宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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捷一号作戦 -3-

「第二艦隊、作戦宙域到達!」

「第三艦隊と合流、全艦エネルギー充填開始!」

 

「我々で白色彗星本体並びに敵艦隊の牽制を実施する!第1戦隊を中心に紡錘陣形へ!陣形を維持してワープに入る!」

 

ブルースカイの艦橋が俄かに騒ぎ出す。演算システムがフル稼働し、ワープタイミングを計る。

 

「ワープまで、3、2、1、ワープ!」

 

ブルースカイを先頭に、1,000を超える波動砲艦により構成された主力艦隊が、アステロイドベルト越しの土星に向けて次々と飛び込み、次元共振の波紋を虚空へ描き出す。

 

「ワープアウト、波動防壁出力97KPaで稼働中!」

「正面、白色彗星、距離120宇宙キロ!」

「現在位置、土星軌道より1,800宇宙キロ!」

「波動観測艦ムサシが長距離タキオン観測を実施、観測情報来ました!」

 

通信士がそう言うや否や、右側面モニターが一瞬ブラックアウトして観測情報の表示に切り替わるが、観測データが像を結ぶのに少し時間がかかる。その間にも、白色彗星から這い出してきた後期ゴストーク級の群れは、ミサイルの弾幕を撃ち込んでくる。

 

これまで正面戦闘を引き受けていた第六から第九までの艦隊と第二遊撃部隊の一斉攻撃で敵艦隊は鉄屑を残して消え、フェーベ別働隊の波動砲攻撃により白色彗星のガス雲を排除することに成功していた。しかし前進を阻むことはできず、再び土星が踏みしだかれるのを黙って見ているしかなかった。

そこへ到着した援軍に、当然ながら敵は殺到する。

 

「ミサイル多数接近!」

「対空戦闘用意!主砲、副砲、敵艦に火力を集中、撃ち方始め!」

「艦首に波動防壁集中展開!」

 

対応の間に、意味のない線だった表示が白色彗星の形になり、その中に更に像を結ぶと、航海ブリッジに詰めていた司令部の面々は困惑する。

 

戦闘ブリッジから艦内放送で伝わってくる戦況を聞きながらも、どう打って出るべきかのやりとりを交わす。

 

「光学観測できる3個惑星の内部に、虚数次元の亜空間が存在している……とはどういうことだ」

 

「つまり、有限の平面……厚みが0である二次元平面のことですが、その内部に半ば無限に近い空間を畳み込んでいるということです」

 

「その内部には何が?」

 

「現状のタキオンビーム出力での観測は不可能ですので、目下、第二次観測を実施中です」

 

「それと、上部の白色彗星……いや、()()()()()()()()と呼ぼうか……そこの観測不可能……ブラックエリアにはガトランティスの指揮中枢とゴレムが存在するんだな?」

 

「はい。そうみて間違いありません」

 

「侵入孔が存在しないとなると……どうすべきなんだ」

 

送られてきた詳細な観測情報を印刷した書類を睨みながら、別の士官が技術部門の担当者に尋ねる。

 

「観測不可能域……便宜上ブラックボックスと呼称しますが、このブラックボックスの規模的に、2203年にヤマトが突入したカラクルム級の培養所がそこにあるとは考えづらいのです」

 

「どういうことだ」

 

「ヤマトは、その()()()経由での侵入に成功しました。つまり、ブラックボックス外の()()()にさえ辿り着ければ、侵入は可能というということです」

 

「その培養所の場所は?」

 

「不明です。ですが、相当規模の空間で、しかも超空間通信が完全に反響するとなると、『次元の割れ目』もしくは『ボイド空間』といった虚無空間が存在していると考えられます」

 

「ということは、プラネットキャプチャー内の惑星が持つ虚数次元亜空間がそれの可能性があるな」

 

「はい。技術本部でもその可能性が取り上げられ、現在実施中のムサシの第二次観測はその点についても調査するものです」

 

「ならば、我々が実施すべきは敵艦隊の漸減と敵重力源の破壊、滅びの方舟の動力源に可能な限りダメージを与えること……か」

 

《後退中の第六、第七、第八、第九艦隊ならびに、第二遊撃部隊より入電!白色彗星増速!》

《第一次作戦中の全艦隊、敵正面艦隊の誘因に成功!》

《第十艦隊、第十一艦隊全艦、白色彗星内部へショートワープで突撃!陽動しろ!》

 

この会話の間にも戦局は変化を辿り、ガス雲を薙ぎ払った白色彗星本体に無人艦隊が突入、主力艦隊麾下の波動砲攻撃を間近に控えていた。

 

「プラネットキャッチャー周辺にエネルギー場の形成を確認!」

「全艦エネルギー充填95%!」

「重力子スプレッド展開を確認!重力フィールド、レンズ収束率は理論値との誤差、0.003%!」

「全艦収束波動砲、発射用意!照準固定、22,-13!」

 

「総員、耐ショック耐閃光防御!」

「エネルギー充填120%!」

 

「発射まで、5、4、3、2、1、発射!」

 

2,000本以上の波動砲の筋が重力フィールドで束ねられ、一本の莫大な槍となって白色彗星へと迫る。

 

その先端が白色彗星のプラネットキャプチャーに触れようかという瞬間、赤色の輪が現れてその面で波動砲が留められる。しかし直後に、表面にヒビが入り、そのヒビは一瞬で放射状に広がる。

 

刹那、エネルギーに耐えきれなくなった構造体が砕け散り、プラネットキャプチャーの支持部へと波動砲の濁流が迫る。

 

直撃した波動砲が支持部の構造を吹き飛ばし、18本のプラネットキャプチャーのうちの3本を弾き飛ばす。それだけにとどまらなかった余波は、上部都市部をも抉り、ブラックボックスエリアの外部装甲が露出する。黒光りする異様な幾何学模様を明滅させながら、威圧感を湛える装飾は形を維持したままだった。

 

「全艦、波動砲第二射用意!」

 

「突入した第十艦隊、第十一艦隊、重力源への攻撃開始!波動掘削弾搭載の無人機部隊が発進!」

「周辺の敵艦隊排除成功の信号を受信!」

「無人艦隊も波動砲発射態勢へ!」

 

「重力フィールド、再展開!」

「エネルギー充填105%!」

「照準固定、28,-7!」

 

「全艦エネルギー充填120%!」

 

「カウント省略!波動砲、発射ァッ!」

 

再びの直撃が都市帝国を襲い、更に1本のプラネットキャプチャーを弾き飛ばす。

ブラックボックスの露出部に照準を集中した一撃は、上構をさらに削り、露出範囲を大きく広げる。しかし、ブラックボックスの外部装甲はビクともせず、幾何学模様にも一切の掠れは無い。

 

「総エネルギー量で言えば2202年土星沖海戦時の90倍になる攻撃を2回浴びても尚、無傷で耐える構造か……」

 

「あれこそが()()()()()の本体……」

 

「全艦、白色彗星内部へ突入、第十艦隊、第十一艦隊の重力源破壊を援護する!」

 

「ワープ!」

 

 




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