なんてこった……。
護衛なのに武器は
しかも、本来上条と
スカイバス365。
座席部分が二階建てになっている多くの乗員を乗せる事が可能な大型旅客機。そのエコノミークラスの中。なるほど、エコノミークラスとは言え、乗り心地は超音速旅客機よりも数段上なのは確かだ。快適な空の旅を満喫できるだろう。ただイギリスまで何倍も時間がかかる事と、もう一つ重大な問題に目を瞑ればである。
「いやぁ……まさかロンドン行きの飛行機が一機もなかったなんてなぁ」
隣の席から流れてくる上条の呟きを聞き、より深く座席に沈み込む。
まさかの到着先の変更。ただでさえ時間のかかる中、向かう先の位置までズレるというこの有様。ロンドン行きの飛行機はすべて予約で一杯であり空いている席がなかった。英仏海峡トンネルが吹っ飛んだ影響がここにも既に出ているようで、陸路で物資を運搬できない分、空路で物資を運搬するために、ロンドン近辺の空港の殆どが、旅客機の受け入れを制限しているためらしい。
よって行き先はスコットランドのエジンバラ。
この鹿児島行こうと思ってたのに福岡に行っちゃいましたというような状況。もうどうしようもない。訪れてしまった結果を変えることはできない。打ちのめされるのもこのくらいにしておき、姿勢を正し座席に座り直す。
逆に考えよう。この全くイギリス清教と学園都市の気遣いをガン無視した状況は、もし内通者でもいた場合、絶対予想不可能な動きであるはず。もしこの移動中に照準を定めていた禁書目録を狙う刺客がいたとしても、ただただロンドンで待ちぼうけをくらうだけだ。そう考えれば、この一手も無駄ではない。というかそう考えないとやってられない。
隣でガチャガチャ座席の裏に付いているボタンをプロのゲーマー並みに連打している
「上条に
「お、おう。俺はそれで全然いいんだけどさ……」
「ぶー、だってお腹減ったんだよ! とうまが有料チャンネルは見ちゃダメって言うからつまらないし、ひこーきのご飯はいつになったら来るの? 待たされるぐらいなら自分で作った方がマシかも!」
「インデックス、すっかり家庭的になっちゃって上条さんは感無量だけれども、この飛行機に俺たちが使える台所なんてないし、夕食の時間はもう終わってるみたいだから次は九時間後じゃねえかなって。遅めのご飯はない安いプランにしたから」
「……ッ!!!???」
やばい
「落ち着け
「いやぁ、でもそういうのって有料なんじゃ……」
「上条お前ね、イタリアでボスから報酬貰ったんじゃないの? なのに何をケチケチしてるんだお前は」
「そうなんだよ! ご飯出ない安いプランじゃなくて、いっぱいご飯出るプランにすればよかったのに!」
「バカ! おバカさん! そうやってほいほい使ってたらすぐに金なんてなくなっちまうんだよ! 安く済ませられるものは安く! これが基本だ! そもそもあのお金は入院費とか食費とかに使ってだな、インデックスの使ってる調理器具買う金だってそこから出てるんだからな! またいつどこで実家が爆散して金が掛かるのかも分からねえってのに……」
実家が爆散するかもしれないと考えて生活するとか嫌過ぎるな。俺の日本にある実家は爆散してくれても全然いいけど。
傭兵よりある意味上条は過激な生活を送っている。そう言えば『シグナル』の給料も、入っていることを知らない上条だけには出てなかったはずだし、ただそれにしたって日本円で一億もあったはずだ。多少金遣いが荒かったとしても別にいいと思うが。
「なんだ、上条そんなにもうあの報酬金使ったのか?」
「いや全然、ベッドとか、食器とか、インデックスが使う調理器具とか、スフィンクス用の皿とか、洗濯機とか冷蔵庫とかエアコンとかさ、それぐらいしか買ってねえけど」
「お前は主婦か何かか? だいたいベッドって、あの寮の部屋に二つも置いてるのか?」
そこまで寮の部屋は大きくない。ベッドを二つも置いては色々物が入らなくなってしまう。そもそもあの部屋一人用だし、俺なんかはベッドは木山先生に使って貰い、俺はソファーで寝ているが、ってか俺の部屋俺の物以外の人の物が多いし……。マジであの部屋俺にとってはただの倉庫だ倉庫。
俺の日常生活はさて置いて、上条もそんな感じの生活を送っているのではないかという予想は、「いや」と言う上条の言葉に簡単に否定された。
「折角だからデカイベッド買ったんだよ。キングサイズってやつ。あれ凄いぞ! トランポリンみたいでふかふかだし一日の疲れもアレで寝ればさようならだからな! スランバーランドってとこのなんだけど」
「それ英国王室御用達の奴じゃねえかッ! ちゃっかり高えの買ってんじゃねえ! ってかキングサイズとか邪魔だろ!」
「いやでもインデックスが一番寝心地気に入ったって言うから!」
「不思議と落ち着くんだもん、やっぱり私もイギリス人ってことかなって。それにとうまと二人でも広いから寝返り打っても大丈夫だし!」
「あーそうか寝返り打っても…………寝返り打っても? ……寝返り打っても⁉︎」
「なんだどうしたんだよ法水⁉︎」
どうしたもこうしたもあるか! 寝返り打ってもだと? そんな言葉が出るなんてこの野郎! 人のことなんだかんだ言いながらやることちゃっかりやってんじゃねえぞ! 青髮ピアスだ! 青髮ピアスに報告だ! 後土御門にも報告ッ! 俺が一人ソファーなんかで寝てるってのに寝返り打っても⁉︎
「なんだよおいおい上条、へー、んー? お前
「はあ⁉︎ 何言ってんだ法水コラ! 一緒に寝てるって言っても折角大金入ったから大きなベッドなら俺も寝れるでしょってインデックスがだな! それにお互い端と端で寝てるからそんな捕まりそうなことするかバカ!」
「同棲してる時点でもう捕まる案件なんだよ! 端と端で寝てるからだ〜? それで安心と言い切れる自信があるのかお前は! お前に聞いていても埒があかん!
「えぇっと……ないしょかも」
「ちょ、なんで内緒⁉︎ 俺なんもしてねえはずだぞ⁉︎ え? 何もしてないよね? そうだよね? インデックス? インデックスさん⁉︎」
裏は取れた! この野郎今日という今日はもう言ってやらねば気が済まない。色んな国の色んな女の子を引っ掛けておいてこいつって奴は、こいつって奴は!
「上条、どうすれば女の子と一緒に同じベッドで寝れるなんていう素敵イベントを起こせるのか教えてください。早急に。学園都市に帰れたら試すから」
「お前何言っちゃってんの⁉︎ 青ピとか白井みたいになってるぞ法水⁉︎ 正気に戻れ! あの仕事大好きな傭兵はどこ行っちゃたんだお前!」
「うるせえ! 男なら、狙撃手なら一度決めた相手には本気出すもんだろう! その必死俺も欲しい! はっきり言おう、俺は寝起きの黒子が見たい」
「知るかァ‼︎ 俺にそれを言うんじゃねえ‼︎ 軍服萌えはどこ行ったんだよ!」
「軍服ね、いいよね軍服。ただ黒子が着るならもう少し背が伸びてからの方が……」
「あのー、お客様?」
背後から青筋浮かべた笑顔のキャビンアテンダントに肩を叩かれる。その奥では寝ていたらしい不機嫌な顔のビジネスマン。静かにしないと外に放り出しますよ? と言いたげなキャビンアテンダントの顔に、俺と上条は姿勢を正して座席についている画面をただ見つめる。「お腹減ったんだよ?」と言う
フランス。一ヶ月もせずに二度目のフランス。
しかし、アビニョンでなければ、別にフランスの地に足を下ろす訳でもない。空を飛んで九時間後、旅客機が着陸したのは、別に給油のためでもなかった。
『──ユーロトンネル爆破事故の影響で、当機もフランス‐イギリス間の物資運搬サービスに協力しております。乗客の皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、荷物の追加積載が完了するまで、今しばらくお待ちください』
隣でお腹減ったとぶーたれる
時差ボケに多少頭がぼやける中、思考の海を漂う事で必要ない部分を引き剥がす。英仏海峡トンネルが吹っ飛んだ影響。しっかりフランスで物資の運搬のため積荷を積載しているあたり、表向きはまだイギリスとの関係を保っているらしい。大怪我の上に小さな絆創膏を貼ったように、ただの応急処置に過ぎないが。
元々英仏海峡トンネルを使っての物資運搬で多くを賄っていたのだ。急遽やり方を変えたところで、当然元のようにはいかない。何より、旅客機では積載量も多くはないし時間もかかる。空輸で大量に物資を受け入れる施設もないだろうし。僅かながらでもないよりはマシであるが、それも微々たるもの。小腹を満たせるだけで、飢えを完全に凌ぐことはできない。
いずれ限界は来る。
その時どうするかだ。何より英仏海峡トンネルの修復が急務ではあるが、この大きな隙に、戦争中ただ傍観するなど戦者としてはありえない。勝負は英仏海峡トンネルが修復されるまでの間。叩くときは叩く、戦いの基本だ。だからこそイギリスは禁書目録を呼び寄せたのだろうし、時の鐘にもスイスへの召集命令がかかった。
そんな中で気になるのは
カレン=ハラー、神の劔。
ゴッソの話では、イギリス以外の重要施設にも暗殺に
だが、カレンは動かなかった。
バッキンガム宮殿まで行っておいて、あの神のために動く刃が地に剣突き立て途中で止めた理由はなんだ? そもそもの話、ローマ正教の中で穏健派であったはずのナルシスさんが、ここまで急進的な動きを許容するのか。
ゴッソは
ただそれにしたって暖簾に腕押しのような無謀である。ただ
舌を打って紫陽花色の髪を振り撒くあの女の顔を見た時なんと言ってやろうかと考えていると、『──お待たせいたしました。追加荷物の搬入が完了しました。これより当機は離陸準備に入ります。乗客の皆様は座席に着席の上、シートベルトを着用してください』とアナウンスが流れてようやく飛行機が動き出した。と、同時に隣から少女の唸り声とツンツン頭が跳ねる音が聴こえて目を向ける。なんか内壁の一部が剥げてるように見えるんですけども。
「どうした? まだ腹ペコ合戦やってるのか? しかも何を壊してるんだおい」
「いやさっきキャビンアテンダントさんが機内食持って来てくれるって言ってたんだけど、離陸だから無理そうだって言ったらインデックスが……それにほら壁は嵌まったし!」
いやなんか無理矢理嵌めて捻れてね? いや、もう気にするのはよそう。器物破損の相手までしたくない。それに。
「そんな話ししてた?」
「隣で話してたじゃんか……法水随分考え込んでたみたいだったからな、何か今回のことで思うことでもあるのか?」
「……まあいろいろな。一番は困ったことにカレンだが」
「カレン? カレンがどうかしたのまごいち?」
唸り声をぴたりと止めて、首を伸ばし俺を見る
俺の仕事は所詮今回イギリスまでとその後の護衛であるが、今後のためにも知れる事は知っておいた方がいい。お互いに。なので言うべきか少し迷いはするが、どうせイギリスに着けば知れる事、
「カレンがバッキンガム宮殿に突っ込んで捕縛されたらしい。それも暴れず突っ立ってただけでな。
「うぇッ⁉︎ 初めて聞いたんだよ⁉︎ カレンが? バッキンガム宮殿に? なんで?」
「さて、なんでも他の
「あのカレンがか……なんでそんなこと……いや、でも大丈夫なんじゃないか? アニェーゼとオルソラがあっちにはいるし、そんな酷いことにはなんないんじゃないか?」
そう話を聞いていた上条が返してくれるが、なんかほとんど聞かない名前が飛び出して来たな。
「なんだよ上条、誰それ、なんか聞いたことあるような……」
そう零して記憶の引き出しを開ける中、誰よりスムーズに記憶の引き出しを開けられる
オルソラ=アクィナスとアニェーゼ=サンクティス。どちらも上条が関わった事件の関係者だったか。確かどちらも元ローマ正教の修道女で、今はイギリス清教に身を移しているんだっけ? 元ローマ正教の者ならカレンを知っていてもおかしくはないかもしれないが、その二人が居るとなぜカレンが大丈夫なのか頭を捻っていると、「カレンの友達だから」と
「友達? え、なにあいつ友達とか居るの? 神様とか言うイマジナリーフレンドしか友達いないんじゃないの?」
「まごいち、私も居るのにその言い方は失礼じゃないかな? そもそも主を信じるって言うのは──」
「分かった。俺が悪かったから布教しなくていい。俺は目に見えるものしか信じない。で? なんでその友達がいると大丈夫なんだ? だってその二人だって
「アニェーゼはローマ正教のままイギリス清教の傘下に入ったから違うけど、そうでなくても多分大丈夫。カレンが神とは自分を信じてくれる者のことだって言ってたから」
「はぁ?」
「あいつ遂に頭でも強く打ったのか? 思考停止万歳だったくせに、イタリアの件の後だったか、カレンが
「えっと、ラルコ=シェックって人にしつこく神とは何か聞かれたらしいけど、その人も
勿論知っている。ラルコ=シェック、
ラルコ=シェックは死んだはず。それは確定情報だ。遺骨を見たとボスも言っていたし、であるなら、今際の際にそんな言葉を吐いたのか、しつこく聞かれたのならそんな瀬戸際で吐いた訳ではないはず。ならなぜそんな事を聞いた? カレンの思考停止をふやかすような事を。事実カレンは何かしらの答えに辿り着いたようだし、
「あのラルコ=シェックがか……、俺もたった一度だけ仕事で一緒になった事がある。高潔な血には純粋な意志が溶けていなければならないだのなんだの。極まったそれは神の血に等しく残しておくべきうんたらかんたら。よく覚えてないけど、神が見たいとか言ってたような……」
「なんだよ法水、親しかったのか?」
「俺とアレが? まさか馬鹿言え! 仕事でもなければ組むか! 仕事であっても誤射で撃ち殺したいような奴だぞ? なんか俺はアレに異様に気に入られてたけど理由は知らん!」
「でもそっか、カレンも居るんだ。会えるかな?」
「俺としても今回ばかりは一度会っておきたい。俺だけでは会えるか分からないが、
そう聞けば、コクリと
飛行機もいつの間にか上昇を止め、安定飛行に入ったため、また
「上条、もうなんだっていいから何か買って来い。俺も流石に腹が減ったし、上条と違って俺は貧乏性でもないからな」
「お、おういいのか? と言うか俺は法水のお財布事情が凄い気になるんだが」
「そうだな……もう一生働かなくても質素に暮らせば余りあるくらいに金はあるが、だからってたかるなよ俺に。俺は趣味と仕事のためにしか金は基本使いたくない」
「俺の貧乏性とそんな変わんねえじゃねえか……。まあちょっと行ってくる。後で返すぞ法水」
「別にいいよこれくらい、だからせいぜい美味いの買って来てくれ」
「うわー! まごいちが救世主に見えるんだよ!」
こんなんで?
俺は石をパンにしたわけでもなく、ただお金で食料を買ってるだけなのだが、食欲魔人の胃袋のちょろさに苦笑しながら、席を立ち歩いて行った上条を見送った。それにしたってこうもお腹減ったと騒ぐとは、
「でもまごいち、お金に困ってる訳でもないのにまーせなりー続けてるのってなんで? 必死が欲しいって聞いたけど、私にはちょっと分からないかも。くろこも居るんだし、まだやらなきゃダメなの?」
「……
「……そうだとしても、まごいちには記憶があるでしょ? 日本に帰りたいって思わないの? わかさも居るし、まごいちにはまごいちで帰れる場所があるのに。今なら学園都市に腰を落ち着けられるんじゃない?」
「俺が? それもそうかもしれないが、例え黒子が居てくれたとしてもそれはないと断言しておこう」
俺の居場所は時の鐘だ。スイスに本部があるし俺の心の故郷でもあるが、正確に言うなら時の鐘のあるところに俺はいる。召集命令がかかったと言ってもここに居るのは、今この場所が時の鐘の居場所だから。ゴッソに嗜められたというのも多少はあるが、自分の意志のあるところが時の鐘。この戦争、事態の中心の一部が今まさに隣にいる。誰かさんの思惑は未だ分からないが、大事な者に平和を届ける事が俺たちのあり方。他でもない戦場に行かなくていいはずの大事な者が、戦場で泣く姿を俺が見たくないから。金のためでも、他人のためでも、勿論神のためでもなく、己のため。それが引き金を引かせるのだ。
「狙撃手がスコープを覗く時、狙う相手が誰であろうと一対一だ。その誰かに向けて弾丸を飛ばすのは、他でもない俺だ。誰に引かせるわけでもない。俺は銃を持っていて、撃ち方が分かっていて、引き金を引ける。
「……そうだね」
誰かが心配してくれる。誰かが追ってくれる。それは嬉しくもあるが、だからと言ってできることを止めようとは思わない。自分の狭い世界の幸せの為。自分勝手結構、その為にできることはやる。
「とうまもきっと同じなんだね。右手があるから、自分が持ってるから、でも右手がなくてもとうまは突っ走って行っちゃうけど。まごいちもでしょ?」
「それは所詮付属品って事だろうさ。上条が先にあって、あの右手が後を付いて来てるだけみたいな。俺が先に来て弾丸が後に付いて来てるだけ。……んー? そう言うとそこそこしっくりくるな。そもそも上条の右手ってよく分からないし」
異能を握り潰す優しい右手。異能とかなくたって生きてけんだろと俺も時の鐘も思っているからそこまで気にしたことはなかったが、アックアが狙っていた事といい、必要な者にとって霊装以上に重要であろう事は確かだ。ただ完璧に触れたものをさっぱり一切合切あっという間に消すわけでもなく、夏休み初めの禁書目録の件の時といい、打ち消す力に許容量はあるようだし、しかも大覇星祭の時はなんか腕から出たし。俺にとっては仕事が楽になっていいなあとかの認識だが、そもそもあの右手はなんなのか。
魔術のように何かをなぞっている訳でもなさそうだし、超能力のように開発している訳でもない。上条の両親も一般人だしで、考えるほど訳が分からない。
ただ、
それはなんとも……。
「喜べばいいやら、怒ればいいやら、神の思し召しって? そんなの勝手に押し付けられても、結局自分のやりたい事やるだけだよなぁ」
「まごいち?」
「いや変な予想にウンザリしただけだ。そもそも俺は魔術師ではなく科学者でもないんだし、不思議とか追ってる暇もない。目の前のことで精一杯さ。上条は上条で俺は俺、
「なに当たり前のこと言ってるの?」
「ああ全くその通りだ。はははっ!」
目に見えないものではなく、目に見えるものがそこにあるのだから、それでいい。当たり前。そう当たり前だ。当たり前を追って特別な必死を掴む。それさえできれば最高だ。
目を丸くする
「なんだ? 上条の奴金でも足りなくなったのか?」
「えー⁉︎ もう私お腹ぺこぺこでお腹と背中がくっ付いて裏返りそうなのに! とうまったらなにやってるのかな⁉︎」
「いや分からないけども、仕方ない少し行って来よう」
「速く! 速くねまごいち! びーふおぁふぃっしゅ! びーふおぁふぃっしゅッ‼︎」
「分かった分かった」
急かしてくる
その中で、上条がパイロットの制服を着た男の前で金髪のキャビンアテンダントに組み伏せられていた。
何やってんの? 万引きでもしようとしたの?
機内食貰いの行ってなんでキャビンアテンダントに組み伏せられる事になるのだ。しかもなんか血の匂いが薄っすらするのだが、そんな盛大に暴れたのか。
肩が落ちる中、上条が安心した顔で俺の名を呼び、キャビンアテンダントとパイロットが怪訝な顔をする。上条の顔を見て表情筋が死んでいくのが分かる。そんな俺にパイロットの男が声を掛けて来た。
「……お前が傭兵? それも有名なだって? ……ただの学生のガキじゃねえか。全くこんな時にふざけやがってッ」
「……俺は馬鹿にされる為に呼ばれたのか? おい上条、怒ってもいいか?」
わざわざ目立つ必要もないため、確かに時の鐘の軍服を着ている訳でもなく学校の制服だが、歳だの見た目で馬鹿にされるとは。どういう状況かいまいち分からないというのに、萎えた気分がより悪くなる。眉を吊り上げる先で、慌てて上条は口を開けたが、何やらハッとすると開けていた口を窄めて小さな声で言葉を絞り出す。
「法水落ち着け、気持ちは分かるけど緊急事態らしい。この飛行機にテロリストが乗ってるらしいって!」
「はぁ?」
間抜けな声が勝手に出てしまう。
テロリスト? 今? 丁度わざわざこの飛行機に? 飛行機乗り遅れて遠回りな挙句テロリスト?
上条の不幸パワーがいつも通り過ぎて開いた口が塞がらない。キャビンアテンダントに組み伏せられてまで上条もそんな冗談は言わないはず。なら喚いても仕方ないな。俺は護衛でここに居る。ただ仕事の時間が来ただけだ。とんだB級映画みたいな展開だなクソ。
「……分かった詳しく話せ。ただのテロリストなのなら、俺にとってはいつものことだ」
懐の
怪訝な顔のパイロットとキャビンアテンダントを前に親指を元の席の方へ向けた。禁書目録のお嬢さんを呼んで来い。俺の仕事が悪いが優先だからな、護衛をしながらそのテロリストに八つ当たりしてくれる。