「で? ラルコ=シェックってどんな奴なんだよ」
再び海上。天草式の『上下艦』が『女王艦隊』へ向けて北上していく中、上条当麻が暇になったからか聞いてきた。傭兵という職業上アラン&アルドの方が奴の表面だけでも上手く説明できるのではと思うのだが、私が目を向けると二人で片手同士を掛け合わせてバツ印を作り、見せつけるように取り出した携帯で電話し始める。それでも片方余るだろうに。仕方がないので一度周囲を見回して、天草式や禁書目録の目まで私に集中しているのを確認し、ため息を吐いてから口を開く。
「『
「狂人て……」
私を見る上条当麻の目が細められる。人を狂人を見るような目で見るとは。私とラルコは同じ『
「奴は出向いた先の人間を基本全滅させる。子供も大人も、異教徒もローマ正教徒も関係なくな」
「ローマ正教の奴もって、それって良いのか?」
「良いわけないだろう。だが、そういう仕事を任されるのがラルコだ。個人ではなく、土地に対して送られる。不浄な土地を清めるという名目でな」
日本にいたと言われる隠れ切支丹のように、土地に巧妙に隠れる新興宗教やカルトの者達、それを殲滅するのがラルコの仕事だった。方法はどうあれ、必ずそれらを炙り出し鏖殺するのがラルコという男。『
「そんなんでよくこれまでローマ正教も生かしておいたのよ」
「馬鹿と鋏は使いようだったか? アレはアレで使いようがあったという事だ。だが、許されていたのもそれが教皇から下された命であったからこそ、それを破ったのであれば、許されるわけもない」
建宮と呼ばれていた男の疑問も最もだろう。『
「……殺すのか?」
「それしかない。ラルコが一度剣を抜けば、周りが全滅するか、奴を殺すまで終わらん。それにそれが命だ」
「だけど……」と言って上条当麻は口を引き結んだ。それを見ていたアラン&アルドが、「「若いわねぇ」」と呟く。誰も死なないのならそれに越した事はない。だが、平和主義や非暴力を口にでき、本当に実行できるのは強い者だけだ。人間は誰もがそうではない。私も。強者だけが命という儚いものを好きに扱う事ができる。それを切り裂く事も。またそれを守る事も強いからこそできる事。弱者はその繊細なものを零さないようにする事は難しく、私も強く握り潰す事しかできない。相手の命がどれだけ強固か分からないから、大いなる存在に示された全力の力で私はそれを握るだけだ。
「まあそいつはお前さんに任せるさ。ただ、もしもかち合った時のためにラルコの魔術が知りたいのよな」
「奴の魔術か」
ラルコ=シェックの魔術がどんなものかは分かっている。が、それを異教徒に教えて良いものか。少し思案し、頭の中に溜まったモヤを吐き出すように息を吐く。どうせゼロかイチか。ラルコが死ねば関係ない。手を組むと決めたならば、最低限の譲歩は必要か。
「ショイヒツァーの竜」
短く言葉を切る。その言葉に反応したのは一番に禁書目録、天草式の建宮と呼ばれた男と他数人もそれに眉を顰めた。その土地の風土に合わせる事に特化している魔術師集団と言うだけあって、地方伝承にも詳しいらしい。ただ、十万三千冊の魔導書を保有する禁書目録の側に常にいるはずの男が一番首を傾げていた。そんな事でよく務まるものだ。
「スイスでは『
「なんて言うか『
「元が傭兵だからな。鎧と相性が良いからだ」
日本の武者も縁起物として鎧に蜻蛉の飾りをあしらっているものがあったり、欧州にも剣の柄に竜を、肩当てに鷲を、といった風に象徴となる生物を装飾として取り入れる事はよくある事だ。修道者としてより先に傭兵として起用されたのが『
「で、その『
「伝承では蜥蜴、又は前足のついた蛇のような体に猫の頭を持つと言われている。毒を吐き、相手に目眩や頭痛を与えるとな。その通り奴が毒を吐けば頭痛や目眩、痺れを感じる」
「いやいや毒って、あれか? プロレスの技だかの毒霧だっけ? そんな感じのイメージで良いのかよ」
良いわけがない。
「それではただの技だろう。毒を吐くとは、相手に嫌みを言う、毒づく事を差す」
「は? つまり悪口言うだけで効果あんの⁉︎ どんな魔術だよ……」
「正確には奴の言葉が嫌味だと理解してしまったらだな。言葉の意味を理解しない能天気な奴には効かない」
「なら耳栓などで聞こえないようにすれば良いのでございましょうか」
「一対一ならそれもアリかもしれんな。だが相手はラルコだけというわけではない。それに加えて『女王艦隊』の中に突っ込めば乱戦になる事は必須。味方と意思疎通できなくなる方が問題だ。そうでなくとも、ラルコ自身がまず強い。奴の使う剣はショーテル。盾を避けて相手を斬りつける剣技に特化している。乱戦になり奴の姿が消えた時指示が聞こえなくてはどうしようもない」
『
「そうするとなると、そいつが口を開く前に斬るのが手っ取り早いのよな」
「できるならやってみると良い」
大剣を肩に担ぐ建宮、フランベルジュ、波打つ独特の刃を持つ大剣。普通の剣と違い、切り口は抉れたような形状となる。『
「まあこうなったら出たとこ勝負よ。ここら辺で良いか。そろそろ始めるのよ」
周りを見れば各々闘いのための準備ができたらしい。オルソラはアニェーゼがいつも持っている杖を持ち、シスター・ルチアとシスター・アンジェレネも見慣れた武器を手に持っている。建宮がポケットに手を突っ込み取り出したのは輪ゴムで纏められた紙の束。それを海に向かってばら撒くと、海水に触れた途端に帆船に化ける。不思議なものだ。これが東洋に伝わる陰陽術という奴なのか。私達が使う魔術とは大分形式が違って見える。水面に揺れる木製の帆船達はガチャガチャと音を立て、『上下艦』にもぶつかり軋む。
「なぁ。かつてイギリス海軍が、無敵艦隊と恐れられたスペイン海軍をどうやって沈めたか知ってるか?」
「「フランシス・ドレーク船長ね、良いわよねー、海の男って」」
「貴様達はまだ着いて来る気なのか? 様子見なんだろう?」
そう言えば、アラン&アルドはそっくりの顔を同時に歪めて大きく笑う。
「「話が変わったのよ。ここに潜入部隊がもういるわけだしね。私達が一緒に居ないと大変な事になるわよ?」」
海原に繰り出しているとは言え、航海士など居ても居なくても変わらないと思うのだが、アラン&アルドのにやけた顔が何より不気味だ。
***
ゴドン‼︎
と遠くの方で空が弾ける音がする。火船と言うらしい。無人の小舟に火薬を詰めて突っ込ませる。建宮が海上にばら撒いた木製の帆船達は、何人かに分けて船に接敵し乗り込むためのものではなく、武器であり囮。
「気づかれたか……」
建宮の肩が小さく跳ねる。それを合図とするように、今まで大人しかった天草式の面々が慌ただしく動き出す。
「複数の射線軸が上下艦を狙っています!」
「縦軸、横軸ともに対応! 予想よりも早いです! このままでは!!」
「最悪よな……」
火船に紛れて海中を潜航していた『上下艦』が捕捉された。空を切った音が水の中へと消え、水柱を月へと飛ばす。濁った爆音が水面に広がり、私達は氷の船へと手を伸ばす。『上下艦』も又囮。火船の中に一隻ただの船を紛れ込ませそれに全員乗り込んでおく。『上下艦』に相手が気をとられている間に敵船に乗り込む二重の囮。よく考えるものだ。
「各艦の制圧は考えるな! どの道、数では圧倒的に負けているのよ! こちらは相手の核だけ潰す事を考えれば良いのよな!!」
「旗艦……『アドリア海の女王』は!?」
上条当麻の声に、全員の目が旗艦を探そうと蠢きだす。そしてそれはすぐに見つかった。およそ数百メートル先に聳える青い山。その手前に広がる十数の船の姿。
「艦から艦への橋はこちらで作ってやる! とにかくお前さん達は旗艦へ──」
『第二九、三二、三四番艦の乗組員は至急退避を、間に合わないなら海へ! これより本艦隊は前述の三隻を一度沈めたのちに再構築し直します!!』
建宮の叫びがより大きな声に掻き消される。『女王艦隊』より響く声。多勢に無勢、数で勝っているからこそ、こちらに情報が漏れる事など気にせずに物量で押しつぶす気だ。建宮が再び紙の束をばら撒けば、船にはならずに橋に変わる。それに足を出した途端に、飛んできた砲弾が青い船体を貫く。船が大きく揺れる前に橋にかけていた足を踏み込み大きく飛ぶ。宙を舞いながらラルコの姿を探すが、まだ目には映らない。先の船に足を落とすと、背後から砲撃によってへし折れたマストに背を押されるように禁書目録と上条当麻が橋から転がって来た。その更に後ろから、マストを伝ってオルソラとアラン&アルドがやって来る。
「ちくしょう! さっさと『アドリア海の女王』を潰すぞ!!」
先に進もうと足を出した上条当麻の目の前に壁が聳える。高くはないが広い壁。全員が全員黒を基調とした修道服に黄色の袖やスカートを取り付けたシスター達。剣、斧、杖から聖書や松明まで、手に持つ武器を掲げて突きつけて来る。
困った。
私はラルコの相手はできるが、他のローマ正教の者となると別だ。『
「……、アニェーゼがどうなるか分かってんだろ。それでも協力する気はねえのか!!」
その言葉を聞いてもシスター達は眉すら動かさなかった。私が神の命で動くのと同様。彼女達も彼女達が信じるもののために動いている。
「あれは、きっと裏返しでございますよ。ご本人達も気づいていないのでしょうね。ですけど、彼女達は確かにアニェーゼさんを認め、その下についていた方々です。リーダーならこれぐらい乗り越えてくれると信じているからこそ、辛く当たっているのでございましょう。打ち破ってくれる事を、どこかで願いながら」
そう言いながらオルソラはチラリと私に目を寄越した。まるでシスター達と私は同じだと言うように。それに答える事もなく、オルソラの視線を受け流す。それでは私が救いを求めているようではないか。肩に掛けていた剣の柄を握り振り抜く。誰を斬ったわけでもない。両手で扱う事を考えられて作られたツーハンデッドソード。それを片手で振るい、空が裂ける。僅かにシスター達の足が下がった。それでも顔色は変わらない。強固な意志、悪くない。
私が一歩足を出す先で、頭上を飛び越えてシスター達に飛来する馬車の車輪。修道女の一人がそれを投げた者の名を呼ぼうと口を開いたが、言い切る前に車輪が弾ける。
私やオルソラ達を避けて降り注ぐ大量の細かな木片。シスター達の体を細かく裂き、隊列が大きく乱れた。
「こちらへ!!」
船の縁に降り立ったシスター・ルチアとシスター・アンジェレネが叫ぶ。その先には木でできた橋がまた別の船へと続いている。
『第四一番艦の乗組員は至急退避、不可能なら海へ! 本艦隊はこれより前述の船を沈めたのち、再構成し直します!!』
私達が橋の元へ足を向けるよりも早く再び『女王艦隊』から声が響く。僅かに顔を歪ませるシスター達。おそらく狙いが今いるこの船だからだろう。「早く!」そうシスター・ルチアが叫ぶが、その声に背を押されるのは私達だけでなく数十のシスター達もだ。船の破壊に巻き込まれるのも気に留めず、私達の行く手を阻もうと回り込んだ。
それを追って遠くの帆船の砲台が動く。味方を巻き込もうと気にもしない。ラルコ=シェックの性質を体現したような艦隊だ。舌を打つ私の横で、目に映るのはつまらなそうな顔をしたアラン&アルド。目はシスター達でも『女王艦隊』でもなく虚空を見つめている。
「どうした?」
「「来るわよ」」
何がだ? と聞く時間はなかった。空間が歪んだ音がした。空を捻り、大地を揺るがす音の流動。目の先にある『女王艦隊』の帆船の一つを飲み込んで、青い結晶のかけらを黒い夜空にばら撒いていく。『女王艦隊』の砲撃を超えた一撃。ミサイルが落ちたような状況に、誰もの目が点になった。
「な、なんだよ⁉︎ 新手の魔術師か⁉︎」
「そんなはずないんだよ! だってそんな気配は全然!」
禁書目録が違うと言うならば違うのだろう。魔術師達が口を歪めて見つめる先には、船体の大半を吹き飛ばし、海の底に消えていく氷の戦艦。それを見つめて唯一笑うのはアラン&アルド。
「「いや凄いわね〜、アバランチM-001。ボスもよく当てられるわね」」
「
私の問いにアランとアルドは何を言っているのかと言うように揃って肩を竦める。
「「国の要請だもの、ボスだけじゃないわ。ロイもガラのジジイもクリスも来てるわよ。ハムもゴッソもベルも。スイスに居たの全員ね。時の鐘の遠距離狙撃が来るわ。私達から離れちゃダメよ〜、死ぬから」」
そう言いながら携帯を二人は掲げた。携帯のGPS機能を使ってアバランチの射程圏外に外すためか。それが無くてもオーバード=シェリーが誤射をするとは、組織が違かろうとも思えない。『女王艦隊』の旗艦の近くに居た戦艦の一つをまた吹き飛ばし音が崩れる。異様な音だ。遠くから体全体を細かく震わせるような振動音。
「「アバランチシリーズに使われているのは特殊振動弾。近付いちゃダメよ。三半規管が揺さぶられて動けなくなるわ」」
時の鐘の決戦用狙撃銃。あの男が言うには、狙撃銃と言うよりは大砲にしか見えないという話だったが、決戦用と名付けられただけの性能があるらしい。確かに『女王艦隊』の戦艦を一発で粉々に崩す威力。特殊振動弾と言うだけあり、細かな振動は高温を生むのか、着弾したあたりの海が熱によって水蒸気を上げている。
「おいおい、これが法水のいる組織なのかよ……、あいつひょっとして思ったよりもヤバい奴?」
「何を今更、それよりも『女王艦隊』の旗艦は狙わないのか?」
「「助ける相手がそこにいるんでしょ? ラルコもそこにいるなら下手に逃げないように場を整えるために標的から外してもらったわよ。それに今回殺しはなしだから。ローマ正教徒を百人も二百人も殺したらバチカンと繋がりがある私達からしても問題だもの。名目上はイタリア軍との演習よ。こんな大艦隊が海上にいるからイタリア軍と見間違えたって設定ね」」
そんないい加減な言い訳が通るのか。木の橋を反対側から渡りこっちの船に乗り込もうとやって来ようとしていたローマ正教の男の肩が弾け海に落ちる。陸から何キロあると思っているのか。時の鐘、世界最高峰の狙撃手集団の本領発揮か。時の鐘の者達は近距離にいても面倒だが、遠距離こそ奴らの最も得意とする戦場。超遠距離から時の鐘の狙撃。それを警戒した途端に、内にいる私達が動きやすくなる。私達に気を割けば狙撃の餌食。時の鐘たった十数人の登場で戦局が変わった。世界最高峰の傭兵集団の名は伊達ではない。面倒な奴らだが、今は頼もしくはある。
「行くぞ! この機に一気に旗艦へと渡る!」
「「撃たれたくなかったら私達から離れちゃダメよ、特にローマ正教の格好をした三人はね」」
私や禁書目録程目立つ格好なら撃ち損じる事もないだろうが、オルソラ達は後ろ姿で言えば他のローマ正教の者と見た目が大差ない。三人は大きく頷いて、アラン&アルドに張り付くように木の橋の上を渡って行く。その間も吹き飛ぶ『女王艦隊』の戦艦達。海上ならば無限に復活できたとしても、乗組員は残らず海に投げ出され、中身のないハリボテでしかない。コレを起こしているのが、決戦用狙撃銃を持ったオーバード=シェリーほぼ一人で起こされているというのだから凄まじい。時の鐘の上位数名は、魔術師達も危険視する存在。特別な力もなく人の力だけで状況を覆す。奇跡もへったくれもない。現実的で恐ろしい。自分達が持つ想いだけで突き進む者達、金で動く者達、勿体ない連中だ。
船を渡る障害は消え去った。陸と味方の乗った戦艦どちらを狙えばいいものかと右往左往する砲台はもう役には立たない。旗艦までに渡る船はもう数隻。先を進むたびに、どこに居たのか散り散りになっていた天草式の者達も集まって来た。身のこなしが軽い。『
最後の橋を渡り終え、『女王艦隊』の旗艦に降り立つ。
周りの戦艦よりも大きく、船というより一つの寺院が海上に浮いているようにさえ見える。無骨な周りの戦艦と違い、凝った装飾を施された舟。降り立った先には人の姿はなく、これまでの騒がしさが遠のいたように感じる。砲撃音が周りを囲み、決して落ちてこないが、一種の結界を形成しているようだ。
「来たね、
その中に癪に触る甲高い声が落ちて来た。戦艦の上に乗った宮殿のような頂上に渦を巻いた金髪が光る。退屈そうに寝転がっていた体を起こし、黄色く輝く二つの瞳。ぱっと見初老の男のように見えるが、少年のようにも見える。
「全く退屈だったょ。ここの連中は供物として程度が低い。アニェーゼ=サンクティス、彼女くらいかな、上玉は。でも待った甲斐はあったょ。『
気軽にふらりと頂上に立ち、スキップでもするかのように青い氷上に足をつける。その動作が一々癪に触る。そうなるように動いている事は分かっている。だが、それを補って溢れ出るラルコの嫌悪感。同じ『
「ラルコ=シェック、教皇命だ。その首、自分から差し出す気はあるか?」
「そんなつまんない事するかょ、これも神が俺に与えた恩賞だ。最高の晩餐を振る舞える」
「ただ目に付く者を殺す事が神命だと?」
「そうとも、
「生憎そんな祈りは持ち合わせてはおらん」
ラルコが腰にかけた剣を引き抜く。ショーテル。大きな鉤爪のようなその剣を。てっきり乱戦に紛れて首を狩ってくるものと思っていたが、真正面から待ち構えているとは予想外だ。この人数を相手にして勝てると思っているのか。いくらラルコといえこの人数は厳しいはず。
「上条当麻、先に行け。その右手、気に入らないが、アニェーゼを引っ張れるのはその右手だ。ラルコ=シェックは私が斬る」
「え、でも」
上条当麻の呟きに合わせて、バキバキと氷を破るような音が響き、数十の氷の巨像が這い出て来る。シスター・ルチアとシスター・アンジェレネが押し込められていた部屋を守っていた氷の騎士。
「こりゃ参ったのよな、お前さんは先に行け。ここは『
「私がやる」
両手に握った剣を構える。握る。強く。私は剣、神の刃、その矛先の向かう先はもう決まっている。
「行くょ売女」
「吐かせ狂人」
土御門元春の暗部日誌 ①
困ったにゃー。マジ困った。なんでこうなっちまったんだ? 孫っちが木原幻生を倒したせいでシグナルの名が思ったより広まっちまった。まあ事前にオリアナ達に勝ったお祝いにバーっと情報バラまいたオレのせいなんだけどにゃー! アッハッハ! ……はぁ、孫っちだけならたまたまでいけたんだがカミやんまでいたからツーアウト。それにもう一つの暗部の組織も、与えられた人材がなんでアレなんだ? あの女と孫っちは仲悪いだろうし、あの男とカミやんは仲悪いだろうし、グループの最後の一人はマトモであってくれよ! じゃないと恨むぞアレイスター!