始まりは、20世紀最後の夏。
その日人類は、地球という名の惑星の支配者が自分達だけではないと知った。
資料映像No.001
DATE:1999年.5月 出現:カマキラス
『ご覧ください、怪獣です!信じられない光景です!!!』
映し出されたのは、ニューヨークを蹂躙する巨大な蟷螂。
「ヴァァァァァ」パンパンパン!
……然り気無く褐色白髪の青年が応戦していたのはこの際放っておこう。
「俺は止まらねぇからよ……!!」
資料映像No.002
2002年.9月 出現:ドゴラ
続いて映し出されたのはロンドンの夜空に浮かぶ、不気味な影。
海月に似たそれが、街を蹂躙している様だった。
『紳士淑女の皆さん、私たちはどうやらこれまでのようです。さようなら。さようなら。神よ、英国と陛下を守りたまへ』
自らの最期を悟り、そう伝えたニュースキャスター。
その最期の姿と共に、空に浮かぶ巨大な海月へと吸い込まれていく無数の希望の花達。
「「「「「止まるんじゃねぇぞ……」」」」」
資料映像No.008
2005年.11月 出現:ヘドラ
『ヘドラ作戦の成功により、ラドン並びにアンギラスは沈黙───』
その報道に対し、映像に映る街は酷く汚染され荒廃していた───その中に然り気無く映る希望の華。
『───果たしてこれは人類の勝利と呼べるのでしょうか……?』
資料映像No.014
2017年.7月 出現:ダガーラ
シドニーを襲う翼を掲げた海竜。
資料映像No.017
2022年.5月 出現:オルガ
トルコの市街地を襲う異形の怪獣。
「こいつはオルガ、だぞぉ……!!
俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞぉ……!!」
隙在らば自己紹介を捩じ込む勝ち取りたいものもない無欲な馬鹿にはなれない男───はこの際割愛とする。
怪獣
深き海の底から、あるいは忘れ去られた神話の彼方から───奴等は次々と姿を現した。
人類の繁栄に終止符を打つため。
そして、それらすらも生温いとばかりに───最悪の悪夢が人類を襲った。
資料映像No.XXX
2038年.11月 出現:───
ゴジラ
人間も怪獣も区別なく、全てを焼き尽くす破壊の化身。
150発もの熱核攻撃をもろともしないその強靭な生命力に誰しもが心を折られ、屈伏していった。
無限の空気と水。地球という楽園の滅亡に抗ったのは、地球人類だけではない。
2036年 ロンドン
「地球人類に告げる───我々はエクシフ」
「俺はぁ……鉄華団団長……オルガ・イツカd───」
「もういいよ」パンパンパン!
キボウノーハナー♪
「止まるんじゃねぇぞ……!!」
「……なるほど……それもまた、貴殿の献身の道か……」
「こんくれぇ何てこたぁねぇ!!」
2037年 ニューヨーク・国連本部
「我々はビルサルド」
「俺はぁ……鉄華団団ch(ry───」
パンパンパンパン(無言の
キボウノーハナー♪
「止まるんじゃねぇぞ……」
「……受け入れの対価に、目下地球人類の天敵ゴジラの殲滅を約束しよう」
「なんだよ……まぁ、これっぽっちも面白くなかったがな……(ションボリ)」
遠い宇宙の果てから、この青い
極秘資料:プロジェクト・■■■■■
地球連合軍 極東区富士山麓基地
『───人工知能ユニットが沈黙ッ!!?
メカゴジラ起動せず!!!』
『何故だ!!?何故起動しない!!?』
『止まるんじゃねぇぞ……!!(呆れ)』
『熱線反応!!!』
『総員待避ぃ───っ!!!』
『その先に俺は居るぞ!!!(一目散に離脱)』
『待ってくれ!!!
今ここでメカゴジラを起動できれば……!!!』
『良いから来いっ!!!』
俺達は、ただ蹂躙されるばかりだ……。
「お父さんとお母さんは?」
「もうすぐじゃよ。もうすぐで辿り着く」
「その先に俺は居るぞ!!!」
まだ幼いハルオは、父親の友人だという壮年の男性───ダイチ・タニに連れられていた。
その隣を歩く青年───オルガ・イツカもまた父親と知り合いであるという。
2048年 旧ブラジル・リオデジャネイロ
北米・欧州から始まり、ユーラシア全土と日本を失った人類にとって、ここは唯一残された生存領域だった。
「ほら、あそこのバスに乗っているはず……」
彼らはこれから、宇宙に飛び立とうとしているところだった。
恒星間移民船【アラトラム号】───それが、成層圏を越えた先で彼らを待っている船の名前だ。
地上の80%の生存圏を失い、最終的に人類が辿り着いた最善の策は『地球脱出』だった。
ハルオの両親は彼をダイチに預けて依頼されていた仕事をこなし、ギリギリのタイミングでようやくこちらに辿り着いたらしい。
だが、その時であった。
「おい、あれ───!!!」
誰かが発狂まじりな悲鳴と共に指を指した。
その先に居たのは───
「ゴジラだぁぁぁ!!!ゴジラが来たぞぉぉぉぉぉ!!!」
「イヤァァァァァ!!!」「助けてぇぇぇぇぇ!!!」
「ハルオ!走るぞ!」
「団員を守るのは俺の仕事だ!」
そう言って、引っ張られるハルオ。
そんな彼らを他所に───ゴジラは、今まさに飛び立とうとした一隻の飛行船を熱線で無慈悲にも吹き飛ばした。
「ヴァァァァァ!!!」
驚愕したオルガが悲鳴を上げる。
「───あぁっ……!!?」
つられて見てしまったその光景。
ハルオの両親が乗っているはずの送迎バスが、墜落した飛行船の爆炎に呑み込まれていくのを。
覚えているのは、空を焦がす炎と絶望に沈んだ大人達の顔。
そして───
───グォォォォォォォォァァァァァァァァァァ!!!───
───夕暮れの空へと放たれた、高らかに吼える奴の咆哮。
いつか再び緑の大地と巡り会う日を夢見ての船出。
その愚かしい楽観のツケを俺達は支払わされることになった。
あるものは病に倒れ───
あるものは精神を蝕まれた───
誰かが自らの頭部へと拳銃を掲げる。
「まっ、待ってくれ───」
オルガの静止も叶わず、頭部を穿つ銃弾───それが貫通し、その先にいたオルガに直撃。
「う゛っ!!」
絶望に満ちた宇宙の片隅でその時、希望の華が咲いた。
「止まるんじゃねぇぞ……!!」
その死を偲ぶ心のゆとりさえ、今の俺達には残されていない。
「ヤバい……!!(涙腺が)達する!!達する……ッ!!!
止まるんじゃねぇぞ、って言ってるじゃねぇか───何やってんだぁぁぁぁぁヴァァァァァァァァァァ!!!」
……号泣する約一名を除いて。
何故俺達は生きている。
なぜ───
「───はぁっ……!!?」
牢屋の硬いベッドで、ハルオは目覚めた。
ほぼ同じタイミングで起きたらしいオルガが「おはようございます」とどこか不機嫌そうな挨拶を交わしてくる。
返そうとした時
「うなされていたな」
その場に居た二人とは違う第三者の声が響いた。
「───アンタ……!!!」
この胡散臭そうな
「……来ていたのか、メトフィエス」
「収監者の告解を聞くのも、私の仕事だからね」
オルガが動揺している中、ハルオが先に口を開いた。
「……なんだよ……マクギリスじゃねぇのか……フヘッ!」
この時、メトフィエスがオルガに微笑んだ気がするが気のせいだろう。
「……アンタらの神に懺悔しろ、と?」
「フリだけでいいさ……」
少々機嫌が悪そうなハルオの問いに、冗談交えに答えたメトフィエスは、
「……頼まれていたデータだ」
そっと耳打ちしながら、ハルオにあるものを手渡した。
「何なんだよそいつはぁ……ッ!!!」
オルガが見やる。それは小型の端末だった。
「なんだぁ?エッチぃのか?エッチぃのだな!エッチぃの……じゃねぇのか……」
展開された画面に映ったそれを見た瞬間、エッチぃものを期待していたオルガはショボくれてしまった。
そこに映っていたもの───それは。
太陽系を離脱する直前に最後に更新されていた、ゴジラに関するデータだった。
「───ガンダム───」
「……は?」
「俺がガンダムだ」
「そ、そっかぁ……(適当)」
突然ハルオが何かを言い出した為にオルガは適当に返してしまう。
だが……。
「俺がガンダム俺がガンダム俺がガンダム俺がガンダム俺がガンダムガンダムガンダム俺がガンダム」
壊れた機械の如くハルオは同じ言葉を呪詛の如く吐き出し始めた。
そんな彼にオルガは掴み掛かり───
「(せめて人の言葉を)話しやがれッ!!!」
───一喝しながらハルオを壁に「叩・き・つけて・や・れ!」てやった。
直後───ハッとしたその時───パンパンパン!
その瞬間、希望の華が咲いた。
「止まるんじゃねぇぞ……!!」
「不思議だな……」
ここまでの一連の流れをスルーする様に、口を開くメトフィエス。
「……君はまるで、もう一度
「……今ので通じたのか……?」
「俺がガンダムだ」
「そっかぁ……(適当)」
そこまで言ったところで、メトフィエスは退室する。
「……■■■」
然り気無く、自分でも聞き取れない程の小さな声で囁いて。
まだ綺麗なメトフィー……(まだ)