魔法探偵夕映 R《リターン》   作:遁甲法

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夕映が主役のSS増えないかなぁ。
そんなこんなの想いを込めて、第二話です。

なんか変な感じになったけどね。


過去に来ていたけど、

 

 

 

 

 

 夕映が名前を名乗ってから、きっかり10分間固まっていた高畑がようやく再起動し、話を進める事が出来るようになった。

 

 「もう一度確認するけど、本当に夕映君なんだね?」

 

 「何度確認されても変わりませんよ」

 

 高畑はその答えを聞いたのち、大きなため息をつきながらソファーにもたれかかった。目を手で覆い、大きく深呼吸しながら高畑は考える。

 

 (おそらく、彼女は本当に夕映君なのだろう。しかし、なぜ大人の姿なんだ?それにみんなが大人の姿で写っているあの写真。考えられるとするなら……)

 

 自分の知っている彼女との見た目の違いと、写真に写る自分の教え子達。そして故人のはずのナギと未だ子供のはずのネギが成長したと思われる姿。ナギはともかく、ほかの事は常識さえ捨てれば、簡単にわかる事だった。捨てられればだが。

 

 「夕映君。最後にもう一つ質問していいかね?」

 

 「またですか?まぁ、いくらでもどうぞ。なんなら3サイズも答えましょうか?聞いてもつまらない数値ですが」

 

 余りに質問が多いので、さすがの夕映も投げやりになってきた。何せ彼女にとっては当たり前の事ばかり聞いてくるのだ。しかも、相手も知っているはずの事ばかり。おかしいとは思いつつ、答えるのがそろそろ億劫になってきているのだ。

 

 「いや、そんなセクハラまがいな質問はしないよ。ただ、今日は何年何月何日なのか教えてほしい」

 

 「……先生?よもや、若年性痴呆症と言う奴ですか?さすがに学園長より先に呆けるのはまずいですよ?」

 

 「いや、違うから大丈夫だよ。それで、今日の日付を教えてくれ」

 

 夕映は首を傾げながら西暦から答えていく。

 

 「今日は確か、2011年の11月14日……だったですね」

 

 「そうか……。2011年か……」

 

 夕映はその様子に、どうも何かがおかしいと気付いた。

久しぶりに会った恩師の不審な挙動に、今まで動いていなかった探偵としての思考回路がフル回転を始める。

 

 「高畑先生?日付に何か問題でも?どうもさっきから先生の様子がおかしいのですが」

 

 「その事なんだが、夕映君。君に言わなければならない事があるんだ」

 

 夕映の目をまっすぐ見つめ、高畑は決心がついたと言うように身を乗り出し語り始めた。

 

 「実は夕映君。今日は2003年の1月22日なんだ」

 「はっ?」

 

 高畑がそう言うと、夕映は何を言っているのか分からないと言った表情を浮かべて高畑の顔を見返した。せっかく動きだした頭がすっかり止まってしまい動けなくなる夕映。しかし、そんな事はお構いなしに高畑は更に言葉を続けた。

 

 「僕がさっきから驚いているのはね、僕の知る君はまだ中学生で、魔法なんてまったく知らない一般人のはずなんだ。だから最初、君が名乗った時、同姓同名かもしくは僕をからかっているのかと思ったんだ」

 

 驚き、目を瞬かせている夕映は、その言葉にようやく反応を返した。

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!え?2003年?私が中学生って、え?ドッキリですか?」

 

 「……いや、ドッキリじゃないよ。僕もその方がどんなに良かったか」

 

 落ち着いた雰囲気の大人版夕映が慌てふためく姿に昔の、いや高畑にとっては今の夕映の姿が垣間見えて、彼女が本当に成長した夕映であると確信できたようだ。

 

 「ほ、本当ですか?高畑先生。いえ、そうです!さっきのあの時計!!ようやく思い出したです。あれはカシオペアに似てたんでした。だから見覚えがあったんですね」

 

 「カシオペア?あの星のかい?」

 

 「いえ、そっちではなく、そういう名前のアイテムがありまして。時間跳躍が出来るタイムマシンなのですが」

 

 「タイムマシンだって!?たった8年でそんなものまで出来てしまうのかい!?」

 

 今でも映画などでは度々出て来るタイムマシンだが、それは飽くまで架空の物。それが現実にあり、しかもそのせいで、自分の教え子が成長した姿で目の前に現れるなど、高畑は信じられ無かった。しかし、現に夕映は大人の姿でここに居る上、他でも無い自分自身が彼女は本物の綾瀬夕映だと感じているのだ。出張などで余り接する事が出来ていないが、それでもこの2年間担任として接して来たが故の感覚だった。タイムマシンなど、100年単位で数える未来の物だと思っていたら、ほんの10年たらずで出来てしまうのかと高畑は愕然とした。

 

 「いえ、カシオペアは8年後の世界でも作り出す事は出来ません。私が見たのは、更に未来から来た人物が持っていた物です」

 

 「更に未来……か。一体何年後なんだい?」

 

 「100年以上先の未来から来たと言ってたですが、正確な年数は知らないです」

 

 高畑はそのスケールの大きさに考えない方が自分の為だと思い、お茶を一気に飲み干して頭をリセットした。夕映は高畑が落ち着くのを待ってから、話の続きを始める。

 

 「さっき私は宛名の無い小包から、そのカシオペアによく似た時計を見つけました。それを弄っていたら目も眩むほどの光を発したんです。そして、光が収まって少ししたら、先生が訪ねて来たと言う訳です。たぶん、いえ、確実にあれが原因です」

 

 夕映はそう語りながら、先ほどゴミを捨てたゴミ箱を手にして中を漁り出した。

懐中時計をもう一度組立直せば解決できると思っての事だったが、外見だけじゃなく、中身もほぼ全部バラバラになっている懐中時計を素人が直すのは不可能だった。部品が細かい上に、どれがどれだか分からないと言う、どうしようもない状態になっていたのだ。

 

 夕映はゴミ箱の中を覗きながら、深くため息をついた。

 

 「たぶん、この懐中時計が原因で間違いないでしょう。まさか、また時間移動をするとは……」

 

 「また?またって前にもこんな事があったのかい?」

 

 夕映の呟きに、高畑は彼女の波乱万丈な人生の一部を垣間見て、これからそんな人生を歩むだろう中学生の夕映が心配になった。

 

 「いえ、前は8年も戻ったりはしませんでしたが。……しかし、2003年って事は、ネギ先生が来るのは来月と言う事ですか?」

 

 「あぁ、そうだ。やはりネギ君の事も知っているんだね」

 

 「えぇ、勿論。彼に出会えた事は、私の人生でもっとも幸運な事の一つです」

 

 「……そうか」

 

 高畑は満足そうに微笑みタバコを取り出した。夕映はそれを見て、棚にしまってあった灰皿を取り出し彼の前に置いて、スッと手を伸ばしてタバコに火を付けた。

 

 「あぁ、すまないね。しかし、余り魔法を使わないようにして欲しいな。一般人にバレると困るからね」

 

 「おっと、そうでしたね。ここが8年前と言う事は、まだ魔法を秘密にしていないといけなかった時期ですね」

 

 「……8年後は違うのかい?」

 

 「えぇ。2年後には魔法世界を公表する予定でしたから、少しずつ魔法の事をバラしている所だったんです。もっとも、だからと言って一般人に魔法を教えると言う訳では無いですよ?ただ、魔法と言う物があり、魔法使いが居ると言う事を教えているだけです」

 

 たった8年で、世の中がそうまで変わるとは思いもよらなかった高畑は、紫煙を深く吸い込み、その味でもって気分を落ち着かせた。

 

 「フゥ。とりあえず、君が麻帆良に敵意のある人物じゃないと分かったが、このままと言う訳にもいかないな。一度学園長に会ってもらいたいんだけど、いいかい?」

 

 聞かれた夕映は、すでにその展開を予想していたので、二つ返事で了承した。

 

 「えぇ、構いません。さっそく行きましょう。もうすぐでお昼ですし、ついでにお昼でも食べに行くとします」

 

 自分で作ると言う選択肢は彼女の中に存在しないのだ。麻帆良はそれでも困らない程、飲食店が充実しているし値段もすこぶる安い。栄養の事を考えてメニューを選べば、ずっと外食で済ませられたりする。夕映の様に家事が得意で無いものには大変助かる街なのだ。麻帆良は。

 

 「あぁ、そうだね。お茶ご馳走様、変わった味だったけど美味しかったよ」

 

 「滋養強壮にいいハーブやらなんやらを混ぜてますからね。精が付くですよ」

 

 なんやら、の部分がとても気になった高畑だが、聞くと後悔する予感がして何も言わずに席を立った。夕映がささっとカップを片付けるのを待って、二人揃って学園長室へ向かった。

 

 事務所から出た夕映は、外の景色がまるで変わっている事に驚き、まるで初めて来たかのようにキョロキョロと街を見回している。

 

 「……景色が全然違いますね」

 

 8年後の景色を知っている夕映にとって、懐かしいと言うよりはむしろ新鮮だった。

 

 「この辺りは、そんなに変わっているのかい?」

 

 「そうですね。今ある建物が無かったり、逆に未来にはあってここには無かったり、結構変わるものですね」

 

 学園長室がある中等部の校舎までの道のりを、夕映はずっと今との街並みの違いを探して歩いた。

 

 「そうだ、もう少し未来の事を聞いてもいいかな?」

 

 しばらくタバコを吸う事に専念していた高畑が、不意に少し前を歩く夕映にそう問い掛けた。

 

 「未来の事をですか?んー……、余り話すのは良くない気がするんですが」

 

 「何故だい?」

 

 「よく映画や何かにあるでしょう?未来の事を知り過ぎて、自分の知っている未来とはかけ離れた世界になってしまうとか。ここで私が話すと、元の時間に帰れなくなりそうですし」

 

 少し違う行動をするだけで、まるで違う未来になるのは、中等部時代に夕映は体験しているのだ。あの魔法が公表された世界も、おそらくパラレルワールドとなって今も続いているだろう。今、高畑に話す事によって、単純な時間移動では帰れなくなる可能性は十分に考えられる。夕映は、その可能性を危惧していた。

 

 「あぁ、タイムパラドックスって奴だね?」

 

 「えぇ、それです。そのまま移動するだけでいいのなら、あの懐中時計を直せば帰れるでしょうが、もし世界が分岐してしまったら……」

 

 「単純に未来へ帰ったとしても、そこは君が居た世界では無くなっていると」

 

 「そうです。可能性があるのなら、極力未来に影響しかねない事は避けるべきです。もっとも……」

 

 夕映は軽く息をついてから、振り返って高畑と向き合い、少し不安気な表情で言葉を続けた。

 

 「既に高畑先生が未来の一部を知ってしまっているので、もう分岐してるかも知れませんが」

 

 事務所で見た写真の数々により、高畑の知識は以前とはまるで異なっているはずだ。

 

 「……その時はどうするんだい?」

 

 「どうしようもないですね。当てはありますが、無理だった場合はここでもう一度8年過ごすしかないです」

 

 フッと軽く笑って不安気な表情を消し、夕映はまた歩き始めた。高畑の知る夕映とは方向性の違う落ち着き方だった。よほどその当てとやらに自信があるのか、それとも、帰れなくとも気にならないのか。高畑は、自分より遥かに年下である彼女の、これまでの人生に興味を覚えた。しかし、彼女が帰れなくなる危険を犯してまでその好奇心を満たす事は出来なかった。

 

 「元教え子を不幸にする訳にはいかないし、僕の質問は無かった事にしてくれ」

 

 「ありがとうです。まぁ、どうにかなるですよ。今までもそうでした」

 

 時間移動すらどうって事無いと言わんばかりの夕映の態度に、高畑は苦笑しつつ新しいタバコに火を付けた。

 

 麻帆良学園中等部の校舎までかなりの距離を歩いた二人だが、共に裏の世界に身を置く者、この程度の道のりでは散歩にもならない。二人は昼休みに入って賑わいを見せる校舎を、生徒達とぶつからないようにゆっくり歩きながら学園長室に向かった。

 夕映は久し振りに歩く中等部の校舎に、懐かしそうに目を細めながら眺めている。彼女にとって、人生最大の転機がいくつもあった中等部時代。ほんの少し違っていたら、魔法も知らず、普通の人生を歩んでいたのだろう。そう思うとどちらが幸せだったのか。廊下を行き交う生徒達を見ながら、夕映は魔法を知らずに過ごした場合の人生を夢想する。普通に中等部を卒業し、皆と一緒に高等部へと進み、友人達とわいわい騒ぎながら大学生にでもなり、きっと普通の企業にでも就職していたに違いない。それもきっと充実した人生と言えるだろう。が、きっと今ほど満足はしてなかったはずだと夕映は確信している。危険もあるが退屈では無い。そんな裏の世界が割と気に入っているのだ。今回の様な事も、普通の人生を過ごしていたらまず体験出来なかっただろう。そう思うと魔法を知らずにいる事は考えられ無い。これまで過ごした人生と、想像した普通の人生を比べてみて、夕映はもう一度魔法を知れた事に感謝した。

 

 

 「失礼します、学園長。連れて来ました」

 

 「失礼するです」

 

 ようやく学園長室に辿りついた二人は、麻帆良のトップ、学園長、近衛 近右衛門と相対した。

 

 「ほぉ、その女性がそうかの?高畑君」

 

 「はい」

 

 近右衛門はその声を受けて夕映をじっくりと観察した。

まだ二十代にも届いてないように見える彼女が、自分達関東魔法協会の監視を潜り抜けて、ビルを一棟建てたなど信じられなかった。もしかしたらかなりの組織がバックにあるのでは。しかし、それなら素直について来ないはず。これからの会話でその辺りを明らかにして行こう。そう思った近右衛門は夕映への質問、いや尋問を開始した。

 

 「さて、儂がこの麻帆良学園の学園長、近衛近右衛門じゃ。よろしくの」

 

 「どうもです」

 

 「君には幾つか聞きたい事があるんじゃ。正直に答えて欲しい」

 

 「えぇ、分かりました。でも、プライベートに関する質問は拒否させて頂くです」

 

 「ふむ、まぁいいじゃろぅ。では、まず君は何の目的で麻帆良に来たのじゃな?ただ移住したいだけなら、もうちょっと穏便な手段で来て欲しかったんじゃが?」

 

 夕映に鋭い視線を送りながら質問をする近右衛門だが、夕映はまるで気にした様子もなく答えた。

 

 「それについてはお詫びするです。が、これは不可抗力なので勘弁願いたいです」

 

 「不可抗力じゃと?」

 

 「えぇ。私が事務所に送られてきた正体不明のマジックアイテムを解析しようとしていた所、突然起動しまして、気付けばこの麻帆良に居ました。高畑先生が来るまで、移動した事すら気付かなかったです」

 

 近右衛門はこの答えを聞いてふむと考え込んだ。敵対組織がこちらの混乱を誘発させる為の策略ではとも思ったが、それにしてはやる事が大雑把すぎる。ビルを一棟放り込むなど、魔法の秘匿云々を一切考慮していない方法を取るとも思えない。

 

 「事務所とはなにをしておるのじゃ?」

 

 「探偵ですよ。不本意ですが、ね」

 

 「ふ、不本意なのかの?」

 

 まさかの返しに驚く近右衛門。部屋の隅で聞いている高畑は理由を聞いているので苦笑するだけだった。

 

 「何故か事件が向こうから来まして、それを解決してるうちに事務所を立ち上げる事になってしまったです」

 

 「………そ、そうかの。では、今回の事も向こうからやって来た事件と言う訳じゃな?」

 

 「はいです。出来れば直ぐにでも帰りたいのですが、手段が無いのでどうしたものかと」

 

 「その解析していたと言うマジックアイテムでは帰れんのかの?」

 

 近右衛門は来る原因となったアイテムでなら帰れるのではと思ったが、それは少し考えが足りなかった。

 

 「もう壊れたです」

 

 「早いのぅ!?」

 

 思わず突っ込んだ近右衛門だが、元々使い捨てだった可能性もあったかと思い直して、次の質問に進む事にした。

 

 「ふぅむ。君はこの後どうするつもりじゃな?麻帆良に居るつもりなら、色々手続きをしてもらわねばならんのじゃが」

 

 「いえ、とりあえず帰る為の手段を探すです。まぁ、壊れたアイテムを直せる人がいればさっさと直してもらって帰るつもりです」

 

 「そんな人物がおるのかね?」

 

 「えぇ。おそらく直せるでしょう。直してくれるかどうかは、交渉しだいでしょうが」

 

 近右衛門はその長い頭を捻ったが、ビル一つ飛ばすようなアイテムを直す事が出来る人物が思い当たらなかった。

 

 「その人物の名は、教えてくれるかの?」

 

 「多分知られたくないと言うでしょうから、お答え出来ません」

 

 明確な拒絶に、おそらく何度聞いても無駄だと判断した近右衛門は、未だ彼女の名前を聞いてない事に気付いた。

 

 「そういえば、君の名を聞いとらんかったの。なんと言う名前なのじゃ?」

 

 近右衛門の質問に困った表情を浮かべる夕映。

 

 「私の名前を聞いて、心臓発作とかやめて下さいね?」

 

 「ふぉ?」

 

 困り顔で妙な事を言う夕映の言葉を、正しく理解したのは名前を聞いたあとだった。

 

 

 

 「綾瀬夕映というです。この学園に通ってました」

 

 






文章ちゃんと出来てるのか、会話ばっかの時どう地文を入れればいいのか、タイムパラドックスの事とかちゃんと考えてないけど大丈夫か。

まぁ、妄想だけで書いてるのでその辺ご容赦ください

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