ちょっと考えれば思い至ったかもしれないという話です。
(待てよ)
考えてみればこれだけ大量の人間を確保できた事実がナザリックにとって有益だというデミウルゴスの言葉は適切であるが、それでもこの『大量』という部分になんとなくひっかかりをアインズは感じた。
(大量の人間……。そりゃこれだけいればいろんな実験とかアンデッド兵の作成に役立つだろうけど、なんか他にも気になるな。うーん……あっ)
その時、喉に引っかかった魚の小骨のような違和感に悩んでいたアインズの頭の中で『大量の人間』というワードから牧場という言葉が浮かび上がった。
(まさか……いや、そうだろうな多分)
何故もっと早く気が付かなかったのだろうか。
悪魔そのものであるデミウルゴスの存在、そしてそんな彼の悪魔としての本質からくる言葉の表現。
デミルウルゴスが言っていた『牧場』やそこで養育している『羊』という言葉から、それが実際にどういう場所でどういう動物を管理しているのか、ちょっと客観的に考えれてみればあっさりと見当が付いた。
「なぁデミウルゴス」
「はい何でしょう?」
「この人間たちは、例の牧場に送るつもりか?」
アインズの言葉にデミウルゴスはそうですねと笑顔で返すと、牧場で行われている『行為』を考えれば
その反応にアインズは、デミウルゴスは自分が元々羊が人間のことだと理解していると思っていたなと確信した。
(いや、今知ったよ。確かにそんな悪魔的な所業で作られた魔法スクロールなら、最初からある程度魔力が宿ってそうだな。でもいざ知ったら流石にビックリだっての)
「これだけいれば羊皮紙の生産効率もそれなりに上がるでしょう。勿論他にも活用法があるのは存じておりますので、配分はアインズ様のご一存で」
「うむ……」
アインズは反応こそ落ち着きはらっていたが、頭の中ではかなり悩んでいた。
先ず落ち着いて考えてみると、一番最初に攫った人間の内、敵対的な者以外は安楽死させるよう指示したとしても、その裁量権はデミルウルゴスに有る事を失念していた自分自身にアインズは呆れた。
勿論有能な彼を信頼していないわけではなかったが、敵対的でないなどという漠然とした言い方では少しでも反抗的な態度を見せた人間はデミウルゴスにとって敵対的だと判断されてもなんら不思議ではなかった。
寧ろこんな状況で攫われ、不安感に苛まれる中で従順な態度を取る人間など果たして如何ほどいるだろうか?
ちょっと考えれば分かることだったのだ。
攫った人間の中には家族単位の者もいるだろうし、当然女子供の単体もいるだろう。
アインズはその点から、実際に最初に思った通りに指示をしたら恐らくユリやペストーニャが子供の事で不満を持つかもしれない可能性に気付いた。
(あの二人は多分俺に子供の助命を嘆願してきそうだな。あ、あとニグレドもか。勿論俺は構わないけど、でも実際そうなったらアルベドや
これなら敵対的ではなく王国で犯罪者として扱われていた者以外は楽に殺してやれと言った方が適切に思われた。
だがそうすると先ず間違いなく恐らく捕らえた人間の9割以上はその対象となるだろう。
そうなるとせっかく
(うん、部下を持つ上司としてこの判断も駄目だな)
アインズは一先ずそこまで考えをまとめると軽く咳払いをしてデミウルゴスにこう言った。
「一先ず確保した人間の活用については考慮したいから全員仮死状態にして私が指示するまで保管しておけ」
「はっ、畏まりました」
「ああ、あと。ユリやペストーニャには、その中に含まれる子供に関しては取り敢えず害する考えは私には無いという事も伝えておいてくれ」
「おお……その
「あっ、すまない。あと一つ」
その時、最後に付け足されたアインズの言葉はデミウルゴスにとって至上の歓びでもあり、至高の者の従者として大変気合が入るものであった。
「例の牧場だが、近い内に視察したい。私を迎える準備が終わり次第教えるように」
「……! はっ、光栄でございます! 早急にアインズ様をお迎えする準備を整え、完了次第速やかにお知らせ致します!」
デミウルゴスは自分の成果をアインズに評価してもらえる機会が訪れた事に興奮し、心の裡で歓びに打ち震えるのであった。
ちょっと短いですけどこれで区切りが良いのでここまでとします。
次はアインズ様の牧場視察の話が確定しているし、構想もほぼ出来ているのでそうお待たせする事なく投稿できると思います。