び込んできた。その手には、錠が外されたあの本を手にして。

 

〇月▲日

今日、とうとう僕にも同室者が出来た。色々不安だけど、なんとなく彼とならやっていけるかもしれない。でもバレないようにしっかりしなきゃ…とりあえず部屋を仕切って、あとは絶対に私物を触られないようにと言っておいた。素直な子で良かった。

 

〇月◇日

お父さんの言いつけで男として生きてきたけど…こんなんでやりきれるだろうか。今朝も着替え一つで心臓バクバクだったし、お風呂に誘われたりするたび誤魔化すのが大変だよ…。女だってバレたら僕どうなっちゃうんだろ。

 

〇月×日

董白は本当に不思議な子。言葉も、行動も、仕草も、全てがまっすぐで嘘がない。僕は彼の色を見るのが好きだ。こんな念氣嫌だって思ってたけど、彼みたいな人がいるなら悪くないかも。友達になれるといいな。

 

◇月〇日

今日はお休みだったけど、一刀はどこに行ったんだろう。一緒に遊ぼうと思ったんだけどな…。彼はたまにこうして休みの日になると朝からどこかへ出かける。危ないことしてないかちょっと心配…。

 

▲月◇日

もうあったまきた!三年生の夏侯惇さん、董白に負けそうだからって転ばせることないじゃない!おかげで彼が膝を擦りむいて怪我を…僕の友達になんてことするんだ!明日あいつの飲み物に腹下し入れてやる!

 

▲月▽日

僕の董白は今日も元気!彼が笑っていると胸がポカポカしてこっちまで嬉しくなる。侍従科の授業で作った焼き菓子をあげたらすごく喜んでくれた。また作ってあげようかな…あくまで練習のためにね!喜んでほしいからとかじゃなくて…あ~もう!なんだかよくわかんない!おしまい!

 

▽月×日

なんだか筆がのらない。さっき食堂で男の子たちが好きな人について話してたんだけど、董白が僕のことが好きって…もちろん僕が女だって知らないから友達としてだろうけど。それからなんだか頭がぼ~っとしちゃう。

 

☆月▽日

ここ最近、ずっと董白のことを考えてる。つい目で追っちゃうし、彼に名前を呼んでもらうだけで嬉しくなっちゃう。これが真名だったらいいな~なんて思うけど、さすがにそこまでは望みかな。

 

☆月〇日

聞いて聞いて!!董白と…いや、一刀と真名を交換したの!呂布っていう変な子と仲良くしてたのはちょっと複雑だったけど、真名を貰えるなんて…!これからずっと一刀って呼べるんだよね?一刀、一刀、一刀、一刀~!

 

〇月〇日

僕、やっぱり彼のことが好きみたい。彼のためなら何でもしてあげたくなっちゃう。でも同じ教室の孫権さんもなんだか彼に気があるみたいで…彼は絶対渡さないんだから!

 

◇月▽日

好きな人がすぐそこで寝てるって勝ち組だと思ってたけど…これは生殺しかもしれない。だって無防備なんだよ?少しくらい触ったって…いやダメダメ!でも先っぽだけなら…ああ、明日も寝不足かも。

 

▼月×日

あ~子供欲しい。彼の専属になってからもうずっとこんなこと思ってる。僕、やっぱりお母さんの子だな…。可愛い顔で寝てる彼をめちゃくちゃにしたい。僕もう無理ぽ…

 

△月☆日

××したい!!

 

△月〇日

昨日の僕はどうかしてた。冷静になろう。冷静になって一刀との未来予想図を空想しよう。子供は一個小隊くらい欲しいかな…真っ白な家に芝生の生えた庭…いや、大事なのは寝室よね。お母さんも「家なんて布団一枚あればいい」って言ってたもん。

 

☆月×日

一刀好きだーーーーーーーーーーーーーー!!

 

想いが詰まった日記。本当は中を見るべきではなかったのだろう。しかし、それを見てしまったから一刀は駆けたのだ。今彼女が置かれている状況を“一部”理解して。

 

「こら董白。今は会議中じゃぞ!」

「玲…!」

「か、一刀、それ…?!」

 

李儒は急に飛び込んできた一刀に驚いたが、それ以上に彼が抱えていたものに衝撃を受けた。

 

「ごめん、僕…全然気付いてあげれなかった。」

 

錠が外れているところを見ると、きっと中身は読まれてしまっただろうと思う。李儒は青いのか赤いのか判断に迷う顔色で固まっていた。

茫然とする李儒に日記を渡し、一刀は教師たちの間を縫って水鏡の目の前まで歩く。張昭が止めに入ろうとするが程普に肩に手を置かれて様子を見ようと窘められたようだ。眼前に来た一刀に水鏡は問う。

 

「董白や、どうやらその様子じゃと知ったようじゃな?」

「はい。」

「それでお主はどうするつもりじゃ。」

 

水鏡にはわかっている。きっとこの少年が友のために頭を下げるだろうと。しかしそれで何事もなく許しては今後の私塾運営に関わる問題だ。それ故にお咎めなしというわけにはいかない。

 

「水鏡先生。」

 

水鏡は身構える。そして一刀は頭を下げ…ることはなかった。バンと目の前に差し出された一枚の紙きれ。

 

「運動会でもらった水鏡券、使えますよね?」

 

それは運動会の総合優勝を得た大将に贈られる権利。水鏡が可能な限りの願いを一つ叶えてくれるという券だ。その可能性も考えていたが、まさか本当に使うとは思ってもみなかった。

大抵の人間は都への口利きや将来的な利に使うものだ。昨季に優勝した孫策は誰の入れ知恵か都で保管されている台帳の写しと地図を欲し、今季は曹操が卒業後に許昌を寄こせと言った。つまりはそれくらい叶えてもらえる権利なのだ。それをただ友のために…。

 

「どうか玲…李儒を許してあげてください!」

「…ほっ!」

 

水鏡は笑みを堪え切れなかった。初めて見たときの見立て通り、彼はただのヒトだった。万よりも一を欲す。未よりも現を取る。とても王たる資質ではなかったが、しかし水鏡にはこれほど嬉しいことはない。彼はこの私塾で曲がらずに育ってくれたのだから。

誰しも王となれば欲が出る。自らの域を出ようとする。ヒトは王には成れない。しかしヒトであれば英雄になれる。彼は必ずやその道を辿れるだろうと。

 

「よう言うた!」

「まさか、そのままお許しになるとでも?」

 

張昭は不服そうに尋ねる。

 

「これを出されては致し方ないじゃろ。此度の一件を以て、学則をちょちょいと変えれば済む話なんじゃから。ほほっ…それにしても李儒よ、お主は良きヒトを得たのう。」

「…はい!」

 

少し涙ぐみながら李儒は答えた。彼をこれまでだまし続けてきたのに、そんな自分のためにここまでしてくれた。嘘がわかってもまだ自分と友達でいてくれた。その事実が李儒の心に深く染み渡る。

水鏡が言う「良きヒトを得た」。彼女にとってそれは広い意味を持つ。彼女は念氣でヒトの心を覗いてしまう。だから生まれてからこの方、ヒトが嫌いだった。社交性はある方なので上辺には出さなかったが、小さな嘘すら見てしまう自身の氣に心はどんどん荒んでいった。

そんな時に現れた、不思議なヒト。どんな感情を示していてもその色は真っ白で、つまりは嘘がないのだ。この色に虜になるまでそう時間はかからなかった。彼は初めて恋したヒト、荒んだ心を癒してくれたヒト。もし彼が居なければ自分はどうなっていたのだろうか。見たくもないものを見せられる自らの氣に心が圧し潰されていたかもしれない。きっと今のように笑って過ごすことなんてなかっただろう。

それなのに自分は彼に嘘をつき続けてきた。

 

「一刀…!ごめん…、ごめんなさい…!」

 

涙が止まらない。

 

「僕の方こそ、もっと気遣ってあげればよかったんだ。玲、ごめんね?」

 

そう言う彼もどうしてか涙を流している。違う、違うよ、君は悪くないんだ。そう言いたいのに出てくるのは涙だけ。そんな二人を、教職員たちは温かい目で見つめていたのだった。

そうして、今回の騒動は幕を閉じた。

 

全員が退室してから、張昭は学長室に残って小言を言いながらも手続きのために書類を片付けていた。

 

「本当に良いのですか?これでは示しがつきませぬぞ。」

「お堅いのう張昭ちゃん。」

「ならば保護者にはどう説明せればよろしいか!大事な子息女を預かる身として間違いが起これば責任問題ですぞ!」

「男女の触れ合いもそこまで過保護にすることはなかろうて。」

 

やはり張昭は納得がいかないのか猛反発しているが、水鏡の心が決まっているのを見て次第に落ち着けていった。

その日から、男女寮において異性の立ち入り禁止が解かれ、李儒は専属特権として同室が許されることとなった。この発布は若い男女にとって喜ばしいことであり、特に恋する乙女たちは歓喜した。女子寮は寮母も兼任する張昭の目が厳しいことから、女子は気になる男子に部屋へ招かれることが憧れの一つとなる。ちなみに、女子寮の「水鏡立ち入り禁止」は解かれることがなく、水鏡は人知れず涙を流していたが学生から署名運動までされたのだから諦めるほかない。

 

「これが最後の確認ですぞ。本当によろしいのか?」

「うむ、何ら問題もないと思うがのう。何か心配事でもあるか?」

 

張昭は腕を組んでムスッとした顔をする。

 

「心配事は尽きませぬが…第一に奴の母君が女子の同室者など許して納得されますか?」

 

ピシっと水鏡が固まる。どうやら彼女の存在を完全に忘れていたようだ。こんなことを知られては息子を溺愛しすぎている彼女が殴り込んでくるのは必定。血の気がサッと引くのが張昭にも伝わった。

 

「…私は知りませぬぞ。」

 

水鏡の頭にある日の光景が浮かぶ。忘れもしない授業参観の日、一刀の宿への外泊を認めるよう迫ってきて、そのまま「はい」と言うまでマウントポジションで笑顔のまま殴り続けられたあの日の惨劇。

 

「先生~、フッ!一刀を~、フッ!泊めても~、フッ!良いでしょ~、フッ!」

「はがっ?!じゃ、じゃから問題ないと…へぶっ!?言うておるブヘっ!!」

 

アレを繰り返してはならない。今度こそ確実に抹殺される。こうして自らの命を守るべく、水鏡は口止めに走るのだった。

 

そんなことを露知らず、皆への報告を終えた李儒は部屋へと帰る。察していた者たちは別段驚かなかったが、孫権は魂の抜けたような顔をしていた。突然の恋敵登場に加えて同室というアドバンテージが重くのしかかって思考が止まってしまったようだ。予想外だったのが袁紹で、怒り狂うかと思いきや理解を示し、その上硬く握手を交わしていた。きっとナニかで手を打って結託したのだろう。

 

「「「 へ~。 」」」

 

牛輔らはこんな反応。余りの興味の薄さにイラっときて針鼠にされていた。

そうこうしているうちに日は暮れ、一刀の部屋にて。日記を読まれてしまった恥ずかしさもあるが、それ以上に日記を見てもそれを受け入れてくれた彼に思いの丈をぶつけるべく意を決した李儒。お礼というのはもうアレしかない。決して自分のためではなく、あくまでもお礼だと何度も言い聞かせながら服を脱ぐ。

バスタオル一枚纏った李儒はベッドに横になってウトウトしていた一刀の横へ立った。

 

「玲?そんな恰好してると風邪ひいちゃうよ?」

 

これからしようとしていることを彼は分からないのだろう。真顔でそんなことを言う彼に愛おしさが生まれる。日記を見ても許してくれたという事は、つまりこういうのもアリという事だと思う。いやそうに違いない。

 

「その…い、良いんだよね?」

「良いって何が?」

「だから、あの…こ、子供…」

「子供?」

 

アレを読んだのだとしたら察しはつく筈なのに何故だか伝わっていない。

 

「え?」

「え?」

「…。」

「…。」

 

時が止まる。

 

「日記読んだんだよね?」

「うん…ごめんね、日記だとは思わなくて…」

 

申し訳なさそうな顔をする一刀。そんな顔にすら李儒はときめきそうになるが、今の問題はそこじゃない。日記には確かに彼への想いを書き連ねているはずだ。どれだけそういった感情に疎くても、さすがにアレを見れば分かると思う。

 

「だ、だから…僕の気持ち、わかったでしょ?」

「うん、本当はバレちゃいけなかったんだよね?」

「え?」

「え?」

「…。」

「…。」

 

また時が止まる。

 

「…日記ってどこまで見たの?」

「えっと、夏侯惇さんに腹下しを入れるって…だから夏侯惇さんあの時何度も厠に言ってたんだね!」

 

そこでようやく李儒は合点がいき、がっくりと項垂れた。つまり彼は肝心なところまで読んでおらず、実は女だったという事まで分かると、それを今回の騒動の原因とみて罰を軽くしてもらおうと走ったのだ。一緒に住んだり気持ちを許容することまでは確かに一言も言っていなかった。

 

「それより玲、そのままだと体冷えちゃうよ?ちゃんと寝間着着なきゃ。」

 

だから当然こんな反応になるだろう。しかしかと言って李儒も後には引けない。もうこの際だからハッキリさせよう。そう思って李儒は一刀を真っ直ぐ見つめた。一刀はそんな様子に「?」を浮かべながら首をかしげる。

李儒は一度大きく息を吸い込むと…

 

「す、す、す…」

「す?」

「…………くしゅんっ」

 

くしゃみをした。

 

「ああ、ほら!早く着替えて暖かくしよ?」

「え、ちょっ!」

 

そう言うと一刀は体に巻かれたバスタオルを脱がす。彼女は文字通り一糸まとわぬ姿になったが、気にすることなく脱いであった服に着替えさせていく。そんな反応を見て、李儒は恥ずかしさよりもあることが気になった。

彼はもう女性に対してある程度の意識が生まれている。それは悔しながら孫権を見る態度で分かっていた。それなのに自分の裸には何の反応も示さない。つまり一刀は…

 

馬超=幼馴染!

袁紹=お姉ちゃん!

孫権=ドキドキする…

李儒=お友達!

 

「…」

 

ででんっ

李儒=お友達!

 

「ば、馬鹿なぁ…!」

 

察するに、実は女の子だったという事実を知ってもなお李儒を性の対象として認識していないという事。

 

「一刀!僕女の子だよ!」

「うん!あ、ごめん、こういうことは男の子がしちゃいけないんだっけ?見ないようにしておくから早く着替え済ませちゃお?」

 

これはマズイ。非常にマズイ。

例えばこれが孫権であれば彼は真っ赤になって慌てふためくだろう。しかし今の一刀を見てもそんな様子は微塵もない。股間をまじまじ見るが形態変化した様子もない。それ即ち…

 

“李儒=お友達!”

 

「一刀!好きだ!!」

「うん!僕も大好きだよ~!」

 

李儒は目の前が真っ白になった。

 

「ほ、ほら一刀、おっぱいだよ~!」

 

中々に育った乳を強調しても…

 

「ふざけてないで服を着なきゃ!本当に風邪ひいちゃうよ!」

 

素で怒られた。

まだ肌寒い季節に裸同然の恰好で突っ立っていたのだから当然と言えるが、その後は見事に風邪をひき、一刀に看病されることとなった。李儒の前途多難な恋路はまだまだ先が長そうだ。

 

「なんでこうなるの~~~!…くしゅんっ」

 




今回もお付き合いくださりありがとうございます!とうとうバレちゃいました。次回はラブコメです!李儒vs孫権の戦いをどうぞお楽しみに!
それでは皆さんのご感想お待ちしております!
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