宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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そろそろ独自解釈が本格的に話に絡んできます。


ヤシマ作戦 -2-

「土方……艦長……!」

 

驚愕で口を開けたまま固まる古代。そこに真田さんの言葉が追い打ちをかける。

 

「彼もまた、蘇生体だったのだ」

 

「いつから気が付いていたんですか……」

 

「私も知らされたのは技術本部長になってからだ」

 

そう答えると、古代の横に立ち、透明になったシェルに手を触れる真田さん。

 

「あの突入の後、崩落した構造の下敷きになった土方艦長の身体は、政府の公安部によって回収され、その後防衛本部の地下最深部で検体として保管されていたそうです」

 

「超高画質カメラの映像を読唇ソフトにかけて得られたデスラーの発言が大きなヒントになった」

 

「それはどういう……」

 

「デスラーの座乗艦に小ワープで突撃した時に、『素早い対応ですね。総統は読まれていたのですか?』とミルに質問された後の回答だ。『()()の考えは似てくるものなのだよ』という」

 

「同類……そういうことですか」

 

「さらに言えば、第十一番惑星で一時通信が途切れた後発見されているといった点から、スパイの候補には入っていたんだ」

 

「……」

 

黙り込む古代。そこにダメ押しと言わんばかりに言葉をつないでいく。

 

「これが決定的証拠になったのだが、キーマンが艦長に委ねた筈の反波動格子のコントローラが、加藤に渡った案件があっただろう。幾ら斎藤が怪しまれずに行動出来て、桂木透子の手引きがあったとしても尚、起こりうるはずがないんだ」

 

真田さんの言葉に、星名が更に付け足す。

 

「それにゼムリアに不時着した時、ゼムリア人の遺跡調査に斎藤が離れている最中に桂木透子に対する襲撃がありました。医務室の監視カメラに襲撃者の姿は映ってはいなかったのですが、遭遇した森船務長の『土方宙将』という発言が録音されていました」

 

星名がそこまで言い終わると、真田さんが訝しむような目を向ける。

 

「その情報を知り得たのは、ヤマトの情報が集中する情報処理部門の人間と、トップのごく数名に限られている筈だ。幾ら君が西本長官の差し金とはいえ、易々と口外されるはずがない……君は、()()?」

 


 

「どうだ、ジャップのHQ(Head Quarter)は落とせそうか」

 

米国内務省長官執務室

 

「足元を掬うためのアンカー(イカリ)は沈めました。こちらから作戦開始の指示を出せば、10分以内に行動を開始するでしょう」

 

防諜区画の底、政府高官用にあてがわれた個室で、秘書と会話する男が1人。

 

「外に対し全力を向けている最中ともなれば、作戦の成功確率は上がるな」

 

「正にガトランティスの侵攻を利用した形ですか……しかしなぜ今なのです」

 

「もし日本主導のプランYが成功すれば、白色彗星が去った後の地球のパワーバランスは日本への一極集中が進む。それは我が国の威信に懸けて阻止せねばならない」

 

「それだけではないでしょう」

 

「全く、優秀な部下を持つというのも考え物だな。もちろん、今のことだけではないさ。日本のMr.サナダは軍縮的なイデオロギーを持つ人間だ。彼が発案したプランYが成功すれば、彼の発言力はさらに強まる。我々の支持基盤の軍需産業を失望させるわけにはいかない」

 

「そうですkっ……」

 

そう言いかけて倒れる秘書。小さな破裂音がした室内には、僅かな硝煙の匂いと濃厚な血潮の匂いが立ち込める。

 

「ご苦労だった、特殊班の諸君。まさか私の片腕として動いてくれていた彼が、イチガヤのスパイだったとはね。聞かされた時は驚いたよ」

 

男がそう言うと、壁際の本棚を破って3人の屈強な男が現れる。1人の手には、今も銃口から白煙を漂わせるサイレンサー装備のライフルが握られており、他2名は拳銃を手にしている。

 

「ここから先、この作戦は()()の管轄です」

 

そう言って男に拳銃を向ける隊員。男は一度面食らうが、すぐにすべてを悟ったような表情になる。

 

「なるほど、踊らされていた訳か」

 

その表情は嘆息を含んでいるようでもあり、自嘲の笑みを浮かべているようでもあった。

 

「ええ。あなたは()()にとって、いや、我が国には不要になった」

 

「分かっている。さあ、撃ちたまえ」

 

隊員は一瞥もくれずに引き金を引く。抵抗しなかった男のこめかみに直撃した鉛弾は、一瞬で意識を刈り取った。

 


 

眉を顰めたまま星名に向き直り、真田さんは疑問を口にする。

 

「君は、……()()?」

 

「星名透……米国情報本部、IAA(Intelligence Assassination Agency)第314特殊排撃班、通称314SOF(Special Offensive Force)所属戦闘員ですよ」

 

言い終わらないうちに、古代へ向けてその手に握られた南部97式拳銃を投擲する。ほとんどノーモーションで投げられたとは思えないくらいの速さと威力で、反応が遅れた古代のこめかみに直撃し、衝撃で後ろへのけ反る。

 

「古代!」

 

そちらに気を取られた真田さんは、壁を蹴って瞬発的に距離を詰めた星名に床へ引き倒される。

 

「くっ」

 

猫の俊敏さ・体のしなやかさと、肉食獣の獰猛さで、人間離れした動きで襲い来る星名。

 

倒れる真田さんの背後に回り込み、壁へ背負い投げる星名。

 

体を起こした古代に感づくや否や、真田さんを隅へ追いやる片手間で、一瞥もなく首筋に手刀を叩き込み気絶させる。

 

その動作と同時並行的に真田さんの首元へ伸ばされる手。払いのけようとする手が触れるよりも前に、反対の拳が鳩尾にねじ込まれる。

息が一瞬止まり咳が飛び出すが、その身体の反射の前に、星名の手は喉元へかかり、それに押されるようにして真田は隅の壁に叩きつけられる。

 

「314SOF……パイ(π)、部隊……か…………」

 

ジリジリと喉を締め上げられ、気道が塞がっていく中でひねり出した声は、途切れ途切れで掠れていた。

 

「その通り、ご名答です……っ!?」

 

言い切った直後、自動航法室に銃声が響き、星名は反射的に飛び退く。首元の拘束が解けた真田さんは床に崩れ落ち、激しく咳込む。

 

苦しさに漏れた涙で滲む視界の中で真田さんが見上げると、星名以外にもう1人の人が立っていた。

何時からそこにいたのか、そんな疑問を抱かせるほどに場の空気に溶け込んでいたその人は、まさに()()()()()()()()と称すべき現れ方だった。

 

よく見ると、星名の左肩には小さな銃創があり、そこから血が流れている。

 

傷口を見ようと思わず視線を逸らした星名に、立て続けに銃弾が2発撃ち込まれる。今度は左上腕と、右の脇腹の皮すれすれに傷が刻み込まれる。

 

「こんなところで野垂れ死にしたくないならば、1%も気を抜かないこと、星名」

 

()()()()()()()()()()現れ方をした星名といい、なぜにこうも人間が何も無い筈の空間から現れるのか、そんな疑問は一瞬で消え去った。

 

そこに立っていたのが、意外過ぎる人間だったからだ。




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