進撃の巨人 For the past five years 作:灰かぶり
これが処女作品で、書き方とかルールとか色々難しくて頭パーンってなって、感情の赴くままに書いてしまった文章です。高望みかもしれませんが、楽しんで頂ければとても嬉しいです! ……もちろんご指摘がございましたら改善していく所存であり、どんな感想も真摯に受け止めさせて頂きます。調子乗ってすみません……。
原作の歴史は変わりませんが、一部だけ変わっちゃうところがあるので、原作の世界の5年間というよりIFの世界の5年間として読んで頂けたらなと思っております。
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『――――この広い世界は、巨人で溢れていた。
それは、人を喰らう異形。人だけを喰らう怪異。
生きる為ではなく、殺す為ではなく、ただ喰らう為だけに喰らう化け物。
あまりにも大きく、あまりにも強く、死なず、老いず、永遠を生き、永久に人を喰らう。
それはただただ、人にとって死を超える絶望だった。
それはただただ、終わりで在った。
それでも人は、この広い世界に在れた。
――――その狭い世界は、壁で囲まれていた。
それは、人を守る檻。人々を守る境界。
生かす為ではなく、殺させない為ではなく、ただ守る為だけに守る壁。
あまりにも高く、あまりにも長く、壊れず、崩れず、平穏を与え、十全に人を守った。
それはただただ、人にとって生を約する希望だった。
それはただただ、絶対で在った。
その中だけで人は、この広い世界に在れた。
845年。
人は壁に守られながら100年の時を過ごしていた。
最も中心を円で囲む壁――ウォールシーナ。その外側を囲み、中間に位置する壁――ウォールローゼ。そしてさらにその外側を囲み、巨人領域に隣接して直接の侵入を阻んでいるウォールマリア。
その狭い世界をさらに三つの壁に分けられ、それぞれの壁の中に暮らす人々の間で貧富の差はあったけれど、それでも人は巨人に命を奪われず、平和に暮らすことができていた。
そして、壁に守られる長い時の中で人は、巨人を殺す方法を見つけ、巨人を殺す技術を発明し、巨人を殺す術を磨いた。巨人と戦う為に。巨人に奪われない為に。
しかし100年の時は、人を忘却の彼方へと連れ去るには十分過ぎる時間だった。
平穏を生きる人々は、巨人に喰われる存在だということを、世界の広さを忘れ、巨人のいない壁の中だけで世界は完結していた。
戦う術を持った兵士は、その術が巨人に立ち向かう為のものだということを、命を懸けて巨人を倒す為のものだということを忘れ、巨人のいない壁の中だけで力を持っていた。
人は忘れていたのだ。この時まで。
世界に巨人がいることを。巨人が人を喰らうことを。戦わなければ、死ぬだけだということを。
――――でも、私は知らなかった。知っていたけど、知らなかったんだ。
明日もまた、同じ日々が続くのだと。笑ったり、怒ったり、泣いたり、そして誰かを好きになったり、そんな当たり前の日々が続くのだと思っていた。当たり前すぎて、信じることさえしなかった。この時まで。
――――私は、知らなかったんだ。
この当たり前の日々に、終わりが来ることを。終わりだったことを。この時の私は、知らなかったんだ――――』
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