脳内プロットによると原作まであと5,6話程度ですかね。
ISΩ
3話 結果と今後
とある研究室の一角。勇気は緊張した面持ちで椅子に座っていた。衣服は病院患者が着ているような白衣をまとっており、はたから見れば病人の少年が医師の診断を待っている状態にも見えよう。もっともこの数日の検査の結果から、彼は何1つ悩むべくもない健康体であると証明されており、ウイルスなどの病気の心配をしているわけではなかった。
勇気がこの数日行ってきたことと言えば、まず先にも述べた健康診断。その結果とそれ検査より過去のあらゆる勇気の身体データを比較することでどのような差異があるのか。また、実際オメガを起動させ、心拍数、臓器、脳、精神など異常をきたしてはいないか。等々、書き記すだけでそれこそ分厚い本が1冊できるのではないかというものであった。
そしてそれらすべての行程が終了し、結果を待っているのが今の勇気の状態なのであった。
心臓の音がいつも以上に動きわめいていることを勇気は実感する。この緊張はなにも自身の体の心配だけではなかった。もし結果がダメでオメガが取り上げられてしまったらと考えると身震いが止まらなかった。ほとんど諦めていた憧れのISをまさか起動させるとは勇気自身、思ってもみなかった。もしその憧れがまた自分の手から離れるならば、きっと起動させたことを後悔するだろう。これならば知らないほうがよかったと。
もっともこの勇気の心配はまるで意味のないものである。何故ならばオメガ自身が勇気を離さないからだ。極度の緊張からか、知っているはずの情報も抜け落ちているほど不安であったのだ。
勇気がこの部屋で待つこと数十分、ドアが開き、源内が鞄1つを片手に持ちながら入ってきた。
「よう、待たせたな。………おいおい、そんな緊張するなって。お前まるで死の宣告を受ける前の囚人のようだぞ」
源内はやれやれといった具合で、勇気とは真逆な具合で話す。しかし勇気にとってはこの結果が今何よりも重要な事であった。そんなのほほんとしていられるか!と自身の叔父を無言で半睨みする。
「あー、はいはい。私が悪かった。そう怒るな。一先ず、検査お疲れ様。本来ならここで前置きなりなんなり入れるんだが、…まあいい。それじゃあ結果を言うぞ。
問題なしだ」
「……………は?」
そんなにあっさりと言われると思っていなかった勇気は、呆然としたようにそう声を出すしかできなかった。
「だから、問題なしだ。あらゆるデータから見ても問題は見当たらなかった。世界最高峰の技術と人員を使っての検査だ。これでも不安ならば、私ではもう何もできないぞ」
少し呆れたように話す源内。よほど衝撃的だったのかと静かに勇気の様子を見守る。しかし、いつまで勇気から反応はない。いよいよ心配になってきた源内は勇気に近づく。
するとぶつぶつと声が聞き取れた
「―――――――――よ」
何か言葉が聞こえ耳を近づける源内。
「ん?なんだって?よ…?」
「―――――いよっしゃああああああああああ!!!!」
耳元で叫ばれた源内はたまらず勇気から距離を取り、耳をふさぐ。勇気の声は研究所に鳴り響き、疲れで眠っていた職員をもたたき起こすほどのものであった。それを直撃した源内のダメージは推し測るべくも無くである。
「ひゃっほーう!!まじで!夢じゃないんだよな叔父さん!!しゃあー!!まじテンションあがってきたああー!!」
先ほどの面持ちが嘘であるかのような変貌であった。あたりを動き回り、歓声を上げる勇気。前の葬式状態はいったいなんだったのか。もしかしたらその反動がここにきて一気に爆発したのかもしれない。
だがそれもすぐに鎮静化される。肩を叩かれ笑顔で振りむく勇気。そこにいたのは………鬼のような顔をした叔父源内であった。
そして、ゴン!!と響きのいい音が部屋中になるのであった。
「いってー、なにもまじで殴らなくていいじゃんかー。あー、こぶできてるよ」
「やかましい!あー、まだ耳鳴りが…。喜ぶのは構わないが、こちらに被害を出さないでもらいたいものだ、まったく」
「あー、うん、その件はごめんなさい。いやー、あまりの嬉しさに我を忘れてしまいまして」
にへへ、と笑う勇気にこれ以上怒っても無駄だと悟った源内は、深いため息を1つついた。さて、と一息つき、源内は本題に戻ることにした。
「それでは今後の予定を説明する。おっとその前にこいつを渡しておこう」
そう言って源内は持ってきた鞄から書類の入ったファイルと1枚のカードを手渡した。
「そのカードはこの研究所でのお前の証明書のようなものだ。こいつ1枚でこの施設内の売店、自販機等も無料で利用できる。周りにばれないよう、カモフラージュされているが絶対に無くすなよ」
「うん、わかった」
「それでそっちのファイルだが、ISを扱ううえで知っておかなければならない最低限の知識やお前の今後のスケジュール表などが入っている。基本持ち出さず、家で読むように。理由は言わなくてもわかるな?」
そんな源内の視線に、勇気はコクリと頷く。そんな勇気の様子に源内も頷く。これらの資料は国家の機密情報である。もっとも勇気の持つ書類にはたいしたことは書かれてはいない。精々、一般に出回っているIS情報より詳しい程度。だがそれを勇気が保有していると知られることは、あまりよろしくない状況だからである。
「では今後の事だが、お前はISを操縦するうえで、知識そして技術を学ばねばならない。そのスケジュール表に座学やら操縦と書かれているだろう。基本それにのっとり訓練が開始される。プライベートの時間は今までより減ってしまうことになるだろうが、悪いが我慢してくれ」
そんな少し申し訳なさそうな顔の源内。だが勇気の態度はまるで落ち込みがなかった。むしろ歓喜に満ちた表情である。
(ついにISの訓練か!やべっ、また興奮してきた。)
オラわっくわくしてきたぞ!といった某野菜人のような具合である。
ちなみに一般学生ならば座学と聞けば嫌な顔をするだろう。むしろ勇気にとってはどんと来いといった具合だった。何せ彼はISオタクなのだから。好きなことはとことん知りたがる勇気の性質上、ISの知識が多くなる事はむしろ好ましい事だった。
また、勇気自身勉強はこれと言って好きというわけではない。ただ、父親が文武両道を教育方針にしており、点数が低ければ小遣いが減らされるため、勉強はきちんとできる方である。また空手の道場にも通っていることから身体能力も悪くはない。
「―――それではお前にISの操縦を教える教師役を紹介する」
そう言って源内は携帯を取り出し、電話する。二言三言話し電話は途切れる。そして待つ事数分、ドアがノックされ、失礼しますという一声と共に一人の女性が現われた。そして源内の横に立ち、勇気に対しにこりと微笑む。それに対して勇気は少し顔を赤らめた。
「紹介しよう。彼女がお前の指導役となる水奈月 楓(みなつき かえで)だ。彼女はお前が今後通うであろうIS学園の第一期卒業生にして、整備科主席。卒業後はうちの研究所の優秀な研究員として働いてもらっている。ちなみに、オメガの開発にもかかわっているから何でも聞くといい」
「ふふっ。室長、褒めても何もでませんよ。―――ご紹介にあずかりました、水奈月楓です。これから貴方のIS操縦の指導役をさせていただきます。よろしくね、友澤勇気君」
「う…あ、えっと、宜しくお願いします。水奈月さん」
「うーん、これからも顔合わせすることだし、もっとフレンドリィにいきましょ。わたしを呼ぶときは楓で構わないわ。その代り、私は勇気君って呼ばせてもらうから。良いでしょ?」
そう言って微笑む楓。そんな様子の楓に対し、勇気はさらに顔を赤くする。それも無理ないことかもしれない。水奈月楓は所謂美女であった。スラリとした均整のとれた体にセミロングの少し茶色がかった髪。目はパッチリしており、美人ともかわいいとも取れる顔立ちであった。
同年代の女子と話すことにはあまり抵抗がなかった勇気であったが、相手が年上のそれも美人となれば話は変わる。
「あう、え?あ、はい」
と曖昧な返事をする始末であった。そんな勇気の様子を面白いものを見たと思う人物がいた。もちろん源内である。にやにやした悪い顔をしている。
「よかったな、勇気。お前好みの年上のお姉さんに指導してもらえて」
爆笑をこらえるかのような、傍から見れば非常にうざい顔である。まるで先ほどの恨みを晴らすかのようである。そんな源内の言葉に勇気は、ビクッと体を反応させ、身を乗り出そうとするも初対面である楓がいるため踏みとどまる。ものすごい形相で源内を睨みつけるも、源内は何食わぬ顔で口笛を吹く有り様だ。
そんな二人の様子にくすくす笑う楓。勇気と源内の視線が楓に集中する。
「ふふっ。ごめんなさい。室長と勇気君のやり取りがあまりに面白いものだからつい。仲がいいのね」
「こいつが赤ん坊の時から面倒見て来たからな。好みや癖なんかわかるものさ。何よりこいつをいじるのが面白い。予想通りの反応だからな、くくく」
「だめですよ、室長。あまり勇気君をいじめちゃ」
そう言って大人二人の会話が続く。話題の中心(おもちゃ)にされている勇気はというと、面白くないといった顔で拗ねている。そんな様子に気づいた二人は笑いながら謝った。
「遅れましたが改めまして自己紹介させていただきます。友澤勇気です。そこの馬鹿叔父の甥です。えっと、みな…楓さん。これからご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いします。」
「ええ。よろしくね勇気君。ビシバシ鍛えてあげるから、一緒にがんばりましょう」
「はい!」
そして楓から差し出される手。勇気は少し躊躇するも、楓の悲しそうな顔を見て慌てて握手する。すると楓の顔はすぐににこやかになるのであった。狙ってやったのならば、なかなかの策士である。
そののち世間話もほどほどにして楓は部屋を後にした。そして勇気もようやく家に帰ることになった。数日ぶりの我が家であるが、すこし懐かしさも覚える。なにせあまりにも物事が大きかったのだから。
移動の準備も整い、用意された車に乗り込み研究所を後にする勇気。車に揺られ1時間弱、勇気は自身の家にたどり着く。運転手にお礼を言い、玄関を開ける。すると突然衝撃が走る。涙ながら勇気を抱きしめる母であった。その後ろには安心した表情の父。ようやく帰ってきたと感じた勇気は一言、
「ただいま」
と言いISのことをしばし忘れ、家族団欒を楽しむのであった。
水奈月楓はオリジナルキャラになります。
感想、ご指摘等ありましたらよろしくお願いします。