魔法探偵夕映 R《リターン》   作:遁甲法

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 お待たせしました。夕映推進小説の第三話です。

 もうひとつの方の合間に書いてるので、文字数のわりに更新が遅いです。すいません。

 でわ、どうぞー


とりあえず昼寝する

 

 

 

 

 「未来から、のぅ」

 

 自己紹介が終わり、事の顛末を説明された近右衛門は頭を抱えた。

魔法関係ならば自分の知識でどうにかなるが、古今東西どんな魔法使いでも成功した試しのない時間移動によりやって来たなどどうすればいいのか。これならば単純に敵対者が来たと言う方が楽だった気がする。

 未来からポンと飛んで来たのならば監視の目に気付かれずにビルが建ったのも頷けるが、それをどう他の者に説明すればいいのか分からない。そして彼女は未来から来た事を極力ばらさないで欲しいと言う。理由を聞けば、未来の事を知られ過ぎると帰れなくなるからだとか。理屈はよく分からないが、これでは未来から事故で来ただけだからーなんて説明をする事も出来やしない。まぁ、そんな説明で納得するとは思えないが、その辺りを伏せたままでは彼女が敵対者ではないと証明しづらいのが困る。この問題の難しさに近右衛門の長い頭の中ではダイコンを持った妖精が踊り狂っていた。

 

 「あー……、大丈夫ですか? 学園長」

 

 頭を抱えてウンウン唸っている近右衛門に高畑は気の毒そうに声を掛けた。彼でもすぐには納得出来ない話なのだ。高畑以上に責任のある立場の近右衛門には夕映が来て生じる様々な問題の責任を負わねばならないので、そう簡単に決める事が出来ないのだ。

 

 「ふぅ……。とりあえず、麻帆良に敵対する者じゃ無いと分かったし、今日は帰ってよいぞ、夕映君」

 

 「あ、はい。分かったです」

 

 「おっと、そうじゃ。また後で呼ぶかもしれんから、電話番号を教えて貰えるかの?」

 

 帰すのはいいが、連絡先が分からないと色々不便だと思った近右衛門は、とりあえず夕映の電話番号を聞く事にした。

 

 「はいです。……あ、でも繋がらないかも知れないですね」

 

 「ふぉ? 何故じゃ?」

 

 「この時代に私の番号は契約されてないはずですから」

 

 そう。ここは彼女にとって過去の世界。電話などが契約されているのは8年後なのだ。電話機があり、線が繋がっていようとも使う事は出来ない。

 

 「あー……、なるほどのぅ。では、その時は高畑君に呼びに行って貰うかの」

 

 結局人力で連絡を取る事にして、今日は解散する事となった。本当はマズイのだが、このままここに居てもらっても解決策は出て来ないし、しばらく一人になって頭を休めたい近右衛門だった。

 

 

 学園長室を追い出される形になった夕映は、高畑と共に学生でごった返す食堂棟に来ていた。地下から屋上まで全て飲食店が占めているこの食堂棟は、夕映の食生活の要である。毎食ここで食べても、その飲食店の多さからメニューがかぶる事がないので飽きる事がないと言うのが理由の一つだ。ちなみにもう一つの理由は安いからだった。

 

 「夕映君、これからどうするんだい?」

 

 「まずは時計を直せそうな人に会ってみるです。その後は、まぁ、どうしましょうかねぇ」

 

 パスタを手繰りながら夕映は呑気に答えた。

彼女の当ては、確実にどうにか出来ると確信してるので深刻になりようが無いのだ。

 

 「ははっ、呑気だね。いっそ、こっちで教師でもしてみるかい?」

 

 「少しすれば帰ると言うのに、教師なんて出来ませんよ。蓄えもあるですし、のんびりしてます」

 

 目標のISSDAに就職する事以外にはとことん無気力な夕映である。

高畑は、そんな夕映を見て苦笑すると自分の昼食に取り掛かった。端から見るとなんとも仲の良さそうな光景に見え、1部の者達はあの[死の眼鏡](デスメガネ)に恋人が出来たのか、いや親戚か兄妹では、などと大騒ぎしていた。

 

 

 「じゃあ、夕映君。僕は午後の授業があるからもう行くけど、大丈夫かい?」

 

 「えぇ。過去から未来まで何年も麻帆良で暮らしているんです。迷子にはならないですよ」

 

 「ははっ、その心配はしてないよ。ただ、どうも未来は魔法に関しておおらかみたいだからね。間違って使わないように頼むよ」

 

 「む、そうですね。気を付けるです」

 

 魔法に関する感覚の違いを指摘する高畑の言葉に、夕映は今一度気を引き締めた。いつも通りに使っていると、すぐにバレてしまい、余計な騒ぎが起きるのが簡単に想像出来たからだ。

 

 「じゃあ、よろしく頼むよ」

 

 「えぇ。分かったです」

 

 授業に出る為に中等部に向かう高畑を、軽く手を上げつつ見送って夕映も移動を開始する。

 カシオペアと思われるあの懐中時計を直せるはずの人物は、今は授業中のはず。今から教室に乗り込むのは目立ち過ぎるだろう。ならば放課後まで時間を潰す必要があるのだが、仕事でもないのに歩き回るのも億劫だ。夕映はそう考え、放課後まで事務所で寝て過ごす事にした。急にやって来て、人の下着を顔を真っ赤にしながら洗濯するお節介者も来ないはずだし、ゆっくり昼寝出来るだろう。

 冬にしては暖かい日差しに眠気を引き出されながら、夕映は事務所までのんびりと歩いて行った。

 

 

 

 麻帆良学園中等部のとある教室は、今日も生徒達が騒がしく過ごしていた。

成績は学年でも最下位をひた走る彼女達だが、勉強以外ではその道のトップを独占する者もいる両極端なクラスである。

 

 「ねぇねぇ明日菜。聞いた?」

 

 「何よ朝倉、帰ってきていきなり。私、まだ食べてるんだけど」

 

 昼休みも半ばで皆が弁当を広げている所に、外に出ていたはずの朝倉和美がニヤニヤしながらやって来て、弁当を突ついている神楽坂明日菜の椅子に自分を押し込みながら話し掛けて来た。

 

 「いやいや、弁当どころじゃないよ。特に明日菜にとってはねっ!」

 

 「このか特製のお弁当以上に重要な事なの?」

 

 明日菜は、いつも作ってくれる近衛このかの弁当を食べる事よりも重要な事などないと言わんばかりの視線を和美に向けた。

 

 「あ、美味しそうな玉子焼き。一個ちょうだい………おぉ、ほんと美味しい!」

 

 「あ、ちょっと!勝手に取らないでよっ!」

 

 弁当を覗き込んだ和美が、弁当箱の隅に鎮座する玉子焼きをヒョイと奪って口に運んだ。その味は14歳が作ったとは思えないほどの美味しさで、思わず笑みが出るほどだ。そんな玉子焼きを取られた明日菜は抗議するが、和美は気にせず味わっている。

 

 「まぁまぁ、ええやん明日菜。ウチのあげるから、な? ほら、あーん」

 

 「いや、そう言う問題じゃ。あーー……んむ。んー、おいふい」

 

 明日菜は抗議するが作った本人は特に気にもせず、文句を言っている明日菜の口に自分の玉子焼きを放り込んだ。その美味しさに静かになった明日菜を放って、このかは何の用だったのか和美に聞くことにした。

 

 「で、一体どうしたん? 食堂棟に行ってたんやろ?」

 

 「あっとそうだった。それがね、聞いてよ。私も食堂棟の5階でご飯食べてたんだけど、報道部の仲間からメールがあってね? 3階で面白い物がみれるって言うから急いで行って見たのよ。そしたらそこで見たのがなんとね?」

 

 「なんでもいいから、耳元で騒がないでよ」

 

 ずっと耳元で喋られた明日菜は迷惑だと和美を押し出して抗議した。

和美は特に悪びれもせず立ち上がって明日菜の前に陣取り、話を再開する。

 

 「んふふー。明日菜にはちょっと刺激が強いかもねぇ?」

 

 「なんなのよ、その気持ち悪い笑顔は」

 

 「気持ち悪いとは酷いなぁ。まぁ、お聞きよ。実はそこで高畑先生を見たのよ」

 

 「え! 高畑先生!? ちょっと詳しく教えなさいよ!」

 

 自分が懸想している相手の話題と知った明日菜は、今までの迷惑そうな顔から一変し、犯人を尋問する刑事の如き顔で和美に詰め寄った。

 

 「今教えようとしてるんだから、そんな怖い顔で寄って来ないでよ。ほら、座って座って」

 

 「むぅ、早く言いなさいよぅ」

 

 「はいはい、じゃあ言うからね? いい?」

 

 いやに勿体ぶる和美に、イライラしながらも明日菜大人しく椅子に座り直した。

ようやく大人しくなった明日菜を見て、これ以上焦らすのは危ないと思い、続きを話す事にした。

 

 「そこで高畑先生がお昼ご飯食べてたんだけどね、実は1人じゃなかったの」

 「え!? 高畑先生が2人居たとか!? い、急いで見に行かないと!」

 

 そんな事を叫び、慌てて駆け出そうとする明日菜にこのかは若干呆れ顏で押しとどめた。

 

 「いや、明日菜。高畑先生が誰かとご飯食べてたって事やろ? 2人も居たら、和美ちゃんはもっと慌ててるはずや」

 

 「と言うか、何で2人居るって思うのよ。流石はバカレンジャーだね」

 

 明日菜の斜め上の発想に、和美は流石だと呆れるのだった。

 

 「う、うるさいわね! 紛らわしい言い方するから悪いのよ!」

 

 「明日菜ー、どこも紛らわしくなかったで?」

 

 「うっ………。そ、それで! 高畑先生がどうしたってのよ!?」

 

 「誤魔化したね」

 「誤魔化せへんけどね」

 

 「うぅ……っ」

 

 2人に突っ込まれて涙目の明日菜。周りで聞いていたクラスメイトもクスクス笑っていた。

その様子に悪意は無く、彼女が高畑に好意を持っているのはクラスでも常識であり、高畑に関する事で暴走するのはいつもの事なので、仕方が無いなと言う感じだった。

 

 「ま、明日菜をからかうのもこれ位にして、続きを話すわね?」

 

 「あ、あんたねぇ……」

 

 「まぁまぁ。話が進まんで?」

 

 和美に食ってかかろうとする明日菜を宥めて、このかは先を促す。

 

 「それで、高畑先生は誰と一緒だったん?」

 

 「それがね? まったく見た事ない人でねぇ。報道部の仲間にも調べて貰ってるけど、全然分からなくてね。見た感じだと結構若い人で、多分ハタチ越えてないんじゃないかなぁ。それでいて、落ち着いた雰囲気の美人さんだったのよ」

 

 「せ、先生の彼女とかじゃないわよね!?」

 

 美人と聞いて明日菜は恋人ではと危惧して和美に掴みかかる。物凄い形相で揺さぶってくる明日菜に、和美しっかり裏を取ってからにすれば良かったと後悔した。

 

 「い、いやぁ。恋人にしては歳が離れてるし、兄妹かもと思ったけど余り似てないし、その辺りは次回を待てって所かなぁ……あはは」

 

 「次回なんて待てないわよ!! 今すぐ調べて来なさい!!」

 

 うがーっと吼える明日菜に戦々恐々とする和美だが、そこにいいんちょ事雪広あやかが現れて明日菜にかみついた。

 

 「明日菜さん! 朝倉さんが親切に教えてくれたと言うのに、なんですか!」

 

 「何よいいんちょ! こんな中途半端な情報を持ってくるから悪いのよ!?」

 

 「朝倉さんの情報が正確だった試しがないでしょう!? そんな物を信じる方が悪いんです!!」

 

 「いや、いいんちょ。それフォローじゃないから」

 

 朝倉を助ける為に来た訳ではなかったあやかと明日菜の2A名物が始まり、もう話を続ける事が出来なくなった。このかはそんな2人に構わず、和美にその女性の事を詳しく聞くことにした。

 

 「その美人さん、どんな人やったん?」

 

 「んーー、そうだねぇ………」

 

 和美は自分の見たその女性を頭に思い浮かべて、どう説明しようかと言葉をこねる。

とりあえず十分美人と言える容姿だったのは確か。座ってたので背の高さまでは分からないが、組んでいた足は割と長そうだった。髪は背中に掛かる程度の長さで、髪飾りで二つに分けて結んでいた。胸は大きくは無かった。うん、多分自分より小さいのは確実だった。さて、どう言おうか。写真を撮っておけば良かったと後悔したが仕方が無い。和美はとりあえず分かっている事だけで説明する事にした。

 

 「んー、美人は美人なんだけど、華やかな感じじゃなくて、落ち着いた美人って言うの? 微妙に眠たげな目が印象的だったわね。それと、無駄な肉が全然見当たらないスレンダーな体つきだったわね。まぁ、胸も無かったけど」

 

 「本人が聞いたら怒られるえ?」

 

 「あはは。まぁ、スリムなのは確かだよ。あれで背が高かったらモデルも出来るかも」

 

 和美は頭の中であの女性にモデル立ちをさせてみた。完全な想像だが意外と様になる気がする。しかし、幾つかポーズを決めさせてみるが、見た表情が眠たげなそれしかないので、あまりモデルっぽくならなかった。唯一決まったのが、ナイトキャップとパジャマだった。

 

 「んー、イマイチ分からんなぁ。……そうや、このクラスで似てる人は居らん? いろんなのがおるし、1人くらい似た人がいるんちゃう?」

 

 確かにこのクラスは留学生も多いし、いろんなタイプが居るから似てる人も居るだろう。和美はぐるりと教室を見回し、あの食堂棟で見た美人に似てるクラスメイトを探して行く。

 

 「んー確かに。……でも誰だろう? 柿崎……は、タイプが違うし、いいんちょも派手系だよなぁ。明日菜ほど馬鹿っぽくは見えなかったし………」

 「誰がバカだって!?」

 

 順にクラスメイトを見て行くが、なかなか近いタイプが見つからない。写真でもあれば照らし合わせて探せるのだが、勝手に撮るのは失礼だろうと、珍しく常識的な行動を取ったのが裏目に出たようだ。

 

 「んん~~と………?」

 

 「おらんのん?」

 

 「パーツパーツでは当てはまるのも居るんだけどね。これだってのが居ないのよ」

 

 小さいのから大きいのまで、多種多様な少女達が居るこの2Aでも、和美の見た女性にピッタリ当てはまる人物は居ないようだ。

 

 「なら、パーツだけ集めたらええやん。せっかくのカメラやし」

 

 「それだっ!!」

 

 このかの発言で、あの女性を再現する方法に気付いた和美は、すぐさまカメラを取り出しクラスメイトを撮り始めた。話を聞いてなかった者達は、急に自分達の写真を撮りだした和美を怪訝そうに見るが、元来ノリの良さでは右に出る者のない2Aの生徒達だ。すぐに笑顔を向け、思い思いのポーズを決めて撮られて行く。もっともそんな彼女達も、パーツを撮りたい和美が足や胸ばかり撮っていくのを見て、逃げ回るようになった。

 

 「ちょ! 朝倉!! なんで胸ばっか撮るのよ!?」

 

 「ちょっと動かないで、くぎみー。あんたの大きさがちょうどいいのよ」

 

 「どうちょうどいいってゆーのよ!! 変態かっ! あとくぎみーいうな!」

 

 「誰が変態か。……次は足、足かぁ………。でも、これもくぎみーが近いかな。というか、体だけ見ればくぎみーが一番近いかも?」

 

 釘宮円を撮っていると、顔や雰囲気は全然違うのだがそれ以外は割と似てると言う事に気付いた。ならばと、和美は円の首から下だけを撮って、そのあとに個別で顔を合わせて行く事にした。そうすれば全員分の写真を撮って加工するよりよっぽど早くて簡単なはずだ。和美はさっそく円の写真を画面に映し、クラスメイトの首下に当てがってみた。

 

 とりあえず、近くに居た那波千鶴に合わせてみる。

 

 「うわぁ。くぎみーのペチャパイボディに、那波の顔は合わないなぁ」

 「悪かったわね! 小さくて!! あとくぎみーいうなっ!」

 

 次々合わせて行くが、いつもと違う見た目になるのが中々楽しく、つい目的を忘れてしまいそうになる和美であった。

 

 「ん? おぉ、これは……」

 

 そんな中、背丈の小さい組に合わせていたら、不意に似た感じになる人物を見つけた。大人しく席に座って、食後の一服とばかりに妙なタイトルのついたパックジュースを飲んでいる1人の少女。彼女に合わせた時、まさに先ほど見た女性にそっくりの見た目になったのだ。

 

 「ちょ、ちょっとこっち来てくれる? ゆえっち」

 

 「なんです? 朝倉さん」

 

 ちうちうジュースを飲んでいた綾瀬夕映は、慌てた様子でやって来て自分を引っ張る和美に怪訝そうな表情を見せた。そんな彼女を気にもせず、和美は教室の後ろに立たせてカメラに写っている円の体を合わせてみる。立ってる所は見てないが、それでもかなり似た感じになり、おそらく立ち上がればこうなるだろうと思える出来だった。

 

 「うんうん、1番似てるかも」

 

 「何がですか?」

 

 「あ、おったん? ウチにも見せてーな」

 

 カメラを当てがい頷いていると、このかがやって来て手元を覗き込んだ。夕映はそんな2人を不思議そうに見ている。

 

 「髪型は違うけど、かなり似てると思うよ? もしかしてゆえっち、お姉さんとか居る?」

 

 「ゆえは一人っ子のはずやで。なぁ?」

 

 「えぇ、そうですが。一体何です?」

 

 自分にカメラを向けてふむふむ言ってる二人に、夕映は目的が分からず首を捻る。

 

 「いやぁね? さっき食堂棟で高畑先生とお昼食べてた人が居たんだけど、それがどんな人か教えてくれって言うからクラスで似てるのを探して説明しようとしてたのよ」

 

 「それが私だった、と?」

 

 「そゆこと。もっとも、それは顔つきだけで、スタイルはくぎみーの方が近いんだけどね」

 「くぎみーいうなー」

 

 妙なあだ名で呼ばれる度に全力で訂正する円だったが、和美はまったく意に介さず自分のパソコンを取り出して写真を取り込ませている。

 

 「ちょいちょいのちょいっと。よし出来た。ほら明日菜、これがあんたの恋敵だよ」

 

 「え!? ど、どんな人!?」

 

 いつの間にか勝手に高畑の恋人と決め付け、明日菜に合成した写真を見せる。それを受け取って食い入る様に見つめているが、明日菜には背の高くなった夕映にしか見えず、胡乱げな視線を和美に向ける。

 

 「……私には背が高くなったゆえちゃんにしかみえないんだけど?」

 

 「でも、それが一番近いんだって」

 

 「えぇ~~?」

 

 やはり明日菜にはクラスメイトの写真にしか見えなかった。だが、それも仕方ない事だ。なにせ実物を見てないのだから似てるかどうか等分かる筈もない。

 

 キィーーンコォーン カァーンコォーーン

 

 「あ、メールだ」

 「チャイムじゃなかったの!?」「紛らわしいなっ!!」「何でそんな音大きくしてるのよ朝倉!!」「というかなんでチャイムやねん!?」

 

 なんとも紛らわしい着信音に、クラスの大半がツッコミを入れたが、本人はまるで気にせず携帯を弄っている。

 

 「さっきまでうるさい所に居たから聞こえる様に大きくしてたのよ………。おぉ! 写真撮ってたのかぁ。明日菜、仲間がご本人の写真撮ってたみたいで、それがメールで来たんだけど見る?」

 

 「ここまで来て見ない訳にはいかないでしょ。この合成写真だけじゃ、全然分からないし」

 

 微妙な合成写真のおかげでどうでも良くなりかけて居た明日菜だが、本人の写真があると言われると興味が湧いてきたのか和美の携帯を覗き込んだ。

 

 「え、えぇ……? ほんとにおっきくなったゆえちゃんって感じね」

 

 「でしょぉ? いやぁ、こうして見ると本当に似てるわね。ほらゆえっち。親戚のお姉さんとかじゃない?」

 

 夕映は、自分に似てる人と言うのでどんな人なのか興味が湧き、和美が差し出す携帯を覗き込んだ。

 

 「そんな親戚はいませんが………んんー? 似てますかね?」

 「どれどれ? おぉ! これは似てるわ。夕映の10年後って感じ?」

 「ほんとそっくりー」

 

 夕映本人は腑に落ちないようだが、一緒に覗き込んだ親友の早乙女ハルナと宮崎のどかは夕映の未来の姿を見ている気分になった。

 

 代わる代わる画面を覗いて行くクラスメイト達も皆似ていると言い、何年後くらいでそっくりになるか等を話し合い出す始末である。夕映はそんなクラスメイト達を横目に、もう一度写真を見てみたが、やはり皆が言うほど似てるようには思えない。確かに自分と似てる部分もあるが、そっくりと言うほどではないだろう。

 

 クラス中が騒ぐ中、1人首を捻る夕映であった。

 

 

 







 三人称って難しい。
途中ちょっと変になったし、もっと勉強する必要があるなぁ。
自分の妄想をそのまま小説にしてくれるアプリとかないかなぁw
そんな馬鹿な事を考えながら、次回に続きます。皆さん、どうぞよろしくです。


未来夕映と、過去夕映が出会ったら、どうセリフに区別つければいいんだろう?

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