宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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カスケードブラックホールは破壊された際、逆転現象によりこれまで巻き込んだ惑星を元の場所に吐き出し消滅した。



序章
地獄の前奏曲


「ヤマトは改装の結果として、06式波動コイルを搭載し、波動防壁を展開できる」

 

真田さんの声が会議室に響く。その場にはヤマト艦長の古代、地球防衛軍司令長官の西本、真田の補佐としてヤマト技術長の木下、戦闘班長の上条のほか、第一艦橋要員と、戦死した折原の代わりとしてレーダー担当に就いた西条 亜香里(あかり)が集まっていた。

 

西条亜香里

彼女は旧ヤマト航海時にレーダー交代要員を務めた西条 未来の娘で、高い情報処理能力を持っている。母親の往時を思い出させる長いストレートの黒髪に、青いカチューシャをつけ、母親と見紛う程よく似ている。

 

波動防壁は、船体に設置された波動コイルを介して波動エンジンの炉心内で開放される余剰次元を船体周囲に僅かずつ放出して次元震で外部からの接触を押し返す様にはじく。

 

ガミラス戦役時の99式波動コイルは陽電子ビームを多少は防御できるが稼働時間も20分程度で心もとなく、被弾経始厚も貧弱だった。

 

ガトランティス戦役時からディンギル戦役時までの艦艇に標準装備された01式波動コイルはより強靭な防御力を備えたが、ガトランティスのイーター、ディンギルのハイパー放射ミサイルを中心とした単分子切断刃を持つ実体兵器に有効な対抗方法を持たなかった。

 

後に開発された06式波動コイルは、次元波動振動による共鳴現象を利用し、高周波振動を敢えて波動防壁表面で発生させることで共振で振動を全体に伝え、接触した物体を分子レベルで粉砕する。

 

「なぜ今まで波動防壁を搭載していなかったんですか?」

 

手を挙げ質問する上条。たしかに。言われてみれば…と同意の声が上がる。

 

「再建と言っても、あの時は必要な時間を縮めるため、波動コイルの搭載は見送られていたんだ。ブルーノア級も波動コイルを搭載する前提で計画され、船体防御力自体は低めに設計されていたが、カスケードブラックホール発見に際して急遽建造工程が繰り上げられて搭載は中止された。ヤマトの場合は最初から波動コイルが搭載できないことが分かっていたから防御力を引き上げることになったがな」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「波動防壁継続展開状態におけるワープテストに入る」

 

改装の際、全長は延長されメインエンジンの六連波動炉心を搭載した波動エンジンの位置をずらすことで、補機ー改装で艦本式コスモタービン改8基2軸からケルビンインパルスエンジン2基2軸に換装されたーとの間に空いたスペースに新型の小型波動エンジンー六連装の物を1基のみに分割したーを搭載することで6連発トランジッション波動砲発射後の再起動がより迅速に行える。さらに波動防壁を展開しながらのワープや波動砲の発射、移動しながらの波動砲発射も可能になった。

 

「了解。ワープテストに入る」

 

小林の号令の下、船体が加速し、青い壁の向こうの星々が流れる。

 

「ワープ!」

 

ワープインから1ナノ秒足らずでワープから抜ける。

 

「ワープアウト。航法装置に支障なし。航行に問題なし」

 

「現在地点、地球から1万5300光年の地点。跳躍距離は1万5214.22光年。予想との誤差、11.87光年です」

 

小林、桜井の順で報告が上がる。

 

「各武装に問題なし」

 

「レーダー、正常に作動中。異常は認められません」

 

上条、西条が報告する。木下に視線を送る。

 

「波動防壁、展開状態良好。問題ありません」

 

「機関に異常なし。出力、安定」

 

徳川も報告する。

 

「艦内気密状態問題なし。各部異常なし」

 

大村の代わりに副長になった真田さんから状況が伝えられる。

 

「波動防壁、カット」

 

「了解。波動防壁、停止します」

 

船にまとわりついていた青い壁が消える。

 

「真田さん」

 

視線を送るとこちらを向いて真田さんが声を上げる。

 

「うむ」

 

「これより、2エンジン同時使用による全力超長々距離ワープ試験に入る。万が一に備え、総員、船外服を着用」

 

『了解!』

 

古代が丁度船外服を着こみ終わったくらいから、各部からの報告が第一艦橋に飛び込んでくる。300m超の船体が大きく首を振り、180°反転する。

 

《こちら掌帆部、各班船外服着用完了》

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

各部からの報告で全乗組員の着用が確認され、テストに入る。

 

「ワープ準備」

 

「機関、出力最大。メインエンジン、第二波動エンジン共に問題なし」

 

「ワープテストに入る」

 

艦内には警報が響き渡り、音階が不安を煽る。

 

「10、9、8、ワープ開始5秒前、3、2、1、ワープ!」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「ワープアウト。現在地点は地球よr

 

船体に衝撃が走る。

 

「機関室、状況を報告せよ」

 

真田さんが艦内通信をつなぎ、天馬兄弟に質問する。

 

《メインノズル用のエネルギー伝導管が破損。最大出力の72%以上は使えません!》

《第二波動エンジン、炉心内圧の急変によりコンプレッサストールが発生。完全に破壊され再起動不能!》

 

どちらかが翔で、もう一方が走だろうが今は関係ない。

 

「機関出力60%に」

 

古代の指示は爆音にかき消され、伝わることは無かった。

 

「被弾!右舷艦首に直撃!」

 

真田さんがダメコンの指示を飛ばす。

 

「右舷前方、2:32の方角に敵影!」

 

西条が叫ぶ。

 

「距離3200宇宙キロ。相対速度-17」

 

機関室に届くことのなかった指令を古代が再び伝える。

 

「機関出力90%、余剰の18%は波動防壁に回せ!上条、主砲発射用意」

 

再び青い楯をまとった船体が唸りを上げ、ノズルからタキオン粒子が煌く。黒く武骨な鉄の塊が右を向き今にも吠えんと言わんばかりに先端から光を漏らす。

 

「敵艦種識別、ガトランティスです!」

 

西条の悲鳴にも似た叫び声が上がったのはそれから間もなくだった。




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