IS Ω ~インフィニット・ストラトス オメガ~   作:僧正

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夏です。僕らのウォーゲームを久々に見て、少々興奮してしまい、書きなぐった。そんな感じです。
低速更新ですがよろしくお願いします。


プロローグ

インフィニット・ストラトスΩ

 

 

プロローグ

 

 テレビ画面には2体の機体がせわしなく動き回っている。1機は銃撃を用いながらの弾幕で相手を牽制しながらも勝機をうかがう。もう1機のほうはというと、相手の銃弾幕に対し、ブレード1本という常軌を逸した装備である。弾道を先読みし、時には弾丸をいなし、時にはブレードで防御するなど、さながら人間業とは思えぬほどの技術とセンスを駆使しながら相手との距離を確実に詰めていく。

 一般的な視点から言うならば、圧倒的に前者、銃撃を用いた機体のほうが有利であろう。しかし、この一般という言葉は後者の機体には当てはまらない。なぜならば、その機体の搭乗者である彼女は、前回のこの大会においてそのブレード1本という装備のみで勝ち抜いたこの世界最強の女、ブリュンヒルデなのだから。

 次第にブリュンヒルデが相手との距離を縮め、そのブレードの間合いに相手を捉えかける。相手もこのままではいけないと後退しながら接近武器を取り出し、銃撃で対応する。だがその一瞬の対応が相手の命取りとなる。並みの者ならばその程度、隙にもならない僅かな合間をブリュンヒルデは見逃さなかった。機体のスラスターからエネルギーを放出し、それを一瞬で取り込み圧縮させ、それをさらに放出する。

 『瞬時加速(イグニッションブースト)』と呼ばれるそれは、機体を爆発的に加速させる代わりに直線的な移動であるため相手に読まれやすく、使いどころが難しい技術である。だがこの場面においては有効な一手であった。

 イグニッションブーストが難しい技術というのは何も相手に読まれやすいということだけではない。一瞬の加速によりかかる重力、そして目まぐるしく変わる視点、そしてその加速した機体を自身の望んだ位置で止めるブレーキ、等の様々な要因があるためである。

 そしてこの場面。ブリュンヒルデと後退した相手との距離はわずか十数メートル。そのわずかな距離でイグニッションブーストをすればどうなるかは、考えるまでもない。制御できないまま通り過ぎるか、相手に直撃。直撃して相手を混乱させるという奇策もなくはないが世界最強の女がそんな無様な真似をするわけがない。ならば通り過ぎたかと言えばそうでもない。その通り過ぎる一瞬を見計らってブレーキし相手の背後を突く。言葉で表すと簡単に聞こえるかもしれないが決してそのようなことはない。たとえ反射神経がいくら良くても、それはあくまで人間の範囲内。時速にして数百から千キロにも達する戦いの中で反射的に動けるものなどいない。

 ならばどうやって彼女はそれをやってのけたのか。反射神経が超人並みであったことか、はたまた時をかけた経験か、それとも直感的なセンスゆえか。いや、そのどれもが当てはまる存在であった。天才という言葉すらも霞むような存在、“鬼才”これが彼女にもっともあてはまる言葉であった。

 その勝負を観る誰もが息をのんだ試合はその刹那、けりがつくことになる。淡い光を放ったブレードで相手を斬り裂き、エネルギー残量を0にした。静まり返るフィールド。しかしそれもつかの間、大歓声が巻き起こる。多くは勝者への賛美。はたまたその試合への興奮の叫び声。勝者と敗者、その明暗が分かれたものの、互いの善戦に誰もが拍手し誰もが讃えた。その2者は互いに握手し抱き合い、ピットに戻る。選手が戻ったにもかかわらず、そのフィールドはいつまでも興奮冷めあがらない様子であった。

 

 

 そしてここにもう1人その興奮が冷めあがらないものが存在した。歳は10代前半から中頃あたり。黒髪黒目の東洋人の風貌である。髪は短髪、普段は目がきりっとしていて同年代では大人びた印象を与えるが、今は興奮のためか目が見開き、口は歓喜に歪められ、少し幼くも見える。彼の名は友澤 勇気(ともざわ ゆうき)。少し正義感が強めなごくごく一般的な少年である。

 その少年が見ていた番組が数年前から話題のインフィニット・ストラトス、通称ISの数年に一度の国際試合、モンド・グロッソの準決勝の生中継の模様であった。

 ISは今から8年ほど前、とある天災が発明した超高度なマルチフォームスーツである。その性能は今までの兵器をただの鉄くずに変えるほどの性能を秘めており、このIS数機で小国が落とせるとまで言われている。

 しかしそんなISにも弱点というものが存在する。それは女性しか搭乗できないということと、ISを作動させるうえで絶対に必要なコアが467個と限られていることにある。

 そんな背景があり、ISに乗ることができる女性は社会的な権力を次第に持ち始め、女尊男卑という傾向まで出始めるまでにもなった。

 そんな女性の乗り物であるISに多大な興味を傾ける少年、友澤勇気。何がそんなにも彼を駆り立てるのか。試合に出ていた最強の女が同じ日本人であることもある。彼の叔父がISの研究員であることもある。しかし最大の要因は彼が過去に経験したISに関する事件に対する羨望ともとれる憧れにある。

 彼の父親は日本のわかりやすい正義の象徴である警察官である。そんな父親の背中を見ながら育った彼はまっすぐ実直に育った。幼少のころには悪を挫く戦隊ヒーローものに憬れ、自身もいずれは彼らのように戦うことを夢見ていた。しかしそんな中現れたのが『IS』という存在であった。現実にあった“白騎士事件”は彼に一つのカルチャーショックを与えた。

 白騎士事件…詳細は省くが、とある者のハッキングにより日本に数千発ものミサイルが向けられた。その時の彼はわずか5歳であった。実際に危険にさらされ避難もした。何が起こっているか解らないながらも周りの状況を察し恐怖を感じた。その時彼の中にあったのはきっと正義のヒーローが助けてくれるという淡い現実味のない希望であった。

 そこに現れたのが白騎士、ISであった。その機体は全てのミサイルを打ち払い日本を救って見せた。そして役割を終えたかのように白騎士は去っていく。それを避難所のテレビ中継で見ていた少年は当然のように憬れた。夢にまで見たヒーローが自身を救ってくれたという先入観が余計に憧れを強くした。その裏では各国の軍との戦闘があったのだが純粋な幼少の彼にはそんなことは耳には入らなかったのだった。

 そして現在、8年の時が過ぎ、友澤勇気も中学生になった。そして知ったのは全てが綺麗な憧れではなくなったことだろうか。少しずつ大人になった少年は裏で何があったか、ISによりどのように世界が変わったのかを知ることになる。正義のヒーローという幻想を抱いていた少年にはショックが大きかった。数日引きこもって親を心配させたこともあった。

 そして彼は一つの結論に達した。たしかにIS によって世界が変革したのは事実であり覆しのできないモノであった。各国の兵士が職に追われたり、ISがらみのデモや反乱が起こったことも。しかし、確かなメリットもあった。各国の紛争はISという軍事力が牽制しあい、少なくなった。(アラスカ条約では軍事利用は禁止とあるがこれは建前で裏では争いがある)ISにより凶悪犯罪を防ぐということもしばしばあった。良いことと悪いことは表裏一体であることを少年は学んだ。そしてISそのものではなくそれを扱うものの行いによっていかようにも変わるのではないかと。

 世界を少し知った少年は、新たな自身の価値観(正義)を持つようになる。ISは正しく使えばきっと世界の平和に役立つものだとある種の確信を抱くようになった。ただ一つ残念に思うことは自身がISに乗れないことにあった。世界を知っても強さへの憬れは変わらず持っていたからだ。ここのところはほかの少年たちとも変わらず童心を持っていたのだった。

 

 このすこし正義感の強い少年、友澤勇気はこの数日後世界の常識を覆すことを引き起こすのだが、今はまだ誰もその事実は知らない。

 




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