川内達が水上偵察機を飛ばし、周囲を散策する。
深海棲艦らしき機影は見えなかった。
元々ここ近海に深海棲艦はほとんど出没することはない。
出てきても駆逐イ級やロ級が単体から数体ほどである。それらは「はぐれ棲艦」と呼ばれていた。
はぐれ棲艦は新兵の戦闘にはうってつけなので、よく哨戒任務で狩られているが、今日はその影も見えなかった。
何事もなく、合流地点にたどり着いた。
少し遅れてショートランドからの艦隊が現る。
六人の編成で輪形陣のような布陣であるが、中央には小型船舶があった。
どうやらあの中に第七駆逐隊がいるらしい。
ショートランドから来た艦隊は三川艦隊と呼ばれる艦娘たちで、吹雪も聞いたことがあった。
大規模作戦では活躍した部隊だ。
だからこそこの任務を任されたのだろう。
「艤装も含めて拘束しています。輸送に問題はないかと思います」
艦隊を率いてきた鳥海が言った。
「了解。ここまでご苦労様でした」
神通が敬礼し、連行任務を引き継いだ。
吹雪達は船の周りをぐるりと囲む。夕立が中を覗きこもうとしたがよく見えないようだった。
「お互い、嫌な任務ね」
「はい。ですが、任務は任務ですので」
夕張の言葉に鳥海は表情を変えずに答えた。
元々、生真面目な性格の少女だった。どこか折り合いを付けているのかもしれない。
横目で他の三川艦隊の様子も窺った。
皆、明らかに不満そうな表情をしている。天龍などは明らかに苛立ちを隠そうとしなかった。
「それでは、ご武運を」
簡潔に言うと鳥海達、三川艦隊はショートランドに戻っていった。
「さてと、いこうか」
夕張がそう言って動き出した。
第二水雷戦隊が周囲を警戒・先行し、吹雪達第三水雷戦隊は第七駆逐隊の周りを固める。
ここからが正念場だ。
吹雪はそう自分を鼓舞し、辺りを警戒しながら進んでいった。
時折、暗い船舶から何か囁くような音が聞こえてくる。
第七駆逐隊は古参だと、吹雪は聞いていた。
もしこのような状況でなかったら、兄の話を聞いてみたかった。
吹雪はそんな考えを頭からもみ消した。
集中しなくては。
水平線の向こうに、鎮守府の影が見え始めていた。
ショートランドに帰還するべく進んでいた三川艦隊は、方向を緩やかに変えた。
大きく曲線を描きながら、段々と鎮守府へ向かう航路へと変えていった。
鎮守府近海付近まで差し掛かった時、哨戒している赤城がそれを発見した。
「・・・・・・・・・・・・」
赤城はそれを黙殺した。
ちょうど、第七駆逐隊の護送部隊が鎮守府にたどり着いたと、報告があった。
弓を引き、艦載機を飛ばす。
はじまった。いや、ずっと前から始まっていたのだ。