艦隊これくしょん 鎮守府内乱編   作:あとん

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広がる火の手

 全海域の地図が広げられていた。

 深海棲艦が出現して以降、世界中の海軍が己の制海権を守るため戦い、散っていった。

 その後、艦娘が誕生し彼女達を中心とした部隊を編成し、各海域の奪還を始めたのが日本であった。海上自衛隊が日本海軍となったのもその頃だった。

 大部分の深海棲艦は葬り去ったが、それでも奴ら少数ながら湧いてきた。

 それらを駆逐するために艦娘たちを各海域に置いたのだが、泊地だった。今では本土や鎮守府に居場所のない艦娘達の受け皿になっているとも言えるのだが。

 地図には全ての泊地が記載されていた。それを難しい顔で睨むのは長門で、その周りは大淀と各部隊の旗艦がいた。

 軍議の最中だった。

 地図に一つ、赤いピンが刺してある。反乱を起こしたショートランドだった。その近くに青いピンが二本。パラオ泊地とトラック泊地である。

 

「現在、叢雲さん達反乱軍はこの二つの泊地に帰順を求めています。トラックは拒否。パラオは無視しているようです」

 

 大淀がそれぞれのピンを指して、戦況の説明をしていた。

 今までもこういった軍議は何度もあったが、相手は深海棲艦であった。しかし今回は同じ艦娘が相手で、しかもその多くはかつての戦友達である。室内には重苦しい空気が流れており、大淀の澄んだ声と紙にペンを走らせる音だけが聞こえていた。

 

「トラックとショートランドが既に戦闘を開始しています。五十鈴さんはパラオと我々本部に救援を求めてきています」

 

「トラックは堅牢なれど、数ではショートランドが上だ。航空戦力も空母のいる叢雲達が有利だろう」

 

 トラックは五十鈴が姉妹艦達と共に守っていた。

 駐屯しているのは彼女達、軽巡の部下の駆逐達だけである。一方、ショートランドには元々、龍驤と隼鷹がいた。そこに赤城と鳳翔が加わり、さらには翔鶴が漣達の部下達を連れて合流したという情報もある。

 苦戦は必須であった。

 

「何故、初春さんは動かないのですか?」

 

 妙高が手を挙げた。

 先日の事があるからか、態度はどこか刺々しかった。

 

「この反乱による混乱を防ぐためと言っていますが・・・・・・」

 

「初春は叢雲とは竹馬の友だ。信用は出来んな」

 

 大淀の言葉を遮って長門が言った。

 彼女は第一遊撃部隊の事を信用していない。

 叢雲がショートランドで反乱を起こした時、真っ先に気にしたのはパラオの初春だった。

 彼女達の仲は今更言うまでも無い。

 叢雲が反旗を翻したのなら初春もそれに加わるだろうと長門は思っていた。

 だからこそ初春が何も動いていない現状が、長門にとっては気味が悪いことであった。

 

「もし初春が反乱に加われば、地理的にトラックは挟み撃ちになる。そうなれば流石の五十鈴でも守り切るのは難しいだろう。我々はすぐに編隊を組み、トラックへ救援に向かう」

 

 最悪の場合、叢雲と初春の二人と戦うことになる。だが、彼女達を放置すれば鎮守府の権威も落ちていく。そうなれば各地で反乱が起こる可能性だってありえるのだ。それだけは何としても阻止しなければいけない。

 迅速に反乱を終結させる。それが長門の出した答えだった。

 

「編成は終わっている。まずは身軽な水雷戦隊から出発し、その後本体を送る。遊撃部隊はその援護だ」

 

 一気に片をつける気だろう。

 軍議に参加していた金剛はそう判断した。

 反乱軍は練度は高いが戦艦がいない。火力的にはこちらが有利にも思えた。

 

「すぐに出発する。各自、準備を整えろ」

 

 それで軍議は終わった。

 艦娘たちは足早に会議室を出て行く。

 残ったのは長門と大淀だった。

 鎮守府空にするわけにはいかないので、何人かは残る手筈になっていた。

 

「・・・・・・五十鈴が持ってくれればいいが・・・・・・」

 

 長門は人知れず呟いた。

 

 緊急の電報が入ったのはそれから暫くして、すぐだった。

 第一陣は既に準備を済ませ、抜錨しようとしている中での出来事であった。

 リンガ泊地で反乱が発生したのである。

 ショートランドとは反対側の場所であった。

 叢雲の反乱に呼応するように、反乱の火を燃え上がり始めたのだ。

 嵐の中にいる。

 長門は拳を握りしめた。

 どうやったらこの鎮守府を守り切れるのか。

 長門は暗い執務室で一人、瞑目するのであった。

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