作戦会議。作戦会議だ。上条達を追っている魔神は幸いにもお遊び気分らしいので、上条達が全力で追いかけっこを続ける限りおそらく時間はある。ただ慌てるだけでなく、その時間は有効に使わなければならない。
闇雲に立ち向かったところで、御坂さんの
「大前提としてだ。魔神はなぜ上条を追っている? それさえ分かれば相手の動きもある程度は読めるだろう」
急にやって来た頂上の存在。コーラ=マープルが突如として現れたおかげで色々と有耶無耶になってしまったが、魔神襲来の理由が何一つとして分かっていない。
深く考えずにパッと頭に浮かぶのは上条の排除。上条は、過程はどうあれ魔神オティヌスを止めている。魔神に対する脅威として魔神達が考えていてもおかしくはない。ただこの予想の一番の問題は、上条を追う魔神にあまりやる気を感じない点だ。なんというか必死さが足りない。それでも追っているという事は、魔神が追う必死は上条の命ではないという事。
「上条の死ではないなら何を追っている?
「上条当麻自身だろ」
俺の疑問に返される女の声。出所はやたら口を挟んでくるコーラではなく、急に
「……なぜ分かる?」
「んなの遠目からでも魔神の目を見りゃ分かんだろうが」
分からねえよ
「誰かを望む視線ぐらい見分けつくだろうがァ。オメーが
「そんなのと一緒にしてんじゃねえッ‼︎」
例えメイヴィスが勘だろうが何だろうが視線の質を見分けられるのだとしても、絶対に一緒にして欲しくないものがある。必死を追う心に差があるはずもないだろうが、からっからのお爺ちゃんの木乃伊が上条を見る目と同じとか……ッ。
だいたいメイヴィスの言う通り一緒だとするのなら、つまりそれは木乃伊が上条の事を……いかん深く考えると胃の中身を吐きそうだ。そんな理由で本当に追っているのなら、はっきり言ってもう放っておきたい。魔神どうこう以前の話だ。
「んだァその顔は? 誰が誰に恋しようがそりゃァ誰にも止めようがないじゃなァい?」
「そっち方面に話をもっていくのをやめろ! もう少し真面目に考えてくれる?」
「こっちは大真面目だぜェ? 情熱こそが人生に潤いを持たせるのさ。問題は何に恋い焦がれているのかだろう? 人が力や
「それは……オティヌスと同じって事か?」
そう言えばサンジェルマンも何か言っていたな。魔神達は上条当麻を渇望し、オティヌスに嫉妬したとか。魔神が何を欲するのか、人としての視点からでは、予想するにも限界がある? 必要なのは魔神の視点。とは言え俺は魔神ではないのだし、オティヌスの軌跡を思い返して予測する以外にないか。メイヴィスは軽薄そうな女に見えるが、見た目に反して目敏いと見える。コーラといい敵に回したら面倒そうなタイプだ。
しかし、オティヌスと同じか。
『
「……日常は求めても力を放棄する気はないか?」
自分の世界はそのままに、力を好きに振るいたい? それだとオティヌスよりもトールに近い感じがする。トールは好きに戦いたいのに周囲に被害が出過ぎるのを気にしていたからな。異能を打ち消せる上条が相手で被害が出過ぎないと心底喜んでいた。ただそうだとしても、魔神はトールと違い周囲に被害が出る事を気にしていない。
なんとなく予想の形は固まってきたが、そうなると魔神は好きに力を振るって己が世界を壊し過ぎない為の抑制装置のようなものを欲しているという事になる。『
そうだとするならそれはなんとも────。
「他人を物のように扱い、毎回自分が行使した力の限界点の基準として上条を欲しているって感じか? 本当にそうだとしたら超絶迷惑な我儘野郎だぞ」
「神様ならそんなもんなんじゃないかなぁ〜って。その予想、そこまで的外れでもないと思うよ? だってさぁ〜、あの魔神ちゃん、追いながら上条ちゃんの事試してるみたいじゃない?」
「その為なら周りがどうなろうと関係ないか。……なるほど、まだただの想像でしかないが、そうなら叩くのに遠慮はいらないな」
「追われてる本人に直接電話でもして聞いて確かめてみりゃァいいじゃねェか」
「今は駄目だ」「今はオススメしないかなぁ〜って」
うわぁ……コーラと意見が一致しちまった。お互いに苦い顔を突き付け合う。首を絞めるように抱き枕を抱き締めている情報屋から視線を外し、画面の中の上条へと目を流した。
現状逃げる事に精一杯だろう上条に電話して意識を割いてしまえば、魔神がつけ込めるだろう隙が生まれる。本気で逃げる上条と、お遊び気分と見える魔神でようやく鬼ごっこの形になっているのだ。俺との会話に集中してる間に捕まってしまったら元も子もない。上条が捕まってから黒子に頼んで追ったとしても遅いだろう。何より上条はインカムを持っていない為、電話をするとしたら片手。御坂さんに電話をしても同じ事。魔神の攻撃の迎撃はほとんど御坂さんがしているからだ。
危ういバランスの上で、考える為の時間ができている。
魔神が上条を追う理由を考察していても、これ以上は答え合わせでもしなければ本当の答えは分からない。で、あるならば、どうしようにも魔神を止める為には、魔神を止めるだけの手段がいる。魔王の牙を撃とうが撃たなかろうが、通す為のラインをクリアしなければ意味もない。画面を見つめる横で、一瞬飾利さんが画面へと顔を寄せ眉間に皺を刻む。
「どうした飾利さん?」
「いえ、今一瞬木乃伊が止まって……御坂さん達を見失ったみたいな動きを。これまでどんなものを間に挟んでいても迷わず追っていたんですけれど……気のせい?」
「映像を巻き戻せるか? どの瞬間だ?」
椅子に座った飾利さんの背後に立つ黒子の横へと足を運び、画面を見つめる飾利さんがキーボードを叩くのに合わせて映像がしばし巻き戻る。木乃伊の魔神が立ち止まる少し前、これまで意気揚々と追っていたのに、上条達が工場現場の地面に空いた穴、高所から飛び降りた瞬間、確かに魔神は立ち止まっていた。それでも些細な時間に変わりはないが、これまで絶えず追っていた事を考えれば確かに違和感だ。
「高所からの着地を恐れた? ……とは思えないし、休憩……という線も微妙か? 常に追い続けた方がプレッシャーにはなるだろうが、一度では判断材料にしづらいな。検証する為に上条達にもう一度高所から飛び降りてくれとは言えないし……てか映像が上空からばかりで分かりづらい。飾利さんもう少しどうにかならないか?」
「これでも『ひこぼしⅡ号』からなんとか映像を送って貰ってるんですから贅沢言わないでください。近くのカメラじゃ木乃伊と御坂さんの力の余波に巻き込まれて上手く拾えないんですから」
「……なるほど」
だからやたら上空からの映像が多いのか。『ひこぼしⅡ号』、衛星からの映像とは、結構厳重に規制されてそうなものであるが、確かにそこまで遠ければ学園都市からほとんど物理的な影響は受けそうにない。高所から飛び降り上条達が地下に消えたお陰で追えなくなってしまったが。
しかし、俺達も含めて映像を確認できているが、
「上と足並みを揃えるなんてほぼ不可能だろこれ。上条達とでさえ難しいんだ。結局魔神の動きを先読みして手を打つ以外に方法はなさそうなんだが、相手の力の全貌さえ掴めない」
「問題は泥の腕ですけれど、あれだけなら一度は無視して肉迫できますの。とは言えそれもお姉様が磁力で砂鉄を操るように、力の一端なのでしょうから他に何が隠れているのやら」
「泥の腕ね……黒子の言った通り所詮力の一端なのだろうが、必ずその力の基になっているものがあるはずだ。自分の領分外の力をわざわざ振るうか? 多様な攻撃方法を持つ御坂さんでさえ全ての元は電気だ」
「サンジェルマンは確か炭素を操っていたのでしたわね?
「ならなんだ? 見たままか?」
常に動かしているのは泥の腕。サンジェルマンが炭素を操るように、泥を操るとでも言うのか。地面を掘り返すように腕を伸ばしているあたり、泥と言うよりは砂や土の方が正しい気がする。腕の形をしているのはただ捕らえる形として分かり易く扱いやすいから?
「だとしてもあの巨大さだ。出力がそもそも馬鹿にならん。本気出されたらちゃぶ台返しのように地盤ごとひっくり返されやしないか?」
「それよりもあの腕はどこから生やしてるんですの? 別空間から持って来てる訳ではないですわよね?」
「それはまぁ、地面が耕されているからな……」
「見たまま地面の下から伸びているのだとしたら、その土は……」
無言の黒子と見つめ合い、額から生温い汗が垂れる。黒子の口端も引き攣り、冷や汗が肌に滲んでいた。地面の底から掘り起こされた地面が、魔神が操るのをやめたところで、親切に元の位置へと綺麗に戻る訳もない。周囲に声を掛ける暇もなく、黒子の肩に手を置けば景色が跳ぶ。景色は切り替わり続け青空と掻き混ぜられた学園都市の道の上。話し合うより直に見て触れ知った方が早い。上条達と魔神が通った道に着地と同時に手を置き波を掴む。
「……孫市さん?」
「……黒子の想像通りだよ。溶岩でも流れたように大きな縦穴のようなものが幾つか地面の下にある。崩れていないのが不思議だ。おそらく」
「魔神からのサプライズの準備だとでも? お優しい事ですわね、向こうから支えてくれているだなどと。なのでしたらッ」
「今の内に手を打たなければビルの森が倒壊する」
「初春から
どうする? 血の気が引く。魔神をどうこうする以前に、こっちをどうにかしなければ、魔神を止めても学園都市が物理的に崩落する。学生の多くがいる第七学区が地下の空洞の上に含まれているのがやばい。突如として生まれた地下の大空洞を埋める事など容易ではないが。
「上条達を追っている事以上に、これはもう学園都市全体に喧嘩を売っているな。ただやられるのは性に合わんし。あの魔神を明確な敵対分子として判断し、『
「それは……」
見上げてくる黒子を横目にインカムを小突き電話を掛ける。何度かのコール音の後に、スルーされる事なく繋がってくれた。通話の相手は他でもない。
「防犯オリエンテーション中に悪いが緊急事態だ。仕事だ垣根」
『……俺が馬鹿正直に防犯オリエンテーションに参加してると本気で思ってんのか? くだらねえイベントより面白い話なんだろうな?』
「現状第七学区から第五学区に掛けて大規模な空洞が地面の下に点在している。この空洞は今も上条を追って増加、拡大中だ。垣根、無限を操る
『面白い話どころか怠い話じゃねえか。第七学区の地下に空洞だと? 何やら街の中が騒がしいのは分かってるがな、何が来やがった』
「魔神」
そう言えばインカムの向こうから舌打ちが聞こえた。魔神オティヌスが率いた『グレムリン』の件の際に一番割を食ったのは垣根だ。魔神という相手に思うところもあるだろう。何より今は
「垣根は二次災害が起きないように地下の空洞を埋める事に集中してくれ。魔神は此方で対応する」
『……お前だけでやれんのか? だいたい一般人共はどうする? 避難させるにも防犯オリエンテーションを利用したり、馬鹿正直に魔神の話をしたところで簡単に信じやしねえだろ。うろちょろされちゃ邪魔なだけだ。例えお前と仲良い
「そこは円周に弾丸を設えて貰うさ」
感情を撃ち込むだけでなく、円周ならあらゆる情報を相手に撃ち込める。複雑な情報を撃ち込むのは時間が掛かるだろうし、後でどんな副作用が出るのか分かったものではないが、簡単に危険を煽るくらいならばすぐにできるはずだ。何か手に余る状況になったら、まず
「魔神は俺以外にも他に追っている者がいるからな。こっちは気にしなくていい。人手が必要なら釣鐘か浜面に向かって貰うが」
『
「分かっている。任せたぞ垣根」
『やっほ〜、法水、追加情報だよぉ〜』
垣根と通信を切った途端、飾利さんと通信が繋がったと思えば、聞こえて来るのはコーラの声。気怠げに間延びした情報屋の声に毒気が抜かれ、どうにも理由のない苛つきを覚えるが、それを一々気にしてなどいられない。本能同士の摩擦の火花を押さえ付けるように一度喉を鳴らし、コーラの言葉の続きを待つ。
『初春ちゃんが上条ちゃん達を再捕捉した。と同時に魔神ちゃんは上条ちゃん達をまた見失ったみたいなんだよねぇ〜。上条ちゃん達が川の上の作業船に飛び移ったのと同時にねぇ〜』
「……ほぉ、つまり千里眼のように絶えず上条の位置が見えている訳でも分かる訳でもない訳か」
一度目は確か上条達がアクロバイクで工場現場の穴から落ちた時。次は川の上の作業船。見失ったフリ……はメリットがない以上考えづらい。川に浮かぶ船などと、逃げ場がない事を考えれば泥の腕を伸ばし掴めば詰み。魔神の干からびた見た目からして水が苦手というのは短絡的か? それでは一度目と共通しない。一度目と二度目に共通する点があるとするならば。
「……空を飛べば捕捉されないとでも?」
『そうだとするなら、地面に触れなければ魔神は見失うとも言えるかもねぇ〜、見た目から目玉があるようにも見えないしぃ〜、法水みたいに振動でも感知してるのかな?』
「俺と同じでも学園都市の広大な敷地から特定の個を選別して拾うなんて人間技じゃないな」
『だって人間じゃないもん』
魔神。学園都市などと下手に範囲を区切るだけ馬鹿らしいか。学園都市どころか、地面が続く限りどこまでも、世界のどこにいても魔神は特定の個を選別できると見るべきだろう。問題は地中と地上で分かる範囲に違いがあるかだが、『ない』と考えて動いた方がいい。垣根に地下の空洞を埋めて貰うにしても、空洞の虚空に
「孫市さん……わたくしの準備はいつでも」
耳に付けたインカムで俺とコーラの会話を聞いていただろう黒子が横で口を開く。
超遠距離の狙撃。着弾までのタイムラグを考えると、流石に地を踏み締め射撃の衝撃を耐えると振動で魔神にばれる可能性が高い。ヘリから相手の目で簡単に見える位置からの狙撃では目に付き過ぎるし、安定して狙撃できる形にヘリを滞空させられる腕を持つ者がどれだけいる? いや待て、浜面ならあるいはッ。
「……『アネリ』とか言う行動補助プログラムがあるとか言っていたな確か。浜面の順応性と操縦能力を加味すればやれるか? ただ俺の身の内の波に弾丸の振動数を合わせるとすると射撃音は消せないか。遠過ぎると対応されるか? 遠過ぎない一定の距離で無人機と共に飛び紛れれば」
黒子に頼らずとも魔神に手が届くかもしれない。必要なのは魔神に捕捉されない意識外からの一撃。一発。一発の弾丸を当てられればそれでいい。黒子は
「黒子……相手は魔神だぞ」
「そうですわね……それで何か変わりまして?」
「変わるさ。デンマークでのオティヌスとは違う。バゲージシティでのオティヌスと同じだ。人の命など毛ほども気にしていない。気に入らなければ摘む。そんな奴だよ。どれだけ頭を回して通じる手を考えても、絶対上手くいくとは言い切れない」
「それは、わたくしが『
「それは…………どっちも……かな」
失う事が怖いなどと、一年前ならそこまで考える事もなかったのに。今では両手に収まるかも怪しい。もしも失敗して黒子を失う事になったら、上条がいなくなったなら、きっと俺の日常には一生治らない太いヒビが入るだろう。そのまま割れて砕けてしまう。ただの喧嘩ならば見過ごす事もできようが、相手の巨大さ故に望まなくても天秤の片側には命が乗せられる。
その微妙な差異が決断を踏み切らせてくれない。
相手がただの暴漢なら、相手がただのチンピラなら、そう難しく考える事もないだろうに。全ては魔神が本気を出していないから成立している均衡だ。本気になった途端に此方が売っている手が盤をひっくり返されるようにおじゃんに成りかねない。俺だけならば、『
「……怖いんですのね」
黒子の言葉が俺の図星を穿ち、僅かに身が強張る。
「わたくしだって……怖いですのよ。孫市さんは、自分を懸ける事には躊躇いませんから、わたくしはそれが恐ろしい。コーラ=マープルなんて情報屋が出て来なくても、貴方は魔神の前に立ったでしょう。例え穿つ方法など知らなくても。孫市さんが迷うのは、逆に穿てるかもしれない可能性を知ってしまったからでしょう? でも、そうでなかったとしても、わたくしは貴方の隣に立ちますの。お姉様も、孫市さんもそこにいるのですから。舐めないでくださいませんこと? わたくしは
あ〜あ……。あぁあぁ〜あッ!
小さな黒子の手を伝って、大きな波が押し寄せる。
黒子に頼るよりも手間を掛ければ幾らか打てそうな手があるというのに、『
「まったく……口元が緩んでましてよ?」
緩む口端を止められない。理性的な方法よりも、ただ隣に佇む輝きを見ていたい。誰が相手であるのかよりも、誰が隣にいるのかの方が気に掛かる。馬鹿だ阿呆だと言われても、例え間違いであったとしても、己の、誰かの『必死』にだけは嘘がつけない。それを追う事だけが、手に触れてみたくなる衝動こそが、俺の純粋な衝動でなかったのだとしても、身の底に沈む本能よりも尚、俺を突き動かす原点。
「失くしたくはないからこそ、もし間違いであったとしても、無理矢理正解にすればいいだけの話って? それはなんとも……」
「馬鹿な答えですの?」
「いいや、目が眩む答えだ。そうと決まったら……ライトちゃん、釣鐘と浜面に学生達の避難を手伝うように連絡を送ってくれ。円周と垣根にはさっき言った通り、コーラからの情報も踏まえてな。魔神をどうにかできようができまいが地面の崩落は決定事項のようなもの。その被害の緩和に全力を注げと。……そうしたらこっちは」
「お待ちを……お姉様から電話ですの」
そう言って黒子が耳のインカムに指を添える。御坂さんからの電話。魔神から一旦逃げ果せた今だからこそ出来る事ではあるが、御坂さんが黒子に連絡か。
「お姉様と意見の擦り合わせが終わりましたわ。だいたいはお姉様達もわたくし達と同じ見解のようですの。ただ……他の魔神達から得た情報の方が多いそうですけれど」
「……なんだって?」
「お姉様達を追っていた魔神の名は僧正。『僧正以外に呼び方のない仏様』だそうでして、『あさはかな欲を捨てられず、結果、役割のない仏となった』誰かとして動く事が世界の救済に繫がるのだと信じているとか」
「ちょっと待って、色々待って」
他の魔神てなに? 上条達会ったの? いつ? 何処から生えたの? 魔神の名前が僧正とか上条が確か呼んでいたような気がするが、魔神一人でもこれだけ厄介なのに他のってなに? 魔神達とは聞いていたが、そんな一斉に湧き出してこなくてもよくね? クリスマスが近いからって魔神のバーゲンセールかクソが! ただでさえ『
「とにかく、他の魔神は今回の件には関わっていないと。お姉様達はこれから第二三学区に移るそうですわ」
「第二三学区? いざという時の周囲の被害を考えればその方がいいのかもしれないが。なんだ? 向こうは向こうで何か手を考えたのか?」
「それが────────だそうですの」
黒子から御坂さん達が考え付いた作戦を聞き、我慢できずに噴き出した。頭おかしいわ。普通思いついてもやろうとは思わないだろう。第二三学区。航空、宇宙分野に特化した学区を狙撃銃代わりに御坂さんが狙撃をする訳だ。別に殺す必要はない。結果的に魔神を学園都市から、日常から撤去できればいいのであれば。
「面白い。乗った。それまでの足止めができればいいんだろう? 此方としてもその方が魔神の眉間を穿つより簡単そうだ」
「面白さで作戦を決めないで欲しいですわね……」
「いやいや、普通思いつかないんだから魔神だってまさかと思うさ。それに、黒子だってそっちの方が見たいとは思わないか?」
「……まあどちらかと言えば……癪ですけれど」
「狙撃銃を取ってこよう。間に合わなければ色々と見逃しそうだ。いやいや、急に楽しくなってきたな!」
「こんな事の中に楽しみを見出さないで欲しいですわね。そんな事ですから孫市さんはいいように顎で使われるんですの。そもそも────」
黒子の小言が鼓膜を擽り、景色が何度も切り替わる。どれだけ危険な状況、場所でも、どうにも目を離せない輝きがある。だからこそ俺は同じ場所にいたいのだ。例え何が、誰が相手であったとしても、隣り合う者達がいる限り追う事だけはやめられない。