今回は、WA2000以外のキャラが出てきます。あと、期間が空いたので少し書き方変わってるかもです。
その光景は、きっと芸術的な美しさを持っているのだろう。
月光は、ある種の神秘性を照らすモノに与える。それは、二人の少女であっても例外ではない。
涙を流す少女と、それを微笑みと共に受け入れる少女。
まるで絵画の一場面のよう。見目麗しい少女達だからこそ、その光景は見るものを惹き付ける美しさを持つ。
だが、忘れてはいけない。月は狂気を象徴するものでもあることを。月の女神「Luna」を語源とする単語「lunatic」「lunacy」が狂気を意味するものであることを。
ああ、だからだろうか。間違いなく美しいと言えるはずなのに、どこか歪んでいて、狂っているように見えるのは。
それなのに、いや、それ故に美しくて、目を奪われてしまうのは。
いつまでも見ていたい。そう思ってしまうのを抑え、私は二人に歩み寄った。
「指揮官、ご無事で何よりです」
「……ああ、ST AR15。そっちも、無事で良かった」
名残惜しそうにWA2000から手を放し、指揮官は私に向き直った。その顔は先程までのものではなく、いつもの指揮官の顔。
そのことを少しだけ残念に思い、それを顔に出さないように努め、与えられた命令を最後まで遂行する。
「報告します。緊急時につき、AR小隊及び第二小隊長特権をもってUMP45及びUMP9に司令部付近での潜伏を命じました。また、短距離秘匿通信にてWA2000にFive-seveNを囮とした敵狙撃手の狙撃作戦を提案。両者の受諾後に当作戦を決行。敵狙撃手の撃破を以て作戦成功と判断しました。以上です」
「そう、ありがとう。お疲れ様」
そう言って、指揮官は微笑んだ。
ただ、それは形だけの笑顔で、WA2000へと向けるものとは違う。そこに、命令を遵守した者への労いの色は無い。
彼女の目に私達は写っていない。彼女の世界にはWA2000しか居ない。
「……指揮官、命令を」
それでも、私達は彼女に命令を求める。彼女は指揮官で、私達は彼女の人形だから。
たとえそれが、私達の為ではなく、たった一人の為の指揮だったとしても。
「……私達に、命令をください」
それが、私達の存在意義だから。
「あっ、AR15から連絡だ」
そう言って、9は通信機に耳を傾ける。彼女が連絡を聞いている間、私は敵が近付かないか少しだけ身を起こして警戒する。
しかし、居ないものを警戒しても意味はなく、9の通信が終わるまで敵は現れなかった。
「9、内容は?」
「指揮官からの伝言。私達はこのまま待機。夜明けと共に司令部奪還作戦開始だって」
「そう」
予想通り、とは言わない。私はそれを知らないはずだから。
だから、別の話をする。
「それにしても、面白い状況よね」
「えー、このまま夜明けまで待機だよ? 私はたいくつだなー」
「私達の現状じゃないわよ」
9は頬を膨らませることで不満を表現した。一応潜伏中という意識があるのか、手足をジタバタと動かしたりはしない。
そんな妹の様子に苦笑しつつ、言葉を続ける。
「グリフィンから見れば、司令部が占領され、指揮官はMIA。でも、捜索不可能な場所ではなく、残留戦力にはAR小隊の一員がいるため、すぐに切り捨てるわけにもいかない」
「ただ、夜の捜索は危険を伴う。作戦が終了した地域とはいえ、敵の残党がいる可能性もあるし、それに捜索対象がどこに居るのか分からない」
「けど、もし生きていて、側に人形が居るなら、一晩なら何とかできる。そう考えさせられるほどの実績があの指揮官にはあるし、信頼もある」
それに、現地には404小隊の二人がいるしね。
冗談めかしてそう言えば、9は頬に溜めていた空気を吐き、声を殺して笑った。それにつられて私も笑う。
そう、笑うしかない。だって、本当に出来すぎている。
AR15の一連の行動は、
『もしも』を常に考え、その対策を考えておくのは指揮を執る者としては当たり前の事だ。ただ、普通は広く浅く考えるもので、状況を限定し、その上敵の行動まで予言するようなものではない。敵の行動は予想は出来ても不確定なものであるから、対策に組み込むことはまずしない。
それでも、AR15は指揮官の命令の通りに指示を出し、私達はそれに従った。人形である以上、指揮官の命令に逆らうのは得策ではないから。
だが、私の最悪の予想に反して、状況は指揮官の予言と全く同じに進んだ。司令部を占領した敵の奇襲部隊は2体のAR型を残して指揮官を追っていったし、狙撃手は2発撃ってから沈黙した。
全てがすべて、指揮官の言った通りだ。
私の知る指揮官の指揮は確実性を重視する堅実なもので、失敗はなく、人形への損害もない、お手本のような指揮だ。厳しい状況の作戦でも最低限の被害に抑え、必ず成功させる。だからグリフィン上層部の覚えも良いし、AR小隊や404小隊を任せられている。
だけど、そんなものは彼女の本気ではなかったらしい。今回の一件は彼女の珍しい失敗として扱われるし、AR15の行動は彼女の判断で行われたとして、AR小隊の株を上げることになるだろう。作戦報告書の下書きを作るのは指揮官で、副官は事情を知らないWA2000だから、間違いなくそうなる。
けれど私は、彼女の本気を知った。彼女の指揮に従えば失敗は無いことを知ってしまった。
私は今日だった。それは、つい先日まで404小隊の任務に就いていたから。彼女を盗聴したのは今日が初めてだったから。
だが、指揮官の命令を何の反論もせずに実行したAR15は、いつから知っていたのだろうか。小隊長として編成される事が増えた彼女は、いつからこの甘美な毒の味を知ったのだろうか。
「わあ、綺麗なお月様」
仰向けに寝転がった9に倣って、私も空を見上げる。
確かに、綺麗な月だった。
左手に持っていた受信機が、音を立てて壊れた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
なんだこの指揮官は……(ドン引き)。
ちなみにチートではないです。一応伏線は張ってあったハズです。
WA2000ちゃんも好きだけど、AR-15ちゃんも好きだしUMP姉妹も好きなんです。404小隊みんな好きなんです。みんな大好き。
次回はWA2000ちゃんと誓約してG11ちゃん二人目お迎えできたら更新したいです。