恋姫†無双/外伝 ~天の子~   作:でるもんてくえすと

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おいでませ水鏡塾

一刀が武威を出立して二日目の夕方。水鏡の街に到着した一刀は、門の外で呼び止められた。

 

「…貴方が董白さまでいらっしゃいますね?」

 

そう声をかけたのは、一刀よりもいくつか年上と思われる少女だった。すこし大人びた印象で、桃色の髪を耳の下あたりで結びメイド服を着たその少女は自分を孫乾と名乗る。どうやら到着するころを見計らってここで一刀を待っていたらしい。

二人は簡単に自己紹介を済ませると、どうやらこの少女も私塾の生徒のようだった。

 

「侍従科…?」

「はい、わたくしはここ水鏡塾にて侍従者の道を志し学んでいます。そこで、先生方からの言いつけにより董白さまをここでお待ち申し上げておりました。」

 

二人は様々な店が立ち並び、賑やかしい雑踏の中を歩く。

そこで一刀は水鏡塾についての概要を聞くこととなった。

水鏡塾は大きく分け、孫乾のように侍従者としての心構えを身に付ける侍従学科、統治者を目指す王学科、兵士としての心得を学ぶ兵学科、内政官や軍師を志す軍学科の四つに分けられている。基本的には入学時の希望を元に入学試験の結果と塾長との面談によってそれらが決められる仕組みだ。しかし、それぞれに適した必修科目もあるが、その他基礎知識を高める授業も用意されている。

 

「董白さまは確か…試験は免除として二年生に編入でしたね。二年生はなかなか癖のある方も多ございます。どうかお気を付けを。」

「そうなんですか?」

 

そこで聞かされたのは、私塾自体の歴史は浅いがこれまで王学科に割り振られたのはゴネて入学した四年生の袁紹と嫌々割り振られてしまった同じく四年生の孫策のみ。三年生は結局誰も王学科には入れず、しかし二年生は三人もの王学科が生まれたそうだ。ちなみに一年生の王学科はいないらしい。そもそも入学試験自体がかなりのハードルを有しており、その後の面接でも多くがふるい落とされる。学費等は私塾自体が水鏡の私財と各豪族の融資で行われているためかからないが、入ること自体が難関なのだ。しかし豪族や刺史たちは優秀な人材が手に入りやすくなることを考え、喜んでお金を出し、自らの子の教育としても是が非でも入学させようとする。何よりあの水鏡と繋がりができるのだから“おいしい”と考えるのだろう。そして農夫や兵士らの子も、ここを出たとなれば子の出世や幸せに直結するとこぞって入学試験を受けさせた。その甲斐あって(まだ六年生と五年生は存在しないが)生徒数は百名を超すこの時代では異例な規模の私塾といえる。

 

「王学科の生徒は侍従学科の勉強も兼ねて従者を一人付けることができます。

…そういえば、董白さまはどちらの学科をご希望でしたか?よろしければお聞かせ願いたいです。」

 

両親に見せられた私塾の書類には、王学科の従者制度のほかにも、たとえば軍学科であれば町の外に小さくはあるが開墾地が与えられたり弁論大会の出場資格が与えられる。兵学科では武術大会の出場資格のほか、洗濯や掃除、食事など侍従学科の一時的な補助が受けられたりする。

一刀は少し考え、答えた。

 

「ん~…僕は…やっぱり兵学科かな。」

 

そこで孫乾は「ふむ…」と顎に指をあてて少し考え込んだ。そのまま黙って会話がないまま二人は並んで歩き続ける。

 

「おっと、すみません少し思考に耽っておりました。さあ、着きましたよ。こちらが水鏡塾です。」

 

孫乾が立ち止まり左手で指し示す。そこには水鏡塾と彫られた柱、そしてそれが支える立派なたたずまいの門が目に飛び込んできた。町のど真ん中に位置し、その奥には二階建てでまるで王宮のような大きな建物。それをしっかりとした作りの壁がぐるりと囲う。一刀はつい圧倒されてしまった。

ぽかんと立ち止まっていると、「さあ、こちらへ。」と孫乾に声をかけられ小走りでついていく。正方形の広い庭を抜け建物に入ると、その一番奥にある『塾長室』と書かれた一室に案内された。

扉の前で立ち止まり、コンコンと戸を叩く孫乾。

 

「失礼いたします塾長。」

 

室内からはガシャンと何かが落ちる音とともに「ぬぉ?!ま、まて!ちょっとだけ待つんじゃ!」という慌てた様子の老人の声。それから物の落ちる音など大きな物音が続く。

 

「それでは失礼いたします。」

「ま、まままま待て!待つんじゃ!あわわわわ…下着…下着はどこじゃ…!」

 

言葉を無視して孫乾は扉を開ける。すると中には本のようなものを抱えた下半身裸の老人がこちらを向いて固まっていた。

 

「…おや、塾長。お履き物はどうされました?」

「違う!こ、これは違うぞ!え~、あ~…そ、そう!股間の換気じゃ!!」

「そうですか。それでは失礼いたします。」

 

そう言って扉を閉めると、「いったい何じゃったの?!」という涙声が響く。それからしばらく塾舎の中を案内され、また塾長室へ戻ってくると今度は声をかけずに扉を開けた。

そこには雰囲気たっぷりに机へひじをのせ、凛とした様子の老人がいた。

 

「賢者時間中失礼します。董白さまをお連れしました。」

「うむ、ご苦労。…って違うからね!さっきのアレは違うからね?!」

「それでは私は失礼いたします。…ぺっ」

「唾吐いた?!唾吐いてったよねあの子!そろそろ泣いちゃうぞい儂!!」

 

それからぶつぶつと愚痴をこぼす老人だったが、しばらくして「ごほんっ」とわざとらしく咳払いをした。すると一転真面目な顔で一刀を見つめ、

 

「…そいじゃ、ちとバタバタしたが面接試験を始めようかの。」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

そして、彼の人生を大きく左右するであろう試験が始まるのだった。




今回もお付き合いいただきありがとうございます!ついに私塾へやってまいりましたね…さて一刀君はどんな道を歩むのか。そのうちキャラの学年表のようなものもアップしようかなと考えています。それでは次回もお楽しみに!
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