時の鐘   作:生崎

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幻想 ②

「「「お────っ!」」」

 

 昼下がりの公園で少女達が感嘆の声を上げる。手を掲げる少女と、その先、空に浮かぶ一人の少女。

 

「スゴイよ! ルイコ、私紙コップ持ち上げんのがやっとだったのに!」

 

 と能力を使った少女本人が言うので、どうやら幻想御手(レベルアッパー)の効果は本物らしい。公園のベンチに座りぼーっとそれを眺める俺のことなど気にせず、レベルの上がった能力で遊ぶ少女達は大変楽しそうだ。公園に来るまでどこか落ち込んでいた佐天さんも、今はふやけた顔で喜びに打ち震えている。俺と違い超能力者になるために彼女達は学園都市に来たのだから、この姿こそ学園都市の学生らしいものだろう。

 

「法水さん! 法水さんは使わなくていいんですか?」

 

 何もせず椅子に座っているだけの俺に、佐天さんが嬉しそうに俺にも幻想御手(レベルアッパー)を勧めてくれた。無能力者、低能力者だった者が大きな力を使えるようになる喜びを俺にも共感して欲しいに違いない。優しい子だ。だがその優しさは必要ないと手でやんわりと断りの姿勢をとる。俺に効果があるとは思えないし、だってそれ実害あるそうだし。あまり大事になっていない学園都市を見るに危険は無さそうだけど。

 

「いいんです。俺は能力開発も受けてない一般人なので、ちょっと幻想御手(レベルアッパー)に興味があって効果が本当か見てみたかっただけですからね」

「能力開発受けてないんですか⁉︎ なんで⁉︎」

 

 うーん白井さんや初春さん、佐天さんの反応を見るに能力開発を受けていないというのは隠した方がいいのだろうか。毎度される御馴染みの反応からしてあまりよくないかもしれない。嘘の能力でも言ってみるのもいいがすぐにバレる気がするのでやめておこう。

 

「まあいいじゃないですか、俺にもいろいろあるんです。それより良かったですね佐天さん。どうですか能力者になった感想は」

「最っ高です‼︎ あたし、ずっとずっと能力者に憧れてて! もう……嬉しいいい!!!! って奴です!」

 

「見てください!」と言って佐天さんは自分の力を披露してくれる。佐天さんが両手を掲げれば、小さな旋風が巻き起こり公園に散らばった葉っぱを巻き上げた。「幻想御手(レベルアッパー)を使ってもこれくらいしかできないですけど」と縮こまって佐天さんは言うが十分凄い。俺には逆立ちしたって同じことはできないのだ。

 

「いや凄いですよ。見事だ」

「えへへ、本当はもっと白井さんや御坂さんみたいにバーっと凄い能力使いたいんですけどね」

 

 御坂さん。佐天さんの口から急に出てきた御坂さんという名で凄い能力者となると、学園都市第三位の超能力者(レベル5)を思い浮かべてしまうが、今はそこに突っ込むこともないだろう。

 

 少し気にはなるが。

 

 佐天さんの言う通り目に見えて誰もが凄いと感じる能力を使いたいと言う気持ちもわかる。佐天さんもそう言っていることだし、こうなると少し実験染みたことをしたくなってしまう。

 

「でしたら普段よくやるようなことをとりあえず能力でやってみてはどうでしょうか。漠然と能力を使うよりもその方が上手く使えるでしょうし訓練にもなるのでは?」

「そうですかね?」

「もう能力は使えてるわけですし、一度コツを掴めば自転車に乗れるようになるのと同じく一気にレベルが上がるかもしれませんよ」

 

 勝手な予測ではあるのだが間違ってはいない気がする。超能力の源は『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』という言わば超絶拗らせた激しい思い込みらしい。能力開発は受けなくても、理論はちゃんと学校で習っている。であるならば、普段やってる何気ないことも佐天さんの場合手も触れずに出来るのだと一度脳に定着してしまえばより上手く能力が使えるはず。ただこの場合日常生活にしか使えないしょぼい能力になってしまう気もしないではないが。

 

 別に研究者でもない俺の口から出まかせ的なアドバイスに、佐天さんは本気で「うーん」と悩む姿勢を見せる。少し可哀想な気もしないでもない。だがもう幻想御手(レベルアッパー)の実験台になってもらっていることだし今更だ。

 

 少しの間佐天さんは悩んだ後、何か納得したように小さく頷くとスッと腕を前に出す。何をする気なのか少し楽しみだ。佐天さんはゆっくりと息を整えて、次の瞬間サッと腕を動かした。その動きは洗練されていた。やり慣れた動きと言っていい。ただそれは攻撃的な動きというわけではなく、ただなにかを払うような動き。

 

 なにが起きるのか。急に突風が吹いたり竜巻でも呼んだのかと少し期待したが、特になにも起きない。肌に感じる風は佐天さんが能力を使う前と変わりなく、失敗したのかと思ったが、少し離れているところにいる佐天さんの友人三人の内、スカートを穿いている子の絶対領域が絶対ではなくなった。つまり勢いよく、それはものの見事にめくれ上がった。

 

 うん。意味分からん。ただ少なからず分かったこともある。学校で青髪ピアスと呼ばれているそれはアダ名としてどうなのかという奴がスカートの絶対領域について力説したことがあったのだが、その時はよく分からなかったが今理解できた。やはりスカートというのは見えるか見えないかでヒラヒラしてる方がいい。こう勢いよくダイレクトにその神秘の中身を見せられても、なんの欲情も湧き上がってこない。えらくシュールで、ただ年相応な下着だなといった感想を抱くくらい。それにしても佐天さん普段やってることでやってみようと思うのがスカート捲りって……、思ったよりも業の深い少女だな。

 

 スカートが捲れあがった少女は、悲鳴を上げながら慌ててスカートを抑えつけ俺と佐天さんの方を目尻に涙を溜めながら殺人鬼のような目で睨み始める。これ俺が悪いの? 謝った方がいいのか褒めた方がいいのか悩む俺と、冷や汗をダラダラ流す佐天さんを少女はしばらく見比べて、

 

「ルゥイコぉぉぉ‼︎」と佐天さんに向かって激走し始めた。良かった許された。

 

「ごめーんマコちん! でもやったあ! あたしコツ掴めたかも! 見てましたよね法水さん! あたしスカートも捲れましたよ!」

「見てた見てたバッチリと」

「死ねぇぇぇ‼︎」

 

 佐天さん達四人の中で一番大人しそうな子だったのに、死を吐きながら般若の形相で逃げる佐天さんを追っている。見ている分には面白いのでその鬼ごっこを俺はしばらく眺めていた。

 

 

 ***

 

 

 白井さんと初春さんに手を貸して幻想御手(レベルアッパー)に手を出してから三日が経とうとしていた。アレから何か劇的に日常が変わったかといえばそんなことはなく、小説や漫画のようにドラマチックにはいってくれない。一度手伝ったのだし次も行けるかと風紀委員(ジャッジメント)の支部へと顔を出しても、白井さんからお断りされて追い出されてしまった。白井さん的にやはり風紀委員(ジャッジメント)以外が関わるのはあまりよくないと思っているようだ。初春さんは何か言いたげだったが、援護射撃が来ることは無かった。

 

 それに加えて、先日のボヤ騒ぎの文句の一つでも言ってやろうといなくなった隣人を待っているのに全く帰ってくる気配がない。しかもその隣の部屋にいるはずの土御門までもが最近姿をくらましており、俺の知らないところで随分楽しいことをしているようだ。

 

 そんなわけで一人寂しい俺のここ数日だが、新しいことも一つ増えた。佐天さんを含めた四人の中学生。佐天さんへのアドバイスが思いのほか上手くいってしまったおかげで、彼女達の夏休み中の能力補習の手伝いをする羽目になった。

 

 俺は能力者でもないし研究者でもないため最初断ろうと思ったのだが、幻想御手(レベルアッパー)の経過を見たいのと、引き受けなければやることがない。夏休み三日目でそれは非常に困るので結局引き受けることにした。

 

 とはいえ頭のよさそうな科学的な見地など俺は持ち合わせていないので、せいぜい出来ることと言えば傭兵の視点でどう戦いに使えるかと考えることしかできない。その結果能力を使用した護身術講座みたいな感じになってしまったのだが、これが意外と好評だった。俺は自分の身の上を語っていないせいでどうも武術の心得がある武人と彼女達は勘違いしているようだが、別にそれで困るわけでもないのでよしとしている。

 

 そうして今日で三日目なわけだが、幻想御手(レベルアッパー)を使って以降別段何か変わったことがあるようには思えない。この二日間目に見えて発現した能力を彼女達は楽しんでおり、特に不調を訴えることもない。白井さん達は実害があると言っていたがその兆候も見られず、どんなものか知りたかったので白井さん達の風紀委員(ジャッジメント)支部にクラッキングを仕掛けようとしたのだが、やったら強固な防壁が張り巡らされており潜る前に俺は白旗を振った。風紀委員(ジャッジメント)のシステムの守りがあれだけ固かったのは予想外だ。誰が作ったのか知らないが、うちに来てくれないだろうか。

 

 前の二日と同じように第七学区にある公園の椅子に座り佐天さん達を待つ。煙草が吸いたいが、白昼に堂々と吸うほどの度胸が俺にはない。誰かに見られればまた誤解されるのは目に見えている。口をムニムニと動かし煙草を吸いたい欲求を誤魔化しながら公園内の時計を見れば、もう佐天さん達が来る時間だ。

 

 公園の外に目を向ければ、向かって来る機械化された学園都市の無人バス。一秒の遅れもなく公園前のバス停に停車する。その中に佐天さん達の姿も見える。しかし、いつもと様子が違う。

 

 おかしい。

 

 いつもなら四人が元気よく手を振ってくれるのにバスの窓から見えるバスの中には三人の姿しか見えず、その三人も何かを見て慌てている。三人の顔に浮かぶ驚愕の表情が只事でないことを知らしめていた。

 

 停車したバスは、いつもなら乗降りする客のために少し停車するだけで出て行ってしまうのだがその気配はない。バスが止まったことにも気が付いていない様子の三人に何かあったのか聞くために小走りでバスの中へと飛び込めば、これまで目に映っていなかった四人目がバスの床に横たわっていた。

 

「離れてください」

「法水さん!」

 

 俺が声を掛けたことによってようやく佐天さんは俺に気が付いた。それに返事はせずに、倒れている子に近づいて様子を見る。

 

 顔色が悪いというわけではない。脈もある。呼吸も乱れていない。眠っている。そんな風にしか見えなかった。

 

「佐天さん、いったいどうしたんですか?」

「わ、分かんないです。アケミが急に倒れて……」

「なるほど、とりあえず救急車を呼びましょう。増田さんお願いします。これはおそらくですが幻想御手(レベルアッパー)の副作用です」

「え……」

「佐天さんは風紀委員に連絡を。白井さんたちが幻想御手(レベルアッパー)を追っていましたから応急処置のような手を教えてくれるかもしれません」

「あ……あの」

「佐天さん大丈夫。命に別状はないですよ」

 

 なるべく優しい笑みを浮かべて佐天さんを宥める。他の二人にも同じように声を掛けた。白井さんから実害という言葉を聞いた時から何かが起きるとは思っていたが、思ったよりも起こった事態は静かなものだ。一般人から見て俺も大分非道い奴だとは思うが、これでまた幻想御手(レベルアッパー)のことが一つ分かった。

 

 麻薬の禁断症状や、毒を受けたように血を撒き散らすわけでもない静かな副作用。それが逆に不気味だ。製作者は何故こんなものをばら撒いたのか。能力者の能力強度を上げ、少しすると眠りにつく。何がしたいのかよく分からない。が、だからこそ必ず特大のなにかが幻想御手(レベルアッパー)には潜んでいる。規則性があるのに何か分からないものが一番危険だ。それはこれまでの傭兵生活で嫌という程知っている。

 

「大丈夫です‼︎」

 

 考えに没頭していた俺の耳に、聞いたことのある声の叫び声が飛び込んで来た。聞き覚えのある優し気な声は初春さんの声で間違いない。そちらを見れば声の発信源は佐天さんの持つ携帯から。制服が同じだからもしやと思っていたが、佐天さんは初春さんに連絡を入れたらしい。

 

「私の親友なんだから‼︎」

 

 話を聞いていたわけではないので全体は分からないが、どうやら初春さんが佐天さんに喝を入れてくれているようだ。スピーカーモードでもないのにバス内に響く初春さんの声。どれだけ感情がこもっているかは声の震えでよく分かる。佐天さんの頬に流れる雫の跡からして効果は抜群。幻想御手(レベルアッパー)を持って来た佐天さんは大分責任を感じたのだろう。さっきの俺との受け応えでの動揺からそれは手に取るように分かった。まあこの事態は何かあると分かっていながら使うことを止めず、むしろ後押しした俺の所為によるところが大きいのだが。

 

 佐天さんと初春さんの話がひと段落するまで待ち、佐天さんの携帯から「今どこに⁉︎」と聞こえて来たところで俺は佐天さんの肩に手をおいた。

 

「初春さん、場所は第七学区にある公園ですが、救急車を呼びましたので大丈夫です。佐天さん達が倒れてしまう前にアケミさんと一緒に救急車に乗って病院に行けば安心でしょう」

「法水さん⁉︎ 佐天さんたちと一緒にいるんですか⁉︎」

「ええ、ここ数日間は暇でしたので流れでね」

「佐天さんちょっと」

 

 初春さんが佐天さんを呼んで電話口で何かを話す。少しして佐天さんが俺に携帯を渡してきた。その際に真正面から佐天さんの顔を見ることになった。目尻を赤くした少女の顔。少しだけ湧いてきた罪悪感を押し潰すように受け取った携帯を耳に押し付ける。

 

「なんでしょうか初春さん」

「……法水さん知ってましたね」

 

 何がとは聞かない。幻想御手(レベルアッパー)の副作用のことだろう。

 

 何が起こるのかは知らなかったが、何かがあることは分かっていた。俺の後押しをしてくれた時とは違う初春さんの低く鋭い声。これが初春さんの本質なのか。彼女も伊達に風紀委員をやっていないのだろう。

 

「知ってましたよ」

「……でしょうね」

 

 怒られると思って少し覚悟をしていたのに、返ってきた初春さんの声は弱々しく、少し拍子抜けしてしまう。

 

「それで要件は?」

「法水さん、私はあなたを許しません。知ってたのになんで佐天さんたちを止めてくれなかったんですか。白井さんから助けてもらったって聞いた時、いい人なんだと思ったのに、あなたは非道い人です」

 

 声は荒げず、ただ淡々と俺を否定してくる初春さんの言葉。大きな声で怒鳴られるよりもするりと俺の心を傷つける。それがあまりに痛いから口端が自然と上がってしまう。

 

「以上ですか? では」

「私調べたんです。法水さん言いましたよね、学園都市に来たのに能力開発を免除されていると。いくらなんでもおかしいと思って一度法水さんのパスポートを調べた記録を使ってもっとよく調べたんです」

 

 いけない。少し楽しくなって来た。歪む口元を隠しきれない。

 

「法水さんは傭兵なんでしょう? それもすごい。調べたら世界最高峰の傭兵部隊に辿り着きました。最初は信じられませんでしたけど、能力者を一方的に倒したという白井さんからの話にそれで納得できました」

「それで?」

「法水さんは仕事で学園都市に来たんですね。だから幻想御手(レベルアッパー)に首を突っ込んでいる。依頼主は国際連合。驚きましたよ」

 

 いや驚いたのはこっちだ。こう言ってはなんだが、俺は別に傭兵であることを隠してはいない。時の鐘は魔術結社のように隠されたものでもないので、普通の一般人でも俺の名前を根気よく調べていけば普通に時の鐘所属の兵士であるということを知ることができる。バレればそれで構わない。

 

 だが依頼主は違う。

 

 何より相手は国連だ。どう調べたらそこに行き着けるのか。俺が幻想御手(レベルアッパー)に手を出しているのは個人的な実験であり、少し的外れなところはあるが初春さんのことを正直舐めていた。

 

「いやよく調べましたね、驚きました。それで俺を脅しますか?」

「まさか。私は白井さんみたいに強くない。だからわざわざ法水さんみたいな凄腕の傭兵を脅そうなんて思えませんし、国連にだって喧嘩を売る度胸なんてありません」

「そうですか? そんなことないと思いますけど」

「ありますよ。だから」

 

 そこで初春さんは一度言葉を切った。その先を言うことを迷っているのか、電話の先で息の震える音がする。

 

「法水さんを雇います」

 

 そして続けられたのはそんな言葉。

 

「ふふ、はっはっは! 雇う? 初春さんが俺を?」

 

 それがあまりに可笑しかったので思わず俺は笑ってしまった。バスの中なんて御構い無しに。

 

 バスの乗客と佐天さん達の驚いた顔が俺に向けられるが気にしてる余裕はない。どう考えを巡らせればそんな結論に行き着くのか。やはり学園都市にいる学生は頭がおかしい。十代の少女に雇うなんて言われたのは初めてだ。

 

「本気ですよ」

「いやいや言っておきますけど俺を雇うとなるとかなりお高いですよ。きっと初春さんじゃ払えないと思いますけど」

「大丈夫、絶対払います。だから法水さん本気で力を貸してください。それで佐天さん達を助けてくれたら許してあげます」

 

 少し怒ったような声で初春さんはそう言い切った。いやいや、初春さんは迷っていたのではない。もう俺を雇うと結論を出し、覚悟を決めていたのだろう。力強い初春さんの言葉がその証拠だ。

 

 しかし、初春さんが俺を雇うとなるとこれまでと話が違ってくる。

 

 これまでの俺の動きは個人的に国連に頼まれた仕事の中でどこまで動いていいか試すためのものだったが、初春さんに雇われれば全力で初春さんに頼まれたことを実行することになる。初春さんの手は悪くない手だ。国連に任された仕事はかなり長期的なものであるため、その間に別の仕事を請け負うことを止められてはいない。もし止められていたら初春さんの依頼は速攻で蹴るのだが。

 

「で? 依頼の内容は?」

「今から幻想御手(レベルアッパー)事件が解決するまでの間私に力を貸すこと」

「それは時に護衛、時に殲滅、初春さんの手足となって働けってことですか?」

「そうです」

 

 悪くない。傍観者でいろという国連の仕事と比べて随分と楽しそうだ。元々幻想御手(レベルアッパー)の件には最後まで関わってみようと決めていたこともある。初春さんの依頼を受ければ大手を振るってこれまで見ていることしか出来なかった学園都市の面白そうなお祭りに参加できる。

 

「どうですか」

 

 初春さんは不安そうに聞いてきたが、どうって決まっている。こんな面白そうなこと見逃す方が馬鹿だ。金さえしっかり払って貰えるのならば、仕事を断る理由もない。学園都市に来てから退屈だった日常が、ようやっといい方向に転がり出した気がした。頭の中でボルトハンドルを起こした時のガシャリと虚しい金属音が響く。

 

 決まりだ。

 

「スイス特殊山岳射撃部隊『時の鐘(ツィットグロッゲ)』所属、法水孫市。依頼を受けようお嬢さん」

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