「そういえば今日、来客があるのよ」
「えっ」
お皿を洗いながらルシファルさんは、唐突にそう切り出した。
「来客……って一体どなたが?」
「四地王の何人かが、久々に会いたいみたいで」
私には貴方に割く時間しかないのに困ったものよねえ、と、もう大分慣れた手つきでお皿を拭きながら、ルシファルさんは口を緩めた。なんやかんやで自分を慕ってくれる彼らと会うのは嫌じゃないらしい。とはいえ、ルシファルさんを慕う彼らは相対的に私のことが嫌いなので、私抜きで会ってほしい。それはそれで暗殺の危険があるのだが。
――
「で、誰と誰が来るんですか?」
「ジンとローザとザラキアですって」
「癖の強いメンツですね」
癖の弱いメンツがいないのが四地王だが。
キンコーン、と唐突に部屋の呼び鈴が鳴る。
「あら、もう着いたみたいね」
「えっ早っ!?」
今行きますよー、とドアの方へ駆け出すルシファルさんを引き止める。ちょっと待ってちょっと待って、貴女が行くとまずいんだ。
「どうして?」
ルシファルさんは不思議そうに首をかしげた。しかし、ここは止めねばならないので事情を話す。
「ほら、覚えてません? 前にザラキア君招いた時にルシファルさんがお出迎えして、部屋入ってすぐに『魔王様に御足労わずらわせるとは貴様それでも婿たる人間なのかァァァァァ!!! そもそも貴様を婿と認めた覚えはないがなァァァァァァ!!!』ってすげー形相でキレてきたの」
「そういえば、そんなこともありました。でもその時に確か『私が好きでやっているのだからいいでしょう? 貴方ごときが
正確に言うならば、変わってしまった魔王を思って泣き、しかし魔王に怒られ気圧された
「ということで、私が出てくるわ」
「わかりました、お願いします」
何か嫌な予感がするな、と思ったが、ザラキア君が来る時点で嫌なことが起きるのは確定しているので、気にする必要はないと思った。
「はーい、いらっしゃいザラキア。お久しぶりね?」
「久方ぶりです、我が魔王よぉぉ!! 至高の御身に会えることをこのザラキア、三日前より只管渇望して……かつ……ぼ……う…………?」
城内に作られた私たちの住居には、しっかり玄関が存在する。その玄関までは廊下を挟まず、リビングから地続きだ。声はダダ漏れである。故にこの時の、彼の絶叫は鼓膜が破れそうなほどしっかり聞こえてきた。
「なーーーーんーーーーでーーーーすーーーーとーーーー!?!?」
そして私は嫌な予感の正体に気づく。――あ、そういえばルシファルさんは裸エプロンのままだった――と。