忙しすぎてなかなか書けないせいで、結構遅れ気味。楽しみにしている皆さん、すいませんです。
無理に一週間投稿を維持しようとすると、元から低かったクオリティーが更に低くなってしまうので、しばらくは許して下さいませ……
でわ、どうぞぉ
「うん、どうやら調子は戻ったみたいね」
ハルナは、昼食として作ったラーメンを食べながら自分の前に座る親友兼ルームメイトである夕映の顔を見てボソリと呟いた
「んむ? ……えぇ、おかげさまで。ちょっと頭がフラフラしますが」
「それは寝過ぎなだけでしょ。まさか、15時間みっちり寝るとは思わなかったわ」
「私も起きたらお昼間近と知った時は驚いたです」
メンマをコリコリと齧りながら夕映は自分で呆れたと言うように呟いた。
「なんでそんなに眠いのよ? あっ! まさか、夜中に1人でモンモンしてたから寝不足になったとか?」
「何をアホ言ってるですか、ハルナじゃあるまいし」
「私だって寝不足になるまでやりゃしないわよ。で、なんか心当たりはないの?」
「んー……」
にゅふふと笑いながら聞くハルナの言葉に、夕映は原因になりそうなものはないか考えてみた。だが、いくら考えても立っていられないほど眠くなるような事はしていなかったはず。寝る間を惜しんで本を読んだ訳でもないし、徹夜で勉強した訳でもないし。そもそも嫌いな勉強をするくらいなら素直に寝てるだろう。そしてハルナが言うような親友相手でも声に出して言えないような事もしていない。つまりは原因不明。
「やはり特にはないですね」
「何か変わった事はー……?」
「変なもの食べたとか飲んだとか」
のどかとハルナがそう聞くのでもう1度考えてみるが、やはり心当たりはなかった。
「いいえ? 強いて言うなら、変な夢を見たくらいです」
「夢ー……?」
「えぇ。大きな図書館の中に居て、ここはどこだと驚いていると、カウンターにどこかの制服っぽいものを着た私が居て図書館の説明をすると言う変な夢です。もう詳細は忘れてしまいましたが、変わった夢だったのは覚えているです」
夕映は昨日の朝に見たはずのその夢を思い出そうと頭を捻るが、図書館の全体像や自分が案内していた事くらいしか思い出せなかった。何か聞かれた気がしたが、なんだったろうか?
「それは……フラグね」
「はい?」
何やらメガネを光らせながら、ハルナが妙な事を言い出した。
「これから夕映は信じられないような事件に巻き込まれていくのよ。異世界の戦争に巻き込まれるとか、裏社会の抗争に関わっちゃうとか」
「漫画じゃあるまいし、そんな事になる訳がないです」
「まぁー、よくある展開だけどなんかそれっぽくない? 謎の夢に、謎の体調不良。夕映に不思議な能力が宿るかも知れないわね。うわっ、楽しみ!」
「そ、そうなのー……?」
「そんな訳ないでしょう。まぁ、それだったら退屈しなくていいかもですが」
否定しつつも、そんな展開になったら面白いと思った夕映だが、彼女の常識的な頭脳はそんな事にはならないと完全否定してしまう。ひょいひょいと全員分の器を重ねて持って行き流しで水に晒しながら、そんな夢のない自分の考えに思わずため息をつく。
「さんきゅー夕映。でも、本当に何か能力が使えるようになったら真っ先に教えてね? 漫画のネタにするから」
「はいはい」
おざなりに返事をして、夕映はタンスからコートを取り出した。さっと羽織って姿見で軽く確認、そのあと財布を取り出し中身を確認する。
「でもー……、超能力とか憧れるよねー……?」
「まぁ、人と違う事が出来るってのは楽しいかもね。のどかはどうよ? 欲しい能力とかある?」
夕映が出かける準備をしている間、片付けをやって貰い暇になったのどかは、ハルナと"もしも"の話をして盛り上がっていた。今まで読んで来た本に登場するさまざまな特殊能力を思い浮かべて、もし自分が使えるならどんなものが良いかと言うよくある内容だ。
「私なら、空が飛べるようになりたいかなぁー……。きっと気持ちいいよぉー…?」
両手を広げて、鳥のように飛んでいる自分を思い浮かべて、のどかはなんとも幸せそうに微笑んだ。そんななんとも純真な表情に、ハルナもニヤケてしまう。
「さて、これでよし……っと。ん? ……ハルナ、何のどかを変な目で見てるですか?」
「変な目って何よー。この純真無垢な顔を見て癒されてるだけよ。なんか自然と目尻が下がっちゃうのよね。のどかの顔って」
むふーっと鼻息荒くのどかの顔を観察するハルナに、のどかは照れ臭そうに顔を背けた。親友とはいえ、そんな風に見つめられたら恥ずかしいものだ。
「初孫を見るお爺さんのようになってるですよ?」
「あぁ、近いかも。ほらほらのどかちゃん。お爺のお膝においでー?」
のどかに向かって両手を広げるハルナだが、のどかは乗るべきか乗らないべきか判断に迷ってマゴマゴしてしまう。笑顔で手を広げているハルナと隣に来ていた夕映の顔を交互に見て、とりあえず夕映の影に隠れた。
「あぁ、逃げられた。爺ちゃん悲しい」
「アホですか。……さてと、それでは私は出かけてくるです。3時ごろには帰ってくる予定なので……」
「あぁ、了解了解。そうだ! 本屋行くならついでにスケブも買って来てくれない? 私これから原稿しないといけなくてさぁ」
そう言いながら自分の財布を投げて寄越してきたハルナの頼みを、夕映は軽く了承して財布をカバンの中にしまった。
「まぁ、いいですよ。いつものでいいですね?」
何度かついでによろしくと言って頼まれた事があるので、何を買ってこればいいのかはすぐに分かった。
「うん、よろしくー」
「いってらっしゃい、ゆえー……」
「のどか、ハルナが何かして来たら大声で助けを呼ぶですよ?」
「あははー……。分かったー…」
「ちょ!! あたしを何だと思ってんのよ!!」
いつもの軽い冗談を言い合ってから、夕映は街へと出掛けた。
「予定より随分出発が遅くなってしまったです。売り切れてないといいですが」
1月にしては暖かい街中を夕映は足早に進んでいく。彼女のお目当ては、かねてから気になっていた作家の新刊を買いに行くことである。本来は午前中に行って帰ってくる予定だったのだが、自身の思いがけない寝坊のおかげで、予定が午後にずれ込んでしまったのだ。
「あんまり寒くなくて良かったです。寒さに震えながら歩くのは堪えるですしね」
空高く輝く太陽を薄目で見やり、その頑張りに感謝しながら夕映は目的の本屋に向かう。歩くたびに少し暑くなって来た夕映は、もしかしたらコートも要らなかったかもとカバンに仕舞うべきかと悩んでいると、向かいから来たコート姿の女性に声を掛けられた。
「やっほっ! 夕映っち! 今日は相方は居ないんだね」
「んぇ? あぁ、朝倉さん。こんにちはです」
余り見ない野暮ったいコートを来た和美が手を上げて挨拶してくるので、夕映も簡単に挨拶を返した。
「相方とはもしやのどかの事ですか?」
「違うの? いつも一緒に居るイメージがあったんだけど」
「たまには1人で行動する事だってあるです。誰かと一緒じゃないとどこにも行けないほど子供でもないですしね」
「あははっ。まぁそうだよね。見た目はともかく」
「見た目が子供で悪かったですね」
夕映はむすっとした顔でそう言うと、和美はごめんごめんと軽く謝りながら持っていたデジカメで夕映の膨れっ面を撮った。口では謝ってても全く気にしていない様子の和美に、夕映は自分の周りにはこんなのばかりかと密かにため息をつく。
「朝倉さんはなにをしてるですか? そんなコート着てるのは初めて見たですが」
「あぁ、これは借り物よ。ちょっと上汚しちゃってね、この中ワイシャツだけなのよ。ほら」
そう言ってボタンを外して中を見せてくる和美。夕映が何気無く覗き見ると、確かにワイシャツを着ている。白く、胸元にポケットが付いている一般的物だったが、夕映はちょっとした違和感を憶えた。それが何か知るためにもう少し目を凝らしてみると、そこには大きな膨らみの頂きに透けて見えるピンクの何か。
「ぶふっ!? あ、あさくりゃさん!? 何で着けてないですかっ!?」
慌てふためく夕映の姿に自分の状態を把握したと分かった和美は、そそくさとボタンを止めてコートの前を閉じてしまう。
「上を汚しちゃったって言ったっしょ? 下着まで全部行っちゃってね。今、センセの所で洗濯中なのだわ」
「センセ……ですか? と言うか、何でシャツ1枚で出歩くですか」
「さっきまで
参った参ったと言った感じで頭をかきながら和美が説明すると、夕映達は一応納得した。
「下着は借りなかったですか?」
「いやー、そのー………ブラはね……ナハハハハッ」
夕映は授業をする
「借りなかった理由は分かったです」
「いやぁ、そのジト目、下着は無理かって言った時の
自分をかき抱きブルルッと震えて見せる和美に、夕映はため息混じりでツッコむ。
「それは単に寒いだけなのか、それともそう言う性癖なのかで今後の付き合い方を考える必要があるですね」
「あははっ。ちなみにそう言う性癖だったらどうすんの?」
「今後、朝倉さんには常に生暖かい視線だけを向ける事にします。二度と興奮する要素を与えません」
そう言って夕映は実際に生暖かい視線で和美を見つめた。
「その対応で正解なのか私には分からないけど、なんとなく嫌だからやめてね? ………ん? 電話?」
夕映の物言いにガックリと肩を落とした和美だったが、ポケットの中で鳴っている携帯に気付き、文句を後回しにして携帯を取り出した。
「はいはい部長? 今向かってますから、もう少し………はい? パソコンが壊れた? データも全部って、昨日送った原稿もですか?」
何やらトラブルがあったようで、うへぇーっと面倒くさそうな表情をした和美は携帯に耳を押し当てあれこれ話し始めた。夕映は電話中に別れるのも薄情かと思い、和美の電話が終わるまで待つ事にした。十数秒ほど相手先と話し込んでいた和美が、ピッと通話を切り夕映に向き直った。
「悪いね夕映っち。ちょっとトラブルみたいで急がないといけなくなっちゃったわ。私はもう行くから、また学校でねー」
手で軽く拝むような仕草をしたあと、和美はスタコラと走って行った。
「なんとも忙しない人ですね。まぁ、いつもの事ですが……」
勝手なことを言って帰っていった和美への文句はあれど、本人が居ないのなら言っても仕方がないとそれ自体は棚上げして目的地に向かうおうとしたら、足下に何かが落ちているのに気付き拾い上げた。
それは1枚のカードだった。トランプよりは縦長で全体的に大きいサイズのカードで、占いが趣味であるこのかが時折持っているタロットカードによく似ていた。
「んー……、タロットカードという奴ですかね? って! こ、これは……私、ですか?」
夕映が拾ったカードを何気無く裏返してみると、そこには中等部の制服を着た上に、黒いとんがり帽子に黒のローブを着て、更に箒と分厚い本を持ってポーズを決めた夕映の絵が描かれていた。
「何ですかこれは……。写真を加工して作ったにしては凝った作りですね」
夕映はそのカードをじっくりと見てみたが、その素人が作ったにしては重厚な造りに思わず見惚れてしまう。
「こんなもの作ってどうするつもりだったんでしょうか。というか、人の写真で勝手にこんなもの作らないで欲しいです」
夕映は一体どういうつもりで作ったのか電話して聞いてみようと思い携帯を取り出したが、ついさっき忙しいと言って走って行ったのを見ているので、今掛けてもはぐらかされるんじゃないかという気もする。
「むむむ………」
夕映は携帯を睨みながらどうしたものかと考えたが、携帯が鳴り出したので一旦考えるのをやめて電話に出た。
「もしもし?」
『あ、夕映ー?』
「なんですハルナ? のどかに変な事してないでしょうね?」
聞こえて来た親友にとりあえずの懸念を尋ねてみると、向こうからずっこけるリアクションを取った音が僅かに聞こえて来た。見えないのにちゃんとリアクションを取るとは、芸人の鏡だ。
『何であんたはあたしがいつでもセクハラしてるイメージなのよ? まぁ、それは兎も角、のどかがついでにスーパーで買い物して来て欲しいって』
「別にいいですが、何でハルナが言うですか?」
普通だったらのどかが掛けてくるのではと思った夕映がそう聞くと、ハルナは何でもないと言うように、
『のどかは今、あたしの漫画の為にヌードモデルをしてくれてるから動けないのよ』
「のどかに何させてるですか!?」
セクハラ以上の事をしていたハルナに夕映は街中だと言うのに思わず怒鳴り返してしまった。
『あははははっ! 冗談よ、冗談。流石ののどかでもヌードデッサンはさせてくれないわよ。ちょっとポーズ取って貰ってるから動けないだけよ』
「ハルナなら無理にでもさせそうだったので騙されたです」
『あたしだって、そうそう親友をひん剥いたりしないわよ』
「………まぁ、いいです。それで何買えばいいですか?」
いろいろ言いたいことはあるが、それをこの街中で言い始めたらさっきから微妙に集まっている視線が更に集まって来そうなので、文句は部屋に帰るまで我慢する事にした。
『ん〜〜とねぇ………。白菜に大根に昆布に……春菊にネギ……え? ネギはある?』
「あとでメールして下さい……」
このまま話していてもグダグダになりそうだと思った夕映は、買い物リストをメールするように言うとさっさと切ってしまった。携帯を仕舞い、そう言えばと手に持ったままだったカードを見つめる。無駄にクオリティーの高いこのカードを和美が何に使う気だったのか分からないが、流石に人のものを勝手に捨てる訳にもいかず、どうしたものかと夕映はしばらく考えていたのだが、結局そのままポケットに仕舞い込むだけに留めた。
「………まぁ、帰ってから朝倉さんの部屋に届ければいいですね」
夕映はあとで和美に言うべき文句を思い浮かべながら最初の目的地である本屋の扉をくぐった。
ちょっと短いですねぇ、すいません。
夕映に魔法を気付かせないよう立ち回らせる予定だったのに、これじゃあ確実に魔法がバレるね? こうなったら、とことんヤッテヤル……
次はゼロ魔の方更新出来ればいいなぁ。なんか、全然文章が降りてこないんですよねぇ。オマケ外伝ののどかの話はスイスイ出て来るのに………