魔王な嫁が世界を滅ぼす三秒前   作:織葉 黎旺

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帰宅と観察の二分前

「おまたせ、グレラくん」

 

 朝食を終え、此度の懇親会は解散の運びとなった。なのでグレラ君に連絡をして、例のデッドスペースまで来てもらった次第である。

 

「いえ、お勤めご苦労様でしたっす魔夫さま!」

 

 恭しく敬礼のポーズを取る彼を見て苦笑する。高身長でスタイルのいい彼にそういう姿勢を取られると、どうにもちぐはぐな構図になって気まずい。

 

「楽しまれたようで何よりです!!」

 

「う、うん」

 

 朝から散々かけられてきた単語の到来に思うところがあったが、流石に含意はないはずなので流す。

 

「直で城まで帰るルートでよろしいっすか??」

 

「ああ。もう寄るところはないですよね、ルシファル?」

 

「………………」

 

 そう聞くと、彼女は胸元から取り出した二枚のチケットで口元を隠し、期待の眼差しをこちらに向けた。動物園とプラネタリウムのチケットである。

 

「また今度にしません? 昨日の疲れが残ってますし」

 

「でも折角ここまで来たのよ?」

 

「そこまで遠い場所でもありませんし、日を改めた方がいいですよ。それにほら、昨日水族館で買った子達を料理してあげないと不味いじゃないですか」

 

「あら、そういえばそうね。美味しく料理してあげないと」

 

 妖しげにルシファルが笑うと、トランクがガタガタと震えた。このやり取りは中々面白いので、大して美味しくも無いだろう料理に使ってしまうのは勿体ないかもしれない、と少しだけ思った。まあ彼女がやる気なら、止める気はないが。

 

「ということで、城まで直で頼むよ」

 

「了解しましたぁ!! 面舵いっぱい!!」

 

「船でも運転する気かい?」

 

 謎の掛け声と共に車は動き出す。視線に気づいてそちらを向くと、大理石のテーブルに両手で頬杖をついたルシファルが、慈しむような目でこちらを見つめていた。

 

「どうかしました?」

 

「いえ、貴方が活き活きしているように見えたものだから嬉しくて」

 

「そうですかね」

 

「ええ。十文字の彼と話してる時もそうだけれど、貴方の素が出てる時が一番素敵だわ」

 

 瞳は、品定めするような暗い色を孕んで見えた。

 

「そう見えます? 気になる異性の前では、男はついカッコつけちゃうんですよ」

 

「うふふ、嬉しい。どちらの貴方も素敵ですわ」

 

 広い車内だっていうのに、勿体ないことにその余剰スペースをまったく活用せず、彼女は私の腕にまとわりつく。恐らく、到着するまで離れてはくれない。そのくらいは、二つのデートプランを我慢してもらった代償として、受け入れざるを得ないだろう。そう思った。

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