「……何だか小難しい話で現実逃避していたけど、冷蔵庫の中身が空っぽなんだよな。あの問題をどうにかしない限り前にも後ろにも進めないぞ」
そんな糞平凡ではあるものの、腹が減っては戦はできぬと言う通り、食糧の確保は戦場においてもサバイバルにおいても何より必須。上条の家の冷蔵庫だけならまだしも、時の鐘学園都市支部の冷蔵庫まで空っぽとか、居候共に食糧代を請求していいだろうか? いいに決まっている。勝手に事務仕事手伝ってる青星さんはまだしも、他の二人はマジでちょっとお話である。働かざる者喰うべからずである。だからもう喰うな。
そんな訳で食糧調達。大量に買い込まねばならない筋力的な問題で人選は俺と上条。
「おい」
腰に両手を当てオティヌスもため息を吐いている。今だけは俺も同意見だ。
「大丈夫だ、いくら何でも一つの街だぞ。考えなしにほっつき歩いたってそうそう簡単に遭遇するようなもんでもないだろ」
「忘れたのか、お前自身がとびきり不幸だっていう事を」
「でも味噌と醤油と水だけで一夜を明かす訳にもいかない。俺達は一体何と戦っているんだって気分になるし」
「考えようによっては調味料があるだけで天国だがな。いや本当に」
「お前やアニェーゼのするそういう系の話は食欲失せるからマジでやめて……」
オティヌスが上条のズボンのポケットへと身を移し、学生寮から外に出れば丁度日没。薄暗い学園都市の街並みにポツポツと灯りが点きだす。
僧正と名乗った魔神が暴れて一日も経たずライフラインが死んだままでないあたり、学園都市の技術はやはり馬鹿にならない。クーデター後のスイスなんて、道路や線路の復旧にどれだけ時間が掛かったことか。今でさえ復興中だ。こういう時にこそ学園都市の技術を世界の為に貸して欲しいものである。
とはいえそれも完璧とはいかず、今もまだ道の上転がるひしゃげた車や、地面に広がる割れたビルの硝子の破片を撤去している最中。『前方のヴェント』が学園都市にやって来た時でさえここまで酷くはなかったのだが、『右方のフィアンマ』をぶっ飛ばしたのと同様に、魔神と『神の右席』を比べるのがそもそも間違っているのか。
「またろくでもない事を考えているのか?」
「お前……っ!!」
「いちいち私の行動に驚くなよ。『理解者』の名が泣くぞ」
街へと向いていた意識がオティヌスの声に引っ張られ、上条がズボンのポケットから顔を出しているオティヌスに叫ぶ。オティヌスが度々口にする『理解者』の真意を俺は知らないが、文字通りで受け取るとすれば羨ましい事だ。それは誰より近くで隣り合う者に等しい。
「えっ、ええ? ひょっとして今までずっと顔出していました? ずっと!? ちょっと待ってよ、事情を知らない人から見たらズボンのポケットに美少女フィギュア突っ込んで外出しているように見えていたんじゃ───ごぐぎゃあ!?」
上条が叫び、前屈みになる。波を拾えるからこそオティヌスに上条がどこを蹴られたのかすぐ分かるが、分かりたくなかった……。これが『理解者』とやらか、やっぱ羨ましくねえな。
「待て……バカ……ズボンのポケットに収まっているからって……そこに膝を入れるこたないだろ……」
「ねえ俺他人のフリしていい? デンマークでそんなやりとり俺は見慣れてるけども、前屈みの上条の隣を歩いてたくないぞ。あっちの趣味だと思われるのは遺憾だ」
「こういう時マジでお前らって優しくないよね⁉︎」
お前らって俺と土御門と青髪ピアス? 何を当たり前のことを。女と乳繰り合って股間蹴られて身悶えてる奴に優しくする道理などない。自業自得だ。だから舞夏さんが土御門をしばいてる時は誰もが観戦してるだけだし、俺が黒子に捕まっていても手を振ってくれるだけで助けてもくれない。青髪ピアスが第四位にしばかれてる時は近づいたらこっちが死ぬし。
僅かに距離を取る俺を上条は睨み付け、そんな変わらぬやり取りにオティヌスはまた一つため息を吐いた。
「やはり肩の上が居場所的に落ち着くな」
「ううう、頼むからマフラーの中に隠れていてくれ」
「マフラーの中の方がバレた時やばそう」
「法水マジでやめて……」
「そんな事よりもだ」
そんな事扱いされてオティヌスに会話が遮られた。社会的な死を迎えぬ為には結構重要な話な気がしないでもないが、少しばかり真面目なオティヌスの顔に緩んでいた口を閉じる。
「まさかお前、自分が問題解決する側に回れなかった程度で、上条当麻の定義を更新しようなどと考えていないだろうな。何か新しい力があれば、もっと状況を打開できるかもしれないのにとか何とかだ」
それは、結果として彗星に乗って帰って来ようとしていた僧正を撃破した何かを指しているのか。問題解決も何も上条は今回完全な被害者であるからこそ、そう難しく考えなくてもいい気がしないでもないが、上条にとっては違うらしい。オティヌスの言葉に沈黙で返す姿が答え。そんな上条の姿を手で払うようにオティヌスは続ける。
「やめとけやめとけ。例えばお前がそこの傭兵のように格闘技を習ったら救える人の数が増えるか? 銃やナイフを持てばスマートに事件を解決できるか? 逆効果だよ。殺しの技が増えれば増えるほど、相手を活かして助ける道から遠ざかれば遠ざかるほど、お前はどんどん弱くなる。こればっかりは確定的だよ。お前に俺の何が分かると聞かれればこう答えてやろう。実際にお前に救われた私だから良く分かるんだとな。そこの野蛮な悪魔とは、本質が異なる」
「さりげなく俺を蔑めてくれてどうも」
「間違いではあるまい?」
「そりゃそうだ」
上条が時の鐘に入るとでも言えば俺は嬉しいが、上条に傭兵は絶対的に似合わないだろう。歩むと決めた道が違う。死を背負う感触に俺は慣れ過ぎた。背負える許容量など誰にも分からないが、少なくともルールを設けて俺は必死には必死を返すと決めている。だが上条は違う。己が選択肢の中に『他人の死』を含めない上条が、それを選ぶ必要はない。一般人からはズレているが、上条が一般人である事にも間違いはないのだ。
口を閉ざす上条をマフラーの森から見上げ、オティヌスは尚も続ける。上条の中で揺れ動く波をきっと鎮める為に。
「なあ人間、どうして悪は生まれると思う? 教科書通りの回答なんかしなくて良い。自分の頭に浮かぶ感想を素直に捉えろ。まさかと思うが、ここまで来て胡散臭い漂白剤みたいな善悪二元論なんて語るような人間ではないだろう? 天使と悪魔ほど世の中は単純ではない事くらい、その身で学んできただろう?」
「ゾロアスター教かよ、悪魔とか俺がいるのに言う勇気」
「『嫉妬』のお前にも聞いて欲しいか?」
「俺の答えなんていらないだろう?」
オティヌスが欲しているのは上条の答えであって俺の答えではない。上条は少しばかり考えるように顔を伏せると、僅かに泳いだ瞳が俺を見つめた。
「
そんな答えに俺とオティヌスの笑い声が重なり合う。
「はっは!! お前らしい疑問だな。そして当たらずとも遠からずだ。悪っていうのはな、誰かが誰かを見捨てた時に発生する。こいつはもう駄目だと周囲から諦められ、救う道を目の前で取り上げられた時に。大勢から切り離された誰かさんが、悪という事になってしまうんだ。歴史を紐解けば分かる。一人を殺した殺人犯と、一〇〇万人を殺した英雄様の違いは何だ? 本人の問題じゃない。その行為が大勢に認められたか否か、多数決の違いでしかないだろう」
そう言うオティヌスの目がほんの僅かな時間俺の方に流される。誰かに願われ依頼されて人殺しさえ請け負う狙撃傭兵。必要とされているからこそ『悪』と世界に認じられて消されていないだけで、歯車がズレ、見方が変われば傭兵である俺達はすぐに『悪』の烙印を押される。少なくとももう押されている。そしてそれでいいと割り切っている。だが振り切れてしまえば狩られるだけの怪物だ。耳痛い話に鼻を鳴らせば、オティヌスは小さく肩を
「そして格闘技や銃だのナイフだのって分かりやすい攻撃力は、そうした『切り離す力』を増長させるだけだ。厳罰化とか何とか言って更生の機会を奪い、ただ多数決の敗者を奈落の底に落として喜ぶ悪趣味な復讐代理人どものやり口と全く同じだ。なあ上条当麻、お前の強さはそこじゃないんだよ。お前の最大の武器はな、このどうしようもなく根っこの腐った悪だった『魔神』オティヌスさえ奈落の底から救い上げた、あの力強い腕にこそあった。『繫がる力』がお前のとっておきの切り札なんだ。だから絶対に間違えるな、安直な答えなんか出すな。僧正に勝てなかった? 上里ナントカはそんな『魔神』達を一掃した? だからどうしたと言ってやれ。僧正を死なせてしまった学園都市を、『魔神』を一人も救えずに殺してしまった上里を見下してやれ。そこでお前が求めるべきは、
『切り離す力』、全く耳が痛くて捥げてしまいそうな話だ。こういう時に俺が口を挟まないのをいい事に、オティヌスは俺を悪例に好き勝手言ってくれる。人の振り見て我が振り直せなどと日本の格言にあった気がするが、まんまそれだ。感情を刺激して破滅を呼び穿つ魔王の弾丸。『切り離す力』の一つとしてこれほど分かりやすい例もないだろう。そんな中で再び上条に目を向けられ肩を落とす。こういう時に俺を見るな。俺がなんであろうが隣り合ってくれるという視線が痒くて仕方ない。
「オティヌスの意見に反したい訳じゃないが、俺から言わせれば別の悪がある。切り離す、繋がる以前の問題で、何とも繋がってない、隣り合う事をしない奴の事さ。ある種それが、上条は会ったことないだろうが、瑞西動乱を起こした
俺は平穏の破壊者は嫌いだ。どんな理由があったとしても、迷わず引き金を引くようなら逆に引かれても仕方なし。輝かしい者がいるのなら、それに並びたいが為に俺は幾らでも引き金を引ける。そんな男だ。ナルシス=ギーガーを前に引き金を引く事を躊躇う事もなかった。泥水を啜る奴は、一度でも泥水を啜った事のある奴でいい。積み上げたのが『切り離す力』であったとしても、せめて輝く必死の為に使いたい。例え世界を敵に回そうとも間違っていないと感じたなら。それが俺の奥底に渦巻く衝動を手繰る理性。
小さく笑みを零す上条を横目に、失笑しながら見えてきたスーパーの中へと足を踏み入れる。俺は上条の『理解者』にはなれないかもしれないが、違うからこそ『友人』ではいられる。そうであって欲しい。
スーパーのカゴの中へと兎に角目に付いた美味しそうな食材をぶち込んでいたら、さっきまで微笑んでいた上条が顔を青くして肩に手を置いてきた。なんだいったい。
「法水⁉︎ お前金はあるからって何をほいほい高い食材ばっか入れ込んでんだ⁉︎ 今日は鍋だって言っただろ⁉︎ みんなお湯の中にぶち込んでふやけてしまうんだぞ!だったら多少傷んでいたって問題ないだろうが!」
「それで腹でも壊すのか? 食事は日々の活力だぞ。ケチケチするなよ。力出なくて狙撃銃も持ち上げられなくなったら洒落にならん」
「癪だが傭兵に賛成だな。そもそもナニ鍋にするつもりなんだ。ポトフとかチーズフォンデュとか色々あるぞ」
「チーズフォンデュだぁ? 無駄に手間が掛かる鍋を選ぶなよ魔神。お前みたいなのがいるとチーズ選びから始めなきゃならなそうだ。どうせそれで俺にチーズ削らせる気だろ。フォンデュ=シノワーズとか言うなら流石にキレるぞ俺も。オッソブッコにしよう。鍋じゃなく煮込み料理だが一緒だ一緒」
「そこまでするなら
「デンマークの伝統料理じゃねえか! 絶対お前文句言うだろ! 面倒くせえ!
「貴様とてスイス料理ばかり並べるんじゃない! たまには北欧の料理を作れ!」
「そういうのはフィンランド出身のハムに言って貰える!」
「フィンランド料理などどうせカラクッコだろ出るのなんて! それか
「あの……せめて俺にも分かる話してくれないかな二人共さ」
魔神が悪いんだよ北欧神話の魔神がさあ! フリカデラ煮込めとかふざけんなよ!コペンハーゲン行ってこい!欧州の方は各国の料理色々あるだけにすぐ喧嘩になるから嫌なんだよ。世界三大料理と聞いてフランス料理を筆頭に挙げてみろ、トルコ料理が喧嘩売って来るから。これが国境付近になると伝統料理同士が混じって別系統の料理が生まれそれとまた喧嘩になる。スイスとかフランス風にドイツ風にイタリア風があって、細かな好みになるとマジうるせえから! ちなみに俺はボスから料理を習ったのでフランス語圏のスイス料理が最も得意だ。だからそうしよう? オッソブッコはイタリア語圏のだけどな!
「ちなみにネフテュスって食のタブーとかあるのか? ほら、あいつ神様じゃん」
「エジプト神話は割とフリーだった気もするがな」
「そういやアフリカだろうが南米だろうが、暑い地方の人は甘いものが好きとかってテレビでやってたな。それくらい栄養取らなきゃやってられないらしいけど。余裕があったらフルーツ……はお高いから、適当な缶詰とバニラアイスでも買っていけば良いか。ざく切りでも結構見栄えの良いちょい足しデザートになるし。女の子ならそういうの好きだろ」
「そこまでするならエジプト料理のマハラベイヤか、ロッズ=ビ=ラバン作ってやれよ……要はミルクプリンだ」
「専門的なのは俺には無理‼︎ てか法水お前何ヵ国料理作れんだ⁉︎」
「時の鐘にやって来る奴の故郷の料理作ると喜ばれんだよね。勿論スイス料理が一番得意なんだが、ちなみに一番苦手なのは日本料理だ。あれ意味分かんねえわ。
「おい日本人」
「残念、俺は国籍スイス人」
「それ以前にお前達はそれで機嫌を取っているつもりかもしれないが、女性とカロリーの関係性について一度深く考えてみた方が良いな」
「え、何で? インデックスは普通に喜ぶんだけどな」
「ボスやロイ姐さん、スゥも普通に喜ぶぞ」
「……あの
「黒子? 確かにすげえ気を使ってるな。体重の増減が能力に影響するから。でも出す相手黒子じゃないしいいじゃん」
「分かった。お前はもう喋るな」
なんでだ。黒子相手なら気合も入れるし気を使うが、他の奴にまで必要以上の気を使う必要ってあるの? だいたいオティヌス身長一五センチ足らずでどれだけ食うつもりなのか。オティヌスを睨めば深いため息を吐かれる。釈然としない。
そんな感じでスイス料理がどうのこうの、デンマーク料理がどうのこうの、日本料理がどうのこうのと、無駄に多国籍な料理談義を終えた結果、上条の家という事で水炊き鍋に決まった。洋風の。面白味に欠ける。最後のシメだけはチーズリゾットを作る事を譲ってはやらなかったが。これはいずれ第二回料理選手権をしなければなるまい。第一回勝者の舞夏さんを交えてリベンジだ。
スーパーから外へと出ればすっかり日も暮れており、十二月の肌寒い空気が頬を撫ぜる。息が白むが、スイスの冬と比べれば随分とマシだ。
「しっかし意外だったな」
「何がだ人間?」
「……いや、普通にスーパーがやっていたのがさ。ついさっきまで僧正が彗星と合体して学園都市に降ってくる所だったんだぜ。どこかの誰かが落着を防いだって言ったって、空中で大爆発が起きてそこらじゅうのガラスが砕け散ったんだ。なのに随分世界っていうのは頑丈にできているんだなあって」
「だから言っただろう。お前が一人で背負い込む必要なんかどこにもない。世界を支える柱は一本きりって訳ではないのさ。現実的な力があるかどうかじゃない、ないから諦められるものでもない。微力だろうが空回りだろうが、みんなが必死に生きているんだ、この瞬間だって」
「なんだかんだと平穏を望む心が一番強いって事の証明のようでいいじゃないか。俺としても仕事がない方が疲れずに済むしな。柔らかな必死は過激さには劣るが心地はいい」
「かもしれないな」
普段が普段で過激な中で生きてきただけに、なんでもない日常こそが異常であり目新しい。今も仕事中ではある訳だが、時の鐘の仲間達といる時とも違う感覚。緊張の糸が張られていてもどこか穏やかなのは、『繋がる力』を握り込む上条が隣にいるからなのか。上条と共に突っ込む問題は過激ではあるが死の匂いはいつもより薄い。
だが、結局は今も仕事中なのだ。時の鐘が仕事で動いているという事は、残念ながら平穏に見えても平穏ではなく、つまり穏やかな時間など長く続いてはくれない。
カツンッ、と。平穏を小突く足音が響く。寒空の暗闇から伸びる影。上条から溢れる波紋が、オティヌスから溢れる波紋が大きさを増す。十メートルもない距離に立つ見知らぬ波紋。巨大な穴のような波紋を前に懐の
「やあ、
「だとすると、アンタは
「ははっ。その名を知っているって事は、やっぱりネフテュスはきみの所に転がり込んだか」
「それならどうする」
上条当麻と
「どうしようかな? ぼくは『魔神』に用がある。ぼくをこんな風にした『魔神』達に」
「それはお前の事情だろ。俺達には関係ない」
「だね。きみが留意する必要は一ミリもない。そして、だからこそ、こちらもきみに留意する必要だって一ミリもないんだよ」
交渉の余地もなく、決裂の言葉を上里翔流は口にする。緊張の糸が一気に引っ張られる。揺らぐ波紋に目を細め、深く息を吸い息を吐く。横切る閃光。通り掛かった車のヘッドライトが一瞬俺達の姿を照らし通り過ぎる。上条当麻も、上里翔流も、どこにでもいる平凡な高校生と
「違う。
手からスーパーのレジ袋を落とすのと同時、プラスチックの袋がアスファルトの地面を柔らかく叩く音を踏み潰し、大きな影が上里翔流の背後に落ちる。緩く手を握ろうとしていた上条はその動きを強張らせ、上里翔流もまた、大きなため息を吐く。その空間を新たに埋めるものは────。
「ナハハハハ────ッ!!!!」
空を震わせる大きな笑い声が一つ。上里翔流を覆い隠すような巨大な人影が一つ伸びる。赤っぽい瞳を満月の月明かりの下に輝かせ、隆起した肉体は山の如し。目測二メートルを超える筋肉の怪物。その肉のあるかも分からない隙間から溢れる波紋が心地悪い。肉の檻の内側に潜むモノがなんであるのか、嫌でも身の底を漂う魚影が訴えてくる。
『
『
二人と同じ三人目。緩く握られる豪腕が答えを示す。『強欲』、『
「ご苦労だぞ、
「あのさ……耳元でうるさいんだけど?」
「ケチくせえこと言ってんな上里ッ! これも戦いの
「話し合いは?」
ジョーカーにはジョーカーを。ワイルドカードにはワイルドカードを。
上条と合わせて大地を蹴ると同時、真正面から二つの影が突っ込んでくる。スポットライトなど必要ない。月明かりだけが落ちる暗闇の中で四つの影が激突する。