たとえ咲かない花だとしても   作:北間 ユウリ

1 / 9
 
 おそらく初めまして、北間悠莉というものです。
 最近嵌まりましたドールズフロントラインの二次創作を拙もしてみむとて、書いてみました。
 WA2000ちゃんがあまりツンデレしてませぬ。ご容赦くだされ。
 

※作中で、WA2000をワルサーと呼称しています。



File.1

「ワルサーは強いね」

 

 ある日の昼過ぎ、作戦報告書を整理している最中に、指揮官はそう呟いた。

 急に何を言い出すんだと顔を上げれば、彼女は視線を報告書に落としたまま、どこか悲しげな表情を浮かべていた。

 

 私達の指揮官は年若い少女だ。聞いた話ではまだ成年も迎えていないらしい。

 昨今の情勢で、軍事関連の仕事に就く人間は少なくない。女性の兵士というのもそれなりに居ると聞く。

 しかし、グリフィンの女性指揮官はかなり珍しい。選抜試験の突破率の低さもあるが、大抵はカリーナのように補佐役に回ることが多いからだ。

 

 過去に一度、彼女がどうして指揮官になったのか聞いたことがある。彼女は人間の中ではかなり見た目が良いから、お金を稼ぐためなら他の仕事でも良かったはずだ。

 私の質問を受けた指揮官は、機械になった左腕を抱いて、寂しそうに笑って言った。

 

「復讐"だった"よ」

 

 彼女の左腕は、鉄血の襲撃で家族と共に失われたという。その時に指揮官になることを決意したらしい。

 その話を聞いて、なるほど、と納得した部分もあった。私は指揮官が着任した頃に配属された古参の人形で、初期の彼女の指揮は、徹底的に鉄血の人形を殲滅するようなものだったことを覚えている。

 しかし、違和感を覚える部分もあった。それは、過去形だったことだ。ある時期から、彼女はそのような指揮をしなくなった。任務達成を最優先とし、交戦を最小限に留めるようになった。それと、何か関係があるのだろうか。

 今は違うのかと聞こうとして、やめた。彼女の笑った顔が、今にも泣き出しそうに見えたから。

 

「ワルサーは、強いね」

 

 もう一度、彼女は呟いた。

 指揮官の言う「強い」が戦闘面の事ではないのは分かっていたが、だからといって何と言えばいいのか分からず、

 

「別に、ただ普通に戦っているだけよ」

 

 とだけ答えた。貴女の指揮が良いから私が実力を発揮できるとは、恥ずかしくて言えなかった。

 ただ、やはり慰めにはならなかったようで、

 

「やっぱり、強いね」

 

 と、彼女は弱々しく笑って言うのだった。その顔が痛々しくて、私は再び作戦報告書に視線を落とした。

 

 羨ましいな、という言葉は、きっと空耳だ。

 

 私は強いわけではない。指揮官の指揮が、命令があるから、照準を合わせられる。引き金を引ける。命を奪える。

 

 それは、裏を返せば、私は指揮官が居なければ照準が合わせられない。引き金が引けない。命を終わらせる覚悟が出来ない。役立たずのガラクタでしかないということ。

 

 そんな私に、指揮官に依存する事で目を逸らす私に、羨むモノなど一つもないから。

 

 だから、きっと間違いなのだ。

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございました。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。