〜魔法の国立魔法少女育成学園〜   作:天ヶ原カコ

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プロローグ 入学式の様子

 ここは、魔法の国立魔法少女育成学園……

 今日は新入生を迎える入学式の日だ。全員が静かに座っていて、新しい仲間がこの体育館に入場してくるのを待っている。仲良くなろうとする者、強そうな奴がどれくらいいるのか楽しみな者、ただ自分の役目を果たそうとしている者……在学生たちの様々な思いが交錯する中、司会進行役の魔法少女が口を開いた。

「長らくお待たせいたしました。今から新入生が入場します。皆様、拍手でお迎え下さい」

 在園生、教師、来賓、この体育館にいる全ての魔法使い・魔法少女が立ち上がって一斉に拍手を始めた。魔法少女の高い身体能力から繰り出される拍手はとても大きく、1km先まで届きそうなくらいだ。

 緊張の面持ちの魔法少女、周りをキョロキョロと見渡しながら歩く魔法少女、眠そうな目をこすり欠伸をしている魔法少女……様子は様々だがこれから自分達の仲間になる者達だ、と在学生達は惜しみなく拍手を送った。

 全員が着席し、司会が入学式の開始を告げる。式典ということでいつも騒ぎを起こすような魔法少女もなりを潜め、厳かな雰囲気が漂う。初めは学園長の話のようだ。学園長と思しき魔法少女がステージに登り、話を始める。

 

「副学園長のレーテだ。学園長は意思疎通があまり出来ない魔法少女なので、私が代わりにここに立つことになった。まずは学園長代理として学園長からの祝いの言葉を伝えさせてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『クビヲハネヨ

  学園長 グリムハート』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……と言うわけでここからは私からの祝いの言葉を話させていただく。新入生の皆、入学おめでとう。学園生活は戸惑うことばかりだろうが、みんなで協力して頑張ってほしい。分からないことがあれば先輩や先生に聞くといい。……あまり長く話すなと言われているので私からはこれくらいにしておく。この先色々と話していけばいいだけだからな。最後になるが、みんな仲良く生活してほしい。ここにいる者達は生まれも育ちもみんな違う。意見が合わなくなることも多々あるだろう。だからこそ、沢山交流して仲良くなってほしいと思う。これで私からの話は終わりにさせていただく」

 

「次は理事長のお話です」

 

 レーテと名乗った魔法少女の祝いの言葉が終わり、ステージから降りて着席した後に司会がそう言った。理事長という位の高そうなイメージとはかけ離れた、可愛らしい、子供っぽいといった形容詞が似合う魔法少女が立ち上がってステージへ登る。

 

「私は理事長のプク・プックです!新しく入ってきたみんなにお祝いの言葉を言いにきました!」

 

 まるで天使のような可愛らしい声でプク・プックと名乗る魔法少女は話を続ける。

 

「えーっと、プクたち三賢人は、魔法少女と魔法使いが強くて優しい立派な人になって欲しいからこの学園を作りました!だから、みんなにはいろんな授業をやってもらうけど、みんな一生懸命頑張ってほしいです!それと、プクはこの学園のみんなとお友達になりたいと思ってます!理事長室にいつもいると思うから、気軽に遊びにきてほしいの!お菓子とジュースを用意して待ってるからね!えーっとあとは……あっ、先生とか先輩とかはみんな優しいけど、もしいじめられたりしたらプクに言ってね!助けてあげるから!じゃあ、これでプクのお話は終わります!」

 

 誰もが微笑ましく見守っていた祝いの言葉が終わり、プク・プックはトテトテと自分の席に戻っていった。隣に立っている魔法少女と「ねえねえ、うまく出来た?」「はい、完璧でしたよ」なんて事を小声で話している。

 それから来賓の挨拶と祝電、祝詞の紹介があり、式はつつがなく進んでいった。

 

「次は、生徒会長からの挨拶です。プフレ会長、お願いします」

 

 車椅子の魔法少女がステージに近づいていき、取り巻きの魔法少女達が車椅子ごとステージに上げる。マイクの前に立った(車椅子に座ったままだが)プフレと呼ばれた魔法少女は祝いの言葉を述べ始めた。

 

「私は生徒会長のプフレだ。まずは入学おめでとう。私たちの新しい仲間となってくれる皆を歓迎する。さて、ここから私からこの学園で上手く生活していくためのアドバイスをしようと思う。」

 

 生徒会長からのアドバイスということで新入生たちはプフレに注目する。プフレは一瞬ステージの向かい側の壁に目を向け、すぐに新入生たちに目線を戻して話し始める。

 

「それは、自分の気持ちに素直になることだ。魔法少女というのは自らを偽りながら続けることは出来ない。必ず精神的に病んで魔法少女を辞めるか戦闘で命を落とす。自分の心に逆らわず、行動に強い気持ちを乗せることで魔法少女は真価を発揮する。誰かが言っていた、『魔法少女は思いが全て』という言葉は真理を突いていると私は思う。あぁ、一応言っておくが素直になったからといって全てが自分の思い通りになるとは思わないことだ。君が魔法少女であるように周りの人も魔法少女だからな。強いものが勝ち弱いものが負ける、この世界も人間と同じく弱肉強食だ。だから私たち生徒会や先生が存在する。悩みのある者、不満がある者は先生や生徒会室に相談に来ると良い。私はいつでも待っているぞ。……ではここらで私の話を終わろうと思う。新入生の皆、これから一緒に楽しくやっていこうじゃないか」

 

 そう締めくくられたプフレ会長の挨拶に新入生以外の魔法少女達も聴き入っていた。反対に魔法使いの生徒たちは蔑ろにされたようで不機嫌な顔をしている者もいたが、大半がなるほど、と話を噛み締めていたようだ。……誰もプフレがもう一度向かいの壁に目を向けたことには気づかなかった。

 

「次は、新入生代表挨拶です。新入生代表、スノーホワイトさんお願いします」

 

「は、はいっ」

 

 少し緊張した様子で応えた白い魔法少女はゆっくりとした足取り……ではなく少し急ぎ足でステージに向かった。段差も何もないところでつまづいて転びそうになっている。周りから暖かく見守られながら、ステージに辿り着き、スノーホワイトはたどたどしい口調で話し始めた。

 

「ほ、本日は、私たち新入生のためにたくさんの方が、ご臨席して下さりましたっ。誠にありがとうございますっ」

 

 とても緊張しているのか、声が震えていたり話すスピードが早くなっていたりしているが、堂々と話す姿は在校生の魔法少女や魔法使いの先生からとても好意的に見られているようだ。

 

「えーっ、私たちはまだ魔法少女になりたてだったり経験が浅かったりと、とても未熟だと思います。私も、よく失敗して周りに迷惑をかけることが良くあります。」

 

スノーホワイトはそこまで言って、同じ新入生の魔法少女の1人を見て微笑んだ。

 

「ですが、私は夢見ています。私が立派な魔法少女になってたくさんの人を助けている姿を。私は人を助けるために魔法少女になりました。だから、例え自分がどうなっても困っている人を私は助けたいです!」

 

 真摯に語られる魔法少女への想い、それはこの場の全ての人に届いた。例えそれが自分の身を顧みない自己犠牲だったとしても、強い想いは人の心を動かすことができる。

 

 

「何があっても困っている人を助ける、その力をつけるために私はこの学園に来ました。理想の私には、今の私は程遠いけど、その理想目指してここで努力していきたいです。新入生の皆さん、在校生の皆さん、先生方、これからよろしくお願いします!」

 

 勢いよく下げられた頭に、賞賛の拍手の嵐が巻き起こる。なかにはスタンディングオベーションしているものすらいた。それが20秒ほど続き、少しずつ拍手が鳴り止み、スノーホワイトは締めの言葉を言い席へと戻っていく。褒められ慣れていないのか、とても恐縮したような表情で体を小さくして戻っていった。だが、その瞳の奥には確かなやり遂げた、やってやったという想いが浮かんでいた。

 

 その後、校歌斉唱、閉会の言葉と続き、司会が入学式の終わりを告げて入学式が終わった。新入生たちは入学式前に待機していた教室へと前を行く先生の案内で戻っていく。その退場が完全に終わった後に在校生たちは動き始める。自分の委員会の集まりへ行ったり、普通に教室に帰ったり、長時間座っていたストレスを発散するように外に出て戦い始めたり……その中で生徒会長プフレは仕事を全て副会長や書記に任せて生徒会室の方に戻って行った。

 

 

 ☆シャドウゲール

 お嬢は本当に何を考えているのだろう。シャドウゲールは常にそんなことを思っていたが今日は輪をかけておかしかった。何故入学式を体育館の後ろから撮っているビデオカメラを改造しなければならなかったのだろう。内容は撮った映像をある場所に転送するという簡単なものだったが、その転送先をシャドウゲールは知らない。まぁいつものように何かよからぬことを考えてるんだろうなと半ば諦め、上の空で入学式を自分の席から眺めていた。

 

(お嬢は本当に唐突にこういうことをするからなぁ……)

 

 寝不足で鈍くなった頭でそんなことを思う。簡単な改造とはいえ3時間程かかるもので、睡眠時間を削ってやらなければいけなかった。

 

(そもそもそれを何で入学式当日の深夜1時に言うかなぁ……)

 

 今思い出しても腹が立つ、そんな言葉を心の中で呟きながらステージを見るとプフレの演説が始まっていた。

 

(お嬢は何を言ってるんだ?素直で言うことをよく聞く魔法少女なんてお嬢とは正反対じゃないか……思ってもないことをそれらしく言うのは得意なんだから……)

 

 シャドウゲールはプフレがどのような魔法少女なのかよく知っている。もちろん、今プフレが言っているような魔法少女像には全くあてはまらないことも。

 

 

(けど本当に何で私にあんな改造をさせたんだろ……?まぁ放課後にでも聞いてみるか……)

 

 やはり上の空な感じで入学式が終わるのを待っていたシャドウゲールは、校歌斉唱で全員起立するときにタイミングが遅れ、恥ずかしさで顔を赤くしながら立ち上がった。周りでクスクスと笑い声が起きて、シャドウゲールはいっそう恥ずかしくなった。

 

 

 ☆7753

「メイはお腹が減った。早く家に帰りたい」

「私にそんなこと言われても……後片付けが終わらないと帰れないですよ」

「後片付けが終わったら帰れる?」

「その後教室に戻ってホームルームをやってそれが終わったら帰れると思います」

「そんなに待てない。メイはお腹が減った」

「はぁ……ちょっと待ってください」

 

7753はテプセケメイと雑務をこなしていた。7753は一応生徒会の役員なのだが、記録・評価係という末端も末端の仕事を任されているので、人手が足りていない後片付けの方に回されたのだ。

このままではテプセケメイが辛抱できずに何をしでかすか分からない、と思い7753は懐からソーダ味の飴を取り出し、テプセケメイに手渡した。

 

「これでも舐めておいてください……って包み付けたまま食べちゃダメですよ!」

「……これは美味しくない。他のはないの?」

「とりあえず吐き出してください。……よいしょっと、はい、ちょっと口を開けてもらえますか?」

「ん」

 

テプセケメイの口に包みから取り出した飴玉を入れる。最初は驚いたような顔をしていたが、時間が経つにつれて表情がほころんでいき、とても満足そうに微笑んでいる。

 

「……これ美味しい。もっと欲しい」

「その一個しか今は持ってません。帰ったらストックがあるので今はそれで我慢してください」

「……仕方ない。メイは我慢する」

 

7753はほっと息をついた。テプセケメイは素直で良い子なのだがいかんせん元が動物の魔法少女である。普通の魔法少女よりも三大欲求に正直に生きているように感じる。

 

(はぁ……下っ端は辛いなぁ……生徒会にいきなり入れられたり、メイさんのお目付役を押し付けられたり、こんな風にこき使われたり……)

 

7753の魔法は「ゴーグルで見た相手の詳しい情報が分かる」というもの。生徒会に自分の意思に関係なく加入させられたのはこの魔法のせいだと考えている。記録・評価係という役職は魔法少女と魔法使いの魔法や能力をまとめる係である。確かに自分の魔法がとても役に立つ役ではあるが、7753本人の意思としては厄介ごとにあまり関わらないように生活していきたかったのだ。この係はその性質上たくさんの魔法少女と話す機会が多い。魔法少女というのは傲慢で自分勝手な生き物であり、交流するだけでも疲れるのだ。

 

(まぁプフレ会長に変わってからはゴーグルを通して見るだけで勝手に記録と評価が行われてそのデータが転送されるようになったから楽で良いけど……)

 

プフレが生徒会長になった時に、7753はゴーグルを少しの期間預からせて欲しいと言われた。生徒会長に逆らっても良いことは起きない、と思い快く承諾したら、その1週間後にゴーグルは帰ってきた。何をどう改造したらこうなるのかは分からないが、仕事が楽になり前よりも自分の時間が作れるようになったのでプフレに対して不信感どころか感謝すら覚えていた。

 

「……メイも何か手伝おうか?」

「……えっ?メイさんがそんなこと言うなんて珍しいですね」

「メイは養ってもらってる立場。家主を助けなきゃいけない」

「養うなんて……そんな言葉どこで覚えたんです?」

「テレビでやってた」

 

7753はふっと苦笑した。この奇妙な同居人は時々こうやって予想外のことをしてくれる。テプセケメイの優しさに甘え、自分は少し休憩しようと伸びをしていたら、テプセケメイが飾ってあった花瓶を魔法で宙に浮かせていたので、慌てて止めにかかる。間一髪花瓶はキャッチすることが出来たが、そんな7753を見るテプセケメイはキョトンとした顔で「……新しい体操?」と言っていた。

これじゃあ先が思いやられるなぁ、と思いながら花瓶を片付ける7753は、これから起こる未来のアクシデントを考え、はぁとため息をついた。

 

 

☆プフレ

「……ふむ、中々条件に見合う者は見つからないものだね……」

 

プフレは入学式の様子をビデオカメラで撮影した映像をチェックしている。生徒会長の仕事というわけでもないのに、その仕事よりも真剣に画面に見入っている。映像には、新入生の魔法少女とその周りに文字や記号などが映してあるものだった。もちろん、それらの奇妙な文字列たちは、実際に入学式会場にあったものではない。

 

「それにしても7753には感謝してもしきれないな……一人一人私が見て適性を判断するのではこんなに楽では無かった」

 

シャドウゲールが改造したこのビデオカメラは、7753のゴーグルを通すようにしてある。詳しいことは分からないが、映した映像を7753のゴーグルで見た時と同じものにしている。そもそも改造を行ったシャドウゲール自体も詳しい改造方法は分かっていないだろう。

 

「こいつは……?いや、駄目だ、知性は悪くないが向上心に欠ける」

 

こんなことまでして何を探しているのか、それは、プフレの後継者を探しているのである。

 

(生徒会長になったは良いのだが、忙しすぎて本来しようと思っていたことが出来ない。だから代わりをやってくれそうな者が必要だ)

 

そんな自己中心的な思いによる行為は、普通なら見咎められるものだ。しかし、この生徒会室の奥に増設させた会長室に来る者は誰一人としていない。そのために生徒会メンバーを後片付けの仕事に当てて帰ってきたのだから。

 

「……ふむ、この子は中々良いかもしれないな。知性と向上心が平均以上ある。何より野心家なのが良い」

 

目当ての人材を見つけたのか、ニヤリと微笑んで心のメモ帳にその魔法少女の名前を刻み込む。

 

「今日は火曜日か……ならば明日にでも通達して明後日から仕事を仕込んでいくとするか……」

 

生徒会長でありこの学園をあらゆる手段を使って変革しようとしている革命家プフレは、自分の為だけにその魔法少女をこき使うと決めた。そんなことを全く知らない魔法少女ーーウェディンは、これからの学園生活に胸を躍らせるのだった。




まほいく学パロが探しても存在していなかったため小説を書いたこともないのに書き始めたアホは私です
いつものグリムハートと振り回されてるのにそんな感じがしないレーテ様
プク様はいつも通り
悪巧みするプフレが書きたかっただけです……
スノーさんは魔法少女狩りする前の無垢な状態ですね……私はどちらも好きです
お嬢は護を困らせるためだけに前日の夜まで何も言っていません
メイ77はゴーグルを使いたいがために生やしました 正直1番書きやすかった……
ウェディンさんマジ不憫


こんな感じでクッソ拙い上に投稿頻度もかなり少ないと思われます……そんな拙作でも良いなら読んでいってやって下さい 作者がとても喜びます

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