突如として亡国のイージスにインスパイアされてスパイ、というか謀略の張り合いがちょっとだけあります。
(柄でもないのに……)
ヤシマ作戦 -1-
「現在作戦行動中の全艦隊は、速やかに月軌道に集結。敵正面艦隊の撃破に専念されたし」
「亜空間バイパスの敷設状況は!?」
「現在、第423,000までの
「試製Y砲、組立状況は!?」
「エリス基地よりの報告によると、予定より1時間30分遅れで最終艤装段階に突入。撃鉄動作確認、最終次超高圧タキオン収束解放システムのテストリスト1,203項目、触媒投入作業の全ての終了はあと7時間で終わらせるそうです。また明日0040には、射撃位置への固定終了、並びに軌道諸元入力、弾道演算、重力場・磁場・量子ゆらぎの影響の最終補正作業に入るとのことです」
「突入艦隊旗艦ヤマト、状況を知らせ」
《こちらヤマト、現在メインデータリンクシステムの最終チェック、デバッグ作業中。突入艦隊の随伴無人戦隊は各部点検完了、各艦のビルトインテストシステムも問題なしの情報をよこしています》
「大気圏上層の防護フィールド展開作業は!?」
「現在、狙撃時刻時にガトランティス側を向く米大陸上空の防護フィールドは展開完了。現在、大西洋から西欧にかけてと中部太平洋ハワイ周辺からマリアナ周辺までの上空の展張作業に取り掛かっています」
「主力艦隊再出撃準備状況は」
《こちら臨時旗艦ブルースカイ。ブルーノアの修復作業は、副砲群の搭載を省略して本日1930に完了予定、明日0300には衛星軌道への投入作業を完了できます》
《こちら機動部隊主力。無人機部隊への換装作業は本日2230に終了予定。後背奇襲に備え、明日0030には白色彗星裏に展開します》
地下区画
地球連邦軍艦隊司令部
ガミラス戦役時に建築されたものの、ガトランティス戦役時、太陽の核融合加速時、ディンギル戦役時に地下シェルターとして利用されたため機能増強・改築が行われ、充分な施設が整っている。
アマール航海において大破したブルーノアが地球へと回航されたのは今年4月。船体の骨組みを残して焼け爛れた装甲板を剥がし、一基の砲塔を残して全て脱落した主砲塔を再艤装。面影を残していなかったバーベットリングは全て焼き切って、新造したものを積みなおした。
この艤装工事に所要した期間は約4ヶ月。今まで地下ドックでその身を焦がしていたが、土壇場のこの局面で実戦に復帰することになった。
「波動掘削弾の要求量は必要最低限の概算で導かれた下限でも100,000発、上界では140,000発に達します。敵艦隊から抵抗を受けるとして、1.3倍は欲しいのですが……」
「コスモパルサーには最大4発、無人機隊は1発、と計算して、残存するアークツルス級戦闘空母に
「白色彗星、重力源の機能回復率32.4%!重力傾斜、月軌道にて44‰に到達!」
「第103BBB戦隊、ヤマト隊と連携しての白色彗星内部突入準備を進めろ。第104、105BBB戦隊を吸収して火星軌道へ進出、背後からの奇襲に備え待機」
《こちらヤマト。コスモウェーブパターン生成システム、オールグリーン。主管制システムとの直結を確認》
地下ドックで、僅かな明かりに照らされ、甲板では溶接の光が瞬く。第一艦橋の窓からそれを見下ろしながら、古代は司令部と通信していた。
その司令部との交信も終わり、後ろを振り返る古代。これから切り出す話の内容を聞かれては不味いので、それぞれ作業を任せて人払いをしてある艦橋は、普段以上に広い。
「それで、コスモウェーブのパターンが無機的な機械構造で再現できるとでも言うんですか、真田さん」
古代は、今まで疑問に思っていた質問をぶつける。
「それは、どういう意図だ?」
「決まり切ってることでしょう。前回突入時にコスモウェーブのコントロールを務めた桂木透子の身体は失われている。今回は
「……」
「答えてください!」
「これを口外した場合、君の命は無くなるものと思え」
そう言い放つや否や、「話の続きは自動航法室でだ」と古代を制し、足早に主幹エレベータに乗る真田。それについて古代も乗り込み、ボタンを押す。扉が閉まっても、お互い口を開くこともなく、沈黙が重くのしかかる。
第一主砲塔が露出する第1露天甲板の1層下、第1甲板を艦首方向へ歩いていく古代と真田。各部から作業用に引かれた通電ケーブルが壁際をより雑多にしている。
「触るな」
「E-22ケーブル/2320に撤去」
「保安部:臨戦態勢のため明日0100までに全撤去」
辺りを見渡すと、そこら中にマーカーで殴り書きされた付箋が貼り付いている。所々にある隔壁の扉は大量のケーブルが集中して、床が覆われて見えない。迂闊にケーブルを踏まないように体を捩りながら、潜り抜ける。
そうこうして、自動航法室前の三叉路に辿り着く。装置直下の制御室に入り、自身のIDカードを通す真田。しかし、モニターは『Error』の文字を表示し、その下には『401 Unauthorized』の文と共に返される。
「!」
背後に蠢いた気配に気づいた時には、既に背中に銃口を当てられ、古代も真田も身動きが取れなくなっている。
「いやぁ、驚きましたよ。お二人揃って現れるとは」
そこには、
「パスコードと権限レベルの割り当ては変更させてもらいました」
にこやかな表情のまま銃口を向けながら、コンソールでパスワードを入力しIDカードを通す。『Success』を表示したモニターから視線を上げると、ロックが解除された階段が通路へ降りてくる様子が見える。
「話は中でしましょうか」
有無を言わさぬ圧力で語りかけた星名は、銃口を向けたまま上へ促す。
「君は確か、特殊作戦課第1班に転属していたな。西本長官の差し金か?」
「さすが技術部長を務めていただけありますね、真田さん。その通りです」
「だがなぜ……」
「造作もないことだ。今から君が触れる情報は、軍機に属するものだからな」
階段を上がり切って中に入ると、星名は一瞥もくれずに銃口を向けたまま、脇のコンソールを操作して階段を格納する。
「それでは、
「どうぞ、お構いなく。僕の仕事は口外されないよう監視するだけですから」
真田さんが生命維持カプセルのコンソールに近寄り、操作をすると、白濁していたカバーが透明になる。
「!?」
その中には、意外な人物が入っていた。
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