お土産。
ある意味でそれを贈るか贈らないか、何を贈るかで相手のことをどう思っているのか漠然とバレる。時の鐘の仲間達に贈るのであれば、個々人の好みも十全に把握しているので迷う事もないのだが、学園都市に住む者達に贈るとなると話が変わる。
「木山先生には何がいいだろうか……、飾利さんはお嬢様生活に憧れてるみたいだしハワイアン家具でいいかな、椅子とクッションとか。佐天さんにはなんだ? 普通の女子中学生って何がいいんだ? 化粧道具とか? 小萌先生には酒でいいだろ。青ピにはハワイ美女大全でいいや。土御門には……フラメイド? フラメイドってなに? フラガールメイド? いいやこれで。クロシュには香水とかにするか。インデックスのお嬢さんには調理器具でいいだろ。釣鐘にも買わなきゃぶーたれるな。忍者へのお土産ってなんだ? ハワイの武器とか買えばいいわけ? 枝先さんに春上さんも前にお見舞い来てくれたしなんか買うか……光子さんにも買わなきゃ苦い顔されそうだ……泡浮さんに湾内さんになしってのはないだろうし……これは吹寄さんとかにも買わなきゃダメか?
「いやいやお前どんだけ買うんだよ……今見てる椅子も五万超えてんぞおい、お土産ってレベルじゃねえだろ……」
「いやそんなものだろう。折角買うのなら長く使えるものの方がいいって。数百万する酒を一瞬でロイ姐さんに飲み干された時は流石に怒りが湧いたけど」
「金銭感覚ブッ飛んでんな……お、これとかいいんじゃねえの?」
「ウクレレっていつ使うんだよ……俺笛もってるし、ってかお前誰だ」
急に馴れ馴れしく話しかけられたものだから思わず普通に会話してしまった。ウクレレを指差し微笑む隣に並んだ
それもこいつは……。
俺を見上げて笑う男の鼓動の強さに目を細める。俺より低い背丈て化け物みたいなエンジン内蔵してやがる。
しかも……殴る気か?
隣に立つ存在に俺が気づいてから、目線でフェイントを入れ、ただ狙いは別。骨の軋む音を拾い第三の瞳で見れなければ、目線で制される。それによって生まれる死角から拳を見舞う気満々だ。
なんだこいつは。アメリカお得意のストリートファイトマニアか? そのくせ練度がアホみたいに高い。アウトローなアメリカギャングとは違う小洒落た格好をしているくせに、ナルシス=ギーガーやボスと同じ、百戦錬磨の気配が滲んで止まない。知覚が開く前ならぶっ飛ばされているだろうが、視線のフェイントに視線を返し、男の指を擦る音に合わせて爪先で床を小突く。
汗が額を伝う。魔力の気配やAIM拡散力場の波も感じない。
オカルト頼りでない素の実力でこれか……世界は広いというか、時の鐘が全てでないことは分かっているが、なんで気軽にこんな奴が現れる? 男は暫く俺と見つめ合っていたが、他の観光客の影へと僅かに視線を動かすと、唇を舌で小さく舐め、諦めたように馬鹿正直に軽く拳を放って来た。
ので、受け止める。
「……出会い頭に人中狙って拳を振るう奴がいるか? これがアメリカ式の挨拶なのか? アメリカ人には見えないが、誰だお前」
「いやぁ、悪い悪い、いや違うな
雷神……その愛称っぽい奴で何故か苦手意識が……。
ニンマリ笑うトールと名乗った男が何をしたいのか分からないが、
「試したのは悪かったけど、ここじゃやらねえよ。他の観光客に迷惑だし、ただでさえあんな事があった後に荒事なんて見たくねえだろうしな。気に入ってるんだぜ時の鐘は。ただ常に仕事してるせいでこれまで機会がなくてよ、魔術側に深く首突っ込んだと思ったら瑞西のクーデターで活動休止って……」
何故そこで肩を落とす。そんな事俺に言われても困る。時の鐘に仕事でも頼みたいのか知らないが、実力の一端を見るに時の鐘を必要とするような者だとも思えない。周りに気を使う余裕は実力から来る自信か性分なのか。少なくとも警戒は解いていいらしい。肩から力を抜いた俺をトールは見上げると、再び口に笑みを浮かべて指を弾く。
「俺がお前を雇うからさ、俺と戦ってくれよ」
なんだそのふざけた依頼は。
「却下。もうお前がバトルマニアだって事は分かった。そんな金があるなら何処ぞの道場にでも入門して好き勝手やってくれ」
「時の鐘って言う事皆同じだな。ガスパル=サボーとクリス=ボスマン、電話で時の鐘に同じ依頼したら同じ事言われたぜ」
迷惑電話はやめろよ……。なに依頼して来てんのこいつ。しかも何度かしてるみたいだし。お前強いらしいな戦ってくれよ、なんて道場破りみたいな依頼受ける訳ないだろ。しっかり依頼しているあたり、ガチで道場破りしに来たスゥよりよっぽど良識があるようだが。唇を尖らせるトールから視線を切り、相手をしたくないので次の雑貨が並ぶ棚に身を移す。
「おいおい無視は寂しいぜ、アレとかどうだ?」
「何故付いてくる……コーヒー豆とか
「魔術師でも?」
その一言に足を止めてトールに向かい振り返る。言葉だけではない。トールの身から薄っすら零された歪な波に目を細め、鼻を鳴らして身を翻す。魔力の精製。それが証拠。使えるのにさっきは敢えて使わなかったのかこいつ……。
「……魔術師=極悪人って決まってる訳でもない。何もしてなきゃ一般人と一緒だ一緒」
「『グレムリン』でもかよ?」
その一言に今度こそ完全にトールに向けて体を捻った。笑みを深めたトールの挑発。なんとも分かりやすい餌をぶら下げる。その名を口に出すという事は、出せるという事は、関係者で間違いないのだろう。それもわざわざ俺に仕掛けさせる為にその名を出すとは。どんだけ戦いたいんだこいつ。懐に納められた
「……それは本気で言ってるのか?」
「嘘は言わねえよ。お前なら分かるだろ? 『グレムリン』の直接戦闘担当、雷神トール。自己紹介だ」
「……スイス特殊山岳射撃部隊『
「嘘じゃねえよ、後味悪い喧嘩は嫌いでね」
嘘は言っていない。トールの鼓動は変わらない。挑発しておいてふざけた奴だ。乗ったら乗ったで場所を移そうとでも言う気なのか知らないが、そういう事なら話は早い。
「……別にグレムリンの殲滅を頼まれている訳じゃないし、お前のそれが性分ならハワイの件とも関係なさそうだ。さっさとどっか行け。仕事も一先ず終わって俺はお土産選びで忙しい」
「変な奴だなお前、仕事じゃない方が強いクセに。スイスでもロシアでも。仕事という枠がお前の限界を阻害してるぜ? いや、首輪代わりなのか?」
「……なに?」
「お前の事はこっちでもある程度追ってる。大きな戦いを起こすなら敵対するだろう面倒な相手の一人だからな。波を見て合わせられるんだろ? それさ、何でお前に合わせないんだ?」
なに言ってんだこいつ。合わせるも何も俺自身の鼓動や波紋はそれとしてあるのに、合わせるもクソもないだろう。周りを取り巻く狭い世界に合わせるとして、その中心である自分に合わせるってなんだ? 何を言ってる? 俺が気付いてない何かがあるとでも言うのか? いや、そもそもの話。
「お前グレムリンなんだよな? 俺を鍛えにでも来たのか?」
「まあ間違いじゃない。どうせやるなら強い奴とやりたいし、それで鬼や悪魔が出るなら尚更やってみたいしな。今はお前のお土産げ選び手伝ってやるよ」
「いや要らないんで帰って貰えます? お前が超絶面倒くさいだろう奴だと言う事は十分わかった。俺の仕事を増やすような事をするんじゃない。そんな必死はいらない。あっち行け! しっしっ!」
「なんだよやる気薄いな」
「俺は疑わしきは罰せで動くような異端審問官でもないんだよ、魔術結社が一枚岩じゃないなんて事も嫌という程知ってるし、名も知らない観光客を気遣うあたり、俺と戦うためだけにわざわざ人質取るタイプでもないだろう? どうかそのまま平和でいてくれ。トール、俺はお前とはあまりやりたくない」
二つの意味で。
下手な戦闘狂と比べるとずっと平和だ。求道者と言っていい。自分の我儘で一般人を巻き込まない性分もそうだが、ただ、何よりトールの底がまるで見えない。ボスやナルシス、俺のよく知る他の一番隊と同等以上の戦闘技術を持っていながら更に魔術師とか。防御不要状態だったナルシスと事前情報なしでサシでやるようなもの。勝ちの目が見えない。仕事でもなくただの喧嘩で戦闘不能など御免だ。俺は傭兵なのであって喧嘩師でも武術家でもない。
「ちぇ、お前ならすぐ受けてくれると思ったけど、まあいいさ、近いうちに二つまとめて相手して貰うから」
二つってなんだ? 『
このタイミングでの着信。トールにちらりと目を向ければ、出てどうぞと手で促される。F.C.E.が今も作動しているのだとすれば、離反していない学園都市の誰かも覗いている可能性がないでもない。インカムを取り外して耳に付ければ、聞こえてくるのは土御門の声ではなく女の声。
『私だ、孫市』
「オレオレ詐欺なら間に合ってるぞ」
『冗談はよせ馬鹿者め、学園都市のニュースは見たか?』
疲れたカレンの声を聞き、雑貨店のテレビで今もまたやっている学園都市のニュースを見る。さっきからリンディ=ブルーシェイクと学園都市協力機関二七社のニュースをテレビもラジオも繰り返してばかり。数日間は新聞の一面も似たようなものになるだろう。「見たけど?」とカレンに返せば、唸り声を返される。土御門からでもなくカレンからの連絡。全く気にした様子もなく雑貨を物色している気侭なトールを横目に、カレンを急かすようにインカムを小突く。
「何か問題でもあったのか? 学園都市絡みで?」
『離反した学園都市の協力機関二七社が東欧に集結している。バゲージシティにな』
「東欧に?」
そりゃまた、トライデントが主に活躍していた東欧で、トライデントがやらかした結果買収でもしたのか。EU非加盟である東欧に拠点を置いていたトライデントにはEUの息が掛かっており、金銭のやり取りには黒い噂があったが、それがおじゃんになった為に別の資金源に場所でも提供したということなのか知らないが、移るべき場所に移ったという具合だ。
ただそれを俺に言ってどうしろと言うのか。東欧だとスイスに遠いわけでもないし、何より復興に邁進しているロシアとスイスの間という立地もよくはない。兵器産業で名高い工業国であるチェコが東欧にいるのも問題だ。その工業力を学園都市の技術で補い武器生産でも本格化すればどうなる事やら。魔術関係よりよっぽど俺としては危機感が煽られる。
「スイスにでも喧嘩を売って来たのか?」
『そうじゃない』
「じゃあなんだいったい」
『反学園都市サイエンスガーディアン、離反した学園都市協力機関二七社は今はそう名乗っているそうなのだが、それが十一月の一三日にある企画を催した。取り敢えず周りに存在を周知させる為の広告なのか知らないがな、ふざけた事だ。だがある意味で使えはするし打ってつけだぞ』
「要領を得ないな……さっさと本題を話せよ」
勿体つけたように話すカレンを急かす。上の立場になった事でそういう小技を覚えたのか知らないが、回りくどい話は仕事の話なら不要だ。『どこから話すか』とカレンは間を置くも、結局面倒になったのかさっさと本題に入る。慣れない事をするんじゃない。
『『ナチュラルセレクター』、そう銘打たれた格闘大会を開催するようだ。優勝者には『学園都市製の超能力に代わる、グローバルスタンダードの証明』が与えられるとな。学園都市が科学的でないと切り捨てたものに商品価値を付けて扱いたいらしい』
「大道芸人でも集めたいのか? それは魔術師を集めるって事か? いや、全部か」
『だろうな、学園都市に離反したはいいものの、決定的に対抗できる超能力でない別の何かが欲しいのだろうさ。例えば貴様達だ時の鐘』
超技術の兵器さえ作ってしまえば、使い手などどうだっていいとは違う。技術を扱う者。スゥなどの武術家も日の目を見るかもしれないこの企画。超能力に魔術が蔓延した世の中で、世界基準であるとする評価が欲しいこれまで影にいた者もいるにはいるだろう。
「俺に連絡して来たって事は、俺に出ろって事か」
『図らずも貴様は『
「そりゃそうだ」
瑞西の軍事のトップが意気揚々と出て行って負けましたではスイスの底が知れる。出場者達もよく分からず、負ける可能性があるのなら『将軍』は出るべきではない。勝とうが負けようがどちらにしてもリスクが多大過ぎる。それにスイスで問題を起こした『
『スイスの今を知らしめるまたとない機会でもあるし、見過ごすには惜しい。それに貴様が出るとなれば、東欧なら嫌でも周りは貴様を知っているしな。現状私が送れる最強のカードは貴様だ孫市』
「……なんだかスイスの一件以来急激に名前が売れてて怖いな。これもまたそれに一枚噛みそうだし、傭兵としてはいい事だろうが、どうにも嫌なタイミングだ」
『現状動ける時の鐘が貴様だけという中でこういった催しがあるのが悪いなどと言ってはそれまでだがな、ただ問題があるとすれば……』
カタカタと拙く響くキーボードの音。カレンが操作してるのに知らないが打ち込み遅え、人差し指だけで押してるんじゃないだろうな。あっ、ララさん呼びやがった。……打ち込みスピード変わらねえぇ……魔術師なのに無理するからだ。スイスにいる他の
『う、うむ。よし出た。持ち得る装備の上限は、衣服を合わせて重量八〇キロ、第二次フランクフルト戦争条約で定められている火薬、爆薬、毒物、細菌、放射性物質などの使用は禁止するとな。あまり言いたくはないのだが──』
「ゲルニカに特殊振動弾は持ち込みこそすれ使わないさ。時の鐘の軍服に
時の鐘の軍隊格闘技を元に、波の世界に対応した新たな形。釣鐘に少し試したが、形とするには程遠い。銃撃の選択肢を敢えて削り、格闘だけに集中する時間が必要だ。一度に全て形になる事などあり得ない。即席麺のように初めから完成品が身に付いている訳ではないのだ。結局自分を磨くには、一歩ずつ積み上げるしかない。その為の一歩としてそういった場があるのなら、利用しなければ勿体ない。おかげで一三日まで何を調整すればいいのかはっきりした。
「世界と同じだ。見え方が変わろうと全てが百八十度一瞬で変わる事などない。日本でも四季があるように、一つずつ変えよう。まずは基本となる体の動かし方を。大丈夫だ。なんとか大会当日までにはある程度調整を終わらせる。要は勝てばいいんだろう?」
『まあな。ただその結果貴様の技術が解析される恐れもある。それでも出てくれるか?』
「解析されようがそれはその時までの俺だろう? ただでさえ俺もまだ発展途上だ。常に進化を続ければ問題ない。果報は寝て待ってろよカレン、と言うか『
『そうだな、孫市…………命を下す。技を振るえ、魔術師だろうと誰であろうと貴様の技術で穿って見せろ』
「了解将軍」
通話を切って息を吐く。ナチュラルセレクター、自然淘汰を決定する者とは大袈裟な名前を付けたものだ。
グローバルスタンダードの証明など別に欲しくはないのだが、逆に考えれば新たな時の鐘として勧誘できそうな者が集まる場所とも言える。学園都市支部だからと言って、学園都市で全てを賄う必要はない。そもそも時の鐘自体世界中から人員を集めていたのだから、そういう意味でも格好の場。まだ見ぬ仲間がそこにいるのか。不意に持ち上がってしまう口端の先で、トールの目が此方に向いている事に気付き咳払いをして誤魔化す。
「……東欧でナチュラルセレクターとか言う大会があるそうだ。お前も出るのか?」
「興味はあるけどね、俺は出ないよ。面白くなさそうだし、弱い者いじめも好きじゃねえの」
「……弱い者いじめね」
「お前なら分かるだろう法水孫市、俺達はある意味で同族だ」
「同族? 魔術師のお前と?」
「それこそアプローチの違いってだけさ、『力』を求める事は悪じゃない。俺もお前も、積み重ねていくしか能がない。俺は届いた。お前はどうかな?」
神裂さんやウィリアムさんに会っているから分かる。トールは別に聖人ではない。そして上条のように右手で絶えず何かの波を消しているような感じもない。つまり『原石』でもない。魔力さえ精製しなければただの人。俺と同じ。才能がないと分かっていても、積み上げるしかないと辞めなかった。
その結果今がある。
誰かは努力する才能がどうたら言うかもしれないが、黒子がいつか言ったように努力は努力。万人が平等に持つ権利。鼓動を合わせたところで破れるかどうかも分からない技術の研鑽。試された時にそれが分かったからこそ。
「なるほど……どうやら俺はお前が多少気に入ったらしい。それがお前の必死か?」
「やる気になったか?」
「少しだけ。別に俺は戦いが好きという訳でもないんだが。ちょっとだけな、お前となら仕事抜きでもやりたくなったよトール」
「おっし! それじゃあッ!」
「一三日に大会があるのにやるかよ馬鹿。『グレムリン』てやつはよく分からないな」
「はぁ、残念、お前はやらないって言ったら絶対やらなそうだしな。今無理矢理やってもスイスに迷惑掛かるか。ハワイでやるわけにもいかねえしよ、人生ってのはままならねえもんだね」
「俺が『時の鐘』でお前が『グレムリン』みたいにか?」
「そんなとこ」
頭の後ろで手を組み唇を尖らせたトールに呆れ、止めていた足を動かす。拗ねるにしてももう少し隠せ。サーニャやサンドリヨンみたいな奴らも『グレムリン』でトールもまた『グレムリン』。魔術師は個の考えでしか動かないというのがよく分かる。自分の好みでない戦場で戦えないと分かっていながらそれでも会いに来るとは。トールは暇なのか知らないが、おかげで『グレムリン』の事が少し知れた。
「折角だから『グレムリン』の目的とか教えてくれない?」
「そこまで口滑らせられるかよ、ただ折角来たんだしそうだな、オマケが欲しいなら、東欧に行けば俺の仲間に会えるぜ」
「……最低限『グレムリン』としては動く訳か。それだけ聞けりゃ十分だ。どうせ大会で勝つのが仕事みたいだし、グレムリンが出て来ても勝てばいいだけの話。まぁレイヴィニアさんがお膳立てしたのに出て来なかったらその方が驚きだが。そういう意味では今の話は後押しになっただけで情報としての価値は低いなおい」
「それを俺に言うなよ、大事な情報欲しいなら」
「だから挑発するんじゃない」
自分を餌に俺を釣ろうとするとか。周りに迷惑が掛かるし自分から手を出すのは億劫でも、ふっかけられた喧嘩は買うと。なかなか強かで面倒な思考回路をしている。サンドバックばりに拳をウェルカムして来る戦闘狂はもう放っておき、雑貨店を巡り学園都市に向けて輸送して貰う手続きをする。
「……結構な量になっちまった」
「早めのサンタクロースか?」
「いつまでいるんだお前は……」
「いや折角ハワイにまで来たのにとんぼ返りはちょっとさ」
「知るか、俺はまだ行くところがあるんだ。僅かな休暇の時の邪魔をするんじゃない」
ライトちゃんの頭を小突き、目的地までの場所を空間に写して貰う。折角御坂さんにオススメされた事だし、それを買えなければハワイから離れる事もままならない。空間に映された目的の場所をトールは見ると口笛を吹いて肘で小突いてくる。鬱陶しいなッ‼︎
「なになに、プロポーズでもしちゃうわけ?
「なんで俺がアレにそんな事しなきゃなんねえんだよ! アホ言ってるとブチのめすぞ!」
「照れるなって、そういうことなら俺も選ぶの手伝ってやってもいいぜ?」
「なんでだ⁉︎ 今日会ったばかりの奴になんで手伝ってもらわなきゃいけないんだよ⁉︎ 違う! 俺が渡す相手はこの子だ!」
ライトちゃんに黒子の画像を出して貰えば、トールの目が冷ややかになる。……あっと、これはさり気なくライトちゃんに隠し撮りして貰った時のやつだった。『
「……狙撃手だからって盗撮はやめた方がいいと思うぜ俺は」
「馬鹿め、本気で盗撮するのならもっと際どい瞬間を撮る。甘いな雷神、時の鐘舐めんな」
「……え? これ俺が怒られてんの?」
「これなんてどうだ! 珍しく髪を下ろしてる時のだぞ!」
「いや、珍しくなんて言われても知らねえし……」
「馬鹿め、普段ツインテールなのはアレはアレで最高だがな。こうふと髪を解いた時の無防備さが分からんのか。お前の目は節穴か? ハワイまでわざわざやって来てどこを見てるんだ。俺は心底残念でならない」
「……ハワイまで来たのに俺は何を見させられてんだよ、ってかその子の写真多過ぎだろ! なに、お前って幼女趣味だったり……」
「幼女趣味じゃねえわ! どいつもこいつも見た目ですぐ決め付けやがって! 黒子は十三なんだって!」
「あぁ、日本人て見た目若く見えるからな。ただそいつ胸のサイズが足りてねえんじゃねえの?」
「うるせえこのおっぱい好きかテメェは! 大事なのはそこじゃないんだよ! この野郎こっち来い! 同族とか煽ったくせに何も理解しない奴め! 俺が黒子の魅力を語ってやる!」
「……おっと、そろそろ帰りの門限が」
「行くぞぉッ!」
そそくさ帰ろうとするトールの首根っこを引っ掴み、キューピッドアローの店へと急ぐ。最初元気だったのに店を出る頃にトールがなぜげっそりしていたのかは知らないが、兎に角指輪を買う事ができた。ただ学園都市に戻るにはもう少しだけ時間が掛かりそうだ。