月曜日の放課後。窓際に座るはやては、外の空を見ていた。
重々しい、鈍い灰色をした曇が空一面を覆い尽くすような、そんな日。決して気持ちは晴れないが、しかし不思議と落ち着く。はやてはこの天候が、少なくとも雨よりかは好きだった。
帝華高校に編入してから3週間。はやてはリオン達と同じ特進クラスに入った。はやては魔法こそ全く使えないが、戦闘要員として期待されている面があるため魔法に関しての授業を受ける必要があると判断されたからだ。特進クラスへの途中編入も異例だが、魔法族でない生徒が特進クラスに入るのも異例中の異例である。
はやては何とか授業についていけることが出来ていた。記憶喪失の影響で最初の方は苦戦を強いられていたが、教員の配慮もあってか今ではだいぶマシになってきた。単位制という制度に幾分か助けられている面もある。魔法が使えないゆえに、魔法実践の授業は当然見学だが。
「はやて様、お疲れ様ですわ!」
「あ、ミサさん。お疲れ様」
はやては自然体のまま、クラスメイトに軽く腕を上げて会釈した。
はやてとクラスメイトとの関係もわりかし良好である。体育の時に見せる超人的な身体能力に魅了される人が続出し、リオンのような感じの人気を集めつつある。もっとも、身分が高い人間ではないため振る舞いに上品さはなく、授業についていけるとは言え勉強面は下から数えたほうが早いため、ファン層は分かれている傾向があるが。
再び視線を窓の外に向ける。灰色に敷き詰められた空が少しずつ動いていくのを、ただただぼーっと眺めるのは不思議と退屈しない。
「てい」
不意に頬を指でつつかれる。んぅ、と声を漏らして、はやては気だるげにその方へ向いた。
「風紀委員室いこー?」
振り向けば、そこには大きな白いリボン。相変わらずぴよぴよな空気を漂わせているひながいた。
リオンとひなの仲も当然ながら良好。風紀委員をしているリオンを風紀委員室から眺めるのがひなの日課だったが、最近はそこにはやてが加わることも多い。もっとも、はやてはリオンだけを見ている訳ではなく、ただただぼーっと空や人の流れを眺めているのだが。
「あー、ごめん。今日はこの後すぐ用事があって……また、今度ね?」
そして、今日のように『用事』があって断ることも少なくない。
「用事……あー、例の? あまり心配してないけど、一応気をつけてね?」
「分かった。気を抜いたことはないからね」
「はやてちゃんかっこいいー。リオ様ほどじゃないけど」
「あはは、僕もリオン様の戦いぶり生で見たかったなぁ」
「リオ様、あの時もほんとカッコよかったから! すぱーん、って空たかーくジャンプするんだけど、その時綺麗な――」
「え、えっと……用事が……」
発作が起きかけたひなを制止して、ひなと別れる。
「……よし」
はやては自分に気合を入れるように小さくつぶやくと、鞄を持って立ち上がった。