「先程は助けていただきありがとうございます、私はアーシア・アルジェントと言います。アーシアと呼んでください、よろしくお願いします」
エメラルドグリーンの美しい双眸、よく手入れされてそうな腰まである綺麗なストレートブロンドの美少女シスター、アーシアが自己紹介した。
「あ、あの…私なんかを助けてしまって大丈夫でしょうか…?」
「お前を助けないとイッセーに恨まれちまうからな、それにあのままあそこにいたら堕天使どもに捕まっちまうかもしれなかったしな」
そわそわしているアーシアにダンテは気にするなと宥めた。
「はい、これで腫れは引いたにゃ、痛みの方は大丈夫にゃ?服も直しといたにゃ」
「はい!大丈夫です、ありがとうございます黒歌さん!」
とても可愛らしい笑顔で自己紹介中も治療魔法で治してくれた黒歌にお礼を言い感謝した。
「どういたしまして、こんな可愛い顔に跡が残ったら大変にゃもん。それにしても…服を破いた上に女の子を殴るなんてその神父、本当に最低にゃ!」
「い、いえ…私がいけなかったんです、悪魔さんを庇った上に神父様に逆らったから…私は殴られて当然のことをしたんです」
「しかし、だからと言って女の子を殴るのは最低であることには変わらないな」
同じ女性であるティアも同情した。
「で、ですが!」
「いいのいいの!気にしないのにゃ!」
「……わ、わかりました…ありがとうございます」
納得したアーシアをティアと黒歌は微笑むと頭を撫でた。黒歌はアーシアを優しく抱きしめた。
「そうそう、女の子を殴ったその神父が悪いにゃ、アナタは悪くない!にゃは♪んも〜!この子かわいいにゃ♡抱きしめちゃうにゃ!ビリッ⚡️…ふにゃ⁉︎」
アーシアを抱きしめていた黒歌がビクッとしてアーシアから離れた。
「えっ…?あ、あの…どうかしたんですか⁉︎」
アーシアは慌てて黒歌に何があったか尋ねた。
「あ〜びっくりした…あ、いやね、あなたが首から下げてるその十字架がチクチクしてにゃ」
黒歌はアーシアの首に下がった十字架を警戒しながら見た。あぁそうか、黒歌は転生悪魔だから十字架に触れるとダメージを受けるのか、俺はネフィリムであるおかげで悪魔の弱点になるものが効かないからな、ネフィリムでよかったぜ。ちなみに俺がネフィリムであることはさっき教えた、相変わらず驚いていた、もう慣れたが。
理由を知ったアーシアはハッとした表情になり慌てて黒歌に謝罪した。
「す、すみません、すみません‼︎ああ、主よ、親切にしてくれた黒歌さんを傷つけてしまった罪深き私をお許しを‼︎」
両手を合わせ必死に祈りを捧げるアーシアに対し黒歌はと言うと…
「うにゃ〜〜〜〜!!やめるにゃ〜〜〜〜!!死ぬぅぅぅぅっ!!」
頭を押さえて唸っていた。まるでコントみたいだな。ティアなんか大声で笑ってるし、って俺も笑ってたがな。
「ふぅ、笑ったら腹が減ったな。よし、そろそろ飯にしようぜ、アーシア、腹減ったろ?」
そう聞くとアーシアの腹からかわいい音が鳴り、アーシアは顔を赤くして恥ずかしそうにしていた…体は素直だな。
「ふっ、おい黒歌…いつまで唸ってんだ?飯作ってくれ」
「うぅ…わかったにゃ、ちょ、ちょっと待っててにゃ…」
黒歌はフラフラしながらキッチンに向かった、その様子を見てアーシアがもう一度謝罪の祈りを捧げた、その瞬間キッチンから悲鳴と倒れる音と食器が割れる音が聞こえた!
…コイツかなりの天然だな、そしてティアは爆笑するな。
数十分後、料理を持って黒歌がキッチンから出てきた、その顔は少しやつれていた気がしたが…
「お、お待たせにゃ…アーシアは聖職者だから肉は使わなかったにゃ。召し上がれ」
「はい、お気遣いありがとうございます。それではお食事前にお祈りを…主よ… ガタッ!…あっ」
再びアーシアの天然が炸裂し黒歌はテーブルに着いたまま泡を吹いて気絶した。だからティアは爆笑するなって、三度目だから腹を抑えてヒーヒー言ってるし、でもここまできたらもう笑うしかないな。
数秒後意識を回復した黒歌はアーシアに祈り禁止令を出した。アーシアは謝っていたが謝り方が祈りのポーズになっていたので再び黒歌が叫んでいた……ったくいつまで続くんだよこのコント?
なんやかんやあったが、ようやく飯にすることができた。今回黒歌が作ったのは野菜がたっぷり入っているミネストローネスープだった。
「美味しいです!お野菜のお味が出ていてとても美味しいです!」
よほど腹が空いていたのかおかわりをしていた。その様子を笑みを浮かべて見ていたがアーシアは食べながら時折悲しそうな表情をしていた、まぁあえて聞かなかったが。こうして波乱の夕食は幕を閉じた。
食べ終わり、コーヒーを飲みながらアーシアが日本に来た理由などを尋ねたがアーシア本人もこの街の教会に赴任してきたこと以外何も知らないらしい。とはいえ堕天使が関わっている時点で何か裏があることは間違いないからな、こいつは警戒しておく必要があるな。
話題を変えしばらく雑談した後アーシアは黒歌とティアと一緒に仲良く風呂に入った。その際、アーシアの色っぽい声が聞こえたことと風呂から上がったアーシアが自分の胸を見ながら何かをぶつぶつ呟いていたことも気にしないでおこう。
寝る場所は部屋が無いので黒歌と一緒に寝ることになった。やれやれ、明日から大変そうだな。
▽
翌日、アーシアが街を見て歩きたいと言ってきたので街に出ることにした。もちろんダンテも護衛について行くが。
街に出るとアーシアは眼をキラキラ輝かせながら歩いていた。見る物全てが珍しい様であれは何か?これは何か?といろいろ聞いてきた。まぁ俺もすべて知ってるわけじゃないがな。それじゃまずは……ん?
その時ダンテは何かの気配に気づいた……先程から誰かに見られている様だ、気配からして堕天使だな、少し離れてるがアーシアを狙っているのは間違いないな、もう少し様子を見るか。
堕天使が見ていることに警戒しながら歩き続け公園前に着いた時、公園の鉄棒で必死に懸垂をしているイッセーを見つけた……筋トレ中か?
「…イッセーさん?」
アーシアが呼びかけるとそれに気づいたイッセーが驚いた顔をして走って来た。
「…えっ?ア、アーシア⁉︎どうしてここに⁉︎」
「はい、ダンテさんに頼んで街を見て歩いてたんです」
「そうなのか、でも無事で良かったよ。ダンテさんありがとうございました!」
アーシアの無事に安心したイッセーはダンテにお礼を言って頭を下げた。
「おう。ところでイッセー、暇なら一緒に周らねぇか?お前の方がこの街に詳しいだろ?それにお前が一緒の方がアーシアも喜ぶしな」
ダンテの発言にイッセーとアーシアは顔を赤くして顔を見合わせていた。
「いいですよ、おもしろい所いっぱい案内してあげますよ」
イッセーを加えて街歩きを再開した、警戒を怠らずに。ダンテは不安にさせない為にあえて堕天使が見張っていることは言わなかった。
まず昼が近かったので昼食を食べる為、某ハンバーガー店に来た。アーシアは注文の仕方がわからなかったのでイッセーが注文した。席に着き食べようとしたところアーシアは何かに悩み食べようとはしなかった。
「どうしたアーシア?食わねぇのか?」
「あ、あの…ナイフとフォークがありませんが…」
そこかい!ハンバーガー食ったことないのか?ダンテは内心ズッコケた。するとイッセーが教えた。
「ああ、これは手でつかんで食べるんだよ、こう紙をとって」
「なんと!そうでしたか!大胆です! では手を清めませんと」
アーシアはバッグから小瓶を取り出した。
……あれってもしかして… それを見た瞬間イッセーが吹き出した!そう、アーシアが出したのは聖水だった。
「ブッ⁉︎ウ、ウェットティッシュがあるから!そんな物騒な物はしまって!」
鳥肌が立ったイッセーからウェットティッシュを受け取りアーシアは手を拭いた。
「ありがとうございます。それではお食事前にお祈りを…主よ… ガタッ! それではいただき… あれ?イッセーさん⁉︎」
ここでもアーシアの天然が炸裂した。デジャヴか?イッセーは気絶して痙攣していた…やれやれ。
ハンバーガーを食べ終わり、次に向かいにあるゲームセンターに入った。いろんなゲーム機を珍しそうにアーシアは見ていたがUFOキャッチャーの前に来ると目を輝かせてケースに張り付いていた!どうやら景品のネズミみたいなぬいぐるみが欲しいみたいだ『ラッチューくん』というらしい。
「よし、俺にまかせろ!」
イッセーが男を見せようとチャレンジしたが、中々取れず10回以上ミスってようやく取ることができた。
「ありがとうございます!一生大事にしますね!」
「あぁ…よろこんでもらえてよかった(涙)」
アーシアは喜んでいたがイッセーは財布を見て泣いていた、まぁ…取れないよりマシだろ?
次にガンシューティングをやった、銃の扱いに長けているダンテもこのゲームに参加した。
「ダンテさん、勝負しましょう!」
「フッ、銃で俺に勝てるかな?」
ゲームスタート!
「うりゃ!オラァ!このこの!!」
「フッ」(片手撃ち)
結果は…言うまでもなくダンテの圧勝だった。しかもスコアが記録を塗り替えるほどの高得点であり、いつの間か後ろに集まっていたギャラリーからは拍手が上がった。
「…さ、流石ダンテさん…ですね…」
アーシアにいいとこ見せようとしていた様だが残念だったなイッセー。沈んでいたイッセーをアーシアが慰めていた。
ゲームセンターを後にし、その後もいろいろな店を見て周った。気づけば夕方になり辺りは夕日に照らされていた。そろそろ街を見終わった頃か?
「………」
…まだ堕天使が見張ってるな…いい加減しつこいぜ、コソコソしやがって、取っ捕まえてみるか?だいぶさっきより近づいてるし。
「イッセー、見たい店があったからちょっと見てくる、お前らは先に行っててくれ」
「あ、はい。わかりました」
ダンテはイッセーとアーシアが行ったのを確認するとだいぶ近づいてきていた堕天使の魔力を感じ取りその魔力に向かってエアトリックを発動させた。
「!!う、うわっ!?」
エアトリックで瞬間移動した目の前に黒いゴスロリの服を着た金髪の小柄な少女がいた。こいつが堕天使か?しかしその背中には堕天使の特徴である烏の様な黒い翼が生えていた。堕天使の少女は突然現れたダンテに驚き尻餅をついた。
「よぅ、お前堕天使だな?ずっと見張ってたみてぇだが…何が目的だ?」
ダンテは少し殺気を出して尋ねた。この間の堕天使の女みたいに偉そうな態度で答えると思ったが…
「や、やややめてくださいっす!殺さないでくださいっす!!痛いのは勘弁っす!!!」
蹲ってガタガタに震えていた…どうやらダンテが出した僅かな殺気に完全にビビってしまったようだ。ったく、これじゃ俺が虐めたみてぇじゃねぇか。その姿にダンテは溜め息を吐くと殺気を収め、蹲っている少女の首根っこを掴んで持ち上げ再度質問した。
「もう一度聞くぞ、お前の目的は何だ?アーシアを狙ってるのか?」
落ち着きを取り戻した堕天使の少女は笑みを浮かべて答えた。
「その通りっす!ウチらの狙いはあのシスター、アーシアっす。そしてウチの役割はアンタをあの二人から遠ざけることっす!たぶん今頃はレイナーレ様がアーシアを奪っている頃だと思うっす。は、離せっす!」
「何⁉︎」
急いでイッセー達の魔力を探り始めた。…!イッセーの魔力が落ちている!しまった!俺としたことが!こいつは罠だったのか!ダンテは急いでイッセーの魔力に向かってエアトリックを発動させた!…堕天使の少女も一緒に。
「…えっ?ちょ!ウチも一緒に⁉︎」
その頃イッセーは危機に瀕していた。
以前受けた足の傷をアーシアの神器、聖母の微笑み(トワイライトヒーリング)で治してもらい、アーシアの昔話を聞いていた時、以前イッセーを殺した堕天使天野夕麻ーーレイナーレが現れたのである。
イッセーは神器の籠手を発動させたが敵わず再び光の槍に腹を貫かれた。
「神器を使ってもこんなに弱めて放った槍すら弾けないなんて、やっぱ下級悪魔…いえ、ゴミ以下ね。でも寧ろ半端にパワーアップしたおかげで苦しみながらじわじわと死ぬんだから皮肉なものね」クスッ
「く…くそ…アーシア…逃げ…ッ!ゲホッ!」
「しっかりして下さい!イッセーさん!」
アーシアが神器でイッセーの腹の傷を治し始めた。
「アーシア、私と共に戻りなさい、応じないならその悪魔を…殺す!」
再び光の槍を形成しながら忠告した。イッセーの傷の治療が終わり状況を見たアーシアは止むを得ず従った。
「…わかりました」
「そうよ、それでいいのよ、今日の儀式であなたの苦悩も消え去るのだから」
レイナーレが翼でアーシアを包み込み引き上げようとしたその時!
「イッセー!無事か!」
ダンテが現れた!その手には堕天使の少女を掴んだまま。
「ダ、ダンテさん!アーシアが!」
「ッ!あなたは⁉︎…ミッテルト、もう少し時間稼げないの⁉︎」
一度ダンテの殺気と魔力をその身で体感しているレイナーレは予想以上に早く現れたダンテに焦っていた。
「…また会ったわね、紅いコートのお兄さん。この状況わかるわよね?一歩でも動いたら、そこの下級悪魔とアーシアを殺すわよ?」
確かに状況的に芳しくない、アーシアは殺されないにしても人質が二人もいたらエアトリックを発動させた瞬間イッセーが殺されちまう。ここは素直に従うしかないか。
「レイナーレ様!助けてくださいっす!」
その時ダンテに捕まっていた堕天使の少女ミッテルトがレイナーレに助けを求めた。しかしレイナーレは冷めた目でミッテルトに告げた。
「…ミッテルト、あなたはもう用済みよ。せめて私が退くまでの時間稼ぎぐらいしなさい」
どうやら捨てられてしまったようだ、哀れな奴だ。
「えっ…?ちょ、ちょっと待ってくださいレイナーレ様!見捨てないでくださいっす〜〜〜!!」
ミッテルトの必死の叫びも虚しく、レイナーレは頭上に魔法陣を展開するとイッセーに笑顔を向けた。
「命拾いしたわね、次邪魔したら本当に殺すわ。じゃあねイッセー君♪(あ〜助かった…)」
レイナーレはアーシアと共に転移していった。
「アーシアああああぁぁぁーーーっ!!!!」
「レイナーレ様ああぁぁぁぁーーーっ!!!!」
「お前は叫ぶな」
▽
あの後イッセーは絶望した表情で帰って行き、ダンテは見捨てられた堕天使の少女ミッテルトを連れてデビルメイクライに戻った。
戻った際、事情を聞いた黒歌とティアにアーシアを助けなかったことを咎められたが、今はコイツからいろいろ聞き出さないといけない。
「ちょっとちょっとなんなんすか!?一体ウチをどうするつもりっすか!?」
「うるせぇ黙ってろ、殺しはしねぇ」
魔力の鎖で逃げられない様に拘束しながらダンテは殺気を出して黙らせた。拘束されながら椅子に座っているミッテルトを黒歌が笑いながら頬を突っついたり、翼を広げたりしながら遊んでいたがダンテは質問を始めた。
「お前らはアーシアを使って何をするつもりだ?」
「ふ、ふん!誰が教えるもんかっす!」
拒否しミッテルトは鼻を鳴らして顔を背けた、するとダンテは銃を構え黒歌とティアはニコニコしながら手に魔力を溜め始めた。
Σ「ひぃ⁉︎ア、アーシアを使ってある儀式をやろうとしてるっす!!」
少し脅しただけであっさり吐いた…
「その儀式ってのは何だ?」
「そ、そんなの口が裂けても言えないっす」
スッ…
Σ「!アーシアの神器を抜き取ってレイナーレ様は至高の堕天使になろうとしてるっす!!」
…言ってるじゃねぇか、コイツ面白いな。軽く脅すだけですぐに吐くミッテルトにダンテは内心笑っていたが、その時ティアが声を上げた!
「何だと⁉︎おい貴様!それがどういうことなのかわかっているのか⁉︎」
「あぁ?どういうことだ?」
意味を理解していないダンテに黒歌が表情を落として教えた。
「…ダンテ、神器を抜かれた人間は死ぬのにゃ…神器は宿主にとっては命そのものなのにゃ」
「マジか?じゃあ儀式が終了したら…」
「…うん、アーシアは死ぬにゃ」
何てこった…あの時無理をしてでも助けるべきだった。
後悔しているとティアがミッテルトの胸ぐら掴んで椅子ごと持ち上げて怒鳴りつけた!
「おい!その儀式とやらは何処でやるんだ!!答えないと貴様、灰にするぞ!!言え!!これは脅しでは無いぞ!!」
「ッ〜〜〜!!ま、街のはずれにある廃教会っす!!グスッ、ごめんなさ〜〜い!!」
ティアの殺気と迫力に耐えきれずミッテルトは泣き出し、ティアは舌打ちしミッテルトを乱暴に放すとダンテに尋ねた。
「チッ、おいダンテ、コイツどうする?このままもう始末するか?」
「いや待て、こんなのでも堕天使であることに変わりはないからな、コイツを殺すと悪魔側と問題になっちまうかもしれねぇ、だから…ティア、コイツを堕天使の本部に送れねぇか?」
「グリゴリにか?可能だが何故だ?」
「そこに送ればコイツにはいい仕置きになるんじゃねぇか?」
「なるほど、それはいい考えだ」
ダンテとティアが不気味な笑みを浮かべながらミッテルトを見るとミッテルトは椅子ごと床に倒れていたがビクッと震え涙目になった。
Σ「ちょ、ちょっと待ってくださいっす!そんなとこに送られたらウチ、ただじゃ済まないっす!!」
「はぁ?そんなの自業自得にゃ」
「そういうことだ。じゃあな、自分達が犯した罪を反省するんだな。ティア、頼む」
「あぁ、ではさらばだ堕天使よ」
ティアが手をかざすとミッテルトが座っている椅子の下に魔法陣が現れ輝き出した。
「ちょ!ちょっと待っ……」
パアァァァ…!
最後まで言えずミッテルトはティアによって堕天使の本部グリゴリに転移された。
堕天使達の目的も儀式の場所も判明したが、問題が残った。
「奴らが堕天使である以上こちらから手を出すことはできねぇ。さて、どうするか…」
再び平行線を辿ることになった。
◇オカルト研究部
「お願いします!行かせてください!」
「ダメよ、あなたの行動が悪魔と堕天使の関係に多大な影響を及ぼすのよ。あのシスターの子は諦めなさい」
「でもアーシアは俺の友達なんです!」
その時リアスがイッセーの頬を叩いた。
「何度も言わせないで頂戴!何でわかってくれないの!あなたに行かれたら確実に死ぬわ!私はイッセーに死んで欲しくないの!」
「今日の儀式とやらでアーシアが殺されるかもしれないんです!」
「儀式……?」
リアスはイッセーが言った儀式の言葉に引っかかった。するとそこに朱乃がやってきてリアスに何かを耳打ちした。
「大事な用ができたわ。私と朱乃は少し出かけるわね」
「部長!まだ話が!」
リアスはイッセーに振り返ると説明した。
「イッセー、あなたは兵士を弱い駒だと思ってるわね?それは大きな間違いよ。兵士には他の駒にはない特殊な能力があるの、それがプロモーション。兵士は相手の陣地の最深部に赴いた時、王以外の駒に変化することができるの。私が『敵の陣地』と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れた時、王以外にプロモーションできるわ。
例えば教会は私たちにとって『敵の陣地』の最たる例よ」
不思議そうな顔をしているイッセーにリアスは続ける。
「それともうひとつ、神器は想いの力で動き出すの、想いが強ければ強いほど神器は応えてくれるわ」
「想いの力…」
イッセーは左手を強く握り呟いた。
「最後にこれだけは覚えておきなさい、兵士でも王を取れる。これはチェスの基本よ。あなたは強くなれる」
そう言うとリアスは朱乃と一緒に部室から出て行った。
テーブルのチェスのボードにポーンの駒を置き部室を出ようとしたイッセーを祐斗が止めた。
「イッセー君、行くのかい?本当に死ぬかもしれないよ?」
「ああ、行く。アーシアは大切な友達だから…たとえ俺がくたばってもアーシアは絶対助ける」
「無謀だね、キミが死ねば彼女は助からない」
「じゃあどうすりゃいいんだよ!!」
何が言いたいのかわからない祐斗にイッセーがキレたが…
「僕も行くよ。放っておけないし、それに…個人的に堕天使や神父は好きじゃない、憎いほどにね…」
同じくボードにナイトの駒を置いた祐斗の目つきが一瞬鋭くなった。
「それに部長が仰っていただろう?教会は私たちにとって『敵の陣地』の最たる例…つまり部長は認めたんだよキミが行こうとしている教会を『敵の陣地』に」
「そ、そうか!」
ようやくイッセーは理解した。リアスが遠回しに敵の陣地に認めていたことを!
「…私も行きます、二人だけでは不安です」
今まで黙っていた小猫もルークの駒を置き行くことにした。イッセーは嬉しさのあまり抱きついた。
「小猫ちゃああああああん!!感動した!俺は猛烈に感動してるよ!小猫ちゃん!」
次の瞬間イッセーは小猫に投げ飛ばされた!
「…熱苦しいです」
「あの〜…イッセー君?僕も一緒に行くんだけど…?」
その後数回小猫に投げ飛ばされたイッセー、既にぼろぼろにされたがイッセー達は教会へ向けて出発した。
▽デビルメイクライ
その頃デビルメイクライではダンテ達がどうしようか悩んでいた。
ミッテルトを堕天使本部に送ってから数分が経った頃、ティアの元に依頼書が届いた。やれやれこんな時に依頼か…
溜め息を吐きながら依頼書を読んでいたティアが突然不気味に笑い出した。
「ど、どうしたのティア姉?怖いにゃ」
「何だ?何て書いてあるんだ?」
「フフフ…読んでみろ、すごい奴から依頼が来たぞ」
「すごい奴?」
不思議に思いつつダンテはティアから依頼書を受け取り読んだ。
『お前さんが最近冥界で噂になっている異世界から来たっていう便利屋ダンテか?俺は堕天使総督のアザゼルだ、よろしくな。
なんか俺んとこの馬鹿どもがサーゼクスの妹の管轄の街で何やらやらかそうとしてるみたいだな?さっきお前さんの方から送られて来た俺の部下が全部話してくれたよ、いきなり椅子に縛られた姿で現れたから驚いたぜ…一応部下を殺さないでくれてありがとよ。それでその街でくだらねぇことやらかそうとしてる俺の部下だが、お前さんらが好きにしてかまわねぇ、殺すなり捕まえるなり好きにしてくれ。俺も騒ぎを起こしたくないんでね。じゃ、よろしく頼む。あと報酬の方はお前さんが決めてくれてかまわない。 堕天使総督アザゼル』
読み終わったダンテもティア同様に不気味に笑い出した、黒歌にも見せると黒歌もニヤリと笑みを浮かべた。
「…フッ、最高の依頼じゃねぇか」
「やったなダンテ、これで思う存分戦えるぞ」
ダンテは膝をパンっと叩くと勢いよく立ち上がった!リベリオンを背に刺し、エボニー&アイボリーを回しながら入口前に来ると二人に確認した。
「よし!行くぞお前ら!今夜はPartyだ!!」
事務所のドアを蹴破るとダンテ達は教会へ向けて出発した。
「…あ〜あ…ドアが……」
…無惨にも蹴破られたドアが向かいの家の塀に突き刺さっていた。