「艦橋シャッター閉鎖、計器航法へ移行」
小林の腕に力が篭る。
「主機、フライホイールによる運動量保存を維持したまま動力停止。補機、出力80%から90%へ」
「次元遷移弁開放、亜空間結節点生成システム起動」
「第二波動エンジンより起動動力注入開始、潜航と同時に第二波動エンジン停止、用意!」
「亜空間結節点発生を確認、随伴艦隊、突入開始」
ヤマトが殿となって突入するのに、随伴艦が全艦突入するのを待った。全員が固唾を呑み、ヤマトも亜空間へ突入する。
「第二波動エンジン、動力停止。補機、出力90%で安定」
「主砲乙弾装填よろし」
「次元境界面の変動を観測、重力井戸が崩壊」
「境界面に波動を確認、重力波、来ます!」
「総員衝撃に備え!」
横から激しく揺さぶられるヤマト。通常空間であれば激しい電磁障害を伴って襲うはずの衝撃は、亜空間に伝播できた重力波だけで収まる。
「浮上予定地点まで、あと20秒」
ナビゲートを務める桜井の声が艦橋に響き、全員が天井のモニターを見上げる。
そこにはヤマトの前面展望がカメラ経由で映されている。そしてヤマトの正面の、見渡す限りの青緑の空間に差す、赤い光の帯がはっきりと映り込んでいた。
「重力バラスト放出準備、補機出力を100%へ」
「補機、出力最大!」
「浮上地点到達、浮上開始!」
「メインタクブロー、上げ舵30、補機前進いっぱーい!」
艦首下部のスラスターが火を吹き、ヤマトの巨体が首を擡げる。補助ノズルの長い炎も更に伸び、上へ上へと鉄の箱を押し上げる。
「主機再始動、波動防壁を起動!」
艦橋の頂上部が、何もない空間の中に突如として現れる。みるみるうちに下から、次々に残りの部分が浮上してくる。
不揃いなカラクルム級が上下を挟む中に、大量の随伴艦隊も続けて出現する。
「以前に突入した際のルートを表示しろ。小林、最大戦速!」
「了解!」
以前は桂木透子がメインフレーム経由で導いてくれたが、今回箱に収まっているのは無意識の屍。当然、生成できるコスモウェーブも、敵からのコスモウェーブによる干渉を跳ね除ける程度の、所詮『お守り代わり』でしかない。
それが今回随伴艦隊を伴ってきた理由でもある。
「レーダー、探知状況は
「赤外線受動探知システム、全周囲監視モードで起動。レーダーに情報送ります」
「レーダー、赤外線情報頂きました。……正面に熱源反応、光学モードで目標を捕捉」
「護衛艦隊、交戦開始」
「上条、艦首魚雷装填、主砲撃ち方始めと同時に斉射」
「主砲に諸元入力、対空戦闘用意。艦首魚雷、迎撃弾頭装填」
「主砲、撃ち方始め!」
古代の意を汲み取った郷田が、各兵装に指示を下す。徐に郷田が振り返って上条と視線を交わした後、上条が正面に向き直って声を上げた。
「正面の熱源群の識別完了、後期ゴストーク級500、イーター、並びにニードルスレイブ多数。捕捉しきれない」
「前衛のクラスD2隻が波動防壁貫通された!爆沈!」
「前衛のクラスD、波動防壁被弾経始厚低下。クラスSが前進してカバーに入る」
「主砲、ニードルスレイブ群に照準、エネルギー回路を主機から直結、連射モード撃ち方始め!」
「テェッ!」
主砲が火を噴き、凄まじい連射力で有象無象の群れを片っ端から撃ち抜いていく。
「後期ゴストーク級よりミサイル飛来!」
「艦首魚雷、撃ち方始め!パルスレーザー群、対空戦闘!」
「両舷発射管、並びに下部発射管、対艦弾頭装填!上条の指示にて一斉射、用意」
主砲・副砲がイーター・ニードルスレイブにかかりきりになるため、残りの兵装をフル稼働してその他の敵に火力を集中する。
「ミサイル、目標諸元入力よろし!」
「撃ち方始め!」
舷側と、艦底部第三艦橋前方から、後期ゴストーク級へ向けてミサイルが放たれる。一度発射管の向きに飛び出してから、推進器と補助翼を巧みに操りながら方向を変える。
ミサイルは弾幕の合間を縫って敵へ迫り、必中距離に捉えるや否や中段ブースターを切り離して最終ブースターで一直線に敵へ突き刺さる。
「正面、後期ゴストーク級殲滅。右舷にニードルスレイブの群れを捕捉」
「右舷、舷側魚雷撃ち方始め、パルスレーザー対空戦闘!」
「主砲は正面を維持、後部主砲右舷へ。爆雷投射準備」
「右舷目標、距離4.3宇宙キロ!」
「爆雷投射始め!右舷艦尾魚雷、バリアミサイル一斉射」
「小林、増速!
「
「正面から後期ゴストーク級更に現る!」
「主砲、撃ち方用意!」
「仰角32、相対速度65sknt」
「主砲諸元入力、撃ち方始め!」
主砲1門ずつ照準して命中させ、1門につき1隻が爆発していく。
「先頭、相対距離20宇宙キロに迫る!」
「取舵5°「小林!回避せずに突っ切れ!」
「りょ、了解!舵そのまま!」
「波動防壁、出力は最大を維持!」
操舵機を確りと握りなおす小林。敵の接触に備え、全員が全身を硬直させる。
その刹那、西条の声が艦橋に響く。
「直上より落体多数!カラクルム級です!」
「煙突ミサイル、撃ち方始め!」
「テェッ!」
「艦首魚雷、バリアミサイル装填!」
「えっ!?」
防御に有利でも、そのシールドが自身の前進をも阻むバリアミサイルを艦首魚雷に装填する。
一見支離滅裂に聞こえたが、古代の声に迷いはなかった。
「郷田!復唱しろ!」
「艦首魚雷、バリアミサイル装填」
「D-13、S-03,08,09がカラクルム級に接触して爆沈!」
「バリアミサイル、進行方向の上方へ向けて発射用意、バリア展張面は水平±0°」
「了解、バリアミサイル諸元入力」
「撃ち方始め!」
「テェッ!」
古代の指示通りに撃てば、ヤマトの進路の上側をカバーする文字通り
「バリア展張を確認!」
「正面、後期ゴストーク級10が迎撃不可能域に侵入!」
「総員衝撃に備え!」
後期ゴストーク級の、真っ黒の衝角。それが艦橋の眼前に迫る瞬間まで、カメラははっきりと捉え、天井のメインパネルに映像を流していた。
その映像で接触した瞬間、厳密には映像で接触するよりほんの少しだけ早く、ヤマトを前後から揺さぶる衝撃が走る。
「波動防壁、出力低下率200kPa、現在出力に対し8%の低下にとどまる」
「後期ゴストーク級、殲滅。観測機器にその他の感無し」
「
真田さんが計器を操作する。すると、メインパネルの映像で、天井から垂れ下がっていた
「
「小林!飛び込め!」
「了解!」
上昇して回廊へ突入するものの、強い重力が下向きに加わる影響で、足を引っ張られるように随伴艦隊は脱落していく。
それだけに留まらず、ヤマトの行き足も鈍る。
「クラスD・S、航行限界です」
「主機、補機は全て推力へ回せ!第二波動エンジンで戦闘を継続する!」
「了解!最大戦速!ヨーソロー!」
「波動防壁、動力源を第二波動エンジンへ切り替え!」
「波動防壁、再起動」
「正面、ニードルスレイブ襲来!」
艦橋に西条の声が響く。
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