宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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対白色彗星戦、着実に終局へと向かいつつあります。
次話以降の連続で繰り広げられる大きな戦いへの繋ぎのような回です。


幕間
艦隊集結


正面の三面モニターの右パネルを上1/3占有するデジタル時計が『2221/07/22/02:00:00:00:JST』を表示し、すぐ下には『2221/07/21/17:00:00:00:GMT』の字が並ぶ。

同時に、当直の士官が声を張り上げる。

 

「現在時刻、0200JST!相対距離400宇宙キロの白色彗星最接近予想時刻まで19時間を切りました」

「回収作業の進行度は!?」

 

「駐機中の航空隊、回収作業は最終第4フェーズ突入が18%、第3フェーズが27%、第2フェーズが、ええと…………51%、第1フェーズが4%!」

「作業完了は明日0335GMTで「艦隊司令部へはJSTで報告しろよ!」

「すみません!本日1235JSTです!」

 

天王星基地司令部。白色彗星を目前に控え、海王星基地に続いて退避が進められていた。非戦闘員は総員退去が済んでいたが、白色彗星との交戦のバックアップ用に大規模な戦力が集結していたこともあり、特に航空隊の退避に時間がかかっていた。

業を煮やして司令部に缶詰め状態だった司令が声を張り上げると、オペレーターの混乱が伝わってくる。

 

「白色彗星の重力場強まる!重力傾斜、33(パーミル)から37‰!」

「距離87,000宇宙キロから86,500宇宙キロへ」

「観測部隊より入電!前方白色彗星増速、です!」

「なんだと「天王星軌道到達予想時刻、修正1030JST!」

「回収作業間に合わない!」

「最接近距離、修正6,500宇宙キロ!」

「AIの予測、被攻撃確率は0.003%未満!」

「全部隊の退却を最優先する!観測は継続!艦隊司令部に暗号を打電、『白色彗星増速セリ 天王星軌道通過予想時刻 修正1030JST』針路、加速度他の情報も送れ」

「了解!」

 

航空管制室の喧騒が伝播していた司令部の中でも、例外的に静かだった通信士区画が俄かに騒ぎ出す。

 

「……了解、通達事項「退却中の仮設3701から3790戦隊の到着予想時刻は「航空隊回収終了時刻は現在より「基地自爆用波動掘削弾の起爆時刻は1300JSTを予定」

 

あちらこちらの通信コンソールで矢継ぎ早に艦隊司令部との会話が飛び交い、呼び出しの電子音が絶え間なく鳴り続ける。

 

「基地破棄に備え、全発電区画を閉鎖「航空隊撤収作業はバッテリーからの供給で続行せよ」非戦闘区画は全面通電カット、並びに総員退去。隔壁完全閉鎖並びに空調システム完全停止」司令部関連施設は非常電源に切り替え」

 

分厚い大気の中に浮かぶため発見しづらい天王星基地だったが、敵のエネルギー探知装置で基地が露呈するのを避けるため、不要システムはすべて停止する。

 

司令部を照らしていた煌々とした白色光が落ち、室内を照らすのは正面の大型モニターとオペレーター達のコンソールの光のみになる。

光の角度が変わったことにより、ほとんど徹夜で司令部に籠っている上層部の面々のクマが際立つ。げっそりとして青白い顔が司令部に並ぶ。

 

 


 

「白色彗星が加速!?」

「土星軌道通過予想日時は231時間20分早まり、8月1日の1320JST!」

 

()()()S()発動までのスケジュールを修正、カウントダウンを更新」

 

東京市街地地下

地球連邦航宙艦隊司令部

地球の全戦力を指揮下に収める防衛の要で、正面には五つに分割された巨大モニターが光る。そして、空中には赤と橙で『作戦発動迄-no data-計算中』と表示されている。

 

「試作情報表示システム、稼働状況は安定」

「仮設3201戦隊から3300戦隊は第3BBB戦隊への編入準備のため待機宙域へと移動開始。無人管制システム起動、戦闘AI ver.2221.07.4F33B7のベースラインAを全体共有」

「プランSの作戦決行が前倒しになった。()()()Y()用『試作Y砲』の設営準備急げ」

「AI全システムへの共有完了」

「プランS作戦開始は8月1日0400JSTに設定、全艦隊に情報共有!」

 

「古代、どう思う?」

 

そう問いかける西本。視線の先には、モニターをぼーっと見つめる古代の姿がある。

 

「えぇ、主力部隊は集結に間に合うでしょうが、機動部隊の出撃準備は、今から目いっぱいでやってギリギリ間に合うかどうか、ってところですかね」

 

「唐突なスケジュール繰り上げは艦載機運用において混乱を起こすからな。その混乱が命取りとなった事例は過去にいくつかある」

 

その言葉と共に、後ろの扉をくぐって真田さんが現れる。

 

「は?」

 

後ろからかけられた言葉を理解するのに時間がかかった古代は、理解してもその()()が分からずに頭にハテナマークを浮かべる。

 

「まぁ無理もないか。大昔の洋上戦……太平洋戦争での話だからな」

 

「ミッドウェー海戦か」

 

真田さんの言葉に一つ納得した様子で西本が答える。

 

「あぁ、それと命取りまで行かずとも危機に陥った事例ならセイロン島沖海戦もある。あの時は日本の機動部隊が英国の陸爆に爆撃を受け、夾叉弾を出した」

 

「セイロン……スリランカですか」

 

「それはさておいて、作戦準備完了し次第の参加を前提とするにしても、目標の土星軌道内側3,200宇宙キロラインが発動条件の三次作戦以降に投入すべきだろう」

 

「それなら原案から変更なしか……原案通りでも三次作戦での参戦だったからな」

 

西本がそこまで言い終わるや否や、オペレーターが切迫した声を上げる。

 

「天王星軌道に展開中の本部直轄、第2003戦闘団から報告!白色彗星正面に77,000隻のカラクルム級を捕捉!」

「天王星基地より緊急入電!『敵艦隊現出!数は確認できる範囲で6万を超え、尚も増大中!』」

「AIの予測、天王星へ向かう可能性は0.01%!」

 

「実戦も近い。プランSの発動は間近だ。その後の白色彗星の動きにもよるが、プランYの準備作業はできるだけ進めてくれ」

 

『了解!』

 

西本の言葉に、敬礼を返す真田さんと古代。そのまま踵を返して、廊下へ去る。

 

「真田さん、ホントにあの計画を実施するんですね」

 

「あぁ、嘗てのガトランティス戦役時の遺産、G計画と対を成す『Y計画』の焼き直しだが、アレを使う以外に白色彗星を破壊し尽くすことは叶わない」

 

「それと引き換えにしてヤマトの無期限凍結まで行うのはやり過ぎでは?」

 

「すぐに出番は来る。白色彗星中枢に突入してゴレムを起動させ、さらに継戦能力を維持して離脱できるのはヤマトを措いてほかにない」

 

「それで、新型波動コイルの前線配備は?」

 

真田さんの有無を言わさぬ気配に、古代は慌てて話題を変える。

 

「あぁ、エネルギー結膜の接続パターンの生成回路を単純なものに変えた改正型を実装している。オリジナルに比べ防御力は低いが、理論上はイーターIIにも対抗できる。しかし、本来の波動砲発射口に使用してのスプリッター運用、並びに六連発一斉射時の輻射防御にはオリジナルのスペックが必要だったから、六連炉心搭載艦艇にはオリジナルが搭載されている」

 

「それってつまり、ヤマトも拡散波動砲を?」

 

「あぁ、ドレッドノート級と同様の縦列薬室に換装した」

 

「一点集中での突破力の収束波動砲に加え、広範囲面制圧の拡散波動砲」

 

「あと、船体に被害を及ぼさず発射可能な六連発一斉射だ」

 

途中の技術本部の扉の前に差し掛かった真田さんは歩みを止め、扉に向き直ってから、古代に先に行くように促す。それに頷き返した古代は、真田さんに背を向けて去る。

 

ここから地球は、嘗てのガトランティス戦役を上回る期間の深い喧騒に飛び込んでいくことになる。




『Y計画』はオリジナル設定です。




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