お姉ちゃんだけど妹みたいな人   作:岸雨 三月

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モカからの手紙

モカさんが以前ラビットハウスに泊まって以来、私とモカさんは定期的に文通をする仲になったのでした。当初はココアさんには内緒で、ということで始まったものの、すぐにばれてしまいましたので、最近は堂々と続けています。

なので、モカさんから手紙が届くのは別におかしくないのですが、この前モカさんから手紙が届いたばかりで、今度は私が返す番だったような? 首を傾げつつ、手紙を開きます。

 

 

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チノちゃんへ

 

ハーイ! 暑くなってきてるけど、チノちゃんは元気にしてるかな? 私の家のあるところは木組みの街に比べると暑いし、最近はパン屋のお客さんがなぜか増えているから、正直、私は夏バテ気味です! ここのところ毎日、また木組みの街に行くことを考えています。

そういえばココアから聞いたんだけど、七夕祭りをやったんだって? 私の家の周りではあまりやらないから、羨ましいなぁ。チノちゃんもお願い事を短冊に書いて飾ったのかな?

 

さて、前回のお手紙を送ったばかりなのにまた手紙してしまったのは、そのココアのことです。お母さんから、ココアが夜遅くまで帰ってこなくて、みなさんにご迷惑をかけたと聞きました。チノちゃんもとても不安だったろうと思います。もちろん私も、話を聞いてとても心配に思いました。ココアにも直接電話と手紙送ったんだけれど、あまりに心配なので、今こうやってチノちゃんにも手紙を書いています。

 

ココアは元々、四兄妹の末っ子で、甘えん坊で泣き虫な子でした。そのくせ妙に頑固だったり、自分で言い出したことは必ずやり遂げるようなところもあって、姉の私から見てもちょっと変わった子だと思います。なので、ココアが木組みの街の高校に行くと言い出した時は、凄くびっくりして、一人でちゃんとやっていけるのかなぁ、と心配になると同時に、多分これ止めても無駄なやつなんだろうなぁ、私やお母さんが何を言ったとしても、絶対曲げずに、木組みの街に行ってしまうんだろうなぁ……と思いました。

 

今回のこと、ココアの一番近くにいるチノちゃんが一番心配だったと思うし、私は姉としてココアの代わりに、心配かけたことを謝らなくちゃいけない立場なんだろうなあとも思います。でも、それは分かった上で、チノちゃんにさらに迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、お願いしたいことがあるのです。

 

――ココアの、お姉ちゃんになってあげてください。

 

チノちゃんにこんなことお願いするのは、変なんだけれど、ココアはやっぱり時々はお姉ちゃんが必要なんだと思うんです。あの子は、見守ってくれる人がいないとすぐに無茶するから……。知ってる? ココアったら、五歳の頃、三輪車で山越えしようとしたことがあったのよ。当時、自転車で色々出かけてた私のことが羨ましかったらしくって……。って、この話は長すぎるから、またの機会にするわね。

 

ココアがまた無茶したり、危ないことに巻き込まれないか、本当は近くで見守ってあげたいんだけど、ここから木組みの街は遠すぎるから。別に、四六時中毎日お姉ちゃんでいてください、とは言いません。ココアが必要なときは、お姉ちゃんでいてあげて欲しいの。チノちゃんは、それが出来る子だと思うから。ラビットハウスのお姉ちゃんの座は、チノちゃんに預けたよ! なーんてね!

 

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モカさんの手紙を読み終わって、呆れつつも、ちょっと笑ってしまいました。ココアさんより年下の私を捕まえて、いきなりお姉ちゃんになれ、だなんて。むちゃくちゃすぎるのが、ちょっとココアさんに似ていて、あの二人は間違いなく姉妹なんだな、と思って笑ってしまいます。でも、モカさんの言おうとしていること、私には何となく、分かってしまうのでした。

 

あと半年もすれば、私も、ココアさんがこの街に来たのと同じ学年になります。その頃の私には、高校生はすごく大人びて見えたけれど。ココアさんはじめ、千夜さんやシャロさん、リゼさんとも深く関わるようになって分かったのは、高校生も私達と変わらないということ。故郷の街を離れ、知らない土地で暮らしているココアさんが、普段は全然平気な様子をしているけど、家族を恋しく思う気持ちは、私と同じだろうというのは、ここ最近になって分かるようになってきたことです。(そういえばココアさんは、こっちに来てから今まで一度も、海の近くの山の中にあるという実家に帰ったことがないのでした)

 

でも、ココアさんのお姉ちゃんになるなんて、いきなりすぎてどうすればいいのか。モカさんみたくなれればいいのでしょうが、私とモカさんの「お姉ちゃん力」には天と地ほどの差があります。考えながら、私の足は無意識のうちに更衣室に向かっていました。クローゼットの中には、ココアさんの制服が一つ。これを着れば、お姉ちゃんになれる?

 

(……って、何で私、モカさんみたくなろうと思いながら、ココアさんの制服を着ようとしてるんですか!)

 

自分でも説明のつかないちぐはぐな行動に、顔から火が出そうになります。今のところを誰かに見られなくて良かった、そう思いながらココアさんの制服をクローゼットに戻そうとした瞬間、何かが制服のポケットからひらひらと落ちました。床に落ちたのは、紙――?

 

(……!!!)

 

「それ」を見た瞬間、私は考えこみ、そしてしばらくすると、私の中で全ての疑問が解けました。ココアさんが急に泳ぎの練習をしに行った理由。そして私がココアさんのために何をしてあげられるのかも、おぼろげながら分かってきました。こうしてはいられません。さっそく私は準備のため、更衣室を後にしました。

 

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