◇デビルメイクライ リビング
室内は薄暗く、時計の音だけが聞こえていた。テーブルにはミッテルトの遺影と形見の黒いリボンが置かれ、ダンテ達は全員顔を伏せて黙っていた。知らせを聞きアザゼルも急いで副官のシェムハザと駆けつけたが同様に信じられない表情で絶望していた。どうしてこんなことになった!どうしてミッテルトが…!
「うぅ…うぅ…ぐっ…!」
副官のシェムハザが嗚咽を漏らして泣いていた。
「…泣くなシェムハザ、泣いたところでミッテルトは帰って来ねぇよ」
「で、ですが総督!彼女は…ミッテルトはこれからだったのですよ⁉︎自ら犯した罪を反省し、ここで新たなスタートを切ったばかりだったのですよ⁉︎それなのに、こんなの…こんなのあんまりです‼︎うぅ…ぐうぅ‼︎ミッテルト、辛かったですね…本当に…本当にごめんなさい!!」
シェムハザは再び顔を覆い声を張り上げ泣き出した。なんとも部下想いの上官だ。シェムハザの泣き声にアーシアも泣き出していた。
「…謝って許されることじゃねぇが、こんなことになっちまってすまねぇ。奴らの狙いは俺だったのに、ミッテルトはその巻き添えをくって犠牲になっちまった。俺のせいだ…やっぱり俺は、この世界にはいない方がいいのかもしれない」
「ッ!そんなことないにゃ!ここにいる皆だって今までダンテがいてくれたおかげで助かったんだよ⁉︎そんなこと言わないで!!」
自分の責任だと言うダンテに黒歌が声を荒げて否定した。ダンテは顔を伏せると黒歌に謝った。だがこのままではまた新たな犠牲者が出るかもしれない…
それからしばらく全員で顔を伏せて俯いていたが、ダンテはミッテルトから託された物をアザゼルに差し出した。
「このまま落ち込んでいてもラチが開かない。アザゼル、ミッテルトが残した奴らの一部だ、コイツを使って解析を頼む」
アザゼルはダンテから未だミッテルトの魔力で包まれたアルケニーの一部が入った小瓶を受け取った。まだミッテルトの魔力が残っているのは彼女の覚悟の現れだろう。アザゼルは小瓶を見つめると頷いた。
「あぁ、任せろ!ミッテルトが命と引き換えに得たこのデータ、必ず解析して奴らのいる場所へ繋がるゲートを作ってやるぜ!早速取り掛かる、シェムハザ!手伝ってくれ!」
「グスッ…はい!総督‼︎」
アザゼルはシェムハザと一緒に研究室に走って行った!頼んだぜアザゼル!周りを見るとまだ落ち込んでいたもののリアス達の表情は先程よりマシになっていた。ダンテ達も一旦解散にしそれぞれ部屋に戻って行った。
○●○
解散してしばらく経ち、沈黙の夕食後ダンテは二階のバルコニーに出て夜空を眺めていた。奴らのいる場所…それはつまり……ダンテはアザゼルが完成させるであろうゲートの繋がる場所を考えていた。
腕を組み考えていると、ティアと黒歌がバルコニーに出てきた。
「ここにいたのかダンテ」
「どうしたのにゃ?」
「あぁ、ちょっと考えていたんだ」
「にゃ?何を?」
「アザゼルがゲートを完成させる…それはつまり俺が元の世界に帰ると言うことだってな」
この日が来ることは知っていた。いつかは来ると思っていたが、いざ来るとなると心の整理がつかない。俺はこの世界に長く居すぎたのかもしれない。こいつらだって突然の別れを受け入れられないかもしれない…
「よかったではないか」
「あ?」
ティアは意外にも冷静に答えた。
「私も一緒に行くぞ?まさかお前、一人で行くつもりでは無いだろうな?」
「当然あたしも…ね?」
二人の意外な答えにダンテは思わず振り向いた!
「お前ら、わかってるのか?俺の世界はここよりずっと危険なんだぞ?それに行ったら帰って来れるかわからないんだぞ?」
「あぁわかってるさ。だがダンテ、お前こそ忘れてはいないか?私はお前の相棒で使い魔だ。お前は長年待ち続けてようやく出会えた素晴らしい主で私が初めて惚れた男だ。ならば私はどんな場所でもついて行く、それが筋だ。たとえそれが…異世界でもな」
「あたしだってそうにゃ。はぐれだったあの時、ダンテに助けられて運命を感じたにゃ。それからずっとついて行くって決めたんにゃ!それにあたしとティア姉は眷属以上の存在なんでしょ?だったら尚更にゃ!」
「そうは言っても白音はどうするんだ?」
「白音は…あの子はもうあたしがいなくても一人で十分生きていけるにゃ!もう覚悟は出来てるにゃ!」
黒歌は一瞬躊躇したが目つきを鋭くして告げた!せっかく再会して一緒に暮らせる様になったのにそこまでの覚悟とは…!
「お前はそんな私達を置いて行くと言うのか?私達の覚悟はそんな生半可なものではない、私達を見縊るな!」
「ティア、黒歌…」
二人の覚悟を聞いたダンテは呆けていたが、フッと笑うと前に向き直った。
「…馬鹿野郎が、勝手にしろ」
「馬鹿野郎…か、フッ、確かにそうだな」
「うん!あたし達は大馬鹿者にゃ♪」
ティアと黒歌は笑みを浮かべてダンテの左右に寄り添い、ティアは肩に手を乗せ黒歌は腕に抱きついた。
「ダンテ」
後ろから声を掛けられ振り向くとそこにはオーフィスがいた!オーフィスはダンテの後ろまで歩いて来ると体をよじ登り肩車してきた。
「ダンテ 我も行く」
「お前まで…いいのか?」
「うん 我 ダンテの友達 だから一緒に行く」
オーフィスはダンテの頭を抱きしめ頬をくっつけた。ダンテはそんな三人を見ると溜め息を吐いたがお礼を言い感謝した。
「…ありがとよ」
▽
三日後、ついにアザゼルがゲートを完成させた。リビングの室内には無数のコードが付いた機械にゲートを発生させると思われるアンテナが数台設置されていた。
室内には知らせを聞いたサーゼクス達四大魔王、グレイフィア、ソーナ、ミカエル、バラキエル、人間サイズになったタンニーンも来ていた。リアス達は…いなかった。あいつら…この三日間まともに姿を見なかった、一体何をしているのか?
「待たせてすまなかったなダンテ、ようやく完成したぜ。それからミッテルトが回収した奴らの一部を解析した結果、やはり今まで見たこと無い魔力と異質な物を感じた、これはおそらく…」
「あぁ、わかってる。俺が元来た世界のものだ、そうとしか考えられない」
ダンテの答えにアザゼルは頷くと表情を落としてダンテを見てきた。
「…このゲートを潜ると言うことはお前とはここでお別れと言うことだ。ダンテ、お前とは良いダチになれたが残念だ。お前と出会えてよかった、さよならだダンテ」
アザゼルは残念そうに握手を求めてきた。
「あぁ、元気でなアザゼル。俺がいなくなっても戦争を起こすなよ?」
「ハッ、当たり前だ!」
ダンテもアザゼルの手を握り握手に応じた。握手が終わるとサーゼクスも声を掛けてきた。
「ダンテ、キミとは良い友人になれたのに残念だ。だが私達はキミのことを決して忘れない。私達はいつ何処にいてもキミの親友だ、それを忘れないでほしい」
「ダンテ君、私達のこと忘れないでね☆」
サーゼクスとセラフォルーが笑顔で声を掛けアジュカとファルビウムも笑顔で頷いていた。サーゼクス達とも握手をし別れを告げた。
「それからダンテ、この事務所はこのままにしておこう。キミがいつ戻ってきても大丈夫の様に」
「サーゼクス、あんたにもずいぶん世話になったな、ありがとう。ここにはいないがミリキャスによろしくな?後親父さん達にも」
「あぁ、必ず伝えておこう。ティアマット、黒歌、オーフィス、キミ達も一緒に行くみたいだが、気をつけて行ってきたまえ」
「あぁ。タンニーン!私の代わりに五大龍王の一角を任せたぞ!」
「はい!サーゼクス様!本当にありがとうございました!」
ティアはタンニーンに龍王の後釜を任せ、黒歌は改めてサーゼクスにお礼を言い感謝した。オーフィスは無言のまま頷いた。
「ダンテさん、今まで本当にありがとうございました。あなたから教わった言葉や教えを信じてこれからも頑張っていきたいと思います、生徒会を代表してお礼を申し上げます!」
ソーナも頭を下げてお礼を言った。ダンテはフッと笑うとソーナの頭を撫でた。
「あぁ、お前らならきっと夢を実現出来るさ、俺がいなくなっても頑張れよ?」
「ッ!はい…‼︎」
顔を上げたソーナは笑顔だったが泣いていた。
「あっ…‼︎すみません私ったら…!グスッ…はしたな…グスン!うぅ…!」
「ソーナちゃん…」
すると涙が止まらなくなり泣き出すとそっとセラフォルーが寄り添いソーナを抱きしめた。ありがとよソーナ。
ミカエル、バラキエルもダンテに声を掛け、別れが済んだダンテにアザゼルがゲートの説明を始めた。
「この機械にはミッテルトが回収した奴らの一部が入ってる。解析したデータを読み込ませたら時空の歪みが発生した、おそらくお前の世界に繋がっているだろう、後はお前が持ってる…」
アザゼルはダンテの腰の閻魔刀を見つめた。
「その刀で歪みを斬れ、その刀は空間を斬ることが出来るだろ?それでお前の世界に続くゲートが開くはずだ」
「閻魔刀で…」
ダンテは腰から閻魔刀を抜くと見つめて頷いた。
「わかった、ありがとよアザゼル」
「礼には及ばねぇよ。…ダンテ、必ず魔王を倒せよ?ミッテルトの仇を取ってくれ」
「あぁ、任せろ」
機械が動き出し時空の歪みが発生すると、ダンテは閻魔刀を構え振り下ろそうとしたがその時!
「お待ちください」
リビングの扉が開き今までいなかったリアス達グレモリー眷属が現れた!その表情は決意に満ちていた。
「リアス!今まで何処に⁉︎」
「申し訳ありませんお兄様」
リアスはサーゼクスに謝罪すると眷属達とダンテの前に来た。ダンテも閻魔刀を戻しリアス達に向き直った。
「おぅ、何も言わないで行っちまうとこだったぜ。お前ら、ここでお別れだ…今まで世話になったな」
リアス達に別れを告げ黒歌も白音を抱きしめて別れを告げたが、次の瞬間リアスの口から予想外の言葉が返ってきた。
「えぇ、だから…皆で一緒に帰ってきましょう」
「⁉︎…何?」
リアスの言葉にダンテは思わず耳を疑った!これにはティアと黒歌も驚いた。しかしリアス達の表情は真剣そのものだ!
「おいおいわかってるのか?こっから先はお前らにとっては未知の世界なんだぞ?行ったら帰って来られないかもしれないんだぞ⁉︎」
「えぇわかっているわ。でもこれは皆で話し合って決めたことなの」
「私達は今までダンテさんに助けてもらいました」
「だから今度はその恩を俺達が返す番です!」
「僕達の世界を救ってくれた様に」
「…私達もダンテ兄様の世界を助けます」
「だからお願い、私達も一緒に連れて行って!」
リアス達はダンテに頭を下げてお願いしてきた!その姿をダンテはしばらく見つめていたが、溜め息を吐くとゲートに向き直った。
「…お前らも馬鹿だな。好きにしろ、死んでも知らねぇぞ」
ダンテの返事にリアス達は勢いよく頭を上げた!呆れたダンテだったが自然と笑みを浮かべていた。サーゼクスも溜め息を吐きながらリアスに声を掛けた。
「リアス、キミらなら多分そう言うだろうと予想していたが、そこまでの覚悟があるのならもう何も言わない。でもこれだけは覚えておきなさい、必ず…生きて帰ってきなさい。わかったね?」
「はい、お兄様!必ず眷属全員生きて帰ってきますわ!」
サーゼクスはリアスを優しく抱きしめ、ダンテによろしく伝えた。
「朱乃、気をつけて行ってくるんだよ?」
「はい、父様。行ってきますわ!」
朱乃もバラキエルと抱きしめ合った。バラキエルはダンテを見て頷きダンテも頷いた。それぞれ別れが済む中アザゼルはイッセーに声を掛けた。
「イッセー、通信機だ持っていけ。気をつけて行って来いよ?」
「先生…はい‼︎」
一緒に行く者が一気に増えたが、今度こそ準備が整いダンテは再び閻魔刀を抜いた。
「なんか予定がずいぶん変わっちまったが、まぁいいぜ。ゲートはお前らが潜った後にいつでも開ける様にしておくぜ。それじゃ動かすぞダンテ」
アザゼルは機械を作動させアンテナが時空の歪みを発生させた!ダンテが歪みを斬ろうと閻魔刀を振り上げたその時!
「待てよ」
…今度は誰だよ?その時声と同時にリビングの隅にオレンジ色の魔法陣が現れ炎が噴き出すとそこからライザーが現れた!しかもその服装はゲームの時に着ていた動きやすそうな格好だ。
「ライザー⁉︎あなたどうしてここに⁉︎」
リアスは突然現れたライザーに驚いた!イッセー達も同様だ。するとライザーから意外な言葉が返ってきた。
「俺も一緒に行くぜ。奴らは俺の可愛い眷属を傷つけた、その落とし前をつけさせてもらう。それに…」
「?」
「アンタにはまだ立ち直らせてもらったお礼をしてないからな」
ライザーはダンテの顔を見て告げた。これは予想外だ、だが良い覚悟だ。
「この無敵のフェニックス様が一緒に行って勝利に導いてやるぜ!感謝しろよダンテ?ハハハ!」
ライザーは豪快に笑いながらダンテの肩に手を置いた。こないだのビビっていた時とは大違いだな。
「やれやれ、命知らずの馬鹿野郎揃いだぜ…まったく」
やれやれと思いながらダンテは真剣な表情になると再度確認した。
「最後にもう一度確認するぞ?ここから先は本当に未知の世界だ、何が起こるかわからねぇ、死ぬ様な目に遭うかもしれねぇし本当に死ぬかもしれない…それでもついて来る覚悟はあるか?」
「えぇ!」
リアスが返事をし眷属達とライザーは頷いた。その表情に迷いは無かった。リアス達の返事を聞いたダンテはゲートに向き直った。
「わかった。この戦い、ミッテルトに捧げるぞ。フッ!!」
その腕にはミッテルトの形見のリボンが結ばれていた。ダンテは歪みに閻魔刀を十の字に振るった!すると空間が斬れゲートが開いた!
「行くぞお前ら!ついて来い‼︎」
「お兄様、行ってまいります‼︎」
ダンテはゲートを潜りリアス達もそれに続いて行った!全員がゲートを潜るとゲートはすぐに閉じた。出発を見届けたサーゼクス達は彼らの無事を祈った。
「…お前も一緒に行かなくてよかったのかヴァーリ?」
ゲートを見ていたアザゼルはリビングの扉の影に隠れていた白龍皇ヴァーリに聞いた。
「あぁ、最初は魔王と聞いて興味が湧いたが、ダンテに敵わない様では恥を晒すだけだろうしな」
「そうか、お前なら迷わず行くと思ったがな」
フンと鼻で笑いヴァーリは魔法陣を展開すると去る前に呟いた。
「生きて帰ってこい、ダンテ、兵藤一誠」
次回から舞台はDMC界!DMCのキャラクターも再登場します!お楽しみに!