鎮守府に帰ってきたのか。
そう錯覚するほど、ショートランド泊地はかつての鎮守府の雰囲気に酷似していた。
泊地に到着した直後に曙は入渠施設に運ばれ、第七駆逐隊はそこまで付き添った。そこまで見た設備から施設の配置までが、鎮守府そのものといってよい。
入渠施設は中央広場と思える広場の近くに建てられ、食堂と一緒になっていた。そこもまた鎮守府と同じだ。
夜も明け、艦娘達も何人か活動しており、漣達を敬礼で迎えてくれた。
曙を入渠させる。よほど疲れていたのか、何も言わずにそのまま眠ってしまった。残りの三人にも入渠が進められたが拒否した。
曙には潮が付き添い、漣と朧は泊地を纏める叢雲の元へ向かった。
案内役としてやってきた白雪に先導され、二人は泊地を見ながら進んでいく。
艦娘たちは統率された動きをしており、練度の高さが垣間見える。
何より、生き生きとしていた。
艦憲兵がいないというのもあるが、やはり指揮を執る叢雲の手腕がいいのだろう。
よく見ると施設の奥には畑らしきものが見えた。前に聞いたが畑だけでなく家畜なども飼育しているらしい。
数年は籠城できるようにすることが目標らしく、物資を貯蔵しているとかつて初春から聞いていた。
そこまでこれから始まる戦いを想定しているのだ。
やがて司令部のある施設にたどり着いた。外観から内装まで鎮守府の物と寸分違いなく、二人は苦笑する。
玄関にはここに所属している艦娘達の名前が木札で掲げられていた。
鎮守府所属である空母の名前はないものの、駆逐艦から戦艦まで様々な艦種が揃っていた。その一番上に叢雲の名前がある。それはこの小さな鎮守府といえるショートランド泊地を彼女が纏めている証でもあった。
「こう見えて序列はほぼ無いんですよ? 皆、平等な同志なんです」
同志、という言葉を聞いて漣の顔が変わった。
「もしかして、この泊地、全員が?」
白雪は静かに頷き、漣は低い唸り声を上げた。
それから、司令室に入った。
叢雲と三川艦隊がその場で待っていた。
お互いに敬礼し、手を握った。
旧知の仲だったが、こうして直に会うのは本当に久しぶりだった。
「第17泊地では大変だったわね、漣」
「いやあ、おかげさまで。ですがこの騒ぎで膿を多少、絞り出せましたぞ」
「艦憲兵ね。まあ暫くはおとなしくしてるでしょうが」
「時間の問題でしょうな」
「漣、叢雲とは、いつから? それと同志って?」
朧が尋ねた。
「あんた、まさか皆に言ってなかったの?」
「てへぺろ♪」
「あんたねえ・・・・・・」
叢雲が呆れたように肩をすくめた。
「朧ちゃん。隠していたわけじゃ、ないんだよ。いずれ時が来たら言うつもりだった。こんなに早いとは思わなかったけど」
「いつからこんなことに関わってたの?」
「それは私から説明した方が良さそうね」
そういうと叢雲は二人を備え付けていあるソファーに促した。
腰を降ろすと白雪が紅茶の入ったカップを二つ持ってくる。
「少し長くなるわよ」
そう言って叢雲も腰を降ろした。
白雪が紅茶をもう一杯持ってくる。
「そもそも発端はあの司令官が原因ね・・・・・・」
紅茶を啜る音が執務室に響いた。
どこか懐かしいように叢雲は、これまでの経緯を語り始めた。