星花女子プロジェクト 作:煉音
次を描くのが楽しみで仕方がないのです><
「なぁ、一応理由を聞いとくわ。面倒ごとに巻き込まれるうちを見たいとか言ったらしばくからな」
「そんな理由じゃないよ」
いたずらな笑みの葎は声音を一変させ、うちの目の前に立ち少し屈んで顎を引いた上目遣いで見上げる。自信に満ちたその表情に嫌な予感を覚えさせた。
「気になる人」
ポツリと呟かれたその響きに背筋がゾワっとしよる。葎が察しのいいやつなのは知っとる。やけど、その自信満々の表情で言われるとは思いもしなかった。自然と楽器を握る手に力がこもる。目を逸らさない意識と否定の言葉を頭で作る。
「......なにを言うねんな。さっきも言うたけど、うちはそん人のこと知らんし、なわけないやろ?」
「理由は」
笑みを崩さないままうちを見つめ確信があるとばかりに口を開く。ゆったりとした時間にいやに緊張し、小さな口から紡がれる柔らかいが鋭い音にピリピリと感じる。
「せんちゃん、私が気になる人のこと教えてって言う時と、さっき先輩の特徴を伝えた時の表情が一緒だった。」
「......」
反論する余地なんかなかった。葎の変わらない笑みが獲物を捉えたとばかりにうちの心を囲む。反論できない。やっぱり葎にだけは嘘はつけへんみたいやな。
「先輩は自分と似ているって、一人でいて、だけどしっかり立って、でも本当はどこか寂しい気持ちがあるって」
「うるさいで」
突如として吹いた風に敏感に反応してしまう。うちのこの性格が他人を寄せ付けないようにし、そして一部の人を嫌うようになってから、葎みたいなお節介でもない人以外は近くにいてくれないことなんて、当事者であるうちが一番よぉわかってるっちゅうねん。
「私が知ってるせんちゃんを私より短い時間で見抜いた人で、何より自分の境遇まで明かしてくれる人だから。私は、せんちゃんには会ってもらわなくちゃならないって思ったの。だから先輩と会って」
いつのまにかいたずらな笑みは消え、真剣な眼差しで葎はそう説いていた。小さく揺れる瞳はきっと彼女もそれを言うことを恐れているからだろうか。葎の立場を考えればうちとの関係なんか、数あるうちの一つに過ぎへんのに......まぁ......久しぶりに一つ信じてみるのもいいかもしれへんな。
「君はやっぱりすごいわ。全部見透かされた気分やわ。正直寒気がしよるけど、まぁ君が言うなら信じさせてもらおうかな」
うちの言葉に葎は真剣な顔つきから柔らかい笑顔を作り出した。まだ見たことがないほど明るくて暖かい無垢な、葎自身もたぶん意識したことがない微笑みやと思う。
「信じてくれてありがとう。じゃあ呼んでくるね」
そう言って立ち上がった葎は扉に向かう途中、また振り返る。
「そうだ。一つ格言を教えるね。人と付き合う秘訣があるとするならば、まずはこちらが相手を好きになることではないか。きっと私も先輩もせんちゃんに何か好意を持てたから、ここにいるんだと思うよ。なにを思うかはわからないけど、時々思い出してみて」
手を合わせ、少し首をかしげて「お願い」と頼むような姿勢を取った葎は不思議と学生ではないように感じられた。
なぁ、君は人の内側がどんなふうに見えてるんや。ますます君がわからなくなってしまいそうで怖くなるわ。でも、君のアドバイスはなんだかんだ言っても初めてや。ありがとう。言わなきゃな。言葉にするんや。
「......な、なぁりつ……」
突如として鳴り響いた大きな音とともに、葎を華麗に避けて一人の女性が舞い、うちの前でピタッと止まり、ビシッとうちを指差し言った。
「ようやく見つけたぞ!終焉を報せし奏者よ!」
うちの......うちの勇気を......こんの先輩は、また.......。