収束波動砲が次々とアポカリスク級を貫き、あっさりと撃沈まで追い込む。
エルナト級の拡散波動砲は、改ドレッドノート級やスーパーアンドロメダ級のそれよりも一発の威力は大きいが、収束波動砲の威力はそれすらも容易く上回る。
艦隊相手に使うのなら兎も角、要塞攻略や大型で愚鈍な重装甲艦に精密狙撃を行うのであれば、破壊力は凶悪の一言に尽きる。
「敵艦隊殲滅、敵航空部隊撃破を確認。無力化に成功。砲戦部隊への攻撃に移行する」
「後方機動部隊より入電!『艦隊司令部カラノ命ニヨリ現場デ待機サレタシ』」
「そうか……借りもんのお姫様に傷をつけさせる訳にはいかねぇなぁ……全艦、後方機動部隊の護衛に入る!」
『了解!』
統制のとれた動きで、スラスターを吹かしながら各艦が反転する。
刹那、警報器けたたましいサイレンと早期警戒機からの通信が同時に艦橋内に反響する。
急な来訪であるが、ある程度の予期はでき得ていたので、混乱することなく即座に反応する。
「右舷77°、距離62,000宇宙キロ。重力振を探知!数は少なくとも2,000以上!」
《海王星沖、64,000宇宙キロにワープアウト反応!3,500を超え尚も増大中!》
「総員、第一種戦闘配置!」
重低音の警報が艦内中に響き渡り、警戒感を引き立たせる。
「面舵一杯!反転して後衛部隊の援護に入る!舷側発射管開け!」
「艦首左舷発射管、バリアミサイル装填」
「撃ち方始め!」
艦首の左舷発射管が発射口を開放し、排煙スリットからは、開くと同時に白煙が吐き出される。直後に、僅かな時間差でバリアミサイルが飛び出し、応戦のため回頭している機動部隊と敵艦隊との間に壁を築く。
「左砲戦用意!」
「主砲左舷へ!」
「波動防壁、左舷に集中展開!」
「左舷多目的発射管、対艦ミサイル装填!」
「射撃目標、先頭の前期ゴストーク級!」
「誘導管制、艦橋指示の目標!」
「SSM、salvo!」
いち早く反転したエルナト級が速度を上げて機動部隊の下へ急行する。左を向いた主砲は、遥か遠くの敵艦を睨み、火を吹く時を今か今かと待っている。
「クラスD各艦は拡散波動砲のエネルギー充填開始!クラスSは全艦、我に続け!」
改ドレッドノート級はその場に留まり、拡散波動砲で焼き尽くさんと充填開始。対するスーパーアンドロメダ級は速度を上げて、加速しつつあるエルナト級を追い抜き隊列の先頭に出る。
「左舷、ミサイル攻撃始め!」
「左舷発射管、1番から5番まで開け!」
エルナト級各艦が舷側から白煙を吐き出すと、一拍遅れてスーパーアンドロメダ級も、ミサイルランチャーから右弦側へバックブラストを吐きながらミサイルを撃ち出す。
僅かに白煙を残しながら進むミサイルは新型の高速ミサイルであり、僅かな時間で敵艦隊へ到達する。
いきなりのミサイルの襲来で敵艦隊は大混乱に陥り、機動部隊の空母が海王星裏へ退避する時間を稼ぐ事ができた。被弾したミサイル艦は誘爆して周囲に爆炎を撒き散らしながら消えて行く。しかし、発射したミサイルの数が少なく、1割の撃沈にも至らない。
「取舵一杯、敵艦隊を正面に捉える!波動防壁、艦首に集中展開!主砲撃ち方始め!」
「ヨーソロー!」
「撃ちィ方ァ始めッ!」
背後に太陽ーそして地球もーを抱え、逆光の中砲撃を始める海王星守備隊。
38.1cm三連装収束圧縮型陽電子衝撃波砲に火がともり、真正面を睨んだ砲身から次々に砲撃が放たれる。
スーパーアンドロメダ級の35.6cm三連装陽電子衝撃砲も火を噴き、弾幕の密度は急激に高まる。
「艦首亜空間魚雷発射管、開け!」
「亜空間魚雷、一斉射!てぇっ!」
艦首の、左右で4本の切れ込みから、黒く細長い物体が飛び出したかと思うと、一瞬で周囲の景色を歪ませて、その波紋の中心へ消えてゆく。
「主砲、直撃弾を観測!」
「手を抜くな、まだ序の口だ!」
青の閃光が、ミサイル艦の艦首の
《エネルギー充填120%に到達!波動砲発射10秒前!》
「全艦、隊列を維持しつつ射線上から退避!小ワープ準備!近接戦闘で撃破する!」
《2…1…波動砲、発射ァ!》
「カウント省略!強攻ワープ!」
「ワープ!」
後方から滔々と迫る余剰次元の爆縮放射。光に等しいスピードで後ろから近づかれるが、淡い青い光を周囲に残して消える。
改ドレッドノート級の拡散波動砲はデスゾーンを作り出し、幾重にも重なる子弾が何者もの侵入を拒む。ミサイル艦の被弾に気を取られ、誘爆被害局限のため散開しようとして動きが鈍っていた敵艦隊は食い尽くされる。
それでもワープで次々と出現する敵艦隊だが、ワープアウト直後に至近から襲われ爆散する。
「第一戦速!右砲戦用意!右舷速射魚雷、牽制射!」
「クラスS各艦、ロケットランチャー一斉射!」
エルナト級の船体側面の四角い枠が穴に変わると、白煙を吐きながら短魚雷が次々と発射される。同時にスーパーアンドロメダ級のロケットランチャーが後方に白煙を吐きながらミサイルを放つ。
「正面に重力振!」
「回避運動!ヨーソロー!」
「ブレイク・ポート!」
「取舵一杯!」
「敵艦ワープアウト2秒前!」
レーダー士が叫ぶと同時に、操舵手は即座に反応して、指示通り回避に入る。急激な機動で大きなGが掛かるものの、正面衝突は辛うじて回避する。
「近接戦闘!」
「パルスレーザー、速射魚雷、テェッ!」
回避機動に船体が反応した直後、激しい衝撃をまき散らしながらカラクルム級が右舷側に現れる。
一瞬の沈黙。
直後パルスレーザーが火を噴き、零距離で撃ち込まれた射撃が装甲に傷をつける。速射魚雷が放たれ、一瞬で直撃して撃沈する。
「敵艦隊ワープアウト、さらに続く!」
「左舷距離44!次が来ます!」
「左舷、雷撃一斉射!波動防壁出力40%から60%へ!左舷に集中展開!」
白煙が左に発生すると、すぐに魚雷が飛び出して、直後に現れたカラクルム級に直撃して吹き飛ばす。
渦中へと突入したのはエルナト級のみであったが、1対多数が複数個所で繰り広げられ、あろうことか少数の側が次々と敵を食い破っていく。
「正面に重力振!反応大きい!」
「回避運動!」
「近すぎます!回避不能!」
「波動防壁、艦首に集中展開!出力100%!」
「零距離砲撃!突撃する!総員、衝撃に備え!」
「これはアマテラスではないんだぞ……っ!」
激しく揺れる艦橋で、艦長は自身に言い聞かせるように、声を絞り出すように呟いた。
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