寮の自室、時計の秒針が時を刻む音だけが支配する中、机の上に乗った九月も終わり十月となった新聞を見下ろしながら咥えた煙草を上下に揺らす。口元で動く熱源を感じながら、口の端から紫煙を噴き出し灰皿へと煙草を押し付ける。心を押し潰すように煙草を持つ手に力を込めるが、それでも全てを潰すことは叶わず、どうしても口から外に漏れ出る。
「……くっくっく、くっはっは! 何度見ても笑えるな! えぇ? 学園都市からの正式発表見たか? ふざけやがってッ‼︎ 結局だッ! 悪い予感ばかり当たる‼︎ たまには良い予感の一つも当たってくれてもいいと思わないか? 当たった試しがない!」
「良い予感は所詮願望、悪い予感は経験から来る予測。そのくらいイチにも分かるでしょ」
「俺は別に正論が聞きたいわけじゃあない! お前こそ分かるだろうハム! だいたいなんで二日連続お前が定時報告の担当なんだよ! ボスはどうした!」
「それこそ分かるでしょイチ、そっちが忙しいよーにこっちも大忙し。未成年と年寄りは今は待機だって」
勿論分かってはいる!
ローマ正教、
『ローマ正教には『魔術』というコードネームを冠する科学的超能力開発機関があり、そこから攻撃を受けた』
新聞ではなく学園都市が世界に発信した詳細な報告書も見たが、中身は結局これと同じ。酷い内容だ。魔術を世間にバラした事ではない。それもそうだが、わざわざ後半部分に取り付けられている科学的超能力開発機関。これがいけない。
「百パーセント魔術側に喧嘩売ってやがる。この記事で怒らない魔術師の方が少ないだろうよ。それに全世界に向けて発信したのが余計に問題だ」
「そう言えばスイスでもニュースやってたね。魔術と呼ばれる科学がーって」
「ローマ正教は全世界に信徒がおよそ二十億人、だが、それ以外の五十億人ほどは違う。無宗教者は世界人口の割合の中で三位だと言われているから、十億人以上はいるだろう。その者たちからすればそうなんだーと納得して終わりだ。そんな考えが広まれば余計にローマ正教を怒らせるだけだ」
科学だの魔術だの俺からすればどっちもどっちの超常の力で終わりだが、比べたところでなにになる。科学こそ最も新しい宗教だと言う専門家もいるのだから、宗教同士仲良くすればいいのに。だが、ローマ正教は学園都市が『天使』を出したおかげで、それを非難する形で全世界に向けローマ教皇自ら言葉を発信するという超攻撃的対応。売られた喧嘩は大安売りで買われた。こうなってはどうしようもない。お互いノーガードで殴り合いだ。
それに加えて更に気に食わない事がある。
「しかも俺まで怒らせたいのか、これまで俺に直接なにも言って来なかった国連から直々にありがたいお言葉がメールで送られてきた。内容聞きたい?」
「そうだね、是非聞きたい」
「『なにやってたんだ、こういう時のために
「いざ責任を国連が問われた時にイチを生贄にする気だね。可哀想に」
「それだけ⁉︎ 可哀想でおしまいかよ⁉︎ いつニュースに俺の名前流れてこいつ戦犯とか言われかねないのに⁉︎」
「その件はボスもクリスさんもおかんむりだから任せとけばいい。それよりイチ、こんな状況だからこそ、イチは学園都市で待機」
口調も抑揚も変わらず、人形のように冷静なハムの言葉を受けて椅子に深く沈む。ある意味それは正しい。国連が強引な手段に出ても、ある程度は学園都市の中に居ればある程度へ凌げるだろう。ただし、そうなると問題がある。
「……ハム、国連からの依頼は終わりだろう? 俺だけここで休暇ってわけか?」
「そんなわけない。イチには学園都市に居てもらわないと困る」
「それは……なるほど」
戦争が始まってしまうなら、学園都市の監視という仕事は終わり。残された俺の役目は、暗部にさえおり、唯一科学側の内部にいる俺に科学側の情報を流せということだろう。国連にではない。他でもない時の鐘に。俺が学園都市に残るだけで、ほとんどの国よりも時の鐘は科学側の情報のアドバンテージが取れる。
「つまりやる事はこれまでと変わらないわけだ」
「そー、イチからの情報をこっちが国連に流すか流さないか。これは大事な仕事」
「ただ気になることがある。ハム、時の鐘はどちらにつく? もう決まってるのか?」
すぐに答えは返ってこず、沈黙に歯噛みする。時の鐘は傭兵だ。金が支払われ、力を貸すと決めたなら、どちらだろうと力を貸す。科学か魔術か。多重スパイなどやっている土御門ならば、こんな状況であろうともやる事は規模の違いはあろうとも変わらない。が、俺は変わる。魔術側に時の鐘がつくと決めれば、俺は学園都市の要人の暗殺をすることになるだろう。科学側につくならその逆。
それもこれも戦争を早急に終結させるため、時の鐘が求めているのは利益ではない。スイスが中立国であるように、一番求めるは平和。どちらが勝とうが、逸早くそれを手に入れるため。五分程の沈黙の後、ハムから返ってきたのは「まだ決まってない」という肩透かしなものであった。その答えに少々気が抜ける。
「どちらか片方につくか決められるほどどちらのことも分かってない。でも……イチは科学側についたら?」
「……なんで? 俺だけか?」
「だって学園都市にはともだちがいるんでしょ?」
言葉に詰まる。
科学側につくのなら、今の生活はあまり変わらないだろう。ローマ正教には親しい奴などいないのだし。だが、魔術側につくと決まれば、知り合いの多くが敵に回る事だろう。少なくとも、七人の
「……スイスにだっている。ドライヴィーとか、お前とかな。俺はどちら側かと問われれば時の鐘側だ。時の鐘の敵にはならないさ」
「あっそ、イチは変わらないね」
「あっそって……お前から聞いたくせに」
「どうせそー言うと思ってたもん。イチとボス、あとガラさんくらい、骨の髄まで時の鐘なの。わたしは目的が果たせるなら別に時の鐘でなくてもいいもん」
「あーはいはい、薄情だよなお前はな! この復讐者め、果たせるならっていつ果たせるかも分からないくせに」
「刹那主義者に言われたくない。それに果たせるまでは時の鐘にいる」
「じゃあ果たした後は?」
ハムにとって時の鐘は手段でしかない。科学者だったハムの両親を殺した殺し屋を見つけ復讐を果たすため。そのために世界各国の情報が集まり、一流の技術を学べる時の鐘にいる。だが復讐を終えた時どうするか。ハムの中でも未だ決めていなかったのか、なにも返って来なかった。
復讐。身に降りかかった不幸に対し、形あるものとして仕返しする事ができるということはそうそうあるものではない。俺にも俺を捨ててくれた両親というモノがいたが、母とは和解したが、わざわざ父に仕返ししたいとも思わない。どちらかと言えばどうだっていい。ただ、俺とハムでは事情が違うのだ。ハムは別に両親と仲が悪かったわけではない。
俺はハムの復讐譚を止めようとは思わないが、その結果ハムが死んでしまうような結末は見たくない。力を貸せるなら貸したいところ、ハムは数少ない戦友で親友で、日本風に言えば幼馴染だ。
「終わったら時の鐘に帰って来いよ、俺とボスとガラ爺ちゃんだけはきっとどこにもいかないぞ」
「そー? イチとか目を離したら死にそうだし、だって弱っちいもん」
「なあ、お前には優しさとかないの? 言い方ぁ」
「今更優しさとかイチにはいらない、それじゃあねイチ、ひょっとしたら近々一緒に仕事することもあるかもね」
「その時は全部任せた」
「ばーか」
凄い平坦な声で馬鹿にされたのを最後に通信が切れる。弱っちいとか……、本当のことだとしても言われると傷付く言葉があるということを知っておいて欲しい。学生服の上から懐にある分割された
それはきっと、これがこれまでの俺の集積だから。
通信装置のスイッチを切り、部屋の内部へと目を向ける。いつも部屋にいる木山先生の姿はなく、今部屋の中には俺と、そして揺らめくツインテール。換気のためか壁際まで歩き窓を開け、窓辺に寄り掛かった黒子さんは外へと視線を投げた。
「そんなわけで黒子さんよ、時の鐘も俺も今は変わらないらしい。まだ学園都市に居られるようだ」
「……そうみたいですわね」
呆れたように肩を竦めて、黒子さんにそっぽを向かれる。じとっとした目と尖っている唇。誰が見ても分かるくらいに不機嫌が滲み出ている。というか何故黒子さんは俺の部屋にいるのか。今日は特に会う予定などなかったはずだ。と言うより、御坂さんに飾利さん、佐天さんとの話し合いが終わってからというもの、やたら黒子さんが近くにいる気がする。
怪訝な顔で黒子さんを見つめていると、盛大に大きなため息を吐かれた。なんだよ。
「ここ数日、貴方の悪い予想が当たったせいで貴方荒れすぎですの。木山先生は枝先さんたちのところに避難、わたくしに様子を見に行ってくれと。下手に触れたら撃たれそうだよ、と木山先生はおっしゃってましたわよ?」
「そんなに? 別にいつもとそんなに変わらないだろ」
「そんなわけないでしょう」
即答で否定された。確かに世界が急速に動き出したせいで気は張っているが、そこまで露骨に周りに振り撒いていた気はないのだが。そう言われると学校でも上条と青髮ピアスはいつもより少し静かだった気がする。きっと土御門が休みだったこともあるだろう。
土御門はなんでも神の右席以外の侵入者と対峙していたら天使の爆撃に巻き込まれたとか。バチでも当たったのだろう。昨日電話で話した際、話せる相手がいないためか三十分に渡る愚痴を聞かされた。が、俺も同じぐらい愚痴ったので、まあおあいこだ。
仕事の時は目が垂れているそうなので目尻を擦っていると、またため息を吐かれる。
「あのゴリラ女の時もそうでしたけど、時の鐘のお仲間とは随分楽しそうにお話するんですのね」
「だって仲間だし」
睨まれた。なにか変なこと言った?
学園都市にも友人は居るが、そもそも共に居る年月が学園都市の者たちと時の鐘の仲間たちは段違いなのだから気心知れているのは当然だ。俺にとっての時の鐘は、黒子さんにとっての御坂さんや飾利さんだとでも思ってくれれば分かってくれそうなものであるが。
「時の鐘、学園都市に来ますの?」
「……さて、今は
わざわざ『まだ』を強調する。時の鐘全体ではまだ方針は決められていないが、個人では別だ。全体の方針が決まったならそれが絶対優先であるため心配はない。ただ、今はまだ全体の動きが決まっていないため、シェリー=クロムウェルとやって来たロイ姐さんのように攻めてくる可能性はある。
いくらお互い殺し合うのは禁止であっても、戦争が始まり個人で各々が仕事を請け負っていれば同士討ちの回数が増える。だからこそ、全体の方針を早くボスには決めて貰いたいのだが、今はまだ宣戦布告してから二日や三日だ。世界の動きを把握することで手一杯で、こちらから大きな動きに出ることもないだろう。全員そうであってくれると嬉しいが。
「時の鐘が動かず、日本からバチカンはおよそ1万キロも向こうだ。と、なると『シグナル』としての仕事が先に来そうだな」
「戦争が始まるなら先に内側の不穏分子を排除しようということですか。
黒子さんの疲れた顔に両手を上げて降参する。よくある話過ぎて俺には耳だこであるが、黒子さんにとってはそうでもないだろう。
「風紀委員側はなにか変わったのか?」
「全く。治安部隊とは言え、構成員は学生ですから。そこまで露骨な指示は来ませんの。侵入者騒ぎのおかげでパトロールが強化されたぐらいですわね」
「いいじゃないか平和そうで」
「どの口が言いますの? 表面上はそう見える中、その水面下で問題を起こすくせに」
そう嫌々口にする黒子さんの顔を椅子の背もたれに頭を乗せて見つめ、煙草を咥えたところで、
「……まあ、俺に仕事が来なかろうと暗部は動くだろうさ。学園都市にとって都合の悪い奴を消すためにな。が、こっちはこっちで取れる手があるだろう?」
「……それは、
「それもそうだし、他にもね」
他の者たちとこちら側の違いは、情報を手広く入手できることにあるだろう。多重スパイをしている土御門、名前貸しをし、多くの者に貸しのある第六位、表側には
「黒子さんが味方でよかったよ」
「……重要そうな者をもし捕まえた時、表で身柄を確保するためですか。人使いが荒いですわね。それに、それはこちらでも爆弾を抱えることになるかもしれませんし、報酬はあるんですの?」
「おいおい、それは
「いりますの」
目の前に
「仕事の顔になってますわよ、だからそうですわね、行きませんか? 少し散歩にでも」
「……あー、それが報酬?」
黒子さんはにっこり笑い、同時に景色が飛んだ。高価な報酬になりそうだなぁ……。
***
「残念ながら彼は歩みを止める気はないらしい」
「らしいな、老体には
「急性アルコール中毒になっても僕は助けに行けないよ?」
それは残念と頭の上のテンガロンハットを抑えながら、ガラ=スピトルは酒の入ったグラスを傾ける。電話から聞こえるカエル顔の医者の呆れたようなため息を聞き流しながら、ガラは小さく笑う。
「アレイスターの入ってるあのどでかい容器、言うこと聞かないんなら蹴飛ばしてやればいいんだ。そうすれば多少は眉を動かすさ」
「ガラ、僕が医者だということを忘れたかい?」
「歳でもお前ほどのマッドサイエンティストはそうそう忘れんよ、それにお前こそ忘れたか? 私はサタニズムだ」
「僕だって忘れないよ?
そりゃそうだとガラは大声で笑い、あまりの煩さに思わずカエル顔の医者は耳元から受話器を離す。その懐かしさに少し口元を緩めながらも、聞き分けのない患者に頭を痛めながら。
「アレイスターももう少し頭を柔らかくして欲しいね? 医者にとってはありがたい世の中になるかもしれないが、君の方には連絡が行ったかな?」
医者の彼らしくない皮肉に、医者の不機嫌な色を見てガラはまた笑いを零しながら答える。
「残念ながら、電話は一ミリたりとも動かない。でもいいだろう? そっちにうちのが一人いる」
楽しげなガラの声に医者が思い浮かべるのは一人の患者。時折運び込まれてくる再起不能一歩手前の、医者の病院の永住居住権でも欲しいのかというとある患者と仲のいい患者を思い浮かべて。
「彼か。信頼しているようだね」
「アレは
数ヶ月、又は数年、時の鐘にいたと短くとも所属していれば言えるが、ガラが言っているのはそういうことではない。正真正銘時の鐘であると言えるのは数人。手を前に翳しながら、指を一本づつ折っていく。
「オーバード=シェリー、法水孫市、後は……ゴッソ=パールマン」
「君も入れれば四人かい?」
「まあな。片手にも満たない。今でこそ四人になったが、シェリーとパールマンは掘り出し物だった。孫市は、アレこそ時の鐘だ」
「君の弾丸か。時の鐘はアレイスターのお気に入りだからね?」
魔術。超能力。異能を使わず、人の技術を、ただ己を磨き続ける技術集団『時の鐘』。言い方は悪いが、時代で言えば前時代、人の手の中に収まる技術しか使わない。火も雷も呼べなければ、祈りで風も起こせない。どこまでも人の力、己の力しか身につけようとしない愚者であるが、それでいいとガラは断じる。
「強過ぎる力などいらないし、酒に煙草、仲間がいればそれで十分だ。たまにはどうだ狩りでも、お前にアレイスターも、そうすれば多少は気が変わるさ」
「彼も君のように単純ならいいんだけどね?」
「おいおいひどい言い草だな。誰だって楽しいことは楽しいし、楽しくないことは楽しくないだろう」
「なら今の状況はアレイスターにとって楽しいんだろうね」
「なら分かち合うべきだろう、酒のように。私もお前も誘えばいいんだあのホルマリン漬けはな」
そういうところを言っているんだが、と医者は言わずに肩を竦め、病院の壁越しに窓のないビルを眺めて、机の引き出しからグラスと酒瓶を取り出し机の上に置いた。その音を電話から拾い、ガラはその物に当たりをつける。
「おいおい、いいのかドクター。仕事中に酒盛りなんて悪になったな! メスを持つ手が震えても知らないぞ? 医療ミスしても私の名は出さないでくれ」
「ノンアルコールだよ? だいたい僕はミスはしない。君が弾丸を外さないようにね。気分だけさ、アレイスターは無理だろうが」
「いやいや、あいつは好きなだけ飲めるだろう? 培養器の水だがな!」
酒が美味い! とガラの持つグラスの中の氷が跳ねる音を聞きながら、医者もグラスにアルコール臭のしない酒を注ぎ口に運んだ。物足りない味に舌鼓を打ちながら医者はグラスを置く。
「……君と話すと学園都市創立の時を思い出すね? 事態はあの時よりもある意味で悪いだろうが」
「私やキャロルしかほとんど戦ってないだろうが、あんなでっかい培養器守りながら戦ったのなんて私ぐらいのものだ。もう二度とやらんぞ」
「その時は多分彼がやるんだろうね? 君の弾丸が」
「私の孫だ、きっと上手くやる」
「おや? 彼は日本人だし、君とは名前が違うだろう? それにスピトルなんて偽名、よくもまあ怪しまれないものだね?」
「血の繋がりなど関係ないだろう、余計なお世話だ。それにお前にだけは言われたくないな」
並び替えればピストル。なんとも稚拙な偽名であると医者は笑うが、似合ってはいると言いはせずに電話を持ち直した。
「……どう思うカウボーイ、この先、彼らは大丈夫かな?」
「老体は心配だけしてればいいさ、後は若い奴らがどうにかする。お前や私が生き方を決めているように、生き方を決めた奴らがな。それにお前がそっちにいれば大丈夫だろう」
「またねガラ、次に電話する時も君に依頼することがないように祈っているよ」
「それは残念だ、また日本酒でも飲めるかと思ったんだが、医者は医者らしく無茶はするなよ?」
「僕の出番は誰かが無茶した後だからね? 無茶する時は君を呼ぶさ」
そうして医者は静かに受話器を戻してグラスの中身を飲み干した。例えノンアルコールでも誰かに見られたら大変だと机の中に酒瓶とグラスを戻したのとほぼ同時、「急患です」と慌てた様子の看護師が一人駆け込んでくる。バレないくらいにちょっぴりだけ焦りながら医者が「容態は?」と返せば、看護師はちらりと横へ目を流し、黒焦げた男が二人部屋に転がり込んでくる。
ツンツン頭と赤毛の二人を交互に眺め、大きく深いため息を医者は零す。
「……今度はどうしたんだい?」
「そ、それが先生、み、御坂と白井に……俺もうだめだ……法水パス」
「上条さんと話してたらなぜか急に鉄杭の雨が……、電撃がそれに誘電して……」
「急にってなにを話してたんだい?」
「軍服着てる女性が最高って話を……」
「管理人のお姉さんが一番良いって話を……」
焦げた体を揺り起こし、「それはない」と睨み合う男子高校生二人を見下ろして、カエル顔の医者はふむと唸り顎を撫ぜた。どういう経緯で上条当麻と法水孫市が黒焦げになったのか医者には今ひとつ分からなかったが、言いたい事が医者には一つある
「いや、看護婦が一番だね?」
「「それはない……」」
崩れ落ちた二人の男子高校生を見下ろして、医者は二人をいつもの指定席に連れて行くように指示を出した。