「状況を整理しましょう」
「相手の目的がなんなのかは分かりませんけれど、狙いはどうやらわたくしのご様子。数は少なくとも二人以上、狙われた方向から壁を挟んで逆方向に逃げようとも狙えるように配置されているようですの。加えて一度停止した銃弾の背に銃弾を当てるような狙撃の腕。考えたくはありませんけれど、最悪敵は『
「なッ──⁉︎」
驚愕に顔を染める二人の顔を見て、黒子も苦虫を噛み潰す。
だが、それでは孫市も敵になってしまったということではないのかと湾内と泡浮が顔を見合わせる中、嫌な現実に顔を歪めて黒子は静かに言葉を続けた。
「『
「で、でも、なぜですの? もし本当にそうだとして、なぜ白井さんを狙っているのでしょうか。法水様がそんな事をするとは思えません」
「わたくしも同意見ですわ。だって──」
湾内の意見に泡浮も賛同し声を上げる。時の鐘が敵対したとして、孫市がそれに賛同するとは、湾内も泡浮も思いたくはなかった。黒子や御坂と違いそこまで親しくないとは言え、孫市が戦ったところを二人も見た事はある。殺意に身を染めた姿は恐ろしいものではあったが、孫市が引き金を引いたのは他でもない友人である婚后光子の為。友人の為にあんな顔をする男が、友人に対して引き金を引くのか。そんな事はないだろうと口を引き結ぶ二人を前に、そんな事はあると黒子は一人声に出さず結論付ける。
それが必要な事であるならば、孫市は躊躇なく引き金を引く。ただそれは必要な仕事であったなら。黒子を狙う必要性を黒子自身が思い付けない。黒子を殺したところで、今世間を取り巻いている何かしらが終わるわけではない。ただ、黒子を狙うという事は、その結果なにかが変わるという事ではあるはずだ。それを考えて黒子は予想を口にした。
「……孫市さんが敵になったにしろならないにしろ、恐らくスイスが宣戦布告した事が理由にあると思いますわ。それにスイス自身が反発してスイスは内紛状態ですけれど、大きな意志の方向として学園都市と敵対する事を決めたのなら、正式にはスイス軍の一部である時の鐘が敵になったのも納得できますもの。ただそうなるとなぜわたくしを狙ったのかですけれど」
黒子を狙う理由。この戦争の中で黒子自身に価値があるとするならば学園都市第三位である
それを証明するように、黒子達三人が顔を突き合わせる中心の床に黒い穴が空き白い煙が小さく舞った。
同時に天井で響いた破壊音に目を向ければ、くっ付いていた照明が砕けて揺れていた。跳弾。狙撃の最中そんな事まで可能とする狙撃手が多くはないだろう事くらい素人にも分かる。狙撃の腕が凄ければ凄い程逆に相手は絞れるものだと言ったタレ目の言葉を思い出しつつ、予想を補強するような銃弾に黒子は小さく舌を打つ。
「なんにせよ、かくれんぼしながらせっついてくる不埒な輩をどうにかしなければなりませんわね。敵はわたくしが空間移動能力者だと知っているからこそ二人以上で来たのでしょうし、下手に動けば狙い撃ちでしょうね」
「ですけど、このまま待っていれば
「そうでしょうか? 相手は授業中の常盤台に銃撃してくるようなお相手です。下手に人に紛れて安心というのは……」
そう湾内は不安の色を滲ませ、それに賛成するように黒子は頷く。相手が世界最高峰の狙撃手なのだとすれば、人に紛れてぽけらーっと突っ立っていては、ただ狙い撃ちされる可能性が高い。窓のない強固な空間にでも身を隠せれば安全であるが、それでは問題も解決しない。
「……一番は相手を巻いてこっそり抜け出す事ですわね。狙撃手を無力化できない限り安心はできないでしょう。とは言え下手に動いても狙われるだけ、そうなると必要なのは」
「目眩しでしょうか?」
「生憎あるのは教室の消化器くらいですけれどね」
「いえ、それだけあれば十分ですわ」
泡浮の浮かべた笑みを見て、黒子と湾内は顔を見合わせた。
ハム=レントネンはつまらなそうに狙撃銃であるゲルニカM-003のスコープを覗いていた。一見すれば無人の教室。ただそこに潜んでいる三人を穿つ為。そもそもおまけのような相手、ここまで時間を食うとも思っていなかった事も合わせて大変不機嫌だ。たかが学校生活に忙しい中学生一人。簡単に済むと思っていたのに、全く気にもしていなかったただの中学生二人に邪魔をされた。
一般人は一般人らしく引っ込んでいればいいものをと考えながら舌を打つ。一般人は見逃してやろうなどという気はハムにはない。危険にわざわざ首を突っ込んで来たのは向こうであり、知った者を放っておいてはどこまでも追ってくるという自負がある。他でもないハムがそうだから。仲良く三人旅立てば寂しくもないだろうと笑いもせずに見つめる先で、小さな動きがあり目を細めた。
「ちょっとハム」
「……なに」
「なんか廊下に煙が漏れて来てるんだけれど?」
「そーみたい、消化器の煙」
教室から立ち上る白い煙。スモークグレネードなどと気の利いたものを中学生が持っているわけがないと、拙い目眩しにハムが鼻を鳴らした途端に、白い煙が一気に広がりあっという間に教室を覆い隠した。煙幕。分かってはいる。分かってはいるもののハムは驚き目を見開く。消化器を使ったとして、そこまで大きく広がらない。一瞬呆けたハムの耳をアランの声がひっ叩いた。
「ちょっと⁉︎ 本当に消化器な訳⁉︎ 廊下が塗り潰されたわよ!」
「うるさい、間違いない。なのに」
その通り消化器に間違いはない。消化器は特に変哲もないただの消化器だ。ただそこに一人の少女が居ただけの事。
浮力を操る『
軽くなった粉が拡散し、ただでさえ白く塗り潰すような消化器の粉が空間を激しく覆い隠す。動く影さえ掻き消して、見えなくなった教室から視線を外して僅かにハムは身を乗り出した。
「……隠れよーと相手は外に出てくるはず。
「……そうしたけれど無理ね。このタイミングで外に出ないって事は人混みに紛れたんでしょ。ここまでする相手がそのまま行列にいつまでいるとも思えないわ。多少は追うけど期待しないで。先に別のを追った方がいいわ。目に付いたのを皆殺せとかなら話は違うけれど、そこまでやったら目に付き過ぎるわ。常盤台は今は後に回した方が賢明ね。ただでさえ
「でもそれじゃあ」
絶対に追ってくる。一時的な安息に満足するような相手なのか。後は他の者に任せたと他人任せな相手ならそれもいいだろうが、白井黒子はそうではない。そうではないことを嫌という程ハムも孫市から聞いている。学園都市の正義の味方。時の鐘さえ捕らえる千切れぬ手錠。お節介な警察擬きを見逃すなど、そんな事はしたくないとグリップを握るハムに「あらあら」とアランの呆れた声がその手を緩める。
「追って来てくれるなら歓迎じゃない? 探す手間が省けるわ。これは足掛かり、私も貴女もそうでしょう? アルド達と合流しましょう、狙いは彼女達だけではないのだから」
「……りょーかい」
狙撃銃の構えを解き、煙幕の晴れた無人の教室から視線を切る。ぞろぞろ避難のために動く常盤台生達を見下ろして、ハムは一段と強く目を細めた。伸ばされる手錠を自分は引き千切ってみせると言うように。
「巻いたようですわね」
ツインテールを解いた長い髪を手で払い、背にした常盤台の学び舎へと僅かに黒子は目を向ける。「やりましたわね」と安堵の笑みを浮かべる黒子のリボンで髪を結った湾内と泡浮からリボンを受け取り、遠く空の彼方を黒子は見つめる。
「お二人が居てくれて助かりました。ありがとうございます、消化器の粉も落としてしていただいて」
「いえ、お力になれて良かったですわ」
『
お互い場所が分からないのなら、条件としてはこれでイーブン。敵が何者であったとしても、学園都市に手を出して来た犯罪者である事に違いはない。
「……行くのですか? でしたらわたくし達も」
「いえ、ここからはより危険な領域、これ以上お二人を巻き込めませんの。それに、わたくし一人と言うわけではありませんから」
携帯を小突く黒子の笑みに湾内と泡浮は肩を落とし、「それでは」と言葉を残して黒子の姿が消えてしまった。黒子は追う者、学園都市の中に居て、最高の目を持つ相棒も居てくれる。危険と分かっていながらも迷わず飛んで行く友人の背を思い描き、湾内も泡浮も静かに手を握り締める。
日常を生きる者とは本質的に違う世界に身を置く者。
同じ中学生でありながら、同い年でありながら、白井黒子はいつも誰かを追っている。そんな者が近くに居ながら、ただ平和の中で呆けている事など、できようはずもない。友人の為に少しでいいから力になりたい。それでも戦場で生きて来た訳でもない二人にできる事など限られているから、友人の為に友人の力を借りようと、湾内と泡浮は頼りになる先輩二人の影を探す。
あー、と声にもならない小さな声を吐き出して青髮ピアスは親愛なる小さな担任の背を眺めていた。今はそれぐらいしか楽しみがない。いつもならうるさい問題児四人衆のうちの一人、それがここ最近めっきり大人しく、教室もどことなく元気に欠ける。クラスメイトがちらりと寄せる心配の視線を手を振って散らし、青髮ピアスは姿ない周りの三つの席を眺めた。
仲間外れは寂しいなぁ、と思っても『シグナル』の仕事でもないと四人揃って危険ごとに立ち向かう事も多くはない。なんともならない不機嫌な心情を得意の鉄仮面で覆い隠し、小萌先生に当てられて「はーい!」と青髮ピアスは元気よく声を上げた。
「正解です。でもちゃんと宿題も出さないとまた補習送りなのですよ」
「いやぁ、小萌先生との時間が減ってしまうのも残念やし、カミやん達も居らんし是非個人授業をお願いしたいです先生!」
「はい、バッチリ宿題マシマシで待っているのですよー」
「あーん、小萌先生の宿題なら喜んで!」
完璧に終わらせはするものの、又もや提出する気のない元気のいい返事に、
教室の窓硝子が内に吹き飛んだ。
ガシャリッ、と床を小突く硝子の足音と悲鳴がのたうち回る教室を静かに見つめる影が遠くに一つ。転がり伏せる多くの学生達の中、変わらず椅子に座り頭の横で拳を握る青い影を睨み付け、髪のない黒い頭をドライヴィーは静かに撫ぜる。
「外したと言うより掴み取られたわね。やぁね学園都市って、孫市はよくこんなところで生活できたものだわ。正体不明で通ってる第六位なら警戒も薄いと思ったのだけれどねぇ。アランもハムも外したようだし、やっぱり容易にはいかないわぁ」
「おもれぇ」
「どこがよ……」
呑気な暗殺者にアルドの肩が落ちる。たかが学生ならばどれだけ楽か。
「……そう言えばなんで貴方は裏切った訳? 貴方って考えてる事分からないから」
「……戦場がおれの住処。生まれた場所もそこだから、死ぬ場所もそこだ。ノーテンキに生きベッドで横たわるくらいなら、最高の相手に彼岸花畑に突き落とされたい。まごいちが居なくて残念だ」
「やぁね、戦闘狂って」
同じ場所にいるからこそできない事もある。死に場所は決められる時に決めておきたい。出会う者も次の日には居なくなってしまうような戦場の中で、不思議と近くに居た者達。最後をもし飾るなら、そんな者達と最後を飾りたい。死のうが死ぬまいが望むのはそれ。望む最高の相手の姿がないのは残念だが、それならそれで強者とこそ遊ぶだけだとドライヴィーは引き金を押し込む。
真っ直ぐ飛来する銃弾を、砕けた硝子の窓辺に肘を掛けながら、青髮ピアスはゆるりと手を伸ばし虚空を掴む。相手を殺さぬように調整された訳でもない必殺の一撃。それを手に、遥か彼方で火を噴いた銃口を睨み付けた。それを握る者と隣に立つ者、深緑の軍服に身を包む姿を。
「
それに加えて一般人も多い教室に授業中も関係なく撃ち込むなど、孫市が関与しているはずもないと結論付け、握り締めた銃弾を青髮ピアスは力任せに潰し砕いた。青髮ピアスも他の『シグナル』の面々も、普通とは言いづらい生活をしていることは理解している。それでも、この教室だけは気取らず馬鹿みたいに騒げる優しい空間だ。
月詠小萌も、
「距離にして4000メートル弱……ひとっ飛びとはいかんなぁ。敵に回ると厄介やね。スイスは今内乱の真っ最中やったはずやし、時の鐘も仲間割れか? なんにせよ、なら孫っちの代わりにお灸を据えてやらなあかんわ」
大地にヒビを残し青髮ピアスの姿が消える。
それを目にアルドはぴゅーと口笛を吹いた。
「鋼の肉体って? ロイでもあるまいし、しかも見たところ一発で仕留めるのは無理そうよ?」
「いいから撃て、おれが仕留める」
「こっわーい」
戯けた口調でも目は笑わず瞬きもなく、アルドは小さく息を止めた。学園都市第六位の肉体稼働力は馬鹿にならない。人を一撃で容易に殴り殺し、徒競走の世界記録を容易く抜き去るほどの力を秘めている。だが、空を飛んでいる訳ではない。どれだけ速く力強かろうとも、必ず大地を踏みしめなければならない。スポーツカーも真っ青の速度で地を駆ける青い髪を睨み付け、鐘の音が響く。
正確に落ちてくる銃弾の姿に舌を打ちながら手で打ち払った影に隠れ、迫った二発目の銃弾が青髮ピアスの足を大きく弾いた。肉が抉れ骨の見えた足に青髮ピアスは顔を歪めながら、既に半分以上も距離が潰れ大きく見える黒い影へと顔を上げる。
一発、二発、三発と数を増やす鉄の雨。上昇した青髮ピアスの動体視力がゆっくりと迫る銃弾を写し、最小限の動きで紙一重にそれを避ける。
「ツッ⁉︎」
立ち上がろうと踏み締めた足が再び落ちる。避けた銃弾が地で弾け正確に足を撃ち抜いた。狙撃で更に跳弾さえ繰る技術。最高峰の狙撃手集団の名は伊達ではない。構えられた二つの白銀の槍がその切っ先を一人に向け、鋼鉄の弾丸を吐き出し続ける。リロードの時間は最小限に。止め処なく続く弾丸に身を削りながら、青髮ピアスは小さく息を吐き出した。
能力を最大限に活用すれば、銃弾さえ弾く怪物にもなれる。だが、それにはタイムラグがあり、もしもタイムリミットが来てしまえばただの的だ。どうするべきか頭を回す中で、不意に掴んだ銃弾が強く弾け固まった。白い吐息を吐き出して弾けた肉に霜が付き凍る。氷結弾。握れなくなった手に銃弾が食い込み、貫き突き抜けた弾丸が青髮ピアスの頭を大きく弾く。
ゴロゴロとアスファルトの上を転がって、倒れ伏した青髮ピアスにダメ押しとばかりに銃弾が落ちる。
「──やだわぁ、死体になっても第六位って動く訳? 孫市の報告にそんなのなかったでしょ」
「……笑える」
ヂュンッ! と音を立てアスファルトに空いた穴を見つめて路地裏に滑り込んだ青髮ピアスをドライヴィーは静かに目で追った。全く笑えないとアルドは狙撃銃を肩に掛けて身を翻す。青髮ピアスを路地裏へと引っ張った腕。相手は青髮ピアスだけではない。一人でないなら腰を落ち着けて居ても取り囲まれてしまうだけだ。
「別にここで終わらせる気もないしじっくり行きましょ。アラン達と合流するわよドライヴィー」
「……早く来いまごいち、おれはここに居る」
姿なき戦友に想いを馳せ、ドライヴィーもまた虚空を見つめ身を翻す。消えた殺意の気配を路地裏の角から見つめる戦友の姿を、青髮ピアスもまた見つめた。サングラスの奥で目を細める金髪の男の真面目な顔を。
「……参ったにゃー、マジで何人も時の鐘が来てやがるとか、勘弁して欲しいぜい。無事か青ピ? まあ無事みたいだけどな」
「……どこがや全く。またコソコソしくさってからに。それでつっちーが居るいうことはまた面倒事みたいやなぁ」
「まぁそんなところだ」
仰向けに倒れた青髮ピアスの額から、銃弾を弾いた白い骨の膜が地に転がり崩れ去った。それを目に土御門もアスファルトの上に腰を下ろすと、どこから話したものかとサングラスを指で押し上げる。
世界最大の粒子加速装置『フラフープ』。その防衛任務に就いていた暗部組織の一つ、
『ドラゴン』
『
そのための対暗部への手段として、『
そして何より、そんな
ただ一番の面倒事は別にある。土御門は懐から白銀のリボルバーを取り出すと青髮ピアスの顔の横へと投げ捨てた。そのリボルバーから匂う生々しい鉄の匂いに青髮ピアスは身を起こし、血に塗れたゲルニカM-002を目にして土御門の声に耳を澄ます。
「
「結局マジでめんどくさいって訳よ。そんな奴らの相手とか」
「大丈夫、私はそんなフレンダを応援してる」
布団の上に項垂れぶーたれるフレンダ=セイヴェルンへと励ましの言葉を送ってくれる
「折角今日は滝壺の退院祝いでレッツパーティーってな具合ですのに、全く超空気読めてませんよね。残党勢力の掃討とか、前回盛大にやらかした第二位とかに任せておけばいいでしょうに」
「盛大にやらかしたから信用できないんでしょ。またいつどこで裏切るか分からないってね。ただ気乗りしないのは確かだけどさ」
絹旗と同意見だと
そんな中で数少ない祝い事である滝壺の退院パーティーを目前に、はい今からお仕事、などと急に振られてもやる気を出せという方が難しかった。何より退院と言っても体調が万全でもない滝壺を連れ出すのは戸惑われ、しかも『アイテム』の五人目と呼べそうな男一人に滝壺を押し付けるのも癪であると細められた六つの目が男へと向く。
「だって言うのに何を一人嬉しそうな顔してるのかな浜面君? 滝壺と二人で退院祝いも悪くないかなー? とか思っちゃってる?」
「超最低です浜面、見損ないました。いやらしさが顔から滲み出てます」
「結局浜面はキモいって訳よ」
「俺なんも言ってねえんだけどッ⁉︎」
「大丈夫、なんでも表情に出ちゃうはまづらを、それでも私は応援してる」
滝壺ぉ! と泣き付く
「むぎの達行くの? だったら私も」
「あなたはいいから、折角退院なんだからゆっくりしてなさい。元
「だからって浜面、滝壺に無理させてたら後で超殴りますからね」
「めんどぉ、こうなったらせいぜい派手にぶっ飛ばしちゃお!」
「フレンダは超自重して下さい」
目標を殲滅できたのかも分からないくらい爆破されても堪らないと、悪い笑みを浮かべるフレンダに絹旗は呆れ、麦野に頭を締め付けられたフレンダが悲鳴を上げる。あんな事があっても何だかんだ『アイテム』は変わらないらしい、と浜面は小さな笑みを口元に浮かべて、「任せておけ!」と振り向いた先、ガラリと病室の扉が開いた。
風に揺れるのは白衣ではなく深緑の軍服。見慣れぬ服の人影は迷う事なく病室へと一歩踏み入り首を傾げた。その人物の顔に浜面は目を見開き、滝壺を守るように立ち上がる。軍服の人物から立ち上る気配は常人の振り撒くそれではない。そして、その軍服には見覚えがあったから。
「アンタは──」
「見つけたわ第四位。こんなとこ
髪の少ない白い三つ編みを大きく揺らし、引き裂けた針に縫われた口を動かし辛そうに開くラペル=ボロウスの破壊の爪痕が強く残った笑みを見て、麦野も絹旗もフレンダも口端を下げ一歩下がる。
強く残った拷問の跡。ラペルが元は美人だと分かるからこそ、その深い傷跡の悲惨さが浮き彫りになっている。『アイテム』も一度出会った時の鐘総隊長オーバード=シェリーと同じ軍服に身を包んだ女性が何の用事で来たのか理解が追い付かない光景の中に、ラペルが新たに一歩を踏んだ瞬間赤い塊が入り口から倒れ込んだ。
同じ軍服を着た人相の悪い外国人。血塗れの体を床に転がし、荒い吐息を吐き出すゴッソ=パールマンへと目を落としたラペルは、慣れた手つきでナイフを一本取り出すと、くるくる指で取り回しその切っ先を倒れたゴッソに向けて突き付ける。
「こうな
口元の笑みが深められ、銀の刃が宙を舞う。