地獄ノ星ノ使者   作:地獄星バロー

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合宿って二度と行きたくねぇもんだよな。なんつったって、嫌というものをほど運動したり勉強するし、住宅時間が全然ねぇし、飯はマズイし部屋は汚いし…でも、変な置物を置くのだけは流石にやめてくれよ…。いやな目にあっちまうからさ。


ソノ七・宿場の人形

 

 

舞台はどっかの村、時系列は小学生高学年のこと。つまるところ、小5くらいの出来事かな。

 

俺は当時小学校公認のフットサルクラブに所属していて、厳しいコーチや共に戦うチームメンバー達と一緒に、ガンガンギギンにサッカーに夢中になって練習の日々を送っていた。

 

当時としては、嫌な思い出ばっかりだが、今ではあの頃が懐かしい。

 

 

そんな中、ガチで思い出したくもないって言うと少しオーバーだが、嫌な思い出があったあの日。

 

それは夏合宿の日のことだった。

 

 

 

 

 

その日はまるでサハラ砂漠に来たかの如く蒸し暑く、太陽は俺達の意識を朦朧とさせようと地球に近づいてるんじゃねぇかと疑いたくなるほどTHE・summerな天気だった。

 

それなのにも関わらず、名前も知らない山の中で、訳の分からんほどデカイコートをぐるぐる走り、意味が分からないぐらい日陰ポイントを設置してあげようとしない木の下で、俺はゼェゼェ汗を垂らしながら給水をしていた頃だった。

 

それにしても話は変わるが、給水と休憩とは、天地の差がある。

給水は水を口に放り込むだけで休ませてくれない。要は無理に生かされてるみたいなもんだ。

変わって休憩はゆっくりと体を休めることが出来る。まさに数少ない平和なひと時って訳だ。

 

そんなわけで、俺は飲みづらい水筒からスポドリを口の中に投げ込んで、晴れてる日なのに雷を落としにくるコーチ怒りのダッシュロード&楽しさの抜けたサッカーをし続けていたもんなんで、まさか夜にあんなことになるとは考える暇も無かった。

 

ちなみに俺は、サッカーは好きだがあくまでエンジョイ勢。ガチでやるのは本当に辛かったし、おまけにチームメンバーは運動系男子特有の外道衆が大半でしかも同じ同級生。

入ってしまったのを心底後悔し続けていた。

 

まっ、それでも最後まで抜けずに卒団出来たのは、本当に良いピリオドを付けられたと思う。

 

 

 

話が逸れちまったな。その後、昼のメシマズタイムを乗り越え、休憩がてらメンバー全員で強制散歩という名の山ダッシュをさせられた。小学生にそんなところ走らせて良いはずがないから今でも訴えてやろうと計画している俺だが、それもそのはず。

 

 

この合宿に行く前にお袋から嫌な話を聞いていたからだ。

数年前、この山散歩の道中で崖から落ちて亡くなった先輩がいる。

 

 

そいつの妹が俺の同級生で、そいつの兄は俺のお袋の知人であった。

 

つまり割と最近の話。

 

俺は初めて小学生ってのが現役で死ぬなんてことがあるんだと、無性に不謹慎な感想を抱いていたが、それは単なる死ではないのではないかと少しばかり思っていたわけだ。

 

 

 

仮にその亡くなってしまった先輩をAとしてやろう。

 

Aは果たして、単純に崖から落ちて死んでしまっただけなのだろうか。

合宿場は実際怪しさ満点の安全性0なところだ。

それに、俺の周りのチームメンバーはさっきも説明した通り、まるでダメなガキンチョばかりだ。

 

周りもそれなりにギスギスしていたわけだから、Aにも何か計画的な、はたまたホラー的な何かが絡んでいたに違いない。

 

 

 

とかなんとか思いながら散歩は終わり、夜が来たわけだが、本当に最悪な深夜だった。

 

 

 

真夏だというのに夜はバカ寒く、合宿だというのにメンバーを部屋分けせずにそこら辺の汚いリビングにポイされて、狭く埃臭い布団を敷いて、全員おやすみ絶対寝ろよ的なアレをさせられたのだが。

 

 

 

 

誰一人あいわかった!遊ばずに寝まーす。なんてことはねぇんだ。

 

 

 

 

 

 

バカ1号から10号ぐらいまでが突然の乱闘を始めるわ割と早く寝た隣の人が蹴飛ばしにくるわ、突然の女子の口説き方を自慢しにくる奴がウザいわ周期的にコーチの見回りでとばっちりを喰らうわでまぁ散々なこった。

 

そして深夜3時になり、日頃のストレスでなかなか寝付けない俺と、数少ない選ばれたオール勢のバカどもがコソコソ話していた時、事件は起こった。

 

 

 

 

「なぁなぁ、あいつ朝にシメね?」

 

「いいなそれwてか今やらね?」

 

 

とかなんとか言ってる馬鹿Nと馬鹿Sの目の前に、突然どこからともなく雛人形が落ちてきた。

 

 

「うわっ!!!なんだよ……これ……」

 

 

「うっそっ………」

 

 

恐らくその時に起きていたのはチームメンバー30人の内、俺を含めて10人。

突然の人形の乱入に、辺りは静まり帰った。

 

「人形……?どうして……?」

 

「これ、呪いの人形とかじゃあないよな……」

 

「でも、どっから落ちてきたんだよ……」

 

全く見当がつかなかった。唖然としながら皆が少しずつ騒ぎ始め、何も知らずに起きてしまった者は怖話でもしてるのかと思い込んで突拍子も無くミ○キーの都市伝説をし始める始末だ。

しかし、お蔭で話が段々どうでもいい方向に進んでいった。

 

俺は一人でその落ちてきた人形を拾い上げ、まじまじと観察していた。

 

女、子供、おかっぱ、和製。いかにもなシチュエーション。

 

何か見ていると少しずつ頭がグラグラしてくる。だがそんな馬鹿なことはありえんだろう。

 

普段以上に夜を起きてるからだ。

 

しかし。

 

『ひゅるひゅるひゅる………』

 

 

「うおっ!?」

 

俺の大きな声で、皆が再び人形の下へ注目する。

 

 

なんとその人形の髪の毛が伸びたのだ。

 

 

 

「うっ………そっ………」

 

 

 

 

「うわあああああああっっっ!?!?!?!?」

 

 

 

 

それ以降、俺は布団に勢いよくダイブし、皆もそれに続いて毛布から手足一つ出そうとせずにうずくまって夜が明けるまで待っていたことを一昨日のように覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

朝。

 

確かこの日は日曜だったような。

 

 

早朝ということで再び山散歩に駆り出され、いやいや走ることになったが、昨日のこともあってみんなのテンションは激的に低かった。

 

 

 

それを裏付けるかのようにその少し前、パジャマをユニフォームに着替える最中、皆が人形を探そうとしたが、この部屋のどこにもなかった。

 

流石に一夜明ければ少しはまだ笑い話に出来るし、夢かなんか見てたんだろって解決出来たはずだったが、人形は思わぬところで見つかった。

 

 

 

 

それは散歩コースの崖崩れのところだった。

 

 

「あ………嘘だろ……」

 

 

 

そこには不法投棄されたゴミがポツポツとあり、更に小さな看板に文字が書かれていた。

 

 

その文字はというと、

 

 

『この村には古い言い伝えがあり、悪しきことを口に出すとマグンに呪われます。夜、その者を試し、朝が終わる頃には亡くなってしまいます。寛容な御心を常に持ち続けましょう』

 

 

 

 

 

 

その後、昨日人形が落ちてくる直前に会話していたNとS(磁石ではない)は崖から落ちかけたのは言うまでもないが、ついでに俺も帰り道にずっ転んでしまったのは決して人形みたいな奴に呪われていない偶然だと今でも信じ続けている。

 

 

 




いかがだったかな。人形という者は、幸せを感じさせることもあれば、恐怖を感じさせることもある。こんな少年時代を切り抜けたからこそ、ナレーターとしてはガサツな俺だが、今では一人の人間として成長出来たのかもしれない。そんな俺からの教訓だ。人形が宿にあったら、安易に観察しようとするのだけは辞めような。
それでは、またお会いしましょう。
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