中の人繋が───あ、シンジ違いだ 作:手ぶらジーンズ後輩
間桐家は代々魔術師である。
だが彼には、間桐慎二に魔術師の才能はなかった。家を継ぐのは、養子として連れてこられた妹。
自分の役目は、よくて彼女に間桐の血を入れる役目だろう。それを、本来の歴史より早く知ってしまった慎二は聖杯戦争の危険から逃れるために街の外に出されていたのに、未練がましく戻ってきてしまった。
「格好悪いな、僕………」
帰っても、果てして自分に居場所があるなどと胸を張って言えるのか?言えないだろう、普通。
喚き散らすなら簡単だ、妹に見下すなと叫ぶのは簡単だ。だが、妹が目の前におらず考える時間ができてしまった故に慎二は冷静になっていた。
「あれ、おーいボク。こんな所にいたら危ないよ、最近行方不明者が多いんだから。ほら、お兄さんが家に送ってあげよう」
「あ、はい」
不意に声をかけられる。知らない男性だったが、警戒心なくその人に付いていった。
苦しい
痛い
怖い
暗い
辛い
死にたい
死ねない
内蔵が外気にさらされ、螺子で床や壁に貼り付けられる。舌や目も無数の螺子で潰されており、血が流れる。
狂いたい。死にたい。なのに、不可能。この世界に存在する魔術と呼ばれる存在の、考えうる最低の使い方の一つをその身で受けていた。
自分が悪いのだろうか?父の言葉を無視して戻ってきて。
いや、いいや………違う。違う違う違う違う。不幸だ、辛いことだ、だけどそれを自分のせいにして良いのか?
違うだろう。全部他人のせいだ。
そうすれば簡単に受けいられる。当主になれないのは後から来た妹と自分に才能を与えなかった両親のせい。
自分が今こんな目にあっているのはこの魔術師を放置している他のサーヴァントとマスター、そして犯人自身のせい。
この世全ての不条理は自分のせいじゃない。そして、受け入れろ。受け入れなければ、苦しみながら死ぬだけだ。
『不条理を』『理不尽を』『嘘泣きを』『言い訳を』『いかがわしさを』『インチキを』『堕落を』『混雑を』『偽善を』『偽悪を』『不幸せを』『不都合を』『冤罪を』『流れ弾を』『見苦しさを』『みっともなさを』『風評を』『密告を』『嫉妬を』『格差を』『裏切りを』『虐待を』『巻き添えを』『二次被害を』愛しい恋人のように受け入れる。
心がすっとした。
受け入れ、恐怖も消えた。
「…………あれ?」
殺人鬼にしてキャスターのマスター雨生竜之介は、作品として飾っていた壁に何も無くなっているのに気付く。
おかしい。旦那が片づけたのかな?男の子だったし。
偶然見つけた一人で浚いやすそうな男の子。見た目はまあ整ってたし、作品映えすると思い飾っていたのだが。
「『やあお兄さんどうしたの?捜し物?』」
と、不意に背後からそんな声が聞こえる。侵入者かと振り返り目を見開く。
「あれ君……何で、幽霊?俺のこと憎くて殺しに化けた?」
「『幽霊?やだなぁ、僕は人間だよ。それにお兄さんの事別に怒ってないよ。ほいほいついて行った僕にも原因あるし、お兄さんを捕まえられない無能な警察官が悪いんだからね』」
ヘラヘラと張り付けたような笑み。淀んでいるようで綺麗な瞳。ああ、もう一度ばらしたいなと思った瞬間、大量の巨大な螺子が竜之介を貫く。
「『それでもほら、お兄さんみたいな人を放っておくのは人として大切な何かを失ったような気がするし?だから──』」
僕は悪くない。
「───は!?」
気がつく。床に転がって寝ていた。
腹をさするが傷はない。
「………何だったんだ?」
夢だろうか?しかし夢だとしても
「俺の血、綺麗だったなぁ………」
今度少年に会えたら礼をしよう。
そしてその次の日、彼は銃で撃たれ死亡し、その少年に会うことはなかった。