第37話 アザゼル再び
ゼノヴィアがデビルメイクライに住むようになって数週間が経った。
ゼノヴィアは中々真面目なやつで教えた事はすぐに覚えるし努力家なので一緒に住む者達も関心していた。役割りの方は平日は学園とグレモリー眷属である為特に何も無いが、休日はダンテが気が乗らない依頼を引き受けてくれている。真面目なので依頼主からの評判も中々のものでコルクボードに大量に貼られていた依頼書も大分減った。
しかし真面目なのはいいのだが、今まで教会にいたせいなのか一般常識に欠けているところがあり(例:ダンテが入浴中に普通に入ってきたり)本人も気をつけると言っていた。
◇地下トレーニングルーム
ダンテ達はトレーニングルームで戦いを観戦していた。
戦っているのは、ティアとゼノヴィアだ、ゼノヴィアの格好は学園で手合わせしたときに着ていたあの例の身体のラインがハッキリわかる黒いボンテージの様な戦闘服だ、ゼノヴィア曰くバトルコスチュームだそうだ。
「まだまだ行くぞ!ゼノヴィア!」
「あぁ!望むところだ!」
ティアは腕に蒼い鱗をブレード状に形成し構えており、ゼノヴィアはデュランダルを構えていた。
ティアは冷静に見えたが前のコカビエル騒動で制限も無く本気だったにもかかわらず完膚無きまでにボロボロにされ自分の無力さを痛感したのであった……まぁ相手がバージルだったから仕方ないというのもあるが、あの戦いの後からティアは必死にトレーニングを重ねていた。
「ティアさん、ずいぶん気合いが入っていますわね?」
「あぁ、あいつプライド高ぇからな、あの戦いで負けたのがよっぽど悔しかったんだろうな」
「たまに組み手の相手をすると本気出し過ぎて殺されそうになる時があるにゃ…あの時は焦ったにゃ」
「…ティア姉様、少し怖いです」
黒歌の言う通り以前組み手で殺されかけたと泣きながら抱きついて来たことがあった。ダンテも注意するとティアもやり過ぎたと反省していたが、今回の相手は悪魔になったとはいえゼノヴィアだ、お前との力の差は歴然だ、手加減しないと本当に死んじまうぞ?
心配して戦いを見ているとティアは一応手加減していたが、ゼノヴィアも元教会剣士だったので決して弱くはなく確実にティアの攻撃に対応していた。
「ゼノヴィアのやつも大したもんだな?手加減してるとはいえティアと互角とはな……ピザ美味いな」
「ホント、流石に戦い慣れてるにゃ……朱乃ちん、紅茶おかわり」
ダンテ達は椅子に座りながら朱乃が入れた紅茶と黒歌が作ったピザを食べながらゼノヴィアの戦いを褒めていた。ダンテ達の周りには一応防壁としてケルベロスの氷の結界アイスエイジを展開していた。
しばらくブレードとデュランダルによる斬り合いと鍔迫り合いが続き刃が離れると二人は後方へ滑りながら体勢を立て直した。ティアはゼノヴィアの腕前にニヤッと笑った。
「中々やるではないかゼノヴィア!手加減してるとはいえ私と互角にやり合うとは」
「いや、こちらこそ伝説の龍王と手合わせできて光栄だ!」
「ではその実力に敬意を表し私の新たな技をお前に見せてやろう!」
「いいだろう!全力で受け止めてみせる!」
ゼノヴィアがデュランダルを構え直すとティアも魔力を徐々に高め両手を重ねて構えると叫んだ!
「受けてみよ!私の新技!ドラゴンラッシュギドラ!!」
ティアの手から三つ首の蒼い龍のエネルギー波が放たれゼノヴィアに向かった!
「ハアァァァ!!デュランダル!!!」
ゼノヴィアもデュランダルから聖なるオーラの斬撃を放った!
龍のエネルギー波と聖なる斬撃はぶつかると爆発に近い凄まじい衝撃波が発生しトレーニングルーム全体が激しく揺れた!その衝撃はダンテ達を包んでいたアイスエイジも歪み紅茶が溢れた!
「にゃ⁉︎凄い揺れ‼︎」
「…くっ!…あっ⁉︎ゼノヴィア先輩の斬撃が!」
「押し負けてますわ!」
互角に見えたゼノヴィアの斬撃はティアのドラゴンラッシュギドラに敵わず押し負け弾け飛んでしまった!エネルギー波はそのままゼノヴィアに向かった!このままではエネルギー波に呑み込まれてしまう!
「危ないにゃゼノヴィアちん!!」
「…ったく、しょうがねぇな」
ダンテは急いでエアトリックでゼノヴィアの前に来るとリベリオンを逆手に構えた。
「ドライブ!!」
チャージ無しでドライブを放ちドラゴンラッシュギドラを相殺させるとティアに注意した。
「おいティア、やり過ぎだぞ?」
「す、すまないダンテさん、おかげで助かった」
「気にすんな」
ゼノヴィアの無事を確認するとティアも急いで飛んできてゼノヴィアに謝罪した。
「すまないゼノヴィア!大丈夫か⁉︎」
「大丈夫だ。しかし流石は龍王だ!手加減されているのに私では足元にも及ばなかった。この戦いは貴重な経験になった、ありがとうティア姉さん」
死に掛けたのに礼を言われたティアは驚いたが、フッと笑うとゼノヴィアに手を差し出した。
「死ぬところだったのに礼を言われるとはな…だがいい戦いだった、私からも礼を言おう、ありがとうゼノヴィア」
ゼノヴィアはティアの手を取って立ち上がるとティアに頼んだ。
「もしティア姉さんさえよければ、これからも時々手合わせをお願いできないだろうか?」
「あぁいいだろう!お前は中々面白い奴だ!いつでも相手になってやろう!」
ティアとゼノヴィアは握手した。
「フッ、似た者同士だな」
ダンテの言う通りこの二人にはいくつか似たところがある。蒼い髪、古風な口調、戦い好きなど…ゼノヴィアがティアを姉さんと呼ぶのも似てるところがあり慕っているからだろう、見た目も姉妹に見えるしな。
「よし、今日の手合わせはここまでにしよう。風呂に行こうゼノヴィア!修行後の風呂は格別だ!背中を流してやろう」
「ありがとう、よろしく頼むティア姉さん!」
手合わせが終わりダンテ達は1階へ戻っていった。
▽
夕食を食べ終わったダンテ達は事務所から黒歌のBARに移り飲みながら(朱乃とゼノヴィアと白音はジュース)雑談をしていた。
「それにしてもゼノヴィアちん、死に掛けたのにまた手合わせをお願いするなんてそんなに戦いが好きなのにゃ?」
「私は教会で聖剣の鍛錬の為に毎日剣を振るって生活をしていたからそれが習慣づけられていたんだ」
「私も気が合う奴に出会えて嬉しく思うぞ、なんならこの後また手合わせするか?」
「おぉ!それはいいな!」
「……ホントこの二人似てるにゃ…」
ティアとゼノヴィアの掛け合いに黒歌は苦笑いして呆れたが、その時BARのドアが開きベルが鳴った。
「あっ!いらっしゃいま……ッ⁉︎ア、アンタ⁉︎」
来店した客を見た瞬間黒歌は警戒した!ティア達も客の顔を見て戦闘態勢を取った!
「よう、久しぶりだな?デビルハンターダンテ」
来店したのはなんと!堕天使総督のアザゼルであった!そしてもう一人、白髪の青年であった。何処となくフリードに似ている。
「お初にお目にかかりますダンテさん、私は堕天使副総督シェムハザと申します。よろしくお願いします」
ずいぶん礼儀正しい奴だ、堕天使にしては珍しい奴だな。
「ご丁寧にありがとよ。…それで?堕天使のトップとナンバー2が何の用だ?コカビエルの御礼参りにでも来たのか?」
挑発気味に言うとアザゼルとシェムハザは突然頭を下げた!警戒していた黒歌達は驚いた!
「コカビエルを止めてくれて感謝する、おかげで戦争にならずに済んだ。それで……その戦いでお前の兄が犠牲になったと聞いた、要らぬ犠牲を出してしまって…本当に…すまなかった…」
頭を下げ続けるアザゼルとシェムハザ、その時白音が声を上げた!
「謝って済む問題ですか!貴方達のせいでバージル兄様は!」
「白音」
「…ダンテ兄様……はい…ごめんなさい…」
殴りかかりそうな白音をダンテが冷静に落ち着かせると、アザゼルとシェムハザは体勢を土下座に変え再度謝罪した。
「確かに、コカビエルを止められなかったのは上官である俺達の責任だ!だから…お前さんの気が済むのなら今この場で俺達の首を落としても構わない」
「私達はそれ相応の覚悟でここに参りました!」
二人はダンテの返事が出るまで頭を下げ続けた。何も言わずダンテは二人を見ていたが溜め息を吐くと立ち上がり二人の前に来た。
「…もういい、頭を上げろお前ら」
そう言われ頭を上げたアザゼルとシェムハザだったが、その表情は申し訳なさでいっぱいだった、覚悟は本物の様だ。
「確かにバージルが犠牲になったことは許される事じゃねぇ、でも俺は…バージルの分も…俺に後を託したバージルの分も生きていくと決めたんだ。俺は腹を括った、だからもう気にしてねぇ」
「私達を…許してくださるのですか?」
不安そうにシェムハザは尋ねたが、ダンテは少し口調を強めて答えた。
「お前らの覚悟はわかった。ただし…これだけは覚えとけ、今度またくだらねぇ騒動起こしたら、俺はお前らを潰しに行く…わかったな…!」
ダンテの殺気と目つきにアザゼルは頷いた。
「…わ、わかった、肝に銘じておこう」
「貴方様の寛大なお心に感謝いたします!」
シェムハザも再度頭を下げダンテに感謝した。黒歌達もダンテがアザゼル達を許したのを驚いたが、朱乃は一人複雑な表情をしていた。
「よし、この件に関しての話はもう終わりだ、お前ら、和解の印に一緒に飲まねぇか?」
ダンテのまさかの誘いに二人は呆けていたが…
「い、いいのか?」
「俺はいつまでも悩んでるのは嫌いなんでな、楽しくやろうぜ?」
ダンテがそう言うと二人が席に座り一緒に飲むことになった。
▽
その後、最初は警戒していた黒歌達だったがアザゼル達の人の良さと酒が入り段々と盛り上がっていきBAR内は騒がしくなっていった!酒が飲めない白音とゼノヴィアは苦笑いしていたが、朱乃は先ほど一人で事務所に戻ってしまった…どうしたんだ?
「それでシェムハザはな〜マジで殺されると思って遺書まで書いたんだぜ〜///だははは!」
「そ、総督ゥ‼︎それは言わないでください〜〜!///」
「ハハハ!だったらホントに首を落とせばよかったなァ!///ぶははは!」
「ダンテェ、笑えない冗談だぞォ?///ブフッ!」
酒が回り頬が赤くなったティアがダンテの冗談にツッコミを入れた。
「さぁ、どんどん行こうにゃ〜〜!///にゃはー‼︎」
『おぉぉ〜〜!!///』
その後もBARは騒がしくなり結局朝まで続いたのであった…