宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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ヤマトはまた暫くお休みです。ご容赦ください。

タイトルの元ネタは台湾沖航空戦です(展開は全く違いますが)。


第一章 外惑星防衛戦
海王星沖航空戦 -1-


「海王星基地への航空隊陸揚げ、進捗率75%!現在稼働機数3,000機を確保!」

 

「戦闘空母、20隻全艦に各200機のコスモパルサー搭載を完了。基地隊と合計で7,000機です!」

 

発令所の壇上に立つ副司令に各セクションから報告が飛び込む。正面のスクリーンは電源が落とされブラックアウト状態で、天井の照明も必要最低限で、各々顔を照らすのは手元のコンソールに埋め込まれたディスプレイの光のみだ。

 

そして、その場の全員の顔にも、疲労の色が浮かんでいる。司令を含む主要メンバーは現在作戦会議中で、この場には居ない。そしてその会議は丸2日に達し、交代のしようもない発令所の要員もほぼ無休で航空隊の陸揚げを敢行している。

 

陸揚げといってもガス・氷が主体の海王星には地表と呼べる物は存在しない。嘗て浮きドックという形で運用されていた物があったが、現在は風化により崩壊している。その代わりに、浮遊大陸を造成してそこに大規模な施設を確保している。

 

現在地球連邦防衛軍の航空戦力は、脆く高価でかつ運用機数の少ない空母・戦闘空母よりも、硬く安価で運用機数の多い基地航空隊を主力とする方向へと舵を切り始めていた。奇しくも太平洋戦争における日本海軍の戦略と殆ど同じである。

 

 

そもそも防衛戦に空母というのは些か過剰で、コストパフォーマンスでは恐らく最悪の部類に入るだろう。攻勢に出る気がなく、ただ耐え凌げば良いのであれば、複数の航空基地を用意すれば良いのであって、そちらに攻撃を誘引しつつ迎撃すればそれで何も問題は生じない。複数用意すれば修復中も別基地からの迎撃も可能で、修復の時間も稼げるだろう。

また、反抗戦で航空戦力が必要だとしても、近海まで寄ってきた敵部隊に打撃を与えるのがセオリーで、かつ高確率で反抗側の最初の一手になるので、空母といった洋上航空戦力は不要である。基地からの航続距離で十分だ。

 

こういった事はアメリカに対する防衛戦でも、太陽系に侵攻してくるガトランティスの邀撃でも大して変わらない。ただ1つ言うのなら、惑星・衛星(即ち航空基地)は黄道面に集中しているのに対し、ガトランティスは360°から侵攻する事ができるので、黄道面の上下方向に関しては穴が発生する事になる。その穴を埋めるのが機動艦隊なのだが、星間国家の用兵思想の問題なのか、天の上下方向から侵攻を受けることは未だに例がない。

 

 

「作戦会議はまだ終わらんのか……」

 

疲労の滲む声で、一言呟く副司令。発令所の空気を震わしたその声は、しかし誰にも届くこと無く消えてゆく。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「これがたった今第一機動艦隊から送られてきた、敵冥王星侵攻部隊の情報です」

 

海王星基地作戦指揮所

海王星基地の中でも最深部に位置し、電波遮断、完全防音など防諜性は最強クラスである。壁には往年のガトランティス戦役時の戦闘詳報が、壁紙を覆い隠そうと言わんばかりに貼り付けられている。狭い密室空間に、10名近い要員が丸2日も閉じ籠っているので、通常気温20℃・湿度30%に保たれているべき部屋は、気温29℃・湿度77%という蒸し暑い空間となっている。防諜のため、盗聴器を設置されても気付き辛い換気システムは存在せず、扉の隙間も完全に機密が維持されている。

 

「太陽系外縁天体の小規模施設攻略に4,000隻規模を投入か……惑星の大型基地に対しての攻撃なら万単位のそれを投入してくるだろうな……」

 

基地司令が睨むタブレットには、偵察機がカメラで捉えた画像と共に、離脱艦の情報、推定される敵艦隊規模、接触を続けた偵察機隊の画像情報が事細かに表示されている。

 

作戦指揮所に用意されているタブレットは、万が一不正な侵入を受けても問題ないように、カメラ・マイクは搭載されていない。

 

「恐らく、太陽系外周方向からの侵攻でしょうから、8,000機の内6,000機は制空用装備、1,200機は強襲用の準対艦特化装備、800機は重爆仕様で決定……ですか?」

 

「戦術作戦部長、君の立場からは何かあるか」

 

「敵の対空火力は相当です。動きの愚鈍な重爆機では接近前に撃破される恐れがあります。また、制空用装備でも、AAMを迎撃するだけの火力はデスバテーターにはありますから*1、空対空戦では機銃兵装を重視した方がよいかと……2,000機を紫雲仕様、4,500機を制空用装備、1,500機を準対艦特化装備でどうでしょう」

 

「意見具申!我が基地航空隊は、制空権を完全に掌握することのみに注力し、敵艦隊撃破は空母機動部隊による砲撃戦で遂行するべきと考えます!敵艦隊への積極的な攻撃はリスクが大きすぎます!」

 

基地航空隊の統括飛行班長が割って入る。

 

「現在展開中の部隊では、砲撃戦で1万の敵を撃破するには火力不足です。基地航空隊による漸減邀撃を要するものと判断します!」

 

その意見に食いつくのは、母艦20隻と、改ドレッドノート級40隻・スーパーアンドロメダ級50隻を預かる艦隊部部長。眉間に皺を寄せて睨むように、ここまで押し黙って聞き役に徹していたが、このタイミングで癇癪を起こしたように発言する。

 

その意見は水と油のように、混じり合うことはなく、最後まで妥協を許さなかった。

 

「戦術作戦部長、君の立場で最終的に決定してくれ」

 

基地司令は気力の限界と言わんばかりに決定を丸投げする。若干2名ほどから冷ややかな視線が寄せられている気もするが、完全にスルーして、タブレットに情報を入力していく。

 

「紫雲2,800機、制空装備3,500機、準対艦特化1,700機とします」

 

「しかし…」

「異論は認めない」

 

艦隊部の意見がほぼ全面的に通った形となり、対艦攻撃隊の定数が増加する。飛行班も食い下がるが、司令が鶴の一声で一蹴する。ここまで言われれば流石に退かざるを得ず、今度はそちらが押し黙ってしまう。

 

そんな中、室内にサイレンが鳴り響く。

 

《総員、第一種戦闘配置!繰り返す!総員、第一種戦闘配置!》

 

「海王星軌道、F23地点にて重力振を探知した模様!早く発令所に!」

 

声に反応して、弾かれたように全員が各々の持ち場へ散ってゆく。

 

「紫雲並びに制空装備隊、今すぐに全機上げろ!」

 

全速力で駆けながら、通信機に怒鳴り散らす。

 

《現在、カタパルト001番から220番まで開放!第一陣、全機発進中!》

 

発令所で指揮をとる副司令から無線が入る。カタパルトは001から900まで存在し、その1/4を使用して戦闘機隊が海王星の空を覆い尽くさんと飛び上がっていく。

 

「制空隊は編隊の構築を急げ!地対空ミサイル、用意!」

 

《制空隊展開率、第一陣は56%に到達。制空第二陣並びに第一次攻撃隊の準備作業、進捗率90%を突破!》

 

《敵艦隊をレーダーで捕捉!総数3,500を突破し、現在も急速に増加中!後衛空母群と思われる中型艦部隊より艦載機250機が展開!》

 

レーダー担当要員が叫ぶと同時に、扉が開く。

 

「間に合ったか」

 

「偵察機が間もなく前衛に接触します。制空隊第一陣は展開完了。敵艦載機隊への攻撃に向かっています。会敵まで10分も掛からない筈です」

 

航空隊を表す緑のグリッドが、一直線に赤い点群へ突き進んでいる。

 

戦いは始まったばかりだ。

*1
さすがにビビりすぎです。一瞬で直撃するのに対空砲火なんて当たるわけがないでしょう?




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