◇地下トレーニングルーム
「もっと気合い入れろ!兵藤一誠!!」
「オオッス‼︎うおおおおおおっ!!」
トレーニング中のティアとイッセーの声が響く。同じく祐斗やゼノヴィアも修行する中、ダンテは壁に寄りかかり腕を組んで考え事をしていた。
『知りたければ…戦い続けろ……あのお方は…もう…』
ダンテの脳裏に数日前に倒したダゴンの言葉がフラッシュバックする。あのお方?誰だ?一体誰のことなんだ⁉︎まさか…ムンドゥスか?いや、アイツは前に復活しかけの時にバージルに再封印された筈だ。だがもし、封印が解けたとしたら…?…くそっ!わからねぇ、何で俺がこんなに考えないといけないんだ面倒臭え!ダンテは顔を伏せると舌打ちした。
「危ないダンテ!避けろォ!!」
「…あ?」
ダンテが顔を上げると目の前にティアのドラゴンラッシュのエネルギー波が迫っていた!
ドガァァァァン!!
エネルギー波はダンテに直撃し大爆発した!放ったティアとイッセー達は唖然とした表情で煙が上がっているダンテの場所を見ていた。数秒後、煙の中から髪とコートが少し焦げたダンテが出てきた。
「…す、すまないダンテ……大丈夫か…?」
「大丈夫ですかダンテさん…?」
髪とコートの煙を払っていたダンテは何も言わなかったが、溜め息を吐いて顔を上げた彼の表情を見た瞬間、イッセー達はギョッとした!ダンテが怒っていることに!
「…お前ら、良い度胸だな?人がシリアスに考え事してる時に…売られた喧嘩は買うぜ!」
ダンテは不気味に笑うとアルテミスを装備し光の矢を連射し追撃に大量に光の矢を降らせた!ティアとイッセー、巻き添えをくらった祐斗とゼノヴィアは叫びながら必死に避けていた!
「ちょ!ちょっと待て⁉︎当てたことは謝るが、これはちょっとやり過ぎだぞ⁉︎」
「うおっ⁉︎危な⁉︎前のスパイラルより早いぜ⁉︎」
「うわっ⁉︎騎士じゃなかったら避けきれないよこんなの!」
「おぉ⁉︎巻き添えがこんないいトレーニングになるとは!こうなったら全部避けるぞ木場‼︎」
アルテミスを連射するダンテは笑みを浮かべるとさらに左手にスパイラルを装備し壁や天井に反射させた!それによりさらに悲鳴が激しくなった!数分後薄傷だらけのイッセー達が肩で息をして倒れていた。
『ぜー!ぜー!』
「よし、よく頑張ったなお前ら、俺も気が済んだし許してやるよ」
「死ぬ様な目に合わせておいて何を言ってる馬鹿者!!」
ティアが睨みながら反論してきたがダンテは鼻で笑っていた。そこへリアスがトレーニングルームに入ってきて声を掛けた。
「トレーニング中にごめんなさい。お茶が入ったから一旦休憩にしない?それとアザゼルが話があるみたいよ?」
ダンテ達はトレーニングをここまでにしてリビングルームに上がって行った。
▽
リビングルームに集まったダンテ達とグレモリー眷属。アザゼルは紅茶を飲みながら前のバエル・ダゴン戦について話し始めた。
「まずは、討伐ご苦労だったな。今回もダンテ達が持って帰って来たって言う、ダゴン…だったか?その欠片を調べて見たんだが…」
「ただの氷だった…だろ?」
「あぁ、今回は砂じゃなかったが、結果は同じだった。氷だったから少しは魔力が残ってるかと期待したんだが…やっぱりダメだな。生身じゃないとな」
「悪りぃなアザゼル、今回は回収よりもダゴンの言葉が気になっちまってよ」
その言葉にアザゼルも真剣な表情になった。
「リアスから聞いたが、そいつらを送り込んだ奴らしいな?」
「あぁ、肝心なところを言わないでくたばっちまった。気になってしょうがないぜ」
「ダンテに心当たりは?」
「いや無ぇ。いや一人いるが…アイツは…」
ダンテは呟くと顔を伏せた。その様子に黒歌が心配そうに寄り添った。アザゼルも紅茶を飲むと一息ついた。
「まぁいいぜ、この事はサーゼクスにも伝えておく。ダンテ達は引き続き奴らの討伐と調査を頼む」
キーンコーン!
話が終わったその時、事務所のインターホンが鳴った。ん?何だ?客か?
玄関の近くの部屋からミッテルトが出てきて玄関ドアに向かいドアを開け来客を出迎えた。
「はぁい、どちら様っすか?」
『こんにちは〜!ライザー眷属で〜す♪』
「おぉ⁉︎団体様お越しっすねぇ⁉︎」
訪問してきたのはライザーの眷属達数人(イザベラ、カーラマイン、雪蘭、ミラ、イル&ネル)だった!まさかの来客にミッテルトは驚いた。
「突然訪問して申し訳ない」
「ダンテ様はいらっしゃいますか?」
笑顔で答えるライザー眷属にミッテルトは警戒心を解くと笑顔で挨拶した。
「ようこそっすライザー眷属の方々!どうぞっす!案内しますっす!」
ミッテルトはライザー眷属達を連れてダンテ達がいるリビングルームに案内した。
コンコン「ダンテさ〜ん、お客様っす」
「あ?客?」
客と聞き誰だと顔を見合わせていたが、リビングのドアがノックされ入って来た客を見てリアス達は驚いた。
『こんにちは〜!』
「あら!貴女達は!」
「ライザー眷属⁉︎」
リアスだけで無くイッセー達も驚いていた!
「ダンテ様〜♪遊びに来ました〜‼︎」
「「ダンテお兄さん!久しぶり〜!!」」
ダンテの姿を見つけ雪蘭とイルとネルが嬉しそうに駆け寄った!
「突然の来訪申し訳ありませんリアス様、この者達がどうしても行くと聞かないもので…」
顔に反面仮面を付けた女性イザベラが代表してリアスに謝罪した。少し警戒していたリアス達だったが既にハーレム状態になっているダンテを見て笑顔で歓迎した。
「ふふ、よく来てくれたわね貴女達?貴女達とは過去に戦ったことがあるけど今は大切なお客様よ、歓迎するわ」
お茶を出し、ソファに座ったダンテを囲む様にライザー眷属達は楽しそうに話しかけ持ってきたお土産を渡したりしていた。
「ダンテ様、聞きました!あれから活躍なさっているみたいですね!」
「「すっごくカッコいいよねー!」」
「うむ、流石としか言い様が無いね。やはりダンテ様こそ私達の理想の主に相応しい!」
カーラマインの主という一言に黒歌と白音が激しく反応した!
「ちょっとアンタ達!あまり調子に乗らないでにゃ!ダンテはあたし達の旦那様にゃよ‼︎」
「…そう言う事は私達を倒してから言ってください!」
するとかつて黒歌と白音にゲームで敗北した雪蘭とイルとネルが笑みを浮かべて立ち上がった!おっ?バトル勃発か⁉︎
「フフフ…確かにかつて私達はあなた達姉妹に敗北したわ。でもね?私達も今まで何もしてなかった訳じゃないのよ?」
「今度は負けないよ〜!」
「今度こそバラバラだよ〜!」
三人はオーラを纏い黒歌と白音を挑発した。うん…確かに、あのゲームの時と比べたら実力が上がったみたいだな?ダンテはフッと笑った。
「そうだな、黒歌と白音に勝ったら考えてやるよ、へへへ」
「ちょっとダンテ⁉︎」
「…ッ!絶対負かす!」
黒歌は反論し白音はやる気になっていた。リアスと話していたイザベラも申し訳なさそうに頭を下げていた。
それからそれぞれ会話をし、イッセーはミラからドレスブレイクをくらわせられた時の事をあれこれ言われ、祐斗はゼノヴィアと一緒にカーラマインと剣についての話をして盛り上がっていた。
話が盛り上がりある程度時間が経った時、ロスヴァイセが依頼書を持って入って来た。
「ダンテさん、楽しそうなところすみませんが討伐依頼が来ました!」
「依頼?何だまた奴らか?立て続けだな」
「いえ、今回はサーゼクス様からの上級はぐれ悪魔の討伐みたいです。討伐対象は上級はぐれ悪魔『プレシオ』、最近火災事故があった街はずれの小病院跡に潜伏しているみたいです。犠牲者が出る前に討伐せよとのことです」
ダンテは依頼書を受け取り確認した。まぁ内容的に大した相手ではないからいいか。
「まぁ気分転換にはなるだろ。と言う訳だお嬢さん達?軽く倒してくるからちょっと待っててくれ」
「ライザー眷属の皆さんのことは私にお任せください。ダンテさん達は討伐に行ってきてください」
「おぅ、じゃ行こうぜお前ら」
「それじゃ俺もサーゼクス達と話があるんでな、後は任せたぞ」
「私もミカエル様に報告に行ってきます」
アザゼルも冥界へ転移し、イリナも天界へ向かった。ライザー眷属達をロスヴァイセに任せダンテ達も討伐依頼に出発した。しかしダンテはまだ知らなかった、この依頼の最中にとんでもない事になるとは…!
▽
討伐対象がいる小病院跡にやって来たダンテ達。火災事故があったと言うだけあってそこら中焼け焦げた椅子や机などが散乱していたが、リアスは隠れているはぐれ悪魔に呼び掛けた。
「出てきなさいはぐれ悪魔プレシオ!グレモリー公爵の名においてあなたを消し飛ばしてあげるわ!」
聞き慣れたリアスのセリフが響き、周りを見渡していると奥の部屋から音が聞こえた!音が聞こえた部屋に入ると少し暗い室内の中央にその名前の通りの恐竜の様な外見のはぐれ悪魔プレシオがいたが…その首は床に落ちており既に息絶えていた!これは一体どういうことだ?
「これは…間違いありませんわ、討伐対象のプレシオですわ」
朱乃が既に死んでいる討伐対象を確認した。どうやら間違い無いみたいだ。
「おいおい、どういうことだ?まさか誰かに先を越されたのか?」
「そんなはず無いわ、第一もしそうなら報告が入るはずよ」
ダンテ達は不思議に思いながらプレシオの死体を調べ始めた。
「この傷痕…剣で付けられた物ではありませんね、傷の表面も少し焼け焦げてますし…一体何をすればこんな」
祐斗は傷痕を見て眉を曲げた。プレシオの首の切り口や体に出来た傷痕を見ていたダンテも相当な手練れだと感じた。
ブゥン…
その時、妙な音が聞こえダンテが振り向いた瞬間!ダンテは全員に叫んだ!
「ッ!全員散れ‼︎」
その言葉に全員が飛び上がるとプレシオの死体に鎌が振り下ろされプレシオの死体は塵となった!
「なっ⁉︎コイツら一体何処から⁉︎」
突然地面から生える様に現れたのは、赤い二本の角に黄色い目、全身血走った様な模様、炎の様な鎌を持つ悪魔だった!
「何だコイツらは⁉︎見たことない奴らだぞ⁉︎まさか、コイツらもダンテの世界の?」
ティアはダンテの方を見ながら聞くとダンテは頷いて説明した。
「あぁ、コイツらの名はアビス!コイツらもこの世界に来る前に散々戦った。気をつけろ!コイツらは魔界の兵隊を担っていた高位種族だ!魔力も上級に近いぞ!油断するな!」
「つまりコイツらがプレシオを殺した犯人ってことね。わかったわ、皆も気をつけて!」
リアスもイッセー達に警告し、イッセー達も頷き戦闘態勢を取った。
イッセー達はアビスの出方を伺っているとアビスは鎌を構えてゆっくり近づいてきた、その動きにイッセーは少し気が抜け構えを解いてしまった。
「何だよ、ずいぶんゆっくりな奴だな?前に戦ったヘル=プライドみたいだな?ほんとに上級かよ?一発で決めてやる!」
『Boost‼︎』
イッセーが倍加の力を溜めてアビスに突進した!あの馬鹿!油断するなって言っただろうが!イッセーは拳でアビスを殴り飛ばしたが吹っ飛ばされたアビスは素早くバク転し反撃してきた!
「うおっ⁉︎危ねぇ⁉︎この動き…コイツ、ヘル=ラストと同じ動きが出来んのかよ!」
「危ないイッセー君!!」
その時!かわしたイッセーの背後に祐斗が現れ背後からの攻撃を弾いた!別のアビスが鎌の刃を飛ばしてきたのだ!
「鎌の刃を…すまねぇ木場、助かったぜ!」
「ダンテさんの言う通り油断できない相手みたいだ、気をつけて」
イッセーと祐斗は背中合わせになって構えた。
「イッセー!木場!大丈夫か!」
「援護しますわ!」
ゼノヴィアと朱乃が援護に入り、リアス達も戦闘態勢を取った。ゼノヴィアはデュランダルを構えてアビスに突撃したが、アビスは態勢を低くすると地面に溶け込む様に姿を消した!他のアビスも同様だ!イッセー達は何処から現れるか警戒していると別の場所からアビス達が現れ飛び上がると同時に鎌の刃を飛ばしてきた!イッセー達は避けたり剣で弾き飛ばしたりして防いだが、アビスはまた地面に潜り、別のアビスはジャンプして接近し鎌を振り下ろしてきた!
「くそ!コイツら交互に!」
「遠距離と近距離から同時に仕掛けてくるなんて!」
イッセー達は動きを封じられ、吹き飛ばせば反撃される為まともな攻撃が出来なかった。援護をしているリアスと朱乃も標的が定まらず舌打ちしていた。近距離で攻撃を封じられているとアビスが数体地面に潜り飛び上がると一斉に鎌を飛ばしてきた!絶体絶命のその時!
「やれやれ、油断するなってあれほど言っただろ?」
見ていたダンテがイッセー達に迫っていた鎌を撃ち落とし着地した!
「下がってろ、後は俺がやる」
ダンテの言葉にイッセー達は頷くと後を任せて下がった。ダンテは前に出るとアビス達に笑い掛けた。
「よぅ、久しぶりだなお前ら?さぁ、遊ぼうぜ」
ダンテが笑みを浮かべるとアビス達は一斉に飛びかかったが、ダンテは指を鳴らすとクイックシルバーを発動させた!ダンテ以外超スローモーションになる空間!
「そんじゃ久しぶりに一緒にやろうぜ、ドッペルゲンガー!」
ダンテの体がブレるとダンテと同じ姿をした分身体ドッペルゲンガーが現れた!ドッペルゲンガーはニタ〜と笑うとリベリオンを抜きアビス達を斬り刻んでいった!ダンテもエアトリックで距離を詰めるとリベリオンで両断しエボニーを取り出すと踊る様にアビス達の額を撃ち抜いていった!クイックシルバーが続く中踊る様にアビスを倒し続けたダンテとドッペルゲンガーは最後に残った一体を二人同時にスティンガーを繰り出し絶命させた!最後の一体を倒したところでクイックシルバーが時間切れになり、時が戻りリアス達が気づいた時にはダンテの周りには血溜まりしか残されていなかった。
「あ、あれ?アビスは?どうなったんだ今?って!ダンテさんが二人⁉︎」
ダンテと同じ姿のドッペルゲンガーにイッセーは交互に見ていた。ドッペルゲンガーはダンテの体に重なると一人に戻った。
「よぅ、もう終わったぜ?討伐完了だ」
一瞬の間にアビス達を全滅させてしまったダンテにイッセー達はきょとんとしていたが、リアスにアビスの一部を回収出来なかったことを言われていた。
するとその時、ダンテの耳元に小型の魔法陣が現れた!
『ダンテさん!聞こえますか⁉︎』
通信してきたのはロスヴァイセだったがその声は焦っている様だ。
「おぅロスヴァイセ、どうした?」
『事務所が!デビルメイクライが襲撃されました!!すぐに帰って来てください!!』
「何⁉︎」
襲撃⁉︎まさか、俺達やアザゼルが留守の間を狙われたのか⁉︎ダンテはデビルメイクライの方角の魔力を探った!…ロスヴァイセ達以外に複数の魔力を感じる!これは急いだ方が良さそうだ!
「ダンテさん!リアス!転移の準備が出来ましたわ!急いで‼︎」
朱乃が転移魔法陣を展開していた!ナイスだ朱乃!ダンテ達は魔法陣に乗ると急いでデビルメイクライに転移して行った!無事でいろよ!
◇デビルメイクライ
その頃、デビルメイクライでは大変な事になっていた!ダンテ達が討伐依頼に行って待っている最中に、突然事務所全体が魔力の結界で覆われ至る所から7ヘルズ達が現れたのだ!室内にいたロスヴァイセとライザー眷属達は応戦したがライザー眷属達は初めて見る悪魔達に戸惑っていた。
「くっ!何なのよコイツら⁉︎一体何処から!」
雪蘭は魔力を纏った拳や蹴りでヘル=プライドを数体蹴散らした!
「無駄口を叩くな雪蘭!まだ来るぞ!」
イザベラが背中合わせで忠告した。周りにはカーラマイン達も他のヘルズ達を相手にしており少し苦戦していた!くっ!どうしてこんな事に…!その時、ヘルズ達が突如飛来した魔力のレーザーに貫かれ消滅した!
「皆さん無事ですか⁉︎」
無数の魔法陣を展開したロスヴァイセが魔力のフルバーストを放ち援護した!
「今ダンテさん達に連絡しました!もう少しの辛抱です!」
ライザー眷属は頷くとヘルズ達に突撃した!
その時、事務所の外に魔法陣が現れダンテ達が転移して来た!事務所の状態は酷いものだった、玄関の扉や窓は破壊され、壁や床も亀裂が入っていた!ダンテ達は急いで中に入るとロスヴァイセ達の元に急いだが室内には少し負傷したライザー眷属とロスヴァイセがいた。全員無事の様だ。
「無事だったか、お前ら。大丈夫か?」
「ダンテさん…良かった、皆さんも無事だったんですね。私達も無事です」
すぐにアーシアがライザー眷属とロスヴァイセの治療を始めたが、ダンテは一人足りないことに気づいた。ミッテルトがいない!
「おいロスヴァイセ、ミッテルトはどうした?」
ミッテルトの名を聞いてロスヴァイセはハッとした。
「ッ!ミッテルトさんは事務所の奥に悪魔の気配を感じて一人向かって行きました!」
それを聞いてダンテはティアと黒歌と一緒に事務所の奥に急いだ!一人じゃ危険だ!ミッテルト!無事でいろよ!
ダンテ達は事務所の奥の部屋に着いたがそこにいた悪魔を見てダンテは驚愕した!既に死に消滅している最中だったがそこにいたのは蜘蛛型女性悪魔アルケニーだった!まさかコイツまでこの世界に来ていたとは!
そして、部屋の中央にアルケニーと対峙するミッテルトを見つけた!あれは大型個体クイーンアルケニー!ダンテは加勢しようとしたが次の瞬間、クイーンアルケニーは仰向けに倒れ溶ける様に消滅し出した。どうやらミッテルトも無事だったみたいだ。
「ミッテルト、やるじゃねぇか!一人でコイツらを倒すなん……」
その時、ミッテルトに駆け寄ったダンテは思わず言葉を失った!煙が収まり見えてきたミッテルトの体にはアルケニーの腕である鎌が腹から背中に貫通していた!さらに四枚あった翼も一枚は根元から千切れもう一枚は半ばから無くなっていた!
「ミッテルト!!」
「…ダ…ダンテ…さん……」
ミッテルトは弱々しくダンテの名を呟くと崩れ落ちた!ダンテは倒れる前にミッテルトを抱き止めた!
「しっかりしろミッテルト!黒歌!急いで俺の部屋からフェニックスの涙を取ってきてくれ!!」
「わかったにゃ!待っててにゃ!!」
黒歌は急いでダンテの部屋に走るとドアを開けフェニックスの涙が入っているトランクを持って行こうとしたが…
「ッ⁉︎そ、そんな!」
トランクを見た黒歌は膝から崩れ落ちた!そこには…無残にも踏み砕かれたトランクがあり、フェニックスの涙は全て破壊されていた…!
「ミッテルト、治療するから鎌を引き抜くぞ!堪えろよ?ティア、抑えろ!」
「わかった!」
ティアがミッテルトの体を抑えダンテはミッテルトの体に突き刺さっている鎌を掴んだ。一気に引き抜かないと逆に傷を深めてしまう、我慢しろよミッテルト!
「うぅ!…あぁ…あああああああ!!アアアアァァァアアアアッ!!!!」
ミッテルトの悲鳴が響き渡る!!くっ!我慢してくれミッテルト!!
ズボッォ!!
「ゲッホォォォ!??ぐっ⁉︎ゲホッ!ゲホッ!!」
鎌が引き抜かれミッテルトは激しく吐血すると咳き込んだ!ダンテは急いで激しく出血する傷口を脱いだコートで抑えたが床にはすぐに血溜まりが出来た。くそっ!こんなに流れないでくれ!
「ッ!黒歌!まだか!」
まだ来ない黒歌にダンテが叫ぶとそこへ沈んだ表情の黒歌がやっと来た!
「どうした黒歌!早くフェニックスの涙を!」
「…そ、それが……」
黒歌が差し出したトランクを見てダンテは驚愕した!壊されている⁉︎一体誰が!いや、そんなの決まっている!こうなることを予測して壊させたのか⁉︎
「これじゃ…ミッテルトが…うぅ…」
「泣くな黒歌。だったらアーシアだ!アーシアを呼んでこい!!」
黒歌が泣き出し、ダンテはアーシアを呼んでくる様に叫んだが…
「…うぅ…ダ…ダンテさん…」
その時、ミッテルトが震える手を腰のポシェットに入れるとある物をダンテに渡した。
「…こ…これを…」
ミッテルトが差し出した物それは…自身の魔力で包まれたアルケニーの一部が入った小瓶だった!戦いながら回収していたのだった!
「…これを…アザゼル…様…に…渡して…くださいっす…こ、これで…奴らが…何処から来たか……わかるっす…ゴホッ…ゴホッ…」
「ミッテルト…お前…」
ダンテは傷つきながらも任務を果たしたミッテルトにお礼を言った。
「…それと…ダンテさん……コイツらが…戦いながら言ってたっす…お…おそらく…コイツらの親玉の…名前っす……ムンドゥス…!…コイツらが…呼んでいた名前っす……」
「何⁉︎」
その名を聞いたダンテは信じられなかった!ムンドゥス…だと?
「ムンドゥス…?確かダンテの世界の封印された魔王の名だったな?」
ティアが聞いてきたがダンテは拳を強く握り顔を伏せていた。
そこへリアス達が走ってきてその光景を見て信じられない表情になり、アーシアが駆け寄りミッテルトを治療しようと手を当てたが、ハッとすると表情を落とした…アーシアにはわかったのだ…もう手遅れだと。ミッテルトの体から光の粒子が出始めた。
「…ダ…ダンテ…さん…ウチ…ダンテさんが…留守の間…ちゃんと…し…使命を…果たしたっす…!」
「あぁ…よくやったミッテルト。お前こそまさに至高の堕天使だ!」
その言葉を聞いてミッテルトは大きく目を見開くと笑みを浮かべた。
「あは…は…そ…そりゃいいっすね……レイナーレが…なれなかった…ものに…ウチは……なれたんすね……」
ミッテルトの目のハイライトが消え体の光が強くなった!それを見てリアス達は涙を流して顔を伏せた。
「あったかい…!…ダンテさん…ありがとう…ござい…ました…!…ウチ…ダンテの元で…働けて…幸せでした…ゴホッ…最後に…ダンテさんの…顔が見られて…よかった…!」
「ミッテルト…!」
「…さよう…な…ら……」
頬に涙を伝わせ笑顔でお礼を言うとミッテルトの体は光の粒子となり消滅した…
ダンテの手にはミッテルトの髪結びの黒いリボンが残されていた。ダンテはリボンを強く握り締め立ち上がった。
アーシアと黒歌がそれぞれリアスとティアの胸に顔を埋めて泣いていたが、ティアは立ち上がったダンテを見た。
「…ダンテ」
リボンを握り空を見上げるダンテの目は今までに無いくらい鋭かった!
「ムンドゥス…‼︎」
黒幕は復活したムンドゥス!
ミッテルト…どうか安らかに……次回もお楽しみに