「さぁ、着いたぞ」
「わぁ!綺麗!」
「広〜い!」
休日を得たティアは友達の駒王学園の女子生徒、片瀬と村山と一緒に以前旅行に来たアザゼルの部下が経営する温泉旅館に旅行に来たのである。旅館の雰囲気に片瀬と村山は喜んではしゃいでいた、ティアは微笑むと堕天使の若女将に声をかけた。
「予約していたティアマットだ、また世話になるぞ」
「ようこそお越しくださいましたティアマット様、本日もご利用ありがとうございます」
若女将達は丁寧に頭を下げて出迎えてきた。若女将と言っても片瀬と村山と同年代にしか見えないので二人からも同年代に思われていた。
「…あのティアマット様?今回は以前のような騒ぎ(全裸騒動)はお控えくださいね?」
「以前の騒ぎ?一体何の……ッ///思い出させるな馬鹿者が!!ほ、ほらさっさと部屋に案内しろ‼︎」
若女将が小声で忠告すると思い出したティアは赤面して若女将の頭をどついた!そのやり取りに片瀬と村山は?マークを浮かべていた。
「そ、それでは客間の方へご案内します、こちらへどうぞ」
どつかれて少し乱れた髪を直すと若女将はティア達を客間へ案内した。
「うわぁ〜部屋も広〜い♪」
「景色も最高〜☆」
「フフ、気に入ったか?お前達?」
客間に着くと二人はまたはしゃいでいた、ティアも荷物を置くと一緒に景色を眺めた。前にダンテ達と来た時はあまり気にしなかったが、この旅館は景色も含めて中々良い所だ、ダンテも言っていたがアザゼルにしては良い趣味だ。
「ご用がありましたらお申し付けください。それでは失礼します」
若女将はお辞儀をして退室した。お茶を入れ少しのんびりしていたが、夕食まではまだ時間があったのでティア達は温泉に行くことにした。
「よしお前達、温泉に行くぞ!」
「「はーい♪」」
大浴場の温泉に来たティア達、この旅館には混浴温泉もあるのだが普通に女湯に入った。旅館同様温泉もかなり広い。ティア達は服を脱ぐと温泉に入っていったが、ティア達が入ったのを確認すると脱衣所に二人の少女が入ってきた、黒髪と白髪の少女…そう、黒歌と白音である。今回も二人はティアの見張りに来たのである。何しろ今のティアはアミュレットと融合して力がダンテと同レベルの怪物なのだから。
「入ったにゃね?それじゃあたし達も潜入にゃ!」
「…はい姉様、見つからないようにしましょうね」
「ここの温泉は最高なんにゃ、ついでに楽しまないと!さ、行くよ白音」
黒歌と白音も服を脱いでタオルを巻くと気配を消して温泉に入っていった。
湯に浸かる前に体を洗っているティア達。
「二人とも?しっかり体を洗うんだぞ?」
二人から子供じゃないですと言われながらティアは鼻歌交じりで体を洗った。前に来た時は黒歌に背中を流してあげると言われてやってもらったら胸ばかりやたら洗われたからな、さらにネヴァンからも…まったく、任せた私が馬鹿だった。今日は流石にそんなことは…
「ん?」
「「…………」」じぃ〜
目線を感じ二人の方を見ると二人とも体を洗う手が止まっており、ティアの豊満な胸を見ていた。洗う度動いて揺れるその胸に二人の目は釘付けになっていた。やれやれ、この二人も黒歌達と同じか…
「…触りたいか?」
「「いいんですか!!」」
…まるで待ってましたと言わんばかりの反応だな。溜め息を吐いて泡を流すとティアは二人の方を向いた。
「ほら、優しく触れよ?あまり激しくは…あ、あん♡」
「うっわぁ…やわらか〜い!服の上からよりも凄いしっとりしてる〜!」
「すっごい大きくてスベスベ!指が沈むしマシュマロみたい〜!」
忠告した途端二人はティアの胸を激しく揉んで触ってきた!その激しさに思わず甘い声を上げるティア。
「こ、こら⁉︎優しく触れと言っただろお前達!ん♡」
「ねぇ片瀬、いつものあれやったらどんな感じかな?」
「あっ、それいいかも!どれくらい違うかな?」
「えっ?あれ?まさか…!」
片瀬と村山はニッと笑い、その笑みにティアは嫌な予感がした。
「「せーの!ムギュゥゥゥ♪」」
掛け声と共に二人は抱きついて胸に顔を埋めてきた!その様子を体を洗いながら見ていた黒歌は羨ましがっていた。
「あっ、あれ面白そう、今度あたし達もやろうにゃ白音」
「…私達がやったら拳骨が来ますよ姉様?今のティア姉様にやられたら気絶じゃ済みませんよ」
「じゃネヴァンちんにやらせてもらうにゃ」
黒歌と白音がそんなことを話している最中も片瀬と村山はティアの胸に抱きついていた!
「あぁ〜やわらか〜い、それに良い匂い〜♪」
「やっぱり服の上とじゃ全然違う〜!あぁ〜なんか癖になりそう〜」
「あぁん♡そ、そんなにがっつくなぁ‼︎ぅあん⁉︎こら吸うなぁ///」
どさくさに紛れて乳首を吸う二人にティアはさらに甘い声を上げたが、腕を二人の外側から回した。
「こ、この…お返しだお前達ぃ!おらおらぁ‼︎」
「「きゃあぁ!?」」
外側から回された手で胸を揉まれ今度は片瀬と村山から甘い声が上がった!
「このぉ調子に乗りおってぇ!これでどうだ!…おっ?中々良い胸をしてるじゃないかお前達?」
「あっ♡キャハハ///くすぐったい〜!ごめんなさいティアさ〜ん!」
「いや〜ん♡ティアさんダメェェ///」
「どうだ参ったか!フフ…ハハハハハ‼︎」
「「ま、参りました〜…あはははは‼︎」」
ティア達は楽しそうに笑い、ティアは両脇に座り込む二人の頭を撫で、見ていた黒歌と白音も笑みを浮かべた。しかしこの騒ぎは男湯に丸聞こえだった為軽い興奮状態になっていた。
体を洗い終わったティア達3人は広い湯船に浸かり世間話や学園での話をして盛り上がっていた。ある程度話が弾んだところで片瀬がティアの首に掛かったアミュレットのことを聞いてきた。
「ティアさん、そのペンダント凄いですね?ルビーですか?」
「ほんとだ綺麗〜☆凄い大きいし、何カラットですか?」
「あぁ、これは…」
ちなみにこのアミュレット、普段はティアの胸元に埋め込まれているのだが、それだと流石に不気味且つ不自然に見える為ペンダントの形にしていた。
「見たいか?」
ティアは首から外すと二人に見せてあげた。外した瞬間力が下がった感覚があった、やはりこのアミュレットは今のティアの力の源であった、そして何よりダンテとの愛の…
「うわ凄い、こんなに大きい宝石の塊見たこと無いよ」
「これ表と裏が金と銀の装飾になってるんだ、キレ〜イ☆」
二人は目を輝かせて見せ合っていた。
「このペンダント、普通じゃ売ってないですよね?特注品ですか?」
「何処で買ったんですか?あっ、もしかしてダンテさんから買ってもらったんですか?」
「あっそうかも!ひょっとしてこれダンテさんからの婚約指輪代わりか何かですか⁉︎」
「キャー素敵!!」
「えっ!?こ、婚約指輪ぁ⁉︎あっいやこれはだな…」
二人の興奮の質問と婚約指輪という言葉にティアは赤面してあたふたしたが、ダンテを愛していることは事実なので深呼吸すると首にアミュレットを掛け直して答えた。
「あぁ…これはダンテとの愛の証だ。今まであいつと共に乗り越えて切り抜けてきた困難や苦難…そしてあいつの両親に認められた大切な絆の証なんだ。このアミュレットは私の命そのものと言ってもいい、それぐらい大切な物なんだ…」
ティアはアミュレットを両手で握ると目を閉じて胸元に当てた。それを聞いた片瀬と村山は目を潤ませていた。
「素敵ですティアさん…」
「素敵なお話です…」
「ふふ、ありがとう」
お礼を言うと優しく二人を抱き寄せた。
「ティア姉様…」
「うんうん…良いお話にゃ、そしてダンテ、流石あたしの旦那様にゃ♡」
同じく聞いていた黒歌と白音も感動していた。
「それじゃティアさん!後は結婚式ですね!式はまだですよね?」
「式の日は決まってるんですか?私達絶対行きますから!招待してくださいね?」
「け、結婚式⁉︎あ、あぁ…まだだが…」
とんとん拍子に話が進み結婚式の話まで出てきてしまった!結婚式か…そんなこと考えたことも無かったな。ティアは再びあたふたしていたが、少し考え頷くと微笑んだ。
「あぁ!必ず招待しよう!日取りが決まったら知らせるから待っててくれ!」
「「はい!わかりました!それとおめでとうございます‼︎」」
片瀬と村山は笑顔で祝福した。しかしその様子に…
「何ィィ⁉︎結婚式ィィ!?何勝手に決めちゃってるのにゃティア姉ェェ⁉︎負けるもんですか!こうなったら第二夫人のあたしが先にダンテと結婚式を挙げるにゃ!!」
「…い、痛いです姉様!落ち着いてください!気づかれちゃいますよ?」
面白くない黒歌は白音をヘッドロックして悔しそうに叫んでいた!
しばらくしてティア達は温泉から出て脱衣所に戻っていった。
「「「ゴクッゴクッゴクッ…プッハー‼︎」」」
温泉から上がった3人は大型扇風機の前でフルーツ牛乳を下着姿で飲んでいた。
「あぁ〜美味しい///」
「一度やってみたかったんだこれ〜///」
「二人とも良い飲みっぷりだな!さぁ、服を着たら部屋に戻るぞ。あっでもまだ夕食まで時間があるしな…何をしよう?」
「あっ、だったらティアさん、さっきここに来る途中に見たんですけど…」
浴衣に着替え、夕食までの暇つぶしを考えていると村山が提案し温泉の近くの部屋に行くことにした。そこは温泉定番の卓球部屋だった。
「勝負です!ティアさん!」
「フフフ…私に勝てるかな?」
特に賭けは無いがティア達は卓球で勝負することにした。最初は一対一でやっていたが手加減無しのティアに全く敵わず、ティアvs片瀬&村山で激闘を繰り広げた!
「はあっ!!」
「くっ!片瀬!今よ!!」
「任せて!たあっ!!スマッシュ!!」
「ふん!あまいわ!!」
二人の打つ球をティアは舞う様に全て(かなり手加減して)打ち返し、室内は二人の掛け声と打つ音が激しく響いていた!激闘が続いて数分後…片瀬と村山は汗だくでダウンした。
「「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」」
「ハハハ!どうした?もう降参か?」
「ハァ、ハァ…ティアさん強すぎです」
「い、一点も取れなかった…ハァ、ハァ」
「フハハハ!私に勝とうなど百年早いわ小娘共!!」
ラケットを片手で回しながら高らかに笑っていた。
「だがお前達も剣道部だけあってスタミナは大したものだったぞ」
二人を誉めると起き上がらせたが、汗びっしょりの二人にティアは再び温泉に行くことにした。
「よしもう一度汗を流しに行くぞ」
汗を流しに温泉に向かう途中エステサロンの部屋があったが、そこに黒歌と白音がいた。二人はうつ伏せに寝てオイルマッサージを受けていた。
「…あっ、黒歌姉様、ティア姉様達が何処かに行きますよ?」
「えぇ〜?また温泉じゃないの〜?にゃ〜♡そこそこ♪」
「…姉様、目的忘れてませんか?」
「えぇ〜?そんなこと無いにゃ〜♡」
「はい、白音様もリラックスしてください」
「…えっ?はい…にゃ〜♡気持ちいぃです〜♪」
見張りを忘れてエステを堪能している黒歌に白音はツッコんだが同じくトロけた表情でエステを楽しんだ。
再び温泉にやって来たティア達はシャワーを浴びると今度はサウナに入った。
「うぅ…熱い〜」
「ティアさ〜ん…もう出ましょうよ〜?」
「いやまだだ、この後のビールの為にもう少しだ!」
片瀬と村山は既に逆上せてダウンしていたがティアは腕を組んで耐えていた。サウナから出ると水風呂に入り体温を下げると脱衣所に戻ったが、片瀬と村山はまだダウンしていたので扇風機の前で横にしておいた。
「大丈夫か二人とも?落ち着くまでそこで横になっていろ」
二人から弱々しい返事を聞くとティアは先に浴衣を着たが、その時ある物が無いことに気づいた!
「…ん?あれ⁉︎無い!アミュレットが無い!」
サウナに入るということで外しておいたアミュレットが無くなっていた!確かにここに置いたはず!まさか!盗まれた⁉︎焦っていると旅館の外から魔力の気配を感じた。
「…強大な力の気配がどんどん離れていく…コイツか!」
力を感じ取ったティアは服を魔力で浴衣からいつもの服装に換え、若女将に片瀬と村山の介抱を任せて急いで旅館の外に飛び出して行った!!
「この移動速度…人間では無いな、悪魔か?」
逃走速度からアミュレットを盗んだ犯人の正体が人間では無いとわかりティアはスピードを上げると指を鳴らしてニヤッと笑った。
「フフフ…面白い!この私からアミュレットを奪ったことをたっぷり後悔させてやろう!首を洗って待っていろ!!」
ティアはさらにスピードを上げて追い始めた!
「ハァ…ハァ…ヒィ…ヒィ…エ、エヘヘへ…やった!ついに手に入れたぜぇ!コイツさえあれば俺の野望を果たせるぜぇ!ヒヒヒヒヒ‼︎」
アミュレットを盗んだ犯人…悪魔は狂った様に笑いながら建物の屋根の上を飛んで逃げていた。着地し古びた廃倉庫の前に来たその時!
ズダン!!
「ッ⁉︎もう追いつかれちまったか!」
悪魔の足元に銃弾が当たり、後方から片手にルーチェを持ったティアが回転しながら降りて来て鋭い目つきで悪魔を睨みつけた!
「そこまでだ盗っ人め!!」
もう一丁のオンブラも抜いて構えると警告した!
「何者だ貴様!アミュレットを盗むとは!覚悟は出来ているのだろうな!」
ティアの警告に悪魔は被っていたフードを下ろした!その顔は醜く痩せこけぎょろりとした目が特徴的な小柄な男であった。その手には盗んだアミュレットが握られている!
「貴様、悪魔だな?そのアミュレットをどうするつもりだ!」
「エ、エヘヘへ…あっしみてぇな存在に名前なんて無え、まぁ、シド…とでも名乗っておきやすかねぇ…へへへ」
ヘラヘラ笑いながら悪魔…シドは名乗った。その態度にティアはイラつき始めた。
「ッ!単刀直入に聞く!貴様の目的は何だ‼︎」
「まぁそう焦るなよぉ?あっしはムンドゥス様の元手下でさぁ、まぁ手下って言うほどでも無かったけどなぁ、ヒヒヒ」
「貴様…あのムンドゥスの手下か」
シドがムンドゥスの元手下と知りティアはさらに表情を険しくした!何しろ自分を殺した奴だから。シドは続ける。
「ムンドゥス様がダンテとバージルに倒されて行き場を失ったあっしは魔界に戻った、でも魔界もダンテの兄バージルが支配してて居心地が悪い。そこであっしはある野望を計画したのさ」
「野望だと?」
「そう、太古の昔に封印された大悪魔アビゲイルを復活させムンドゥス様が成し得なかった人間界征服を果たそう!ってなぁ?そうすりゃムンドゥス様も喜ばれるに違ぇねぇしなぁ!ヒヒヒヒ!」
「大悪魔アビゲイル…だと?」
シドの野望を知りティアは驚いたが、アミュレットを盗んだ理由を聞いた。
「それでアミュレットを盗んだのか?」
「へへへ、そうさ。既にアビゲイルを復活させるのに必要な物は揃った!後はこのアミュレットだけだったが…アンタは中々アミュレットを手放そうとしなかった、そこでアンタが手放すまで見張ってたのさぁ」
「…脱衣所まで忍び込んだのか?…変態だな」
「何か文句でもあるか?おかげでアミュレットは手に入ったぜぇ」
脱衣所に忍び込んでまでしてアミュレットを盗んだシドにティアは嫌悪感を露わにしていたが、ルーチェ&オンブラを構え直し銃に魔力をチャージした!
「せっかくアイテムが揃いアビゲイルとやらを復活させる準備が整ったが、ここまでだ!貴様には死んでもらう!そのアミュレットも返してもらうぞ!」
見たところシドから感じる魔力は下級悪魔程度、しかしシドはヘラヘラ笑ったままだ。
「エヘヘ…確かにあっしじゃアンタには敵わねぇ、そんじゃ少しアビゲイルの力を使わせてもらうかねぇ!イヒヒ」
「アビゲイルの力?」
「そう、アビゲイルの能力…召喚魔力さぁ!!」
足元に魔法陣を展開しシドの体がオーラに包まれると両肩の上に魔法陣が現れ、そこから鋭い爪と仮面と盾を装備した爬虫類系悪魔のブレイドとその亜種のアサルトが数体現れた!
「来い!雑魚共が‼︎」
ティアは飛び上がるとルーチェ&オンブラを回転しながら乱射し飛び掛かって来たブレイドを蹴り落とし、きりもみ状に回転しながら突進して来たアサルトの尻尾を掴んで振り回して別の個体にぶつけた!
「へへへ、中々やるなぁ!」
ティアの戦闘力にシドはヘラヘラしながら笑っていた。そうしてる間もブレイドとアサルトはティアに倒されていき、ブレイドが飛ばした爪を受け止めて投げ返して倒し、最後に残ったアサルトを飛び掛かって来たところを蹴り上げてチャージしていたドラゴンマグナムを撃ち込み消滅させた!悪魔を全滅させたティアはルーチェを回すとシドに向けた。
「これで終わりか?なら覚悟してもらうぞ」
「やるじゃねぇかアンタ?大したもんだぜぇ。でもよ?油断しない方がいいぜ?ヒヒヒ」
「何?どういう…ヒュ!…ッ⁉︎」
眉を顰めていると背後から殺気を感じティアは咄嗟に伏せた!殺気の正体はティアのポニーテールを掠ると地面を滑りながら着地した!
「なっ⁉︎何だお前は!」
ティアを背後から襲ったのは…赤黒い体に緑の目、腕に鋭い赤い刃を生やした強襲型悪魔のヒューリーだった!
「チッ!惜しかったなぁ…勘がいいなアンタ?」
ヒューリーの不意打ちを避けたティアにシドは舌打ちしたが、すぐにまたヘラヘラ笑い出した。
「そいつぁ魔界で捕食者(プレデター)と呼ばれた上級悪魔さ!次はこいつを倒してみなぁ!」
シドの掛け声と共にヒューリーは刃を出して低い体勢で構えると残像を残すくらいのスピードで姿を消した!速い!確かに魔力といいさっきのブレイドやアサルトとは比べ物にならない!だがティアはまだ余裕そうだった。
「ふむ、大したスピードだな?気を抜いたら一瞬で首が飛ぶだろう。だがな…お前の殺気はすぐにわかる!フッ‼︎」
腕に蒼い鱗を形成させ、死角から狙ってきたヒューリーの刃を裏拳の要領で受け止め追撃に回し蹴りで吹き飛ばした!壁に叩きつけられたヒューリーはすぐにまた姿を消した。どの方向から攻めても確実に受け止めるティアにシドはまた舌打ちした。
「何度やっても同じだ、いい加減諦めたらどうだ!」
「ほんとにやるねぇアンタ、じゃあ追加だ」
殺気が数倍に膨れ上がり包囲された!気づいた時には左右から2体のヒューリーが刃を振りかぶっていた!回避が間に合わない!両腕に鱗を展開し斬撃に耐えようとしたその時!
「ティア姉!!」
黒と白の影が現れヒューリーの刃を受け止め吹き飛ばした!現れたのはデビルトリガーを発動させた黒歌と白音だった!
「ティア姉大丈夫?」
「加勢に来ました!」
吹き飛ばされた2体のヒューリーは体勢を立て直すと再び二人に刃を構えて向かって来たが、次の瞬間ヒューリーは互いの刃で体を突き刺し自滅した!どうやら仙術を流されて混乱したらしい。最後にさっきまでティアが相手をしていたヒューリーが突っ込んできたが、擦り抜け様に繰り出したティアの拳によって体を打ち砕かれ消滅した。ティアは助けてくれた二人に感謝した。
「黒歌、白音ありがとう。だが何故ここに?旅行中じゃなかったのか?」
「大切な家族のピンチをほっとけない…ってあれ?ティア姉あたし達が旅館にいたの気づいてたの?気配消してたのに」
「いやバレバレだったぞ?それにあんなにデカい声だったし」
見張っていたことに気づいていたティアに黒歌と白音は苦笑いしていたが、黒歌は咳払いした。
「それでティア姉どうしたのにゃ?こんな奴らに遅れを取るなんてらしく無いにゃね?今のティア姉ならダンテと同じくらい強いでしょ?」
「あぁ、私としたことがアミュレットを奪われてしまった!そのおかげで力も以前と同じくらいに落ちてしまって(それでも強いが)調子が悪い」
「にゃんと⁉︎ダンテとの愛の証を奪われちゃったのにゃ⁉︎」
「⁉︎何でその話を知ってる⁉︎やっぱりあの時温泉にいたなお前達⁉︎」
「あー…それはその…」
「…あーもう台無し…姉様達、とりあえず話は後にしましょうよ?」
見張っていたことが完全にバレてしまい黒歌は誤魔化し白音はツッコミを入れた。
「まぁいいにゃ、それで?アミュレットを盗んだ犯人は?」
「あの男だ」
魔法陣の上に立つシドを見た黒歌はまるで汚物を見るような顔をした。
「うわっ何あの汚い男⁉︎ホームレス?」
「いや、あんな身なりだがあれでも悪魔だ。しかもあのムンドゥスの元手下らしい」
「えっ?そうなの?…あんなのが手下なんてムンドゥスも趣味が悪いにゃね、ひょっとして手下なのも気づかれて無いんじゃない?可哀想〜」
ボロクソに言われるシド…
「へへへ…ひでぇ言われ様だぜぇ」
シド自身も苦笑いしていた。
「ま、何でもいいにゃ、じゃさっさとアミュレットを取り返そうにゃ。ねぇキモ悪魔?痛い目に遭いたくなかったら大人しくアミュレットを返すにゃ!」
「エヘヘ、そうはいかねぇなぁ!コイツはアビゲイルの復活に必要なんでなぁ!」
「えっ?エビガエル?…何にゃそれ?」
「アビゲイルだ、大悪魔だと言っていた」
聞き慣れない名前に首を傾げる黒歌に教えると、シドは不気味に笑いながら説明した。
「そう、アビゲイルさ。太古の昔に封印された伝説の大悪魔で、かつては魔帝ムンドゥス、覇王アルゴサクスに並ぶ魔界を震え上がらせる程の力を持つと言われていた。あっしの目的はそのアビゲイルを復活させてこの人間界を征服することさ!イヒヒヒヒ‼︎」
笑いながら自らの野望を語ったシドに黒歌はジト目で見ていた。
「ふーん、でもさ?復活させたところでアンタに扱えるの?」
「…魔力も私達以下ですし、無理そうですね」
白音も鼻で笑って返した。
「う、うるせぇ!やってみねぇとわかんねぇだろうが!」
黒歌と白音に言われムキになって返したシドはニヤつくと魔法陣を展開した。
「おしゃべりはこのくらいにして、そっちもお友達が増えたみてぇだし、こっちもお友達を増やすぜ!」
魔法陣が光るとそこからヘルズやスケアクロウ、マリオネット、サイクロプスやアルケニーの蜘蛛悪魔などの様々な姿の悪魔の大群が現れた!黒歌と白音が来て一旦は優位に立ったが再び逆転されてしまった。ティア達は背中合わせになって構えた!
「さぁ…ゲームの始まりだぜぇ!いけぇ!!」
悪魔の大群は一斉にティア達に飛び掛かってきた!絶体絶命のピンチと思われたその時!上空に紅い影が現れ、両手両足に黒い籠手と具足を装着したある男が急降下してきた!ダンテだ!!
「オオオオオオラアッ!!」
「…んあ?ひえぇ!?」
ダンテはシドがいる場所に籠手ギルガメスを振り下ろすと地面に打ち付けた!!シドが飛び退いて避けると魔法陣は砕け散り、召喚された悪魔達は悲鳴を上げて消えていった。拳を地面から抜き立ち上がったダンテはティア達にサムズアップした。
「よぅ、無事かお前ら?」
「「「ダンテ(兄様)!!」」」
黒歌と白音はダンテに駆け寄ると嬉しそうに抱きつき、ティアは笑顔で感謝した。
「すまないダンテ、何故ここに?」
「同じ街内にいるんだぜ?こんなに色んな魔力がごった返しになってりゃ気づくさ。それとこの騒ぎに気づいたサーゼクスから調べてくれと依頼されたんだ。そんで来てみりゃ…こんな事になってるなんてな?」
ギルガメスは体にしまい周りを見て床に尻餅を着きながらダンテを見ているシドの方を向いた。
「…!…ダンテ…チッ」
ダンテの顔を見て気不味そうに舌打ちするシド。その様子に呆れたように声をかけた。
「お前もこっちの世界に来てたなんてな?」
「奴を知ってるのかダンテ?」
「あぁ、アイツはこの世界に来る前に元の世界で何度か何かやってんのを見たが、大した奴じゃ無かったからほっといたんだ。まさかこんなご大層な野望を抱いていたとはな」
シドの手に握られたアミュレットを見るとダンテは口調を強めて警告した。
「ソイツはお前如きに扱える代物じゃねぇ、大人しく返すんだな。それとさっき魔法陣と一緒に復活に必要な物もぶっ壊したからもうお前の野望は終わりだ、諦めて帰るんだな?」
確かに魔法陣があった場所には宝具や何かの頭蓋骨がバラバラになって散らばっていた。これではもう復活の儀式は出来ないだろう。
「にゃはは!残念でした〜♪」
「さぁ!アミュレットを返すんだ!」
シドの野望を打ち破り黒歌達は笑っていたが、シドは不気味に笑い続けていた。
「ヘッヘッヘッ…!残念だったなぁ、もうそんな物は必要無いぜぇ!」
シドの後ろに巨大な魔法陣が現れた!同時に強大な魔力の気配が近づいてくる!
「お前達が遊んでいる間に儀式は完了したぜぇ!ヒハハハハ‼︎アビゲイル復活だぁ!!」
魔法陣が光り、辺りが大きく揺れ出すと魔法陣から巨大な腕が出てきて、両腕で魔法陣の左右の縁を掴むとその本体が姿を現した!
「これが伝説の大悪魔アビゲイルだ‼︎ヒィハハハハハ!!」
狂い笑いするシドの背後には…金色の巨大な体に巨大な翼、髑髏に似た頭部を持つ怪物が立っていた‼︎とんでもない魔力だ!シドが言った通りムンドゥスに匹敵している!その魔力にティア達は硬直していた。
「ど、どうするのにゃダンテ⁉︎リアスちん達呼ぶ⁉︎…ダンテ?」
黒歌は援軍を呼ぶことを提案したが、ダンテは焦ること無くアビゲイルを見つめると背中に魔剣ダンテを出現させた!戦う気のようだ!
「ヒヒヒ、やる気かダンテ?ま、いくらお前でもアビゲイル相手じゃ…おわっ⁉︎何しやがる‼︎」
嘲笑っていたその時!アビゲイルの舌が伸びてシドを捕まえるとそのまま飲み込んでしまった!突然のことに黒歌達は驚いた、やはり制御不能か⁉︎
「ギャアアアアア!!!」
バリ!ボリ!ゴキ!メキ!……ゴクン
シドの断末魔と骨と肉が噛み砕かれる音が響き飲み込むとアビゲイルの目に光が灯った!
『…がっ⁉︎あぁ?何だぁこりゃ?俺ぁ確か…ん⁉︎この体は⁉︎』
声はアビゲイルから発せられていたが、その声は今飲み込まれたシドのものだった!まさか、融合したのか?
『ヒヒ…ヒヒハハハハハッ!!こいつぁいいぜ!まさか俺がアビゲイルの力を手に入れるなんてなぁ!!すげぇ!すげぇぜ!この力を使って人間界、魔界を全て支配してやるぜぇ!!ヒャハハハハハ!!!』
アビゲイルの力を手に入れ歓喜の声を上げるシド!
「くっ!させるか!おいダンテ!止めるぞ‼︎…ダンテ?どうした⁉︎早くしないと奴に世界が‼︎」
硬直から回復したティアが叫んだがダンテは変わらず黙って見ているだけだった。動かないダンテの代わりにティアが出ようとすると、ダンテは手を向け止めた。
「お前らは動くな、そこでじっとしてろ」
そう警告しダンテは魔剣ダンテを担いでアビゲイルと化したシドの方へ歩いていった。その姿に黒歌達は心配したがダンテを信じ見守ることにした。
シドの前に来たダンテは見上げると笑いかけた。
「よぉ、ずいぶんデカくなったじゃねぇか?だが悪りぃが倒させてもらうぜ。この世界に迷惑かけるな」
『ヒヒヒ、出来るかなぁ?今の俺は魔界と人間界を征する力があるんだからなぁ…人間界を征服する前にまずはてめぇを血祭りに上げてやるぜぇダンテェ!!』
「思い上がるのもいい加減にしろ」
ダンテが言い終わった瞬間!シドは鋭い巨爪でダンテを斬り飛ばした!血が激しく飛び散り、宙を舞うダンテにシドはさらに爪を地面に突き刺しダンテの下から槍状にして出すと全身を刺し貫いた!!ダンテはピクリともしない。
「「「ダンテ(兄様)!!」」」
「ダンテェ!!いやあぁぁぁぁっ!!離してティア姉!白音!ダンテが!ダンテがぁ!!」
「行ってはダメだ黒歌‼︎」
「姉様ダメです!」
見守っていたティア達が叫び、泣き叫びながら飛び出しそうになった黒歌をティアと白音は必死に止めていた。
「…へへへ……ははははは!!」
『!?』
その時ダンテが笑い出した!なんとダンテは生きていた!シドも目を疑った。
「所詮てめぇ如きじゃ、この程度で限界さ」
ダンテはそのまま爪をへし折ると着地し魔剣ダンテを呼び戻した。
『バ…バカな…!』
シドは信じられなかった、ムンドゥスと同等の力を手に入れたのに全く通用しなかったのだから!ダンテはミラージュソードを展開した。
「てめぇがいくらデカくなろうと、世界を支配する力を手に入れようと…」
『ガアアアアアアアッ!!!』
シドは翼を広げて飛び掛かりダンテも魔剣ダンテで迎え撃った!
「無駄なんだよ!!」
激しい火花を散らせながら両者は押し合った!
「オオオオオッ!!」
ダンテの目が赤く光りミラージュソードの出力が跳ね上がった瞬間!シドのアビゲイルの体は…両断された!両断する瞬間、黒歌達にはダンテの姿が一瞬だけ真魔人になったのが見えた。
『…ガッ⁉︎ガハァ…グアアアアアァァァァッ!!!!』
シドの悲鳴と共にアビゲイルの体は爆発し辺りは煙に包まれた。煙が収まってくるとその中に元の男の姿に戻ったシドが座っていたが、悔しそうに小言を言っていた。
「な、何で…何で勝てねぇんだよぉ!ムンドゥス様と同等の力を手に入れたはずなのに、いくらてめぇが強いって言ったっておかしいだろうがよぉ⁉︎こんな理不尽は無ぇぜチクショー!生まれた時から決まってんのかぁ⁉︎大した力を持たねぇ悪魔はてめぇにぶち殺される運命だってことがよぉ?そんなのありかよ⁉︎これじゃ俺が何したって意味無ぇ…」
「違うな、魂さ」
「魂…?」
尻餅を着くシドの前に魔剣ダンテを担いだダンテはエボニーを向けた。その両傍にはルーチェを構えたティア、魔力と爪を構えた黒歌と白音がいた。
「てめぇみてぇに魂を腐らせちまった奴が力だけ手に入れたところで、本物の魂を持った奴には敵わないってことだ」
「…へへぇ…じゃその強く優しい本物の魂を持ったダンテさんは…俺を見逃してくれるんだよなぁ?エヘヘ」
「無理だな、お前はやり過ぎた。でもよ、お前のこと嫌いじゃなかったぜ?」
その言葉に次の瞬間シドは狂った様に飛び掛かってきた!
「ッッッ!く、くそったれェェェェ!!」
「「「出直して来な!!」」」
「ジャックポット!」
ズダン!!
ティア達の一斉攻撃の後ダンテに額を撃ち抜かれ、シドは塵となり消滅した。
シドがいた所にはアミュレットが落ちていた、ダンテは拾い上げるとフッと笑った。
「ダンテ!怪我大丈夫にゃ⁉︎」
「あぁ大したことない」
黒歌は駆け寄ってくると傷の手当てを始めた。その後ろからティアが申し訳なさそうに近づいてきた。
「ダンテ、私は…」
パシッ!!
ダンテはティアの頬を叩いた!突然の行為に黒歌と白音も驚いた。
「お前がコイツを盗られたせいで危うくこの世界を滅ぼしかけたんだぞ?」
ダンテの言葉にティアは頬を押さえてさらに表情を落とした。
「で、でもダンテ!ティア姉だって油断しただけで…!」
「そ、そうです!だからティア姉様を責めないでください!」
「いいんだお前達」
フォローしてくれた二人を止めるとティアは頭を下げた。
「私の不注意で奪われてしまったのだ、謝って許されることでは無い。だからダンテ、もう覚悟は出来ている、どんな罰でも喜んで受けよう」
頭を下げ続けるティアを見てダンテは追加忠告した。
「…今回は相手が雑魚だったからなんとかなったが、いいかティア?このアミュレットには持つ奴によっては本当に世界を滅ぼすほどの力が秘められてるからな?それを忘れるな?」
「わかった、肝に銘じておこう!」
ティアは再び頭を深く下げて謝罪した。その姿にダンテは溜め息を吐くと…
「んじゃ、反省したんならもういいぜ、次からは気をつけろよ?よし、帰ろうぜ」
「…えっ?」
あっさり許してくれたダンテにティアはポカーンとしていたが、ダンテは歩きながらアミュレットをティアの方へ投げた。
「ほらよ、もう盗られるなよ?そんなんじゃお前を認めてソイツを託した親父と母さんも泣くし、バージルも怒るぞ?ソイツの持ち主はもうお前なんだ、しっかり管理を頼むぜ相棒?」
アミュレットを受け取ったティアはアミュレットを見つめていたが、もう一度自分を信じてくれたダンテに感謝するとアミュレットを握り胸元に埋め込んだ。
「あぁ!任せろダンテ!……ありがとう」
この後ダンテ達は帰り、ティアは旅館に戻ると回復した片瀬と村山と一緒に温泉旅行を再開し楽しく過ごした。
翌日、デビルメイクライに帰って来たティアはダンテに結婚式を挙げないかと提案し、それを聞いた黒歌と朱乃もやりたいと言い出したので近いうちにやることに決めた。
小悪党キャラのシドと大悪魔アビゲイルを登場させました。
次回、結婚式の回 お楽しみに