PS2版のPVトレーラーが大好きだったから、これを機に書いてみたかったんです。
※【アインズ・ウール・ゴウン】全文が冗長である場合、【AOG】と略す場合があります。
~ 213X年 ○月 ×日 ~
【おのれ】DQNギルド『アインズ・ウール・ゴウン』討伐戦 実況スレ Part.22【AOG】
013 この世界樹がすごい!
あの空飛ぶピンクの肉塊?っぽいの誰か情報ある?
014 この世界樹がすごい!
わかんね。POPじゃなさそう。NPC?
015 この世界樹がすごい!
胎児?いや、あれは胚子かね?
異形種ギルドらしい趣味悪いデザインだな
016 この世界樹がすごい!
このダンジョン専用の拠点用NPCか何かか?
スキルで確認したとこレベル低いが
017 この世界樹がすごい!
とりあえず殴ってみる?
018 この世界樹がすごい!
接触型の誘発スキルとか持ってたらやばいからスルーしようぜ
019 この世界樹がすごい!
もう地下8階だろ?消費アイテムもやばいしスルー安定っしょ
020 この世界樹がすごい!
あ、あのバカ
021 この世界樹がすごい!
どこのギルドの素人だよ
022 この世界樹がすごい!
考え無しに殴りやがった、脳筋過ぎだろ……
よくここまで生きてこられたな
023 この世界樹がすごい!
ん?
024 この世界樹がすごい!
え?なんか発動した?
025 この世界樹がすごい!
結界っぽい?
026 この世界樹がすごい!
俺達全員包んでるっぽい。エリアの大半覆ってる感じ?
027 この世界樹がすごい!
範囲特化のデバフとかなら、あんまり警戒する必要ないかな。
028この世界樹がすごい!
<
029この世界樹がすごい!
お、AOGのギルメン出てきたぞ
030 この世界樹がすごい!
ヒャッハー!異形種討伐開始だー!
・
・
・
255 この世界樹がすごい!
( Д ) ゜ ゜ ポンッ
256 この世界樹がすごい!
は?……はぁ!?
257 この世界樹がすごい!
おい、ちょ、まてよ
258 この世界樹がすごい!
DEKEEEEEEEEEEEEEEE!!
259 この世界樹がすごい!
え?これホントに拠点NPC?
レイドボスめいたHPが<
<
260 この世界樹がすごい!
なんかもう1体おるやん
あれはNPCか?見た目女性の人型だな
261 この世界樹がすごい!
テラカワユスなぁ
・
・
・
401 この世界樹がすごい!
固ァッ!?
402 この世界樹がすごい!
このゴーレム作るのにどんだけ希少素材突っ込んだんだよ…
俺自慢の伝説級装備(物理攻撃特化)がゴミに思えてきた
403 この世界樹がすごい!
このゴーレム(?)数値いじってねぇか?
こんな基礎パラメーターの暴力、どうやってNPCに持たせてるワケェ?
404 この世界樹がすごい!
運営―!早くきてくれー!
405 この世界樹がすごい!
あ、うちのギルマス踏みつぶされとるw
406 この世界樹がすごい!
え?マジで?
407 この世界樹がすごい!
足の裏にイケメン(アバター)がこびりついてて草w
408 この世界樹がすごい!
ホントだw
409 この世界樹がすごい!
クッソわろたwww
410 この世界樹がすごい!
まぁアイツの尊い犠牲のおかげで、HP結構削れたか?
411 この世界樹がすごい!
勝てる!勝てるんだ!
・
・
・
540 この世界樹がすごい!
げえっ たっち・みー!
・
・
・
777 この世界樹がすごい!
魔王ロールしてる骸骨野郎誰か黙らせろよぉ!
778 この世界樹がすごい!
いや、ありんえんて。
俺物理防御特化よ?
なんで根性スキル発動したの?
体力1割以下じゃないと発動しませんよね?コレ
一撃で減り過ぎ泣いた
ワールドチャンピオンでもありえん
ましてやあいつ忍者だろ?巨剣振ってんじゃねぇよ
これは運営へ通報せざるを得ないな
779 この世界樹がすごい!
長文書いてる暇有ったら殴れよ!
この粘液盾どけないとヤギに射線通らないから!
780 この世界樹がすごい!
あ、長文野郎が鳥に射抜かれて死んだわ
781 この世界樹がすごい!
ザマァねぇな
・
・
・
【おのれ】DQNギルド『アインズ・ウール・ゴウン』討伐戦 実況スレ Part.23【AOG】
664 この世界樹がすごい!
ふ ざ け る な
665 この世界樹がすごい!
俺、これが終わったら運営に凸するわ
さすがにアレはいかんでしょ
666 この世界樹がすごい!
俺もやるわ
ムービー保存してあるしネットに公開して拡散してやる
667 この世界樹がすごい!
頼むわ
頭数の大半がさっきので消えたんじゃね?
こんなんできる世界級アイテムあんの?
668 この世界樹がすごい!
もう復活アイテム切れたわ
669 この世界樹がすごい!
同じく。上級ポーション残り2個。
攻略wikiに載ってた、例の時計盤出す即死コンボ撃たれなくても死ねる
帰りたい
670 この世界樹がすごい!
はい無理、撤収
671 この世界樹がすごい!
おk
672 この世界樹がすごい!
異議なし
673 この世界樹がすごい!
こんな辛気臭い地下にいられるか!俺は帰るぞ!
674 KgxSyeD
持ってて良かった、ギルド直帰のレアアイテム!
帰るやつは集まれ~^^
675 この世界樹がすごい!
それって即時発動&複数同時転移のヤツ?太っ腹やん
676 この世界樹がすごい!
おkおk!
スライムに装備壊されて発狂してるヤツとかほっといて逃げようぜw
677 KgxSyeD
うっしゃ発動すんぞ
678 この世界樹がすごい!
あばよぉー、とっつぁ~ん!!
679 この世界樹がすごい!
こんなクソッタレ墳墓、スタコラサッサだぜ!
680 この世界樹がすごい!
…ん?
681 この世界樹がすごい!
おいィ?転移してないんだが?
682 この世界樹がすごい!
発動準備の時間無いからって焦らすのはやめてよね…
猛毒の継続ダメージ食らってて、地味にキツイんです
683 この世界樹がすごい!
おいおいおい、骸骨が対策wikiに載ってた耐性貫通の即死コンボ使ったぞ
残り10秒無い。転移はよはよ
684 この世界樹がすごい!
復活アイテムない
どうせ死んで装備品ドロップするにしてもホームなら回収も出来るからぁ!
685 KgxSyeD
……なんか転移キャンセルされたでござる(´・ω・)
スキルか魔法で空間をロック?されてるかも分からんね……
686 この世界樹がすごい!
ちょ、おま
687 この世界樹がすごい!
おい時間ねぇぞ
688 この世界樹がすごい!
ふ ざ け ん な
689 この世界樹がすごい!
あっあっあっ
こうして侵攻側に組した人間達の、罵詈雑言によって埋め尽くされた23番目の投稿掲示板スレッドへの書込みが、その上限を迎えて終了してから間もなく。
12年続くMMO-RPG【ユグドラシル】の長い歴史においてなお伝説となった、『ギルド:アインズ・ウール・ゴウン討伐戦』は防衛側の勝利という結果を残して終了した。
* * *
――DMMO-RPG【ユグドラシル】内に複数存在する世界の1つ≪ヘルヘイム≫の一角にて行われた、大規模な『ギルド討伐戦』。
討伐戦参加人数こそ、当時のユグドラシル総アクティブユーザー数からすればそれほど特筆するような数字ではなかったものの、非公式のギルド戦としては異例なほどに多くのプレイヤー達に観戦されていたことが記録として残っている。
攻め込まれるギルドはPKKを得意とする有数のDQNギルドとして、高い知名度を誇っていたこと。
かつてダンジョンであった場所に拠点を構えて以来、攻め込んでくるいかなる者にもその深部に至らせることなく、攻略を跳ねのけ続けていたこと。
そしてある時、侵攻側が攻略参加の呼びかけをネット上で大々的に行っていたこと。
……最終的な攻守陣営の人数比36:1という、あまりにも一方的な虐殺劇を見物出来そうだということ。
以上のような要因からか、第三者視点からすれば娯楽的な要素が多く盛り込まれた一戦だったこともあり、外野のプレイヤー達は降って湧いたイベントを楽しむような気軽さで個人、あるいはギルド単位で戦闘中継の一部始終を見守っていたのである。
戦闘内容は【複数ギルド連合による特定異形種ギルドの攻略戦】
攻略側陣営への参加総数は、およそ【1500人】
拠点対象は【ナザリック地下大墳墓】。その構成人数【40人余り】のギルドが1つのみ。
この参加人数比があまりにも圧倒的な侵攻に対し、防衛側は初動においてギルドメンバーが矢面に立つことをせず、ギルド拠点という地の利を最大限に活用して迎撃を行った。
ダンジョンのような階層ごとに区切られた地下墳墓にはエリアエフェクト ――継続して負のダメージを与え続ける―― がかけられており、それはそのまま拠点防衛NPC<Non Player Character>であるアンデッドモンスターが有利となる戦場として機能を発揮していた。
NPCには回復を、人間種で固められた侵攻プレイヤーにはダメージを。正のエネルギーを元とする魔法発動の効果すら若干阻害する空間での戦闘は、一つ一つの戦闘時間が延ばされ、回復魔法のための魔力を浪費させ、アイテムのリソースを削り続けた。
パーティーを分断するための転移系魔方陣をはじめとする様々な設置型トラップや、実際に操作を行う生身の人間が攻略者であることを利用した、視覚や聴覚に訴えるような生理的嫌悪や恐怖を催す部屋の存在も猛威を振るった。
事前情報による対策が取りにくい、拠点オリジナルの効果を持つモンスターに襲わせて少なくない被害を受ける者がいれば。各階層ごとに最低1体登場する、キャラクターレベル上限であるレベル100を誇るNPCの、ガチガチの戦闘スキル構成に支えられた神器級アイテム相当の装備による攻撃によって、あえなく道半ばで倒れる者もいた。
およそ「ダンジョン」という存在にみられるトラップを、全て網羅してみせると言わんばかりに盛り込まれた地下墳墓。張り巡らせた罠は製作者の情熱と努力を感じさせると共に、悪辣かつ卑劣が極まるものに満ちていた。哀れにも犠牲となった侵略者達を見下し、幸災楽禍の表情でせせら笑っているはずの仕掛人は、なるほど異形種ギルドにふさわしい性根の持ち主であろうと言わざるを得ない。
侵攻の当事者からは苛立ちと怨嗟の声を叫ばせ、関係の無い観戦者達をすら、その周到な悪辣さに対し賞賛と呆れの感情に唸らせる。
その両者に共通させて「この作り込みに一体どれだけの時間と課金と悪意を注ぎ込みやがったんだ」という思いを刻みこむ辺り、ナザリック地下大墳墓は廃人の溜まり場で、悪のギルドの本拠地であった。
しかし、それでも参加人数の1/3がレベル100のカンストプレイヤーで構成された1500人の集団は、その内に貴重な《伝説級》アイテムを超える存在であるところの、プレイヤーが作成可能な装備の頂点である《神器級》アイテムとすら一線を画す、《世界級》アイテムを複数個抱え込んでいるほどの勢力であった。
消費アイテムのリソースを減らしながらも墳墓の障害を乗り越えた彼らは、襲撃開始時点の実に過半数を超える人数をもって、全10階層からなる墳墓の8階層への到達を成功させていた。
この時点で、防衛側ギルドが少人数ながらもその最盛期において、ギルドランキング第9位に序列されるほどのトップギルドの一つであるという情報を聞き及んでいるプレイヤー達であっても、この討伐戦の結末 ――防衛側の敗北をほぼ確信に近く予想していた。
そしてその予想を支える土台は、極論すればゲームにすら関係のない、いわば常識から派生する考えに基づくもの。
ギルド拠点が戦場という地の利や、廃人級のメンバーを多く有していたという防衛側の特徴を持ってしても、戦闘の趨勢は始まる前から既に決定的であったとすら考える、彼らの根拠があったのである。
それは『数が多い方が勝つ』――ごく当たり前の理由であった。
戦闘とは、数を多く揃えた方が有利。これはリアルにおいても厳然として存在する真理である。
最新鋭の装備を誇る少数精鋭の軍隊は強いだろう。しかし相手が時代遅れの装備しかなく、加えて武装しているのが素人同然の民兵であったとしても、それが圧倒的な大軍団であるのならば、その数に呑み込まれて終わるだけなのは戦史の通りだ。
もちろん、結果は必ずではない。少数であっても革命的な装備や戦術、あるいは常識を逸脱するほどに優れた技能でもって、少数に勝敗を覆す例も数多く存在する。
人数差は有利になる条件ではあっても、必ずしも勝敗には直結しない。
これもリアルにおける当たり前ではある。
しかしそれも「リアルの世界」であれば、である。
【ユグドラシル】ひいてはDMMO-RPGという多人数参加型のゲームにあっては、全てのプレイヤーの上に「運営」という上位者―― リアル世界とは違ってその世界に直接影響力を持った『神』が存在する。その「運営」が定めるルールを逸脱した場合、違反者には重いペナルティが発生し、場合によってはゲームの継続すら不可能とされた。
そんな絶対的な権力を持つ「運営」は『世界級』という例外的な要素を除き、他のプレイヤーと隔絶する力というものを、このゲームに認めなかったのである(その『世界級』ですら攻略する方法は存在し、他者に奪われて失い得るような不安定な力だった )。
絶対的な装備や無敵の技能、誰も寄せ付けないレベル差といった要素は、より強い力を求めた者達の課金を促すカンフル剤としては一時機能するだろう。
だがもちろん、強すぎる力は既存ダンジョンの攻略難易度を極端に下げてゲーム性を失わせることは明らかであり、やがて場当たり的なステータス更新のみが繰り返される結果、ゲームとしてのバランスは早々に崩壊へと繋がるだろう。
その極端な力を基準とした難易度に設定されたイベントが登場し続ければ、求められる戦闘力のインフレに追いつけない無課金者達の引退時期を早めてしまうに違いない。
そういった点で論ずるならば、個人間の覆せない圧倒的な力の差を認めなかった当時の「運営」は、まだ賢明と言えた。
しかし「運営」が守らなければならないルールとして『ゲーム性を損なう極端な力』を統制している【ユグドラシル】というゲームであったからこそ―― 圧倒的な《人数差》とは、そのまま勝敗に直結すると言い切って良い要素なのであった。
チャンピオンが世界を斬り裂く絶技を繰り出しても
軍師が権謀術数を張り巡らせても
大魔法使いが10位階を超える魔法を連発しても
翼王が超々遠距離攻撃による狙撃を繰り返しても
盾があらゆる攻撃を防いでも
粘体が伝説の装備を溶かし尽くしても
大錬金術師が魔王を超える火力で薙ぎ払っても
プレイヤーが例外的に突出した力量を持てない個である以上。
討伐隊がギルドの奥深くまで辿り着き、AOGのギルドプレイヤーを引きずり出して正面から向かい合った時点で勝敗は決した。
――それが観戦者達の大多数が抱いた結論であった。
しかし結果はそうではなかった。
戦闘の結末は『防衛側ギルドの勝利』
この戦闘結果は速報となって、【ユグドラシル】全体に拡散した。
ある上位ギルドに連なる者はその結果に「やっぱりな」という感想を残した。
討伐戦に参加しなかったものの、かつて異形種狩りに熱を上げた者は「つまらん」と零した。
そして大多数の第三者達は「AOGってギルドすごいな」と感嘆の声を上げたり、「1500人で挑んで敗北とか無能過ぎるだろ」と侵攻側の無様を嘲笑った。
このように結果のみを先行して聞いた面々の反応は様々であったが、それは感想に留まる程度であり、殊更に熱気を伴う者はそれほど多くはなかった。
反面、戦闘終了直後から激しく気炎を吐いたのは討伐戦の参加者達である。
特に8階層に辿り着いた面々によるAOGへの非難はすさまじく、時や場所を選ばず叫び続ける様は、転がり回る壊れたスピーカーの如きであった。
彼らは歴史的な返り討ちに見舞われた際、多大な時間と素材を消費して作られた装備とアイテムの多くが失われ、何よりも持ち込んだ世界級アイテムまでも奪われてしまっていた。世界に一つしかない性能を誇るアイテムの喪失はギルドの影響力にも大きく影を落とし、ギルドランキングの下降も著しいものであった。
散々な結果となったことを踏まえればその心情もある程度は察せられるものの、逆恨み的な内容でしかないのだろうと、当初は周囲に煙たがられていたほどである。
しかし、当事者ではなく直接被害を受けていないはずの観戦者達の多くもその悪意に対して同調を示しており、間もなく公開された《ナザリック地下大墳墓8階層の戦闘ムービー》によって、事態は大きな発展を見せた。
その映像は古参・新参のプレイヤーを問わず、全く関わりのない者達をして、「ふざけるな」「ありえない」「チート」といった批判の嵐を叫ばせるほどの出来事を鮮明に記録していたのである。
第三者達や新参者にとっても分かりやすい解説を加えた検証動画も登場し、挙句に異形種DQNギルドに対する言いがかりめいた告発騒動まで燃え上がり、"旬"のネットゲーム事件として一躍関連サイトの話題を独占した。
その結果、AOGというギルドをそれまで知らなかった完全な第三者達すらもこの話題に関心を持つに至る。やがてその感情は収束し、「AOG並びにそのギルドを容認する運営への中傷と非難」を爆発させたのであった。
無責任に煽る者、直接知らずとも、異形種憎しとAOGを非難する者、運営の監視システムの怠慢を責め立てる者、訳知り顔で自論を展開する者――。
匿名の仮面を被った意趣遺恨のうねりは大量の問い合わせや苦情という形をもって、213X年が誇る高性能サーバーを擁した「運営」の窓口を一時パンクさせる事態へと発展した。
リアル社会を構成する大部分の貧民層、彼らが抱えるどうしようもない不満を受け止める娯楽として、隆盛の極まるDMMO-RPG。画期的システムや美麗なグラフィックを備えた新作が次々と送り出されるジャンルの中において、なおも根強い人気を維持し続けていた古豪タイトル【ユグドラシル】に起こったこの騒動は、ネットを介して様々な場所へと拡散し続けた。
このまま対策をせずに放置を続ければ、いずれ【ユグドラシル】に嫌気がさしたユーザーが、他の数多ある新作DMMO-RPGへ流れる状況に発展しかねない…… そんな事態すら考えられる雰囲気がプレイヤー達の心に差そうとした頃、それは発表された。
――全プレイヤーの告知される、「運営」による『お知らせ』の更新。
――件名は、『新規アップデートのお知らせ』
* * *
『――結論から言えば、ギルド:AOGが行ったことは違法改造などの不正行為ではない 』
重課金と廃人装備、熟練の連携による徹底した戦闘の効率化。プレイヤー利用のみならず、NPCや拠点と連動した世界級アイテムの複数投入。
そして何より、超位魔法《
これらを何らシステム的なバグもなく、正しく機能させた末の結果がギルド防衛に繋がったのであり、不正操作や違法ツールの検出は認められなかったことは、早期の段階で判明していた。「運営」に関わるスタッフ、そしてそれを統括する責任者は、この調査結果から討伐戦の過程に問題はないと判断を下した。
――『世界級アイテム』がその主によって使用された。ならば大多数のユーザーにとって常識外の、理不尽な結果が起こっても問題はない。
この判断には、むしろ『世界級』が如何に格別の存在であるかを知らしめる好例となったという、「運営」が開発当時から曲げることのなかった一つのこだわりが影響していたのかもしれない。
つまり、この点だけであれば「運営」が行動を起こすことはなかった。
しかし。
『――問題は、今回の騒動を我々が放置した場合、消費者が他のゲームに流れかねないということ 』
同時に発生した、ネットに出回った戦闘ムービーがもたらしたユグドラシルプレイヤーへの心理的悪影響への解消手段については、ある程度の協議が必要となった。
仮にこの騒動に何ら手を打たずに看過した場合、世界級アイテムの威力ではなく不正行為による結果であるという誤ったガセ情報が蔓延し、「AOGが咎められないならば自分達も」と、深く実情を調べようとはしないユーザーによる本当の不正行為を促す温床となりかねない。
加えてより良い装備やアイテムを求め、真っ当に課金を行って冒険を繰り返していたプレイヤーの頭に「AOG、ひいては世界級アイテムと比べたら意味がない 」等という冷や水を与えるままにしていては、良くて課金アイテムやガチャの買い控え、最悪【ユグドラシル】から離れていく可能性も考えられた。
プレイヤーの苦情に無頓着の印象を持たれがちな「運営」ではあったが、昨今の新規DMMO-RPGの台頭は無視できない勢いを持っている。DMMO-RPGといえば【ユグドラシル】と呼ばれていた時代はとうに昔。ブランドにあぐらを掻いてユーザーの心情を考慮しない方針では、早々に自分達の首を絞めるだろうことは、営利団体としての「運営」も理解していた。
ゲームシステム的になんら問題が無いとしても、参加するプレイヤーの大多数がその出来事に不満を持つのならば、何らかの対策を施し、集団のフラストレーションを落ち着かせることが望ましいのである。
……そして他のDMMO-RPGへと向けられつつあるユーザーの関心を再び【ユグドラシル】へと惹きつけるための対策自体は、既に今回のギルド戦から波及する問題とは別に進行していた。
『――近々実施予定であったアップデート。そこに変更を加えることで解決としよう 』
幸いにして、世界級アイテム自体は、一つ一つがゲームシステムの崩壊を孕むほどに破格の効果を持つことをその登場初期から繰り返し言及していた。その使用があったことのみ公開すれば、「一見して理不尽な討伐隊の壊滅」という現象は、運営の想定内に収まるモノであり不正行為ではないと認知され、騒動事態は下火となることは予想できる。
後は直接非難を集めているAOGのギルドに対し、傍目にも分かる何らかの「下方修正」がもたらされれば、今回の討伐戦の戦利品を加えることで最多世界アイテム保持数を記録することとなった集団が存在することに対する、潜在的に燻る不満の種もある程度取り除かれ、一応の解決となるだろう。
問題は、ガス抜きの方法。どのような「修正」を行うべきかという点のみである。
世界級アイテムの性能を下げる――これはこだわりとゲーム世界の設定上、最初から考慮の外だ。
異形種のステータスに下方修正を行う――関係ない特定プレイヤーへの悪影響が大きすぎる。
あれでもない――
これでもない――
……いくらかの協議を重ねた後、その白羽の矢が立ったのは《ギルドシステム》であった。
1500人から攻め込んでも、攻略不可能なギルドの存在。その前提を覆す修正。
攻略不可能なギルドは存在し得ない――。このメッセージを込めたアップデートは、AOGにはじまる半ばダンジョン化したギルドに対する、公式が用意した攻略の突破口であった。硬直気味だったギルド戦の活発化を促し、それによるプレイヤー達のログイン率の増加を狙ってゆく目論見が、そこにはあったのである。
こうした経緯によって、実施予定の決まっていたアップデートに一つの修正が加わった。
……結果的にこの修正は、ギルド拠点攻略の難易度を大いに引き下げ、以後のギルド討伐・防衛戦の乱発化を招き、それに伴ったギルド武器破壊によるギルド消滅件数も加速度的に増加させた。
ギルド武器破壊とはつまり、ギルドの強制的な解散を意味する。
膨大なログイン時間、苦労して収集した素材、少なくない課金。
そうした諸々をフレンド達と共に注ぎ込み、ようやく作り上げたはずのギルドの消滅。それは、彼らプレイヤー達に【ユグドラシル】を引退させるには、十分な切っ掛けと成り得たのだった。
ユーザーの流出を防ぐため満を持して公開されたはずのアップデートは、運営の意図とは真逆をいく代物になってしまったのである。
……ただこのアップデートが公開された結果、「運営」はプレイヤー達から『糞運営の大虐殺』として更なる悪名を獲得することとなり。
所詮は1ギルドに過ぎないAOGとは、全く比べ物にならないほどのヘイトを稼いだことによって、当初の問題であったユーザーたるAOG単独への非難や中傷を有耶無耶にせしめたことは、「運営」として公正な対応を果たしてみせたと言えるのかもしれない――
* * *
~ 213X年 ☆月 ▼日 ~
DMMO-RPG『ユグドラシル(YGGDRASIL)』速報
【『崩壊のビフレスト』 アップデート内容大公開!!】
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超大型アップデート『ヴァルキュリアの失墜』。
金貨のデザインが一新され、職業と種族を追加し、ワールドエネミーすらも新規に加えられたその内容は、ユグドラシルにおけるそれまでの遊び方に、新たな幅をもたらすものでした。
ですが、広がる世界観と自由度の代償と言わんばかりの、度重なる不具合と調整の繰り返しによって、何度も細かい更新が行われたことでプレイヤーを悩ませた、悪名高いアップデート群でもありました。
今では懐かしさを覚える程度にはパッチ更新が終了したキャンペーンでしたが、どうやら今回行われる追加アップデートは、その『ヴァルキュリアの失墜』に派生する内容であるらしいです。
新たに付けられたアップデート名は『崩壊のビフレスト』。
このゲームの提供元であるユグドラシル運営チームが、普段から我々ユーザー達に情報を安売りしないことに定評があるのは、皆さん御存じの通りです(先日のアップデートでは、実行した事実だけ当日告知し、その内容をほとんど非公開にした事件もありました…… )。
しかし今回の運営は、アップデート実施を事前告知するだけでなく、詳細な内容こそ伏せられているものの、様々な情報を大胆に公開しています。
これは『ヴァルキュリアの失墜』前にも行われたことであり、このことから今回のアップデートは単純な追加データや各種判定の修正といった微々たる変更に終わらず、SFファンタジーに含まれない現代的な武器の使用を解禁とした『ヴァルキュリアの失墜』等にみられる ――世界観の追加のような、ユグドラシルプレイヤー全体に大きな影響を与えるシステムの変更が行われるのではないかと予想されていました。
そんな噂ばかりが先行していた状況で、とうとう公開されたその内容。
以下に箇条書きで恐縮ですが、追加アップデート内容項目のまとめを掲載しておきます。
●ギルドシステムの機能追加に伴う変更
●マスターソースインターフェースの修正
●種族・職業の追加
●特定クエストの修正
●一部外装に関する警告・禁止裁定の更新
●アースガルズ、ヨトゥンヘイムの不具合修正
以上が、公開されている情報を項目ごとに分けた内容になっております。
その変更点は多岐に渡っている印象ですが、今回の目玉を敢えて挙げるならば、やはりギルドシステムの修正と、種族・魔法スキルの追加でしょうか。
ギルドシステムと大きな括りで表現されていますが、この機能追加という文言がある以上、従来の調整に終わらず、何かしらの新要素が盛り込まれることが想像できます。
戦略が半ば固定化されてきているギルド戦や、物置となりやすい本拠地の活用法など、今回の修正によって新しい影響が生まれる可能性が出てきました。
先日行われた、とあるギルド戦の結果がもたらした公式の大炎上を受けたテコ入れといった線も考えられますね。
ヴァルキュリアにおいても行われた「種族・職業の追加」についても、その新しい職業らに付随する新スキルや魔法が大変楽しみです。
もっともこちらは、従来の魔法ですら未だ全種類を把握できていないほど膨大であるため、運営が公開する予定でもない限り、全容は把握不可能であると思われますが…… このような概要だけでも公開された今回がそもそもレアケースであり、詳細についてはユグドラシル運営の常として、ほとんど非公開となるでしょう。
ですが、ことはギルドシステムという多人数参加ゲームの根幹に関わる部分に及ぶ以上、ある程度は纏まった説明が今後告知されるはずです。
昨今、目新しく様々な種類のDMMO-RPGが登場する中で、古豪として踏ん張りながらも人気が押され気味のユグドラシル。
この世界には、未だ多くの明かされていない情報や設定、アイテムが存在します。
自らの手と足でそれを既知とし、新たな未知の世界を広げてみたい現役の1ユーザーとしては、この新しいアップデートが引退プレイヤーの帰還を促し、新規ユーザー獲得の呼び水となることを願って止みません――。
―― ギルド『ワールド・サーチャーズ』 一般公開サイトページより一部抜粋
* * *
ここまでお読み頂き有難うございます。
スレ進行が遅いのは、リアル世界で前時代的な書込み形式の実況掲示板への参加者が少ないためです。
運営に仕様変更を痛烈に要求する、声の大きい『お前ら』に左右されるMMO-RPG。
※今回の『崩壊のビフレスト』と呼んでいるアップデートは、拙作のオリジナルです。
『ヴァルキュリアの失墜』が原作においてどの時期に行われたかについてですが、特に明らかにされている記述が見つからなかったため、
・リアルにおける1500人ナザリック防衛戦時、既にプレイアデス姉妹は存在している。
・にも関わらず、『ヴァルキュリアの失墜』による追加種族であるシズ・デルタに準ずる世界観を共有する設定や人物が、ナザリックに登場しない。
という原作内容から、超大型アップデート『ヴァルキュリアの失墜』は、ナザリック地下大墳墓のギルドメンバーが揃っていた時期ほどには昔であるものの、そのギルドメンバーのほとんどが『ヴァルキュリアの失墜』要素を盛り込んだ設定をナザリックに反映させない程度には、環境が円熟していた時期だったのだろうと考えています。
『崩壊のビフレスト』は、その後に公開されたアップデートだと思って頂ければ。