異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術「神の記録帳」   作:新人ガイア

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城塞都市ファルトラ

「着いたな・・・」

 

道を歩きに歩きようやく南北を流れる大きな川とその川の真上を横切る為の石造りの橋が見えてきた。その橋の先に立派な城門と砦があり、アレがレム達が言っていた『ウルグ橋砦』であろう。

 

「えぇ。あの砦を超えた先に街があります。」

「門の前に雑兵がいるがあれは検問か?」

「えぇ。一応砦ですし魔族の侵入を阻止する役割がありますから。」

 

確かにその通りだ。魔族に襲われないように警備をするのは当然であるが、魔族が来るかもしれん方角に人の往来があっていいのであろうか?(汗)。

いっその事橋なんて作らず砲台でも並べてしまえばまだ安全だと思うが・・・いやいけない、引きこもりで考えたら碌なことが無い。外に出ていろんなことする自由があるから平和なんだ。よし今の無し!忘れよう。

さて、検問かぁ。この見た目では明らかに止められるだろうなぁ。レム達が居るから説明してもらえば済むだろうが・・・・・よくよく考えてみれば彼女たちが首輪してるはマズいのではないだろうか?一般常識的に考えれば人間が首輪をするのはどう考えても・・・・・・・・・・・・・・・・・「奴隷」だ!?

ヤバい、いやな汗が出てきた・・・しかもディアヴロの見た目が完全に悪者だから悪逆非道な奴隷商人にしか見えねぇよ!!それじゃあ俺はどうなんだ!?変わった見た目の珍獣か何かか!?どうしよう、ヤバい展開しか想像できねぇ!!

 

「大丈夫ですか、顔色が悪いですよ?」

「フ、フン!なぁに下界の空気が私に合わないだけだ。行くぞ。」

 

まぁ、レム達の説明に期待するしかない。頼むぞ!主に問題無い展開で!!

安全を祈りながら俺達は門を目指して橋を渡る。

 

「そこのお前たち!止まれ!」

 

案の定兵士に止められた。さてレムはどう説明するのやら・・・

 

「なんだ、貴様は?このディアヴロを呼び止めるとは、相応の覚悟があるのだろうな?」

 

んうぅぅぅぅぅ!!忘れていたあぁぁぁ!!流石にディアヴロが威圧するとは考えてもみなかった!いくら何でもこの状況でそれはないだろう!!

あぁ警戒して砦から兵士がぞろぞろと出てきたよ。なんとかしなくては!

 

「怪しい奴め!大人しくしろ!!」

「ハッ!怪しいだと?まだ調べもせずその物言いとは、相変わらず下界の人族は無能よなぁ?」

「なんだと(バサッ!!)ッ!?」

やべぇぇぇぇ!癖で俺まで威圧しちまった!!しかもユニークスキル『覇王の翼』が発動してるし!?

 

天使族固有スキル・翼系スキル『覇王の翼』。鳥の威嚇のように翼を大きく広げ威圧の風を起こし自分よりレベルの低い相手をひるます、また戦意喪失させるスキルだ。なんか条件反射的に発動してしまった・・・

 

「怪しいとは正体が解らないから出る言葉だ。素性すら聞かずに決めつけるのは早計であろう?」

「た、確かにその通りですね。大変失礼した!我々はファルトラに向かう者の行き来をチェックしているのですが・・・申し訳ないのですが身分と目的を教えてくれませんか?」

 

ふぅ、一時はどうなるかと思ったが何とかなったと言えるだろうか?だがこれで話をスムーズに進められる。

 

「かまわん。レムよ、こ奴らに解る様に説明してやれ。」

「解りました。彼らはわたしの召喚獣のようなものです。」

「違うよ!あたしが召喚したの!」

「いや私は召喚獣ではない。召喚獣はコイツだけだ。」

「オイ!」

 

すまないなディアヴロ、こういう設定にしないと俺の存在が危ういんだ!レム達に自分から来たと言った以上この設定は重視しないとお前みたいに知らず知らずのうちに呼ばれた阿呆とバレてしまう!!

だからここで俺の為に生贄になってくれ!なぁに神には生贄がつきものだからなw(本日二度目)

 

「まぁよいではないかディアヴロよ。事実召喚されたわけなのだから実質召喚獣であろう?いや人なのだから召喚人であったな!クハハハハハハw」

「馬鹿にしてるのか貴様は!?」

「馬鹿にはしておらん。ただ、馬鹿だなぁと思っただけだ。」

「同じじゃねぇか!」

 

同じではない。思っているだけで見下してなどいない。これが神ロープレ、別名イジリである。

 

「・・・と言うことで彼らは怪しいものではありません。通してもらっても構いませんか?」

 

俺達の戯れをよそにレムが淡々と兵士に説明してくれる。・・・俺の羽の後ろで・・・・シェラも反対側の羽に隠れるようにのぞき込んでいた。

・・・ヤメテ、あんたらが掴んでる羽根から敬称しがたい快感が伝わってくるんだよ!?どこぞのジブリールさんが翼は性感帯だと言ってたが、まさか天使族もそれと同じなのか!?こうしてる今でも女みたいな甘い声が漏れそうなのを必死に抑えているんだ。

 

「ヴァルハラ大丈夫?顔が赤いよ?」

「だ、大丈夫だ。問題無い!」

 

心配するなら今すぐその握ってる手を外せシェラよ!!もう逝き(イキ)そうだ!!誰か助けてくれえぇぇぇぇぇ!!

 

「レムさんでしたか、優れた召喚士だと聞いてはいましたがまさか人型の召喚獣を召喚するとは・・・でも首輪が付いてないような?」

 

来た!一番危惧してたことが!!落ち着け俺、まずは冷静に解りやすく説明し納得を・・・

 

「首輪か?首輪ならここにあるだろう」

「わっ!?」「ちょっとぉ!?」

(ディアヴロォォォォォォ!!!)

 

ディアヴロが俺の羽に隠れてる二人の首根っこを掴み、首輪が兵士に見えるように持ち上げた。

 

「・・・なっ!?」

 

当然の如く狼狽する兵士たち。首輪を見られ泣きそうになっている二人を助けるためディアヴロの頭頂部目掛けて拳を振り下ろした。

 

「イだッ!?なにをする!!」

 

拳に伝わる鈍い痛みと生暖かい熱が人を殴ったという幸福感に満たされる。どうやら精神が天使族よりに向いてるのだろう。設定では天使族は上位種である神と同族以外の種族を嫌悪しているという設定であった。そんなところまで影響を及ぼしているとは感心してしまう。

 

「愚か者が、少しは優しく扱えないのか?」

 

殴られ開放されたレム達が再び俺の羽に隠れた。頼む、隠れるのはいいが羽根を握るのはやめてくれ!握られるたびに電流みたいなのが流れるんだよぉぉぉぉぉ///

 

「ん、ンン!!ひとまず落ち着け兵士よ、少々癪ではあるが私が説明してやる。こ奴らの首輪はこのディアヴロに隷従の儀式を施した際事故が起き魔法が反射、術者についてしまったと言うことだ。解除するにも方法が解らんし状況を整理するためにも街に戻ると判断、今に至ると言うことだ。理解できたか下界の民よ?」

「えぇそれは理解しました。それでは貴方は何故首輪をしていないんですか?それにその羽は・・・」

「貴様は神である私に人族風情の奴隷になれと?フンっ!人族というのはどの世界でも傲慢極まりない思考よなぁ。」

「か、神!?そんなまさか!」

「信じぬともよい。所詮人族なぞ真実を目の当たりしない限り認めぬ劣等種だ。その日が来るまで己が無能を誇るが良い。それで?私達は通ってもよいのか?それとも追い返すか?んん?」

「いいいいいえいえ構いません!お気をつけて!」

 

さすがにやり過ぎただろうか?兵たちが恐ろしいモノを見るかのように怯え道を開けていく。まぁこの世界では人族は神族の末裔らしいとレムに聞いたから恐れられて当然か。末裔とはおこがましいにも程があるが、まぁよい。所詮人族の妄言よ。もし対立すれはその時は神ロープレで目に物を見せてやればよい。

 

                        ◇

 

ディアヴロのロープレでゴタついてしまったが何とか街に入ることが出来た。ディアヴロの話では、街を囲う外壁は八角形をしており、その角には魔族に関わる存在やその攻撃を遮断する結界を形成する塔が建っているらしい。思った通り天使族は警備の対象外だったようですんなりと通れた。

すでに夕刻であり夕日が世界を紅に染め上げていく。俺は風景を見るのが好きだ。だからこういう自然が作る芸術はつい見入ってしまう。とはいえ感傷に浸り暇は俺にはない。今は衣食住の問題を解決しよう。

レム達は相変わらず首輪を手などで隠すように歩いていた。自分達の失敗が恥ずかしいのもあるがもしかしたら俺が考えてた通りの理由かもしれない。

街は多くの街人でごった返していた。種族も人族だけではなくエルフや獣人(レムいわく豹人族)と様々な種族が歩いたり話し合ったりしている。『・・・・有象無象が』

イカンイカン。ガチで天使族の性格が出てきてる。

 

「・・・・・・あ、あの」

「む?どうしたしたんだレム」

「・・・・・・宿屋に行きたいのですが」

「レムの言う通りだな。このままではマズいことになろう。」

「マズいことだと?」

 

レムに促され移動しようとした矢先のことだった。こちらを見ていた通行人達がヒソヒソと話しをしている

 

「なあ、あれってレムさんと、あのエルフの子だよな?なんで首輪つけてるんだ?」

 

やはり俺の考えは合っていたようだ。隷従の首輪をつけてる人間はどう見ても奴隷としか言いようが無い。そしてこの状況、居心地が悪いとしか言いようが無い。

話が広がるのは早く、周囲でひそひそと会話をする。

 

「あの二人って召喚士じゃなかったっけ?」

「でも、隷従の首輪をつけてないか?あれって召喚獣の方がつけるっていう・・・・・・」

「いや、召喚獣だけじゃなく奴隷もつけてるけど」

「てことはあの二人、奴隷になったのか!?」

 

『騒々しい。所詮下劣な人族、意見する勇気もなくこそこそと、愚かにも』黙れ天使思考、貴様の出る幕ではない。全く、なんで自分自身の頭の中で討論しなきゃならんのだ。

 

「・・・・・くだらん。レムよ。」

「な、なんでしょう?」

 

俺は迷わず首に巻いているアクセサリーのストールをレムに渡す。

 

「それで首輪を隠すがよい。辛いのであろう?」

「あ、ありがとうございます。」

「宿に着くまでの間だ。それ以降は自分で何とかするか慣れろ。」

「・・・・はい。」

「ねぇねぇヴァルハラぁ、あたしには?あたしには無いの?」

 

まぁ、そうなるか。しかし困った。ストールはアクセサリーだから外しても問題ないがそれ以外は大事な装備兼一帳羅だ。外せば世間的に大問題だ。

他に首輪を隠せる物がない以上もはやアレを使うしかない。正直嫌だかやむをえない。

 

「えぇい引っ付くな!全く落ち着きのない娘だな。それ。」

「わっ!?」

 

俺は自分の羽でシェラの首から下を隠すように覆った。

 

「しばらくこれで我慢しろ。歩きにくいのならもう少し寄れ。」

「うん!わぁ~、内側はモコモコしててあったかぁい!それでいてサラサラして気持ちいぃ!!」

「そ、そうか。だがあまり触るでないぞ?一応神経が通っているんだからな。(敏感なのがな。)では行くとしよう。」

 

レムも首輪を隠しディアヴロと一緒についていく。そんな俺達を見ながら周囲人達は(ディアヴロを)恐れて道を開けていくのであった。

 

「あの白い男みろよ、羽が生えてるぞ!」「ホントだデカい羽だな!」「でも一体何の種族なんだ?」「きっとあの混魔族に連れてこられたのよ!」「あの身なりからしてどこかの司祭様じゃないかしら?なんとおいたわしや・・・」「・・・・羨ましい」

 

うむ、ディアヴロにヘイトが行ってなによりだ。なんか変なのが聞こえたが捨ておこう。

取り敢えず俺が白い目で見られることは無いだろう。まぁディアヴロは魔王だから皆から何を言われても仕方ないだろう。今は我が身大事だ!許せディアヴロ。

 

                     ◇

 

俺たちは街の人たちに注目されながら、宿屋の前にたどり着く。街の西門と広場の中間に位置する石造りの建物で、途中からレムやシェラに案内をしてもらった。ディアヴロの方が詳しいと思ったがいかせんゲームだった物が現実となって現れたのだ対応しろというのが無理な話だ。そして気づいたことだが看板などの文字が日本語や英語ではない全く意味不明な文字であった。アレが異世界文字と言うものか、今後もお世話になるのなら読み書きができていないと問題が発生するだろう。

 

「ヴァルハラ、ストールありがとうございました。」

「礼を言うのならレムよ、後でこの世界の文字の読み書きを教えてくれぬか?どうも転移の影響で自己変換能力に異常が起きたようだ。字が全く読めぬ。」

「そうなのですか!?解りました、私でよければ御教えします!」

 

自己変換能力なんて真っ赤な嘘であるがうまく神の威厳は保たれたであろう。

 

「ちょっとぉ!なんであたしじゃなくてレムなの!!」

「単純に見てシェラよりレムの方が利口だと思ったからだ。貴様は子供のような幼さが見受けられる。説明とか上手いとはとても思えん。」

「むぅ、あたしだって文字くらい教えれるもん!!」

 

小馬鹿にされたシェラは頬をふくまらせ怒っていることをアピールした。シェラは反応が面白くついイジりたくなってしまう。あと天然で可愛い。

そんな俺達の茶番を見ていたディアヴロは宿屋の扉の前で業を煮やしていた

 

「お前たち!入るのか入らないのかどっちなんだ!」

「おぉすまないすまないでは入るとするか」

 

それにしても宿屋か、「ラグナレク」では無かったものだがどういった感じなのだろうか?

始めて入る宿のドアノブを握って木製のドアを開ける。入るとまず受付があり、そこに黄色いヒョウミミをはやした豹人族の少女がいた。

豹人族の少女はにこやかな笑みを浮かべ、肩まである茶色い髪を揺らしながら挨拶をする

 

「こんにちわっ☆宿屋『安心亭』の看板娘アイドルメイちゃんだよ~♪きゃはっ!」

(ここはゲームと同じなんだな。)

「・・・・・・・ほう。(可愛い。)」

 

《ヴァルハラは猫派であった》

 

これは俗に言う看板娘という奴か。このあざといところがなんとも愛らしい。ネコミミにメイド服というのも実にあざとい。だがそこが良い。猫のいい所を生かしていると言えよう。

 

「・・・・・・部屋の鍵をくださいますか」

「レムちゃん、おかえり~☆召喚は成功したかな?」

「・・・・・・召喚は成功しました・・・・・・召喚だけは」

 

レムは手で首輪を隠し、メイちゃんはそれを不思議そうに見ている。

 

「どしたの?」

「・・・・・・それより・・・・・・部屋を一つ追加して欲しいのですが」

(これは俺達の分の部屋になるんだよな?正直シェラかレムと相部屋が良かったなぁ。何が悲しくて好きでもない男「ディアヴロ」と同室しなければいけないんだか・・・それにしても金はどうしたものか…ラグナレクの通貨は『ネコ』だったがこっちではなんだ?そもそもなにか金目のもの持ってたっけ俺?)

「もう一部屋?後ろのお兄さん達かな?やっほーお兄さん達!宿屋のッ・」

「あのっ!」

 

メイちゃんが俺達に挨拶しようとしたとき、シェラが受付台に身を乗り出す勢いで詰め寄る。

 

「シェラちゃんもやっほ~☆鍵ならすぐ出すからね♪」

「あ、あたし・・・・・・その・・・・・・お、同じ部屋に一人・・・ううん、二人泊めたいんだけどいいかな!?」

 

なんと大胆な!この欲張りエルフめ!「お目が高いのは有り難いが一人余分にチョイスするのはナンセンスだぞ!」

「聞こえてるからな!?」

 

おやいつの間にやら本音が漏れていたようだ。イケナイケナイ

 

「正気かシェラよ?貴様の部屋は三人も入り切れるほどスペースがあるのか?私は構わんがそれでも窮屈であろう?」

「まて!何をさも当然とばかりに了承しておる!?貴様には良識というのが無いのか!!(直訳:待て!何で平然と同意してるんだ!?お前はその状況に耐えられるのか!?)」

「ハッ!そんな人間が決めた物に私が従う訳なかろう!貴様こそ魔王の割に紳士的に振る舞うが少しはケダモノらしくしたらどうだ!?(直訳:何を言う!このチャンスを逃したらお前と同室になるじゃねぇか!!お前こそレムとキャッキャウフフな妄想くらい考えたらどうだ!?)」

「俺を貴様と一緒にするな!俺は俺の領分というのがある!(直訳:お前みたいに本能に正直になれるかぁ!俺だってそうしたいよ!)」

「「ぜぇ、ぜぇ、、はぁ、、はぁ、、」」

 

突然ディアヴロに掴み掛れいろいろ思うことを言い合ったが掴んでる手を振り払いお互い息を整える。

 

「改めて聞くがシェラよ。本気で同室などと考えているのか?」

「だってあたし二部屋も借りるほどお金持ってないし!でも、レムの用意した部屋に泊められたら、なんかレムが召喚主みたいだし!」

「私が召喚主ですから当然です。あなたは貧乏なりに、楽しく一人で過ごせばいいのです」

「違うもん!あたしが召喚主で一緒にいるべきなの!」

 

やれやれこの二人は仲のいいことで、このままほおって置いても飽きないなぁ。と眺めていたらメイちゃんが手をパンパンとたたいて口を開いた。

 

「は~い。大部屋に四名様、ご案内しちゃうよ~☆」

「何?(うむ可愛い。)」「え!?」「・・・っ!!」(なん・・・・・・だと・・・・・!?)

「受付で揉められると迷惑だよっ☆そんな悪い子達は同じ部屋にしまっちゃおうねっ♪」

「なんと無茶苦茶な・・・(可愛いから良いか)」

 

確かにここで揉めても不毛なことだから至極真っ当だがそれでもレム達は食い下がらない。

 

「・・・・・・こんなバカエルフと相部屋になるのは不愉快です」

「あたしだって!それは困るんだけど!?」

 

そんな二人に対しメイちゃんは動じず目つきを変え一言。

 

「追い出すよ?」

 

さっきまでの笑顔から一片、恐ろしい殺気をもってその一言を言い放った。

 

「・・・は、はい。」

「ごめん・・・」

(怖っ!)

 

ディアヴロは口にはしないが恐らく俺と同じ考えであろう。

 

「・・・可愛い。」

「「「え?」」」

 

《ヴァルハラは猫派であった。》

 

否、全然違っていた。ディアヴロ、君には失望したよ。

 

「んん!あーメイとやら?一つお伺いしたい」

「おや、何かな~?言っておくけど文句は受け付けないよ~☆」

「文句とはとんでもない!店を預かっている者として当然の判断だと思う。私が聞きたいのはその大部屋をもう一つ追加で二人一部屋として分けたいのだがそれは可能か?」

「もちろん可能だけどお兄さんそれだけのお金は持ってるのかなぁ?」

 

未だに殺気は治めずギロリと睨む瞳がなんとも可愛らしく撫でたくなる衝動に駆られる。だがそれをグッと堪え、自分の袖の中に手を入れ金目の物を探っている。

 

「う~む、、金目の物になりそうなのは・・・あ。」

 

探すに探していると袖から何かがこぼれ落ち受付台にゴシャっとめり込んでしまった。

 

「失礼した。台まで壊してしまい申し訳」

「ちょっと待って!?」

 

台に落としたものを拾い上げ戻そうとした時、メイちゃんが血相を変えその落としたものを凝視する。

 

「そ、それは・・・一体何ですか?」

「ん?これか?見ての通りの『金の延べ棒』だがこれが何か?」

「それ!それがあればこのぼろ宿を立て直すくらい、いや新店舗を建てるのも造作もないくらいだよ!!」

 

ほほう、それはいいことを聞いた。こんな一個50万ネコで買い取れる換金アイテムにそんな値打ちがあるとは、俺は内心ほくそ笑みながら考えをまとめる。

 

「ほう、これ一つでそんなにするのか?もしこれを渡したら部屋は何日分滞在できる?」

「何日でもどうぞ!なんでしたら大部屋の永住権をお渡しします!!」

 

そこまでいくか!?うわぁ、物凄く物欲しそうな目でこっちを見てくる。そんなにこの宿経営きびしいんだ・・・

 

「ふむそうか・・・そうさなぁ・・・」

「・・・・・・(ごくっ)」

 

間をあたえメイちゃんの反応を楽しんだ俺は決断をする。

 

「これを二本やるから大部屋一つの永住権と食事もタダにしてくれ。」

「・・・喜んで☆お兄さん、いやお兄様は我が宿の神様だねぇ!!こちら部屋の鍵だよ☆あと夜はなるべく静かにね?宿屋のアイドル、メイちゃんとの約束だぞっ☆」

 

あげると解かるや否や目を輝かせ上機嫌で大部屋の鍵を渡してくれた。

 

「という訳でシェラよ。大部屋に向かうぞ。」

「いいの!?すぐ準備するね!」

「「いやいや待て待て(待ってください。)!!」」

「ん?なにか用か?」

 

大部屋の永住権を手に入れた俺の前にディアヴロとレムが立ちはだかる。当然理由は解っている。

 

「何故大部屋一つの永住権だけなんだ!?しかもシェラと同室で!」

「そうです!なぜそのエルフを選ぶのですか!?」

「おやそれは異なことを、レムが言ったことではないか。『貧乏なりに、楽しく一人で過ごせばいい』とな。シェラは普通の部屋ですら厳しい程金銭に困っている。ならば貧しい者に施しを与えてやるのは神として当然のことであろう?」

 

そうこれは施しである。持つ者と持たざる者がいるのなら持たざる者に手を差し伸べるのは当然のこと。レムはディアヴロを養うだけのお金があるのだから大部屋くらい大丈夫だろう。よって消去法で俺はシェラと同室を選ぶ。これでハーフ&ハーフと言うものになるだろう。

言い出しっぺであるレムは「うぐッ」と声を漏らし、自分が言ったことを後悔していた。

 

「口は災いの元ということわざがある。いい教訓になったであろう。」

 

こうして俺は衣食住の食住をクリアした。ディアヴロとレムはもう一つの大部屋で妥協しお互いその場を後にした。

 

                        ◇

 

もらった鍵を使い大部屋へと入る。

 

「ふむ、悪くないな。」

 

大部屋というだけあり文字通り羽を伸ばしても困らないだろう。荷物を入れる大箱もあり収納も問題なく清掃も行き届いてあり居心地のいいことこのうえない。ただ一つ問題なのは部屋の真ん中に鎮座する大きなベットである。俺の羽を広げても充分収まるそのベットは明らかに二人で分け合って寝ろと言わんばかりに部屋の四割を埋めていた。なぜ横幅に広いのか?そもそもなぜ複数人で使う大部屋でベットが一つなのか?何かしらの意図を感じてしまう。

 

「ありがとね、あたしを選んでくれて。」

「例には及ばん。あのまま不毛な小競り合いを見るのは正直見飽きたのでな、早急に切り上げて腰を下ろそうとしたまでだ。」

「そっか・・・でも嬉しかった!それにしてもお部屋の永住権なんて取るなんてヴァルハラは凄いね!金塊なんてそうそう持てるものじゃないし!」

 

確かにアレには助かった。《ラグナレク》のアイテムポーチは一つの種類で99個収納できるタイプであり例えばリンゴなら赤リンゴと青リンゴを二つ別々に収納が出来ることになる。つまりリンゴが198個持てることになる。それが50種類まで収められるのだからかなりの収納量である。現在のところ『金の延べ棒』は32個『金の塊』が51個『砂金』が99個、これだけの課金アイテムがあればかなりの贅沢も出来るだろう(しないが)。あとで装備や貴重品の確認をしておこう。

 

「そうさな。たまたまアイテムポーチに混ざりこんでたのが役に立ったものだ。しばらくは金に困らないであろうがこのままでいる気はない。財を持っているだけでは消費しいつか底をつく。どこかで収入を得なくてはな。」

「そのためにも明日は冒険者登録しようね!ヴァルハラ達が居ればあたしも召喚士として登録できるんだから!」

「まてまて、前から思っていたが何故そこまで召喚士にこだわる?見た所射手としての腕も申し分ないと思うが、召喚士なぞ自分より弱いモンスターを使役するサーカスのピエロのような職だぞ?そんな職に就くより己が才を発揮できる職を選ぶべきだろう?」

「でもヴァルハラだって召喚術技ていう技で召喚獣を使役してるじゃん。」

「あれは私の力をフルに活用するための一端にすぎぬ。私の本業は魔術師と剣士の中間に位置しているのだ。射撃技もその為のものであり全ては私の戦い方に合うように調整している。」

「・・・ヴァルハラはあたしが召喚士に向いてないって言いたいの?」

「そうではない、なりたければなればいい。ただし召喚獣に頼りすぎるな。戦いにおいて最もに頼りになるのは己が磨き上げたスキルと経験だ。お前が召喚獣を使うなら召喚獣に負けない何かを磨き上げろ。契約した主が自分より劣っていて一生の恥だからなw」

「そういうものなの?本当に召喚獣がそう思うの?」

「当たり前だ。獣とはいえ知性はある。ディアヴロを見てみろ、アイツほどの強さがある奴が弱い奴に従うと思うか?現にお前たちが隷従される始末だ。だがお前自身ディアヴロが相手で良かったであろう?」

「それは・・そうだけど・・・」

「お前がどうしようと私には関係ないが、せっかく持ってる弓の腕だ。腐らせておくのはもったいなかろう?召喚士であり射手であれ磨けるものは磨いて損はない、さすればレムをあっと言わせることも叶おう。なんであれお前の人生だ。悔いの無いように生きよ。」

 

なんとも説教臭い事を言ったような気がする。シェラ自身余計なお世話だと思うだろうか?当の本人はポカーンとした顔で俺を見つめるだけだった。

 

「意外・・・ヴァルハラって優しくアドバイスとかしてくれるんだ。」

「貴様は私をどんな風に見ていたんだ!?」

「だって会ってからずっと人族を嫌ってるような事言ってたじゃん!」

「種族としてまとめるなら嫌いなのは当然であろう!?だが私とて出会った雑種の確認くらいするわ!まして今後共に行動するならなおのことな!」

「雑種って!あたしそんなに駄目じゃないもん!!」

「レムと小さいレベルでケンカする時点で充分雑種ではないか!!」

 

なぜこのようなことになってしまったのであろう?俺の振る舞いがそう思われるのは仕方ない事だが断じて人間が嫌いという訳では無い。こうして面と向かって話をする相手にはちゃんと向き合うし相談に乗ることくらいできる。シェラはどことなく抜けてるとこらがあるし何か俺達に隠していることが気になるので注意が必要だと思っている。

と意見し合ってるとドアをノックする音が聞こえた。まさかメイちゃんが騒ぎを聞きつけてやってきたかと思ったがドアを開けて出てきたのは見知らぬ女性であった。柔らかそうな水色のローブで、肩からくるぶしの高さをすっぽり覆っている。タイトなデザインなのでその豊満な体のラインがくっきり見える。そしてスリットからのぞく生足が非常にエロイ。さらに右目の下にある泣き黒子など非常によいチャームポイントである。俗に言う『ウホッ!いい女』である。いや意味が違うかも知れぬ。はたしてこの美女は何者であろうか?




レポート
『異世界に着て一日、無事街に着くことが出来た。途中同じ境遇の男とトラブルが起きたがなんとかしのぎ宿に泊まっている。だが早々来客が来て話をしなければいけないらしい。手早く終わらせたいが俺とディアブロの事だそう上手くいくはずがないだろう。    現在地・宿屋〈安心亭〉』
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