宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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ヤシマ作戦 -4-

0時ちょうどを告げる時報の電子音が司令部に響く。

一瞬の静寂の後、予定通りの行動が始まる。

 

「フェーズ0を開始、全発電施設は、速やかに『特電路』よりエリス基地仮設蓄電施設へ」

「全管区、発電施設出力最大へ」

「極東管区特高圧変電所、増設第二変電所、昇圧作業開始。一部電力は多段昇圧システム起動電源に回せ」

 

主モニターの中央に、世界各地の各管区での作業の進捗が表示される。

 

「特高圧集積バイパス、仮設特殊高圧変電所への回路接続」

「特殊高圧変電所、昇圧作業は順調。電圧ゆらぎも、予想値範囲内」

 

《こちらエリス仮設第二要塞。Y砲の最終艤装作業完了、受電システム問題なし》

 

「こちら地球司令部。了解。狙撃タイミングまで待機」

 

《了解》

 

地球の電力は、波動エンジンを応用した無限動力で賄われている。それでも、有限時間内での生成エネルギーは有限であるため、管区ごとに多数の発電所が動いている。

狙撃に必要なエネルギーを溜める為に、全ての発電施設がフル稼働でエネルギーをECCへ送っている。

 

「phase0-step1から、step2へ」

 

「他管区の特高圧変電所、昇圧作業開始。並びに多段昇圧システム、起動電力充分、昇圧炉臨界点到達」

「全管区の特殊高圧電力、誘導電路を経由して多段昇圧システムへ注入開始。多段昇圧システム、出力80%に到達」

「最終次、全電源ラインをECC電路へ直結、充電開始」

「ECC全蓄電容量の0.03%が充電開始」

「狙撃可能まで、あと2,800秒」

 

「全艦隊に通達、攻撃開始」

「各艦隊に打電、phase1に移行、全部隊は所定通り作戦行動開始」

 

通信コンソール区画が騒ぎ出し、予備電源に切り替わった非常灯がいつにも増して薄暗かった司令部が、限定的ながら活気を取り戻す。

 


 

「司令部より暗号を受信『ヤシマ作戦発動、phase1開始。各艦隊は陽動を開始せよ』です」

 

「敵前衛艦隊を排除する。第一・第二艦隊は波動砲発射用意、主力艦隊は各艦波動防壁を最大出力に、敵の攻撃を引き付ける」

 

戦列復帰に合わせて、主力艦隊旗艦に再就役したブルーノアの艦橋。臨時主力艦隊旗艦の役目を終えて第一艦隊旗艦へと戻ったブルースカイの艦隊指揮機能とは大違いで、いくら同型艦とはいえ、全艦隊の総旗艦の通信能力はやはり別格だった。

 

「火器管制、オールグリーン。接近中の敵を捕捉、優先度順に対応艦を割り振り開始」

「主砲、1番から4番、正面目標カラクルム級、撃ち方始め」

「テェッ!」

 

「亜空間魚雷、発射管開け」

「測敵よし!」

「撃ち方始め!」

 

「正面のカラクルム級1,200を殲滅、後続に前期ゴストーク級1,500、カラクルム級3,500の艦隊を捕捉。高次元エネルギー反応も観測」

「亜空間魚雷第二斉射用意、主砲全火力を正面へ」

 

「敵艦隊後方に、アポカリプス級200、カラクルム級320,000、後期ゴストーク級*1と思しき反応が1,200,000、白色彗星内部より出てきます」

 

「120万……」

 

「第一・第二艦隊、波動砲発射準備完了」

「射線上から退避する、面舵一杯!」

 

第一・第二艦隊のアークツルス級から重力子スプレッドが放たれ、1,000を優に超える波動砲を束ね上げる。

途轍もなく太い1本の光の矢となって、主力艦隊の布陣の中央の開口部から飛び出した一撃は100万以上の敵艦を全て消滅させ、何事も無かったかのように白色彗星へ迫る。

 

その攻撃は、最終的にガス帯を払うのみに留まったものの、白色彗星内部の敵艦隊を更に外部へ吊り出すことには成功した。

 

「白色彗星内部より、カラクルム級3,000,000が出現、全幅3,000宇宙キロで密集陣形を構築」

 

「『藪をつついて蛇を出す』とはこのことでは」

 

「『虎穴に入らずんば虎子を得ず』分かっているだろう?」

 

「愚問でしたね」

 

「第一・第二艦隊、波動砲第二射充填開始」

「第十三・十四艦隊、第一・第二艦隊に合流、波動砲充填開始」

 

「カラクルム級、先頭との距離900宇宙キロ」

「ホーミング波動砲1斉射の後、射線上より退避する」

「エルナト級は先行して射線上より退避」

 

「ホーミング波動砲、敵陣の上下を挟み込むように設定、敵陣形を圧迫して波動砲の射線上へ誘導」

「エネルギー充填120%、射撃盤に諸元入力よろし!」

「テェッ!」

「取舵一杯、射線上から退避」

「敵艦発砲!」

「波動防壁出力を最大に!射線から退避次第、バリアミサイルを波動砲に干渉しないよう展張距離設定して斉射」

 

「第一・第二艦隊、エネルギー充填120%、波動砲発射!」

 

至近を通過する波動砲の衝撃に、ブルーノアの船体も揺さぶられる。

 

再びの波動砲が今度は莫大な数のカラクルム級を襲い、無に帰す。再びの着弾にも耐えた白色彗星は、圧力を保ったまま微速前進を続ける。

 

「重力炉の再破壊を実施する。全艦、白色彗星内部へ突入準備」

 

「第十五艦隊並びに第75から94BBB戦隊、先行して突入」

「白色彗星内にワープアウト反応、IFF信号、第十五艦隊です」

 

「主力艦隊全艦、並びに第三・第四・第五艦隊で突入する。機動部隊護衛の第六・第七・第八艦隊は待機、波動砲発射直後の第一・第二艦隊は態勢を整えてから突入」

「波動砲による重力炉攻撃後、連続して本艦の無人機隊により波動掘削弾攻撃を行い、重力炉を破壊する」

 

第十五艦隊からの『周辺敵排除完了』を意味する『コードブルー』の受信を今か今かと待ちながら、ワープ陣形の構築に移る主力艦隊。月面基地から出撃した第三・第四・第五艦隊も、衛星軌道上で突入隊形を構築する。

 

「『コードブルー』を受信!」

「全艦、ワープ!」

 


 

「惑星内の虚数次元亜空間の探知、完了しました!」

 

その声が響いたのは、白色彗星が月軌道に差し掛かろうかというタイミング、ヤシマ作戦発動の12時間前だった。

白色彗星の前進に伴って、防衛艦隊は後退を繰り返す。

そうして目まぐるしく変化する安全宙域は、波動実験艦『ムサシ』に暫くの間、安定した観測を許さなかった。

 

「やはり虚数空間内に()()()があったか……」

 

「ヤマトが突入してゴレムを起動し、滅びの方舟本体を引き出してから狙撃、真田副長、どれだけかかる?」

 

すぐさまマイクを取ってヤマトに繋ぐ西本。地下ドックで整備中のヤマトには、有線回線でデータが共有されている。

 

《恐らく、突入から離脱まで35分程度かと。それ以前の防御シールド・重力炉破壊も合わせると45分、でしょうか》

 

司令部とヤマトで開かれた通信回線。白色彗星の襲来に備え、地下都市への住民の退避も進んでいる中、地球艦隊司令部も旧地下都市の旧防衛軍本部へと移っている。

 

「了解した」

 


 

まばゆい光が白色彗星のガス層を取り払い、内部の都市帝国を露出させる。その姿は、地球大気圏内を上昇していたヤマトからも、はっきりと肉眼視できた。

 

「主力艦隊、並びに重力炉破壊部隊、白色彗星内に突入」

 

IFF信号を確認している桜井が声を上げる。

 

「内部のエネルギー反応高まる、重力炉に対する波動砲攻撃の準備と思われます」

 

桜井との横で、彼とは別のデータを睨む木下も報告する。

 

《電磁衝撃波の直撃回避のため、ヤマト以下突入隊は亜空間航行へ移行されたし》

 

中西が、ブルーノアからの直接通信を第一艦橋に再生する。

 

「こちらヤマト、了解。潜航まで残り40秒!」

 

真田さんが応答すると同時に、艦内通信で潜航までの時間を知らせる。

 

「全艦に達する。これよりヤマトは亜空間潜航を経て大帝玉座の間への突入を実行する」

 

真田さんが言い終わると同時に、マイクを艦内放送に繋ぐ古代。

 

「嘗てヤマトが通った道であり、ガトランティスのアキレス腱である。それ故に敵の防御も厚い」

 

随伴艦隊は全て無人艦で、喪失のリスクを無視できる存在だったが、ヤマトだけは違った。

 

「しかし同時に、地球と、この宇宙に生きとし生ける全てのヒト型知的生命の未来を握る一戦になる」

 

嘗てのガトランティス戦役での『奇跡』に懸けて、全ての願いがヤマトに託されている。

 

「総員、第一種戦闘配置!最後の最後まで戦い抜く、その覚悟で当たれ!」

 

古代の檄も入り、否が応でもヤマトの中に一種の緊張感が走る。

古代の言葉の裏で進んでいた潜航準備も整い、ヤマトは最後の戦いへと赴く。

*1
『ゴストーク=ジェノサイドスレイブ』という名前らしい。以後は地球側の分類呼称としては『後期ゴストーク級』で統一




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